PandoraPartyProject

シナリオ詳細

脱がせ!捕まえろ!!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●発端
 事件はネオ・フロンティア海洋王国首都、リッツパークで起きた。
 より正確には海洋の下位貴族から中堅貴族まである貴婦人の社交場としてロイヤルサワー男爵家が開放しているサロンで起きてしまったのだ。
「無い! 何処にも無いわ……主人からいただいた大切なあれが!」
 ロイヤルサワー夫人、エリカはそう叫んでサロンへ駆け戻って来る。
 歓談の一時にピシャリと投げ打たれた冷水が如き言葉。彼女が言うには大切な物を何者かに盗まれたという事だった。
 しかし、これに上流階級たる貴婦人達は良い顔をする筈も無い。
「私達が盗んだとでも言うんですの?」
「おかしいわぁ? このお屋敷を小鳥が飛び交っていた気がしたのだけどぉ? 穴だらけのお屋敷じゃないんですのぉ?」
「このご時世、警備の目を掻い潜る盗人の類が出て来てもおかしくはありませんわよ。エリカ様も私達を疑うより先に衛兵を呼んだ方が良いのではなくて?」
 ここぞとばかりに牙を剥く貴婦人達。例え場が他家のサロンであろうと彼女達は一人として怯む事無く、寧ろ胸を張ってエリカを批判した。
 だが、しかし。
 この時エリカは何が起きているのか薄らと理解していた。

●シークレットミッション
 応接間の戸締りを三回、人払いを念入りに三回、大きな声で叫んで防音魔術が効いているかを再三確認。
 エリカ・ロイヤルサワーはイレギュラーズを座らせてから暫くニコニコと笑顔で何やら見慣れた貴族服に身を包んだ。
「……?」
「ようこそイレギュラーズ諸君。忙しい中はるばる当家に来てくれた事に感謝をしよう」
 はぁ。集まった面々は互いに顔を見合わせながら頷いた。
 ところがその直後、物凄い形相でカツラをむんずと掴み取って振り回し始めたエリカがデスメタルさながらに絶叫した。君たちは目を見開いて凍り付いた。
「なぁぁああにが、選ばれし貴族だアバズレどもがぁぁぁあぁぁあぁああぁ!!!!」
「んぎょォォッ!??」
 音速を越えた速度で投げ放たれたカツラは応接間に飾られていた花瓶を叩き割り、顔に装着したばかりの仮面が部屋の隅で座っていたマグロ魚人に刺さる。
 響き渡る絶叫。形容し難い悲鳴。
「君達に依頼するのは!! 今度開放される貴族夫人達の祝宴パーティーへの潜入だ!
 何が祝宴パーティーだ、仲間内で旦那に隠れて地下クラブで下品に騒ぐだけだろがブラックバスどもめぇぇえええ!!
 事の説明はこうだ!! 先日いきなり昔から私の夫に色目使ってた貴婦人どもがいきなり茶会に誘い始めて、この私をとあるパーティーで酔わせて秘蔵の『下着』の事を喋らせ、
 その僅か二日後に無理矢理サロン開かせてそいつらしか知らない筈の『下着』が無くなって、挙句に騒ぎに出来ない事を分かってある事無い事を噂にしてあちこちに言いふらしやがったのさ!!!」

 イレギュラーズの誰かが宥めようとした。しかし、当然だが落ち着かせる事など出来る筈も無く。
 ……暫く狂乱の概要説明がイレギュラーズの前で繰り広げられたが、ようやくそれも落ち着いた。
「ハァッ、ハァッ……すまない取り乱した。
 要するに今回君達イレギュラーズを呼んだのは他でもない。下着泥棒を見つけ出すと共に、これを取り戻してほしい」
 エリカは息を切らしながらポツリポツリと説明を始めた。
 思うに、これらはかつて貴婦人達のアイドルでもあったロイヤルサワー男爵を”奪った”エリカへの嫉妬であると同時に、彼女達による制裁でもあるだろうと分析していた。
 しかしながら盗まれた物が物であり、余りにも屈辱的すぎる。ひいては男爵の立場にも影響しかねない。
 その辺りの加減を知らぬ箱入り令嬢どもへ一矢報いるならば、それはイレギュラーズにしか出来ない事だ。
「私も事を荒立てたくないからな、殺生は勿論のこと暴力も無しだ。
 重要なのは地下クラブで夫人達へ近付きどうにか犯人を突き止め、同時に私の下着を取り返す事だ……ん? なぜ下着がクラブに持ち込まれるかって? それはだな……」

 イレギュラーズはその謎の下着の持つ力を聞いて言葉を失った。
「あれは私の夫をメロメロにする為に練達から取り寄せた『魔性の下着』という、呪いの逸品だ。
 手にした者は予め呪いへの耐性を備えていない限り、どうしても人に見せつけたくて仕方ない衝動に囚われるのだ……
 ふふふ、その話は連中にしていなかったからな。今頃盗んだ犯人は手放せずにどこへ着て行こうかと悶々としているだろう!!
 そこでだ! そこで、先に話した地下クラブできっと脱ぐはずだ! 見せびらかすつもりだ! 君達イレギュラーズはそこへ忍び込み、私の無念を晴らしてくれ!!」
 何が無念なのかはあえて聞かないイレギュラーズだった。

GMコメント

 そこは、貴婦人たちの秘密のアンダーグラウンド……!

●依頼成功条件
 【魔性の下着】の奪還
 主犯を捕まえる、或いはその証拠を収める

●情報精度C
 不測の事態がいつ起きてもおかしくない現場です。

●貴族御用達! 地下クラブ『スキャンダル・ギルティ』
 匿名の貴族によって月に一度だけ開放されるサロンという名の広大な地下クラブ。
 多額の入場料を支払い、妖しい空間で鳥種も海種も分け隔てなく仮面を着け、鳴り響く何とも言えぬ曲に合わせ男女関係なく全員が踊っている。全年齢対象な健全空間。
 クラブ中央にはいつでも誰でも上がれる舞台があるため、一声挙げれば己がカリスマ性を発揮できるかもしれない。アイドル性とも言う。
 ここでは各施設について紹介しよう、作戦に役立つ事を願う。

 【BAR】
 酒を持ち込んで誰かに振る舞う事が出来る。ここではよく普段は煌びやかな世界を生きる貴婦人達が愚痴を零していたり、自慢の宝石を見せびらかしていたりする。

 【ダンスホール】
 中央にポールや舞台が見えるが、存外奥手な貴婦人達は意外と舞台上へは上がらない。
 時折舞台へ上がる人物がいると注目が集まる様だ。
 踊りまくる仮面で隠した身分の者達は時に過激なアクションも……許されるかもしれない。

●魔性の下着・下着泥棒
 依頼人の話では十中八九、このクラブで犯人が脱ぎ出すだろうと予想している。
 下着のデザインは主に蝶を模した物らしいが、依頼人はまだそれを直視した事が無いために色彩までは分からない様だ。
 ポイントは『犯人は貴族夫人である』という点だ。
 どうにかして下着を脱がすか、本人を手荒な真似をしないで外へ連れ出す必要があるが……当然それは人目についてはならない。
 
●注意事項・悪属性
 当ミッションにおいて、あくまでも会場は全年齢対象に収まる範囲の健全なクラブです。
 この依頼は『悪属性依頼』です。
 成功した場合、『海洋』における名声がマイナスされます。
 又、失敗した場合の名声値の減少は0となります。

 以上。
 よろしくお願いします。

  • 脱がせ!捕まえろ!!完了
  • GM名ちくわブレード(休止中)
  • 種別通常(悪)
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年12月12日 21時30分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)
レジーナ・カームバンクル
リノ・ガルシア(p3p000675)
宵歩
極楽院 ことほぎ(p3p002087)
悪徳の魔女
十六女 綾女(p3p003203)
毎夜の蝶
辻岡 真(p3p004665)
旅慣れた
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
津久見・弥恵(p3p005208)
魅惑のダンサー
ちくわちゃん(p3p005218)
ご当地ゆるキャラ

リプレイ

●『BEAUTIFUL NIGHT』
 ──ネオ・フロンティア海洋王国首都リッツパークにそこは存在する。
 場所は一ヵ所ではない。一部の貴族と富豪、商会の主があくまでも身分を第一としながら匿名に拘る事で月に一度行われる集会である。
 これこそ地下クラブ『スキャンダル・ギルティ』が妖しい雰囲気を漂わせている所以だった。
 見渡す限り、誰もが自身に仮面を着けている。
 扇情的な装いに身を包む者、反対に清楚な身なりであやしい飲み物をクラブ端にあるバーで注文する女性。
 マゼンダ色のライトに照らされた空間に流れるアルト調の女性の歌声。
 ダンスホールの中央は未だ何者も上がる気配は無い。
 ……今は、まだ。

(男爵夫人様の大切な下着を盗むなんて、すっごく許せないよね! ぜったい捕まえて、魔性の下着を取り戻そう!)
(多分に役得を含む依頼ですが……仕事をきっちりこなせば、お咎め無しでしょう)
 喧噪の最中で交差する二人。
 壮絶なまでに注目を集めている『ご当地ゆるキャラ』ちくわちゃん(p3p005218)はちくわである事で違和感は無くとも、ちくわがこの場に居る事に誰もが謎の拒否反応を見せていた。
 それは置いておくとして。
「貴女も素敵な夜を。こちらはサービスです」
「あら……気が利いてるのね」
 蝶の仮面を着けたフォーマルスーツの男からトレイに乗せられたカクテルを受け取る。
 清楚な白のワンピースの美女はスタッフに扮した『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)へ小さくウインクして、カクテルを手に雑踏に中へ入り込んで行く。
 暫しの間。今度は雑踏の中から複数の女性が近付いて来る。
(全員、滞りなく潜入出来た様ですね)
 先の美女──『ミスプラチナ』十六女 綾女(p3p003203)──がそれとなく話題として振ったのだろう。
 ウェルカムドリンクを取りに来た仮面の女性達は派手なドレスを揺らしてBARへと向かって行った。
 既に会場へ到着してから一時間近く経ち、彼がBARに提供を呼び掛けたカクテルも相当数が行き渡っている様子を見やる。
(そろそろでしょうか)
 飲み易く、度数の高さを感じさせない口当たりの柔らかさ。酒に慣れていない女性等には特に効く事だろう。BARの彼女達の様に。
「本当に呆れるったら無いわ! あれで、彼の本家からは世継ぎはまだかまだかって急かされるのよ!?」
「奥様が可哀想。私は気ままな生活だから、こうして悲しみを分かち合う事しか出来ないのが惜しいですわね」
 金髪ドリルの妙齢の女性は目元を潤ませ、隣で慰めにカクテルを渡す『瓦礫の魔女』極楽院 ことほぎ(p3p002087)が相槌を打つ。
(こんな地下に秘密クラブがあるなんてなァ。ま、秘密だっつーんなら盗んだ下着を自慢するにゃあ持ってこいだろ)
 煽てれば何とかなりそうだと、彼女は小さく頷いた。


 VIPルームの一室で
 『レジーナ・カームバンクル』善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)は仲間達の様子を場内の天井部からファミリアーの鼠を通して俯瞰していた。
「なんというか、貴族の生活ってこんなものなのかしら。陰湿と言うかせこいと言うか」
 やはり見ていてどうにも首を傾げてしまう。
(……あら。そろそろ始まりそうね)
 場内を俯瞰しながら様子を見ていると、彼女の視界の端に寛治と真の二人が並んでダンスホールへと向かうのが分かる。
 その時だった。
「は……ッ!?」
 視界が暗転する。
 五感を共有するレジーナに伝わる何者かの吐息。恐らくは耳元へ唇を近づけている。
 ミシリ、と微かな痛み。これも恐らくは何者かに握り締められている。
 確かな事と、分からぬ事が相反する。一体何者なのか。

『 奇遇ですね……こんな所で会えるなんて 』
 囁く声。
『 今夜は収穫が無かったので退散しますが……また、何処かでお会いしましょう 』

 視界が再びマゼンダ色のライトに照らされた世界へと戻る。解放されたのだ。
「今のは────」
 嫌な物を感じて、レジーナは直ぐに場内を見渡す。
 結局その後……何も起きることは無かった。


「こんばんは」
 貴婦人達との談笑を終えた綾女は、次なる標的を壁際に背を預けていた男性に決めた。
「貴方は踊らないのかしら? ここは皆踊るものだと思っていたわ、見た所……不得意ではなさそうですもの。あなたは」
「……あまり得意ではないのでね、こういう場は。貴女にはお恥ずかしい姿をお見せしたかな」
「そんな事無いわ。そうして自分を偽らない事は素敵だと思うもの」
 敢えて『今夜が初めて』とは互いに言わない。
 僅かながら貴族のそれを感じ取ったのか、背筋を伸ばして応じて来た男性に、真面目な人間なのだと綾女は悟った。
 それならば、やりやすい事もある。
「少し、お話しましょう?」
「……ああ、構わない……む? 何の騒ぎだ」
 そこで不意に彼等の後ろでライトが妖しい赤とマゼンダで明滅する。
 次いで、激しい歓声が上がって急な盛り上がりを見せ始めたのだ。
「一緒に行ってみましょうか」
 綾女は男の手を引いてダンスホールへと向かう。

●『SUGAR BUNNY』
 丁度クラブ内の曲が変わった時だ。
 流れていた怠惰な雰囲気が引き裂かれる様に、籠った熱が溢れ出したのだ。
「今宵は皆様も御存知の素敵なパトロン様からの御依頼により、私共イレギュラーズから少し変わった刺激的な余興を御用意しました!
 司会を務めさせて頂くのはこの私辻岡と──」
「プロデューサー、新田が皆様の緩慢な一時に更なる興奮をお届けしたいと思っております」
 突如ダンスホールで軽快な音楽と共に現れるイレギュラーズを名乗る二人。
 会場のあちこちでざわめきが起きるが、それも直ぐに静まり返る。
 やはりどこかで求めているのだ。刺激を……何より、今宵は寛治の施した下準備が効いている。
 加えて『世界を渡り歩く旅人』辻岡 真(p3p004665)による巧みな話術が、熱のある視線を向けている酒と雰囲気に呑まれた女性達の興味を惹きつけていた。
「噂によれば今日、この会場に『魔性の下着』なるものをお召しの方もいらっしゃるとか?! 我々はその幻を目にすることができるのか!」
「お喜び下さい。今宵開かれる催しは皆々様の持つその”眼”こそが、一人の女性に誰もが認める気品ある美しさを有する事の証明をするのです。
 ──さぁ、私達はここで改めて開催を宣言しましょう!」
 ─
 ──
 ────

 舞台へと改めて上がった『月影の舞姫』津久見・弥恵(p3p005208)は場の雰囲気に流されるがまま衣服に手を掛けて気付いた。
(魔性の下着を盗んだ方の顕示欲を刺激する為に、ここは舞いでも披露して……え?
 脱ぐ……まって、下着コンテスト? ちょ、聞いてな、ルナティックスでそういうの弱……っ)
「下着コンテスト開幕です! トップバッターはそちらの御婦人で!」
 最早寛治の策略によって堕ちた男達は隠そうともせずに、仮面の下から舐め回す勢いで『月影の舞姫』津久見・弥恵(p3p005208)を見ていた。
 纏わりつく期待と、仲間達が後戻りさせぬ雰囲気を作っている。逃げられないし裏切れない。
「そ、そうですね、魅惑の下着ですし、ええ、舞姫ですからポールダンスくらいはして魅せますよ♪」
「彼女のアピールポイントはその蠱惑的な舞いにあるとの事! 見辛い方はもっと前へ、彼女を審査するのはあなたなのですから!」
 期待の眼差しに応えてこその舞姫。
 一度脱いでしまえば、後は踏み行くのみ。
 軽快な動作でダンスホール中央へ歩み寄って行く弥恵は新品同然のポールへと絡み付いて行く。
 ポールに絡む指が、流麗な美脚が、駆け上がる様に上下する彼女のレースパンツへ視線を集める。
 ぎこちなかったのも一瞬だけ。
 彼女自身の熱も上がって来たのと同時にそれまで引き攣っていた笑顔も可憐な少女らしさを映し出し、刻むステップにリズムと大胆さが生まれる。プロの動きだ。
 会場で男達の歓声と、女性達の黄色い声援が何故か上がる。
 腰の動きの魅せ方と妖艶な笑み。舞台上を回る弥恵に誰もが釘付けになってしまいには倒れる者まで出て来ていた。(全員酔っている事も起因している)
 長い自慢の美髪がポールを中心に広がり、掻き分けるように脚が振り上がる。絡み付く様から滲み出る吐息が熱くその場で溶けて消える。
(ここで例の犯人を煽って見せましょうか)
 良い具合に全体の流れが乗って来た所で、弥恵は更に大胆に決めようとした。
 ……した、が。何故かその瞬間

 ぱぁんっ!
 ポールに生まれた謎エネルギーが彼女の下着を引き裂いた。


「あぁぁぁ、下着が……破れ! これは見てはいけませんー!? あーん、調子に乗り過ぎましたー!」
「はい次の方ァ!!」
 ハプニングに怯まず音速で順番を回す司会に拍手が上がる。
 しかし最初の掴みとしては最高だったのは間違いない。舞台から退く弥恵へ寛治と真の二人は静かにサムズアップして見送るのだった。
 ────────
 ────
 ──
 その後はまるでイレギュラーズの独壇場ともいえる展開だった。
「ねぇ、誰かブーツを脱がして下さらない?」
 彼女もその一人。
 焦らす様に脱いでいく『宵歩』リノ・ガルシア(p3p000675)の足元にはそれまで着ていたカジュアルな衣服が散らされている。
 しかし、今やズボンと編み上げのブーツだけとなった姿に誰もが息を呑む。
「わ、私が……!」
「ふふ……可愛いお嬢さんね、優しくお願いね?」
 殺到する男達を押し退けて来た仮面の少女が名乗り出ると、そっと舞台端から足を差し出して小首を傾げたリノが囁く。
 やけに息の荒い少女はブーツを脱がすと、そのまま逃走したい思いを抑えながら。
 震える細い指がリノの美脚に一瞬触れ……
「ふふ……」
「~~~!!」
「お、お嬢様ぁ!!」
 飛行種だったのか。リノからの微笑を受けた少女は羽根を散らして観客の中に倒れ消えてしまった。
「なんという扇情的にして魅惑的……! 彼女のアピールポイントもまたダンスという事だが、これはまた違う期待が持てそうだ!」
「近くの方は姿勢を低く、遠くの方はもっと近付いてご覧あれ!」
 多少のハプニングでは司会の二人は微動だにしない。
 寧ろ寛治が逆に盛り上げ、真が上手く観客を増やす事に成功しているのだ。
「どうぞ、私を楽しんでくださいな。少しでも皆様のお眼鏡にかなうと良いのですけれど」
 掴み所のない口調と声音。
 それでもそこには見る者が声を出せなくなる様な、静かで甘美な空間が広がりつつあった。
 ゆっくりと……肉感的ながらもしなやかな肢体が動いてポールへ絡み付いて行く。舞台上で魅せる事に特化していた弥恵とは違い、こちらはリノという魅惑の存在から目が離せなくなる技だった。
 官能的な曲に合わせ揺れる彼女と、その身を包む白のレース下着が交互に観客の網膜に焼き付く。
「……?」
 不意に視界の端で周りから浮いている貴婦人をリノは見つけた。どこか悔しそうな、悩まし気な表情だった。
 そこで彼女は鼻で小さく笑い。
「まぁ、こんなこと気高き貴婦人方には無理でしょうけれど」
 直後、飛び入りで新たに参加者が増える事となった。
 ────────
 ────
 ──
(あとは綾女様ですか。結構な人数が参加しましたね、それらしきご婦人は?)
(……俺達から見てもいない気がするね、参加していないかもしれない)
(まだコンテストは終わっていません。様子を見る事にしましょう)
 見様見真似でポールに触れて終わる淑女。酔った勢いでポールを破壊した貴婦人。自分も参加させろと舞台へ上がろうとして来た真面目そうな紳士。
 様々な人間を司会を務める寛治達は観て来たが、どうにも件の犯人の姿が未だ見当たらない。

 ────おおおお……!

 突如沸き上がる歓声。
 舞台上へ恥じらいながら上がって来た綾女の姿に、いつの間にか大興奮した貴族達が真下まで寄って来ていた。
 コンテスト前までに彼女が話しかけてはその清楚な姿を刻みつけて来たからだろう。
 羞恥に顔を俯きがちにしてワンピースを脱いでいく様は間違いなく犯罪級だった。思わず寛治が臨戦態勢に入るレベルである。
「とても恥ずかしいのだけれど……どうぞ、見てください」
 白い下着。
 普通だ、決してそこには装飾は無い。だがそこには紛れも無く男達にしか解り得ぬ世界が在った。
 目を伏せたまま下ろされる両手。
 男達は激昂した。何故自分はこの場にカメラを持ち込んでいないのかと。客観的に見るならば端的に言って彼等は気持ち悪かった。
「っ……!」
 羞恥に耐えられなかったか、駆けだしてしまった綾女。
 彼女の背中には大量の声援が乗っていたという。

(ダンスホール、盛り上がってるみたいだなァ)
 始まって小一時間、熱狂的に盛り上がる様子をBARからことほぎは眺めていた。
「はぁ……どうしようかしら」
 そんな時、隣に来たのは赤い猫の仮面を着けた貴婦人だ。
 ことほぎはそちらをチラと見て、数瞬の思考の後に声をかける事にした。
「貴女はああいったショーは興味が無いんですの?」
「ええ、どうしてもその……恥ずかしくて」
「そんなにお綺麗なのに勿体無いですわ、その美麗な身体も努力を惜しんでいては維持できない事は見ればわかりますもの」
「お上手ね……でも、その、実は……今日着ている下着は、とっても、いやらしいデザインで……」
「!!」
 赤猫の貴婦人がドレスのスリットを捲って見せた中には、妖しく輝きを放つ蝶が居た。
 否……バタフライショーツのそれである。貴婦人の性質と釣り合わぬ派手で扇情的なデザインは確かに息を飲む程に込み上げる物を感じさせた。
 だが、この特徴とは別にことほぎは確信する。
 恥じらう振りをしているが、目の前の女は間違いなく見せつける事に喜びを覚えていた。
(魔性の下着……見つけたぜ)
 有無を言わせず、彼女は赤猫の貴婦人の手を取ってその場を後にした。
「えっ? えぇっ!? 何をするんですの!」
「心配すんな! なぁ! 飛び入り参加はいいって言ってたよな、オレと彼女も参加させて貰うぜ!」
 完全に姐御力全開のことほぎに手を引かれ何も言えなくなる貴婦人。
 向かう先はダンスホール。
 既に混沌に染まっていた、魔性の空間。
「素晴らしい! 今度は彼女達も飛び入り参加だ! さぁ! 彼女達の勇気と自信に満ちた心意気に皆様から惜しみない拍手を!」
 真の拍手に次いで会場で喝采が巻き起こる。

──(彼女……ですね?)
 寛治がそれとなく囁いた問いに対して、ことほぎから肯定の意が返って来る。
 赤猫の貴婦人。彼女こそ依頼人から下着を盗み出した夫人達の一人であり犯人だったのだ。
 見つけたならば話は早い。
「ではお二人のどちらからでも、さぁどうぞ!」
 後は脱がせるまで、である。

●『SCANDAl……【BREAK!!】
(下着を取り返して恩を売れば、もしかしたらエリカ様がちくわちゃんのスポンサーになってくれるかも?
 そしたらもっと私の名前が売れて、今よりずーっと有名人になれちゃうかも!? よーし、そのために頑張らなきゃね!)
 今、舞台上へ上がったのはちくわだった。
 手足が生えているようだが、顔もあるようだが、下から覗き込めばお馴染みの空洞が見えるくらいのちくわだった。
「誰が一番綺麗か勝負っ☆挑戦者はみーんな舞台に上がっちゃえ☆」
 華麗なドレスを脱ぎ捨ててランジェリー姿になったちくわちゃんは、何かへ訴える様にして踊り始める。
 沸き立つ会場。深夜の真っ只中であった。
「ちくわちゃんのアピールポイントは、きめ細かいもっちり肌! 柔らかマシュマロボディ、触りたくなっちゃう~??」
 ポールダンスを披露しながらそう身体を振る彼女は、気付いていない。
 棒と並ぶ事で完全にちくわと化している事に。
 ちくわちゃんのギフトによる恩恵によって誰も彼女がちくわである事に違和感を覚えなかったが、しかし何とも言えぬバグが起きていた。
 だが歓声は止まない。流石である。

「さぁ……これにて審査の時間は終わりです」
「投票は終わりましたか? 良いですね?
 ではこれより表彰式を行います! 優勝者には特別な贈り物がありますよ、でもそれを知れるのはその方だけ。
 ────優勝者は!」
 ────────
 ────
 ──



 何処か火照った様子でVIPルームへ入って行くのは、赤猫の貴婦人だった。
 彼女はコンテストに優勝し、その贈り物が敬愛するロイヤルサワー男爵からだと司会の寛治に言われて来たのである。
 薄暗い部屋に入るや否や、彼女は震えるような声で部屋の奥に佇む影へ問いかける。
「アルス様……?」
「残念だけど、手癖の悪さはお互い様って事で許して貰うわね」
「っ!? 誰……! …………っ? ……はぅ……ん」
 背後へ回りこんでいたレジーナが扉を施錠した直後、赤猫の貴婦人の意識が遠退いて行く。
 魔眼。催眠にかかったのである。
 しかしながら多少の抵抗力があったのだろう、自ら下着を差し出させるつもりが昏睡してしまったようだった。

「えー……」
 レジーナは暫し倒れた貴婦人を見下ろし、それから部屋の外で待機している寛治達へ待つ様に頼んだ。
 この日、最後に幸運が彼等に味方した。
 魔性の下着の運搬は彼女のギフトが行ったからだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

実は最後に触れた方に呪いが……と考えていたのですが、よく判定して見た結果回避となりました。
依頼は華麗に成功。
しかしこれで若奥様への嫌がらせが止まったかはまたの機会に何処かで分かる事でしょう。
ちなみに依頼人は下着を大変厳重にまた封印しながら着る機会を探る日々に戻ったとか……

大変お待たせ致しました。
またのご参加をお待ちしております。

PAGETOPPAGEBOTTOM