PandoraPartyProject

シナリオ詳細

伝説のチャック・オープナー

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●空想せよ、無限の開放、その先の宇宙を!
 闇を走るライダースーツの女たち。
 ネコとキツネの仮面を被った彼女たちを、君は知っているか。
 貴族たちの住まう王都の屋根から屋根へと飛ぶあのシルエットを。
「フフッ、ここまで来れば安心ね」
 ひとめにつかぬ裏路地。
 二人の女は立ち止まり、首の開放具を指でつまんだ。
「いくらシャイネンナハトが近いからって、この格好で動くと暑くてたまらないわ」
「本当……」
 首から鎖骨のラインにかけて開放具をおろして行けば、『ジィ――』という独特の音と共に白い素肌が露わとなる。
 運動によってほてったがゆえ、外気にわずかな蒸気となってあがるそれが見えようか。
 開放具は更に、更に、胸の谷間へと下がり、さらにはなだらかな腹部と形の良いへそを露出したところでようやくとまった。
「ふう――」
 うっとりと、そしてわずかに睫を下げ、安堵の息を漏らす。
 前方からぱっくりと割れ、果実がその実を晒すかのようにはらりと広がるライダースーツ。両肩が露わになり、胸元で奇跡のように止まったその隙間から……なんと。
 そう、なんということだろうか。
 宝石のついた指輪。金のネックス。無数のコイン。彫刻の施されたメダル。大きな壺や彫像。などなど、総計で相当な額に登るであろう美術品の数々がこぼれ落ちた。
 ボディラインがはっきりと出るライダースーツにこれだけの量の品物が入るはずはない。
 そう思うのは、きみの目が常識と冷たい現実に閉ざされてしまったためかもしれない。
 想像してみるのだ。
 あのチャックを開くとき。
 その先に無限の宇宙が広がっているさまを。

●浪漫の発明家
「だから! 作ったんだ! 僕ァさァ!」
 そこまで説明していたアフロ一歩手前の天然パーマ男が涙ながらに叫んだ。
 白衣にアフロというちょっとキテる姿のこの男こそ今回の依頼人。であり、練達出身の発明家『永遠の思春期』ことネバーティーン博士である。
「どんな人間がどんなごてごて鎧を装備していても肌のぴっちり出たシルエットになるように……肌とその間にあるものをそれはもうミリの薄さにまで圧縮できるスーツをさァ! それが、それがさァ……!」
 両手をガッと翳す。
「助手の二人に盗まれちゃったのサァ!」
 もうおわかりであろう。
 今回の依頼は、博士の発明品を奪い返すことである。

 博士の元助手。金髪美女のファスナと黒髪美女のジッパ。
 おっぱいが大きいからという理由で雇ったこの二人はなんと幻想をさわがす伝説の女怪盗の二人組であった。
 博士が半年寝ずに作り上げた発明品『強制ぴっちりライダースーツ』一号二号を盗みだし、今幻想の貴族たちを相手に盗みを働きまくっているというのだ。
「けど、あのスーツは失敗作なのさァ。はじめのうちは普通に作用するけど、そのうちスーツの圧縮能力が暴走して着ている人の身体をペチャッてさせちゃうのサァ! それは流石に可哀想だよ!?」
 自分の発明品を盗んだ女に慈悲をかけるとはなんとみあげた男であろうか。
「おっぱい大きいのにサァ! 骨ごと潰れたら台無しだよォ! あの二人が着てくれたこと自体はまあ嬉しいしさァ!」
 お前が台無しだよ!
 イレギュラーズたちのそんな気持ち(もしくは同意)をよそに、永遠の思春期さんは拳を突き上げた。
「あの二人を捕まえて、スーツをはぎ取ってきてくれ! 金は払う!」

GMコメント

 神が言ったんだ。書けって。いますぐ書けって。
 そうこれは神の意志なんだ。

【オーダー】
 ファスナ&ジッパから『強制ぴっちりライダースーツ』を奪い返す。
 これが成功条件です。
 つまり倒してはぎ取るか説得して剥くかしなければなりません。
 口説いて脱がすのは見てみたいけどやめたほうがいいと思うわたし。

【捜索パート】
 このシナリオには捜索パートがあります。
 人を探すのに便利そうなスキルがあればぜひぜひ使っていきましょう。
 この活動に積極的に参加すればするほど捜索成功率がアップし、より早く、そしてより有利な状況で見つかります。
 ですので『捜索系のスキルとかねーなー俺』という方も自分なりのやり方で頑張ってみましょう。スキルのあるかたもとりま使うだけじゃなくどう使うかを考えたり、工夫するポイントを絞ったりと色々やってみてください。

【戦闘パート】
 ほんとに戦闘するのかどうかは皆さんのプレイング次第って感じがするんですが、一応戦闘に必要な情報を書いておきます。
 この情報は捜索中に集めた情報の中に入ってたってことにしてください。(捜索を頑張ると有利になるシステムもここに絡んでいます)
 伝説の女怪盗ファスナ&ジッパ。
 クラスは勿論キャッツアイです。なにが勿論だ。
 あとおっぱいが大きいです。どちらも大きいですがサイズのファスナ形のジッパと呼ばれています。あとブラとパンツはねこさん印のパンツ工房でセット販売してるやつを買います。スーツ着用時はノーブラノーパンです。夜寝るときに何を着るんですかという質問にグローバイジェイロウよと答えました。幻想北部のスラムあたりじゃファンが多く軽く義賊扱いされているらしいです。金持ちから盗んだものを貧民に配るタイプの人たちなのでしょうあとおっぱい大きいからです。

【スーツのレンタルサービス】
 『強制ぴっちりライダースーツ』のベータ版を今回限り貸し出します。一人一着ずつ貸し出せます。なぜって? 見たいからに決まっ――便利だからだよ! 相手が、こう、油断するだろ! 武器を装備してないのかなってほら! な、な!?
 なおずっと持ってるとペチャッてなるので今回限りで返しましょう。

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • 伝説のチャック・オープナー完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年12月04日 22時55分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)
波濤の盾
セララ(p3p000273)
魔法騎士
ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)
祝呪反魂
ノア・マクレシア(p3p000713)
墓場の黒兎
狩金・玖累(p3p001743)
PSIcho
タルト・ティラミー(p3p002298)
あま~いおもてなし
村昌 美弥妃(p3p005148)
不運な幸運
田中・智子(p3p006780)

リプレイ

●ぴっちりライダースーツを追って
「目標は、簡単!」
 手をグーにした『あま〜いお菓子をプレゼント♡』タルト・ティラミー(p3p002298)が両腕をぐっと伸ばした。
「ファスナとジッパからスーツを剥いてネバーティーン博士返すことよね!」
 言うは易く行うは難し。
 伝説の女怪盗から盗んだ品を変えさせることの難しさ。
 それが簡単にできたら苦労はないのである。
 『蒼の楔』レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)は煙草をくわえたまま煙を吐き出した。
 ふんわりと灰の香りが広がる。
「剥くといってもスーツさえ手に入ればいいんだ。説得して返させればいいんだろ?」
「うん……」
 『墓場の黒兎』ノア・マクレシア(p3p000713)がレイチェルの話に頷いた。
「どんな話を、するの……?」
「スーツを着てると潰れることを話して、スーツさえ返せばこっちは引き下がることを伝えるんだろ」
「うん……うん……?」
 ノアがふんわり浮かんだ違和感に首を傾げたが、レイチェルは煙草を灰皿に押しつけて立ち上がった。
「まあ、義賊っつー話だし、死んだら寝覚めも悪いだろ」
「そうだねえ。今回ばっかりは彼女たちの命が惜しいかな」
 『PSIcho』狩金・玖累(p3p001743)が全面的に同意するようなことを言いつつ肩をすくめた。
「スーツを開放したときの素肌とスーツのコントラストが最高だと思うし」
「そっちか」
「今日はそんなコントラストに挑戦、にゃん☆」
 『魔法騎士』セララ(p3p000273)が両手を頭の上にやってネコのポーズをした。
 今日は特別にぴっちりライダースーツを纏っての参戦である。
「セララキャットだにゃん! にゃーん♪」
 意外な人が着た。
「……なあ、やっぱりそのスーツ、説明書とかないのか?」
 『海抜ゼロメートル地帯』エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)が腕組みをしたまま問いかけると、セララがネコのポーズのまま首を傾げた。
「開発中の製品に説明書とかないと思うよ? あってもすっごく分厚いだろうし」
「むう……」
 なんか十ページくらいのペラいやつを想像していたエイヴァンは低く唸った。
 開発とユーザーへの説明は全く別分野の作業なので、開発者に説明を求めると急にとんでもない専門用語マシンガンが飛び出すのでつらいらしい。ぴっちりスーツの説明でいきなり量子の例外的法則の話とかされても困る。
(タイツ姿の女性泥棒デスかぁ、心躍るというか少し憧れる感じはしマスけれどぉ……)
 『不運な幸運』村昌 美弥妃(p3p005148)は自分の胸をちらりと見てから斜め上の虚空を見た。
「うーん」
 咳払いする『特異運命座標』田中・智子(p3p006780)。
「ま、返して貰うにしても見つけないことには始まらないですから。まずはファスナ&ジッパさんの居場所を見つけるところから始めましょうか」

●ファスナ&ジッパの足取りを追え
 こうして始まった女怪盗を追う調査活動は数日に渡った。
 あちこちを歩き回り聞き込みを続け、一日で分からないことも何日もかけて調査した。
 とはいっても相手は女怪盗。
 『あの子どこ住んでんの』とか聞いたところで誰も知らないだろうし、よしんば知っていても教えてくれないだろう。
「そのところどうなの? 憲兵さん」
 土地の貴族についている警察的存在に聞き込みをしてみるセララ。
 民主主義国家に済んでると忘れがちだが警察っちゅーのは国家運営のために存在しているので、貴族社会の警察は大体貴族の味方である。
 そんな警察にとって、貴族からお宝を盗むファスナ&ジッパは重要な逮捕対象であった。なんなら見つけ次第殺してもいいくらいの相手である。
 そんなわけで。
「捕まえるもんなら捕まえたいね」
 と、憲兵は親切に教えてくれた。
 これ以上の捜査情報を教えないのは、セララがファスナ&ジッパの協力者だった場合単純に不利益だからである。
 そうじゃない理由もちょっと証明できないので(ローレット的には依頼主がファスナ&ジッパだったら普通に協力するはずなので)それ以上突っ込んだことも聞けないセララであった。
「まあ見回りを強化したり聞き込みを多くしても見つからないっていうのは確かだ。それで見つかるならとっくに逮捕しているからな」
「ホントに?」
「そいつの言ってることは本当だと思うぜ」
 通りがかったレイチェルが会話に加わってきた。
「ここんところずっとファミリアーで空から偵察してるが、それらしい人影は全然見えねえ。まあ、それで見えてるくらいならとっくに牢獄にいるはずだしな」
 この世の中、空を飛べる人くらい山ほどいるので、それで見つかるならそれまでの泥棒である。
 (逆にレイチェルが泥棒をするなら空から即バレするような行動はまずしないはずだ)
「そうは言っても生きてる人間だ。どっかしらに出歩いてるのは確かなんだろうが……」
 ぴっちりスーツを着込んでど派手に歩いてるわけはないので、恐らく何かしらの変装をしているのだろう。
「普段どういう格好をしてるのかさえ分かれば見つけようもあったんだがな」
 それは困ったねえと話すセララたち。
 二人はとりあえず集まった情報をみんなの所へ持ち帰ることにした。

 スラム街には色んな場所がある。
 特に治安の悪そうなあたりで、美弥妃は聞き込み調査を続けていた。
「私あの二人に憧れていてぇ。お近づきになれそうな話、知りませんかぁ?」
 といった具合に色目を使ったりしながらスラム街の男たちに尋ねて回る。
 この手法で引っかかる相手はおおかたが『そうそう俺もファンなんだよ! 正体は誰なんだろうな!』くらいの雑なリアクションと情報しか得られないのだが、中には深く考察しているファンにも出会うことがあった。
 いわくファスナ&ジッパは貴族の娘なのだとか。
 いわく二人は実は男なんだとか。
 いわく二人は魔種であるとか。
 いわく二人はイレギュラーズなのだとか。
 いわく二人は子ロリババアを培養してるんだとか。
 いわく世界は滅亡するから火星人が――あっこれ関係ないやつだ。
「ふう、なんだか雑な情報ばっかり集まってきマスねぇ」
 無責任な噂話をぽんぽん投げてくる自称ファンの人たちの話を一応メモにまとめつつ、美弥妃は深くため息をついた。
「収穫はありました?」
 智子が色っぽくメモを覗き込んでくる。
 スラム街での聞き込みをしていた智子だが彼女はもっと治安が悪いというか、娼館が並ぶようなエリアを中心に聞き込みを続けていた。
 金や色を使って情報を収集するスタイルである。美弥妃よりももっとのめり込んだ手段といっていいだろう。
 とはいえ、色仕掛けで手に入る情報というのは(そも相手は正確な情報を喋る必要がないので)結構いい加減な情報が沢山入ってくる。
 大体は美弥妃と似たような『無責任な噂話』だった。
 できればファスナ&ジッパの所在が確実に分かるような情報が欲しかったが、それってつまり自宅の住所とかなので、やっぱり手には入らなかった。
「せめて連絡手段くらいは手に入ればよかったんですけどね。ラインのIDとか」
「らい……ん……?」
 とはいえ何もわかんなかったわけではなく、ファスナ&ジッパがスラム街では軽くヒーロー視されていることや、彼女たちの正体を隠すためにいい加減な噂話を大量に流している奴がどっかにいそうだということがわかった。
 つまりはそれがファンの中でもディープな奴らであり、ファスナ&ジッパの協力者にあたる人間たちなのだろう。
 そこまで潜ることが出来ればもっと確実性の高い情報が得られそうだったが、色仕掛けでゲットできる層の深さではないようだ。
「とりあえず、集めた情報を持ち帰っておきましょうか」
 そうして帰ろうとしたところ、墓地で霊魂相手に聞き込み調査をしていたノアを見かけた。
 どうやら死者に対してファスナ&ジッパの情報がないか聞いて回っていたらしい。
 といっても、ファスナ&ジッパは怪盗であり義賊でもあるらしく、貴族たちから怒りを買うことはあってもスラム育ちの人々から恨みをかうことはまずなく、更に言えば殺人に関わることもそうそうないため、霊魂関係のひと(?)が重要な情報を持っているということはないようだった。
 もっというと幽霊的な立場からするとファスナ&ジッパの不利益になる情報を知らない人に教える理由がないというのも、あるらしい。
「この辺りでは、気者だった、みたい……」
 そう語りながら、ふと振り返るノア。
「どうかしました?」
「ううん……ただ……」
 誰かに見られていたような、気が。

 イレギュラーズは皆大好き闇市通り。
 それが盗品だろうがパンツだろうが構わず売り買いしちゃう図太い連中がいるこのエリアで、玖累は聞き込み調査を続けていた。
 玖累は演技や人心掌握術を用いて闇市商人たちをだまくらかし、ファスナ&ジッパがよく利用する商店を見つけ出そうとしていた。
 この調査は功を奏し、いくらかファスナ&ジッパが利用している商人を見つけることが出来た。
 貴族から盗まれた品を買い取ったという話が主で、お金をどこかに寄付しているという話だけは知ることができた。
 次に盗みを終えるまでそこで張っていれば二人を見つけ出せるのではと思ったが、もし玖累が商人の立場なら必ず『ファスナ&ジッパを探っている者の存在』があると一旦知らせるだろうし、見張られていることを承知で彼女たちと取引をすれば自分にも不利益がかかることが分かっているので、まあやらないはずだ。
「むしろ、危険を知らせにいく人を追いかければアタリを引けたかもしれないけど……今からだとちょっと遅いかな」
 と、数日の調査を終えてから思ったりもした。
 闇市を出ると、タルトが風の精霊と会話をしていた。
 会話といってもその辺の精霊さんは知能が低いのでミーとかミャーくらいしか言わなかった。
「それっぽい人がいるかどうか聞いてみたんだけど、『人間いっぱいいた』だって」
「それは……うん……」
 知能の低い精霊ならまあそんなところである。人間と人外の区別がついてるだけまだマシというか、何もやらないよりはずっといい聞き込み調査であった。
「これって、あちこち聞いて回るより盗みをはたらきそうな日までずーっと見回りしてた方が早く見つかったのかも?」
「まさか。幻想の国は途方も無く広いんだよ。せめて次の狙いを特定するくらいまで行かないと無理だよ」
「そっか~」
 二人は情報をすりあわせると、一度エイヴァンの所へと戻った。

「むー……」
 エイヴァンはひたすら唸っていた。
 戦略眼を使えばファスナ&ジッパの現在位置を割り出せるかなくらいに思っていたのだが、余計な情報や嘘や勘違い、はたまた誰かの妄想まで混ざった結果もうわけがわかんなくなっていた。
「この情報を見る限り、既にファスナ&ジッパに調査行動がバレていると見ていいだろうな」
「なんで?」
「二人に協力的な人間がいて、情報を意図的に偽って伝えていて、しかもそれがダブってるなら、意図的に口裏を合わせた連中がいるということだ。そこまで協力的なら、ファスナ&ジッパに『行方を探っている人間が居る事実』を人物特徴ごと教えている可能性があるんだ」
 ファスナ&ジッパは義賊である。スラム街の人たちにとってはつかまって欲しくない人物だろうから、その辺りの人にフツーに聞き込みをして回れば情報が筒抜けになってしまうのだろう。
「なるほどー……」
「こうなればお手上げだ。せめて次にどこを狙うかさえ分かれば……」
「おっと、それならいいのがあるよ」
 玖累が一枚のメッセージカードを取り出した。
 何も書かれていない真っ白なカードだが、そこに口紅のあとがうっすらと残っている。
 噂によればそれはどうやらファスナ&ジッパの予告状のようなものらしく、このカードが送られた家は翌日盗みに入られるという。
「このカードが送られた貴族を見つけたんだ。当日はこのあたりで張り込みをすれば見つけられるんじゃない? 見つけたら――」
「のろし?」
「角笛?」
「鳩を飛ばす?」
 三人それぞれ手を上げて提案するセララ、美弥妃、智子。
「いや、どれも確実性に欠けるな。普通に大声を出して仲間を呼ぼう。それぞれの張り込み位置を覚えておけば迷わないだろうし、即効性もある」
「なんだかんだで、それが一番……だね」
 ノアはこくりと頷いて、手書きの地図(測量した人はいないけど空からざっくり書いてくれたひとはいたらしい)をテーブルに広げた。

●女怪盗を追え!
 夜!
 女怪盗が闇夜に紛れて屋根から屋根へと飛び移る。
 その様子を偶然にも発見したレイチェルは、声を上げて仲間を呼んだ。
 つかまってなるものかと逃げるファスナ&ジッパ。
 レイチェルはその姿を追いかけながら呼びかけた。
「そのスーツは未完成だ。圧縮能力が暴走するぞ!」
「そんなことを言って、私からスーツを奪い取ろうっていうんでしょう?」
 ひらりと屋根へ飛び移るファスナ。
 屋根へよじ登ってきたエイヴァンが呼びかけた。
「そのスーツは未完成だ。安全性が保証されてないものを利用するのはよくないぞ。圧縮能力が暴走して人の身体を圧縮してしまわないという保証がどこにある」
「そんなことを言って、私からスーツを奪い取ろうっていうんでしょう?」
 そういって屋根から飛び降りるジッパ。
 隠れていた木箱から飛び出してくるノア。
「そのスーツは未完成、だよ。着ていたらぺちゃんこになるらしい、よ……」
「そんなことを言って、私からスーツを奪い取ろうっていうんでしょう?」
 木箱の上を華麗に飛び越えていくファスナ。
 がちゃりと酒場の裏口から出てくる玖累。
「そのスーツは未完成だ。重大な欠陥があって肉体がぺしゃんこになるらしいよ」
「そんなことを言って、私からスーツを奪い取ろうっていうんでしょう?」
 ドアを蹴りつけて閉じるジッパ。
 窓をがらっと開けて顔を出すタルト。
「そのスーツは未完成なの。時間が経ちすぎると中身まで圧縮ってね♪」
「そんなことを言って、私からスーツを奪い取ろうっていうんでしょう?」
 がらって窓をしめるジッパ。
 マンホールを下から押し上げて飛び出る美弥妃と智子。
「そのスーツは未完成デスよぉ」
「来ていると死にますよ」
 屋根から木箱からドアから窓からレイチェルたちが一斉に現われた。
「ぼくたち!」
「わたしたちは!」
「「スーツを脱いでくれたらそれでいいと思っています!」」
「まってまって」
 流石にファスナ&ジッパが足を止めて振り返った。
「なんで全員が全員同じことをいうの」
「うっかり全く同じ返しをしちゃったじゃないの」
「えっそれは……」
 後からダッシュでやってきたセララがぜーぜーいいながら応えた。
「こういう方針で説得しようねって決めてたからだよ?」
「……そ、そう。大変なのね……」
 なんかファスナが同情的な視線を向けてきた。
「なんのために私たちを囲んだのよ。数の利を活かしなさいな」
 ジッパがむしろ好意的な対応をしてきた。
「でもねえ?」
「みんな説得するって決めてマスし?」
「説得の文句も考えてきたしな」
 ンなこと言われてもって顔で話し合うイレギュラーズたちに、ジッパは顔を覆った。
「とりあえず……全員の言い分が一致してるなら一人だけで話して貰ってもいいかしら」
「じゃあハイハイ! ボクがやる!」
 このためにスーツを着てきたようなモンとばかりに元気に手を上げるセララ。
 はいどうぞと続きを促すファスナに、セララはネコのポーズをとった。
「博士も博士に雇われたはボクたちも、キミたちを捕まえる気は無いよ。それにボクにもスーツを貸してくれたし、頼んだら貸してくれるはずだよ。さっきも言ったけど未完成なのが問題なんだ。博士はキミ達が盗んだ2着に執着してるんじゃない。キミ達がスーツに潰されないよう心配してるんだよ。わざわざボク達に依頼してまでね」
「あら、そうなの……」
「それに……博士は悪人ってわけじゃない。悪人以外から盗んでたら義賊じゃ無くなっちゃうよ。ボクはキミ達には『格好良い正義の義賊』でいて欲しいな」
 セララの言い分をひとまず聞いていたファスナ&ジッパは頷いて、その場で豪快にバッとスーツを脱ぎ捨てた。
 そして早着替えで別のスーツを着込むと、風呂敷に盗んだ品を包んでしまった。
「そういうことならスーツは返すわ。また今度、博士には『ご挨拶』しないとね。それじゃあっ!」
 ファスナ&ジッパは用件だけ済ませると、すぐさま夜の中へと消えていった。

 後日。ネバーティーン博士には二人のヒミツ助手がついたという噂が流れてきた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ちょっと調査パートのヒントが少なすぎた気がしたので大幅にオマケしました。
 ファスナ&ジッパも喧嘩さえ売らなければ別に敵対しない相手なので、スムーズに成功したものとしました。

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