PandoraPartyProject

シナリオ詳細

あの花じゃないとやだ!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●君のためなの
 とても気持ちの良い朝。
 町の人達も仕事が捗っていたし、都の方も最近とっても良い事があったみたい。
 お天気も良い。ぽかぽか暖かいのはみんな好きだ。今日は学院に学生さんが行かなくていい日だとも聞いた。
 犬のバロンも凄く元気。今日は何もかもが良い日だ。
 そんな日は、必ず僕は町の傍に在るお花畑へ散歩に出かける。
「おはよ、また来てくれたんだね」
 そして僕のお友達、シャーネイ。綺麗な花飾りを頭に着けた耳の長い女の子だ。
 今日は晴れで『流れ』がとても穏やかだから、僕と同い年の女の子であるシャーネイは外に出て来れるんだって。
「なあに、それ? パン? 私は食べられないわ」
 シャーネイは好き嫌いが多い。髪が長いからかな?
「今日はトランプを持って来たの? ごめんなさい、私は触れないわ」
 シャーネイは何にも持てない。遊びにもバリエーションが必要だと僕は思う。
「ねぇ、アレン。私あなたの事を聞きたいわ、いいでしょう。いいでしょう。あなたの事が知りたいの」
 まただ!
 シャーネイは僕と遊ぶとき、殆ど僕の話ばかり聞いてくる。出会ってから二ヶ月ほぼ毎日会ってるから、そう、40回は僕の話をしている。
 犬の話は……飽きちゃったなぁ。
「あなたのことでいいのよ」
 そんな事を言われても。
 僕は困ってしまう、だって僕は大した事ない。学校にも学院にも、何か剣の稽古をしているわけでもない。
 なのにシャーネイはこんな僕の何が聞きたいのだろう。
 ……あ、そうだ。
 お母さんに昔聞いた事がある。とても綺麗な花の話。
「まあ! すてきね、私お花が大好きなの。アレンは知っているの? そのお花の咲いている場所」
 どこだったかな。どうしよう。
 そんな話をしていたら何だかとってもあの花を見たくなって来た、凄く凄く気になって来た。
 でもあの花は普通に咲いている場所が少ない。
 どうしよう……あの花じゃなきゃ嫌だ。

●子供からのお願い
 紅茶を淹れ終えた『黒猫の』ショウ(p3n000005)は静かに集まった面々に向かってティートレイごと差し出した。
「やあ、ようこそ相談卓へ。この紅茶はサービスだから、先ずはこれでも飲んで落ち着いて欲しい」
 ショウの勧めに小さく頷いた一同はそれぞれ紅茶を手元へ寄せた。
「うん、依頼なんだ。いつもありがとう。
 依頼主はとある小さな町の子供だ、その子が先日俺の所へ来てお願いしてきてね。報酬はまぁ、こちらで何とかするから気にしなくていい。いいね?」
 彼は再度頷いたイレギュラーズを見てから話を続けた。
 花の町『ぺダニウス』に住むその子供は、少し特殊な友達がいるのだという。
 触れる事は出来ないが、大きな力の”流れ”が強く。そして穏やかな時だけ触れ合う事が出来る。
 しかし言葉はいつでも交わせるし姿は見る事が出来る。
 けど、どうにもその子は相手の事が気になるらしい。とても、気になるとか。
「甘酸っぱい話だよね、羨ましいよ……あぁ、その紅茶は少し甘酸っぱいかも知れないけどそっちの話じゃない」
 相手の子供。特殊な友達はとある花が好きで、当の依頼人も気になるという事からどうしても欲しいのだとか。
「子供は花が好きだからね、まぁ不思議な事でも無いだろうと思う。本題に入ろう、この微笑ましい少年少女の求める花というのは幻想では生えていない物なんだ。
 調べて見た所それは七枚の花弁を持った紅い花……邪悪な者を退ける効果がある特別な薬草でもあるらしい。
 何処かからか渡って来た外来種みたいなもので、咲いている場所も限られているから探すのは根気がいる」
 つまり、と。ショウは地図を広げた。
 それは『ぺダニウス』から東に進んだ森の中に位置する花畑らしかった。
「その場所は色々と不思議な所でね、異世界から持ち込まれた機械の残骸があちこちに放置されていたり、
 魔力が地下水脈の関係で魔力が豊富に流れているから精霊が多く見られるらしいよ」
 見えるレベルの精霊は気難しいのが多いから、話しかける時は慎重に。ショウはそう続けた。

 紅い花【アグラフォーティス】はその特別な花畑の何処かに咲いているらしい。
 細かな説明を聞きながら、イレギュラーズは資料に描かれた花を見つめた。……確かに綺麗だがそんなに子供が気になる物だろうか。
「……ああ、そうそう」
 不意にショウが説明を止めた。
「君たちが花を探しに行く日、現地の入口で依頼人の子供が迎えに来るらしいから。その場で渡してあげてね」
 泣かしては、いけないよ? そう言うショウは紅茶に砂糖を入れて首を傾げたのだった。

GMコメント

 ちくわブレードです。
 今回は子供達の為にお花を摘みに行きましょう。

 以下情報。

●依頼成功条件
 紅い花『アグラフォーティス』を一輪以上見つける

●情報精度B
 花は想像よりも見つけ難いようです。

●神聖なる花畑
 花の町ぺダニウスの近くに広がる森の中央部に半径400mの花畑が存在します。
 この花畑ではあちこちに機械らしき残骸物が散らばっており、また犬や猫など、更には精霊まで闊歩しているようです。
 滅多に人は近づけませんが、イレギュラーズならば問題無いとの事です。
 ここでは様々な花が咲き乱れているため、見かけだけでは分からない偽物もあるでしょう。
 ※(花弁が7枚あって紅い花でも、魔除けの効力を持ってない等)

 そこで、皆様にはここで1~20の数字を選んだ上で捜索に当たって頂きます。
 プレイングは勿論、スキルやギフトを駆使して参加者と共に協力しながら探す事で判定で+されます。

●依頼人
 最後に見つけた花を渡します。
 どうも依頼人ならばその花が本物かどうかわかるそうです。この際に騙そうとしたりすると失敗になりますのでご注意下さい。
 捜索中、話しかけても問題ありませんが、相手の幼さゆえに成功へ直接繋がる情報は得られない可能性があります。

 以上、皆様のご参加をお待ちしております。

  • あの花じゃないとやだ!完了
  • GM名ちくわブレード(休止中)
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年12月08日 22時25分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)
黄昏夢廸
ユーリエ・シュトラール(p3p001160)
優愛の吸血種
ラデリ・マグノリア(p3p001706)
再び描き出す物語
レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)
希うアザラシ
スティーブン・スロウ(p3p002157)
こわいひと
鼎 彩乃(p3p006129)
凍てついた碧色
エクリプス(p3p006649)
花喰い

リプレイ


「お花を、探してほしいの」
 少女はそう朗らかな笑顔で告げた。
 イレギュラーズが花の町に到着した時、出迎える様に姿を現したのが彼女だった。
 シャーネイと名乗った。
「私のお友達、アレン君っていうんだけどね。アレン君と二人でそのお花がどうしても見たいって教会のシスター様にお話したらね、『ろーれっと』さんがお手伝いしてくれるって」
 彼女はハーモニアらしく、長い耳を揺らして語る。
「ふむ……」
 『ポイズンキラー』ラデリ・マグノリア(p3p001706)はシャーネイの案内に従いながら感心の声を漏らした。
 花の町ぺダニウスから程なくして辿り着いた光景。
 広大な花畑のあちこちに朽ちた金属の残骸が見える、が……それらは自然と共に在るのだと感じる。根が張り蔦を伸ばして花が咲き誇っている鉄塔のような物を見れば、それは勘違いではないだろう。
「花の町……一度は訪れてみたいと思っていた。まさかこんな場所があるとは思わなかったが」
「綺麗でしょう、えへへ」
「シャーネイ! その人たちは?」
 後から来たのだろうか、花畑の入口にある木陰から顔を覗かせている少年が一人。シャーネイと同年程の男の子。つまり彼がアレンなのだろう。
「わぁ……僕はアレンだよ、よろしくね」
「初めまして、私はユーリエっていいます!」
 子供ならではの距離の詰め方がわからないといった雰囲気が緩んだ所で、応じた『愛の吸血鬼』ユーリエ・シュトラール(p3p001160)に続いて。他の者達もアレンと互いに簡単な自己紹介を済ませる。
「これからお花探しをするの、私は手伝わなくていいのかな?」
「うーん、お兄さんお姉さん達からは特に無いんだよね。ならシャーネイはそこで待っててよ! 僕も探しに行ってくるから!」
「いいの? ……ふふ、それならおねがいしようかな」


 静かで幻想的な花畑に風が流れる度、シャーネイの祈る様な歌声が聴こえて来る。
 この花畑には多くの種が異様とも思える程に混在している。
 多種多様な花々が咲き乱れている光景は確かに美しいが、時期によって咲かぬ種も混じっているのを植物に関する知識を持つ者が見れば困惑するだろう。
 僅か数メートルの間でも何十、何百という花や草が生えているのだ。端から探して行けばどれだけ時間がかかるか分かった物ではない。
「さては少年。恋してるな? 成就させるため喜んで手伝おうじゃないか」
「しかし、自分で取りに行けるくらいには根性つけて欲しいねぇ」
 いつの間に採ったのか。手の中で結んで輪にした花を一輪、自身の指に巻き付け弄ぶスティーブン・スロウ(p3p002157)が頭を振る。
 散開した時は『黄昏夢廸』ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)の近くを彷徨っていた少年アレンは、今はいない。
 遠巻きに周囲を見渡すと、あっちこっちを歩き回って見ている様だった。
「へぇ、なかなか綺麗な所じゃねーの。人気のない花畑ってのは良いもんだな、今度誰か連れてデートに良さそうだ」
 手近なツユクサの花へ手を伸ばし、彼は顎でもくすぐるように指先で撫でる。
「本当にね。誰が居ても様になるという事は、それだけここが美しく、他を優しく包み込んでくれるって事だからね」
「あー、なるほど。確かにこういう場所も色々『映える』だろうしな」
 暫しの雑談を交え、ランドウェラは片手に何かの資料を。スティーブンは先ほどと同じく花々を指先で弄ぶ。
 何も言わず、スティーブンが立ち上がった。
「なんつーか、結構骨が折れるなこれ」
「どうかしたのかね」
「どの花も『フワッとしてる』からよく分からねーんだよ……」
 植物とある程度の疎通が取れる彼でも、断片的に読み取るのが限界らしい。
 『あかい、ななまいのはなびら? あっちでみかけたよ』『ボクはこっち』『わーい、わたしはそっちでみたのー』
 そんな声ばかりでは、手がかりを掴むのにどれだけの時間が必要なのだろう。
「まあ、もとより探しだすのが難しい花だ。僕もこの”報告書”を基に探してみるよ」
 優れた色彩感覚を用いれば、或いはランドウェラの有する記憶能力も駆使して一枚の絵画から探し出すかの如き精密さで探し出せるかもしれない。
 そして何より。事前に彼がなりふり構わず聞き回り、探して手に入れた『花』に関する確かな手がかりが手元にある。
 過去に他のイレギュラーズが解決した依頼の中で『アグラフォーティス』が確認され、情報として記録されていたのだ。
 とはいえそれはあくまで写真や大きさ、重量などの細かな部分だが。
「根気よく探す、か」
「精霊もいるらしいからな、飛行できないので多少は踏む事になるが……怒りを買わない事を願おう」
「……精霊ねぇ、一応キラキラしたのとか甘いのは持って来たが」
「僕も金平糖を持って来たんだ、これで争いを避けられると良いな」



 頭上を飛び回る鷹を一度見上げ、『花喰い』エクリプス(p3p006649)は閉じた片目瞼の裏で見る俯瞰風景に両手を広げた。
「わー、綺麗なお花ばっかだなー。にははっ、鮮やかで、イキイキしてて、輝いてて……燃やしたくなるな……燃やさないけどさ、危ないから」
片目を隠す仮面に寄り添うように風に流されて来た花弁を爪先で摘み、舌の上に乗せる。
「花は嫌いだけど、少年の初々しい恋心の為に一肌脱ごうじゃないかー……例の花の味も気になるし、なー」
 胸一杯に息を吸って、手繰る様に屈んでから一輪の花をパシリと摘む。
 赤いが、それが目当ての『アグラフォーティス』ではないと分かるとエクリプスは元の位置へそっと戻した。
「謎の友達の為にお花が欲しい……昔を思い出すっキュ。昔の自分は森アザラシの成体でもっと大きくて、グリュックと仲良くなってから世界が変わったっキュ……」
 『森アザラシと魂無き犬獣人』レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)達はそうやっているエクリプスの後を追いながら、ランドウェラから渡された写真を手に捜索を行う。
 とは言うものの、傍から見ればレーゲンとグリュックの二人が何やらピョンピョンして花畑ではしゃいでいるようにしか見えないのだが。遠目にその様子を目撃した女性陣からは非常に好評である。
「うきゅ。二人がもっと仲良くなれるよう、レーさんは頑張るっキュ!」
 手近な花と意思疎通を図ってみたり、レーゲンを冬将軍だと思い込んでいたり、話が通じないので後は依頼人に渡してみようと似た種の花を採取したり。
「そういえば、魔除けの花でこの手紙が浄化されてるか分からなかったのはちょっと想定外だったっキュ」
「『魔除け』だからなー。使い方次第なんだろうね」
 薬草だとも呼ばれていた事から、花は粉末にしたり火に焚べる用途も想像できるが……単純に呪いを祓うわけでは無いのかもしれない。
 グリュックと共に首を傾げて「むっキュ……」と考えるレーゲン。

【 ────止……──── 】

「!」
 不意に彼等の背後から降りかかった鱗粉の様な光。聞き取れるかどうかという声音が囁かれた瞬間、身構えそうになるのを我慢して振り返る。
 グリュックの背後に立っていたのは黄の鱗粉を振り撒き、宙に浮いた朧気な人の姿だった。
 ファミリアーでも捉えられなかった。
 顔も、輪郭も、何もはっきりしていないのに。ただそれが人の形をした『女性』であるという事だけはエクリプスにも理解できた。
 敵対は避ける、それが今回の依頼を遂行する上での方針だ。彼はさり気ない動作で蜜の入った小瓶を懐から取り出した。
「あなたは精霊さんだっキュ? どうか話を聞いて欲しいっキュ!」

【 ──……?……── 】

 レーゲンの声と共に差し出された蜜の小瓶を前にして、精霊は首を傾げていた。



 箱型の鉄屑の上を浮遊して周囲を見渡す『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)。彼女は傍らに歩み寄って来た少年へ透き通る自身の尾を翻して見せる。
「お花探しをローレットに頼むだなんて、よっぽど大切なお花ですの。陸の植物は、よくは知りませんけれど、是非とも、お力になりますの」
「ありがとうお姉さん! たいせつ? かどうかはわかんないけど、凄く綺麗なんだよって昔お母さんに言われたんだ。きっとシャーネイも気に入ってくれると思う!」
 だから、おせわになります。
 そんな拙い言葉にノリアはくすくすと小さく笑う。少し離れた位置で花を探すラデリも同様である。
 『昔』だなんて、今より小さい時を嬉々として語る様は無垢な一面に思えた。
「所で、このお花畑で危険なモノは出たりしますの? 念の為、参考までに聞いておきたいですの」
「キケンなモノ?」
 アレンは首を傾げた。
「ここにはそんなの……ぁあ、犬のバロンがいるよ! あいつは凄くすばしっこくてキケンなんだー!」
「……くすっ、そうですのね」
 ノリアは微かに耳をこちらへ向けていたラデリに微笑む。

(ふむ、魔物の類はいないと。それならなぜ彼等の相談したシスターは我々を紹介したのか気になるが、まぁ良しとしよう)
 七枚の花弁に限定するならば探し出すのはそう苦労する事ではない。
 ラデリは元々植物や土いじりを好み、それゆえに自然に対する知識が相応に頭に入っている。
 時期や環境と合うかは疑問に思う所ではある。だがそれを可能にする環境だからこそ、この花畑は神聖視されているのだろうとも予想を付けた。
「ギルドで得た写真からするに、この花は益虫による花粉の媒介を必要としない種なのは明らかだ……そうなるとこの辺りは外れか」
「どうかしたんですの?」
「この辺の花に声をかけ、少しばかりの情報を貰った。この花畑は自然と『仲間』を集める流れが出来ているらしい、
 ……或いは話に聞く精霊と言うのも、”当たり”の近くに居るのかも知れないな」
 魔除けの効果を持つ花。精霊ならば好みそうなものだが、果たして。
 ラデリはノリアと少しずつ花々を見ながら移動して行く。

 ” わんわん! ”
 ” にゃんにゃん! ”

 視線を巡らせれば時折、花畑の中を疾駆する犬や猫の姿が見える。
 しかし、その中で見える筈の存在が消失している事にノリアは気付いた。
「……? レーゲンさん達はどこへ……」
 レーゲンとグリュック、エクリプスの姿が花畑から消えていた。


 少年アレンはユーリエに差し出して見せた。
「ねえねえ、この花はどうかな!」
「それは百合の花だよー、この写真が探してるお花だからよく見てみてね!」
「うん、わかったよユーリエ姉ちゃん!」
 そしてまた走り去っては地面に這いつくばる勢いで探し始める。
 ユーリエと『凍緑の練魔士』鼎 彩乃(p3p006129)はその様子を遠巻きに見ながら二人で頷き合うのだった。
「あまり……こう、誰かのためにっていう感覚は判らないけど……私たちで手助けできるなら、幸い……でしょうか」
「でもお花摘みにいくだけなのに、滅多に人は近づくことができないお花畑……なんだか少し引っかかる気もしますが、子供達の為に頑張りましょう!」
 周囲でも仲間があちこちで探索を続けている。
 少年アレンが“花畑に入ってからずっとユーリエ達と行動している”中、この花畑に危険は無いと教えてくれた。
 となれば、多少引っかかっていても陽射しの気持ち良いお花畑での探索だけ。注意する点はあれど幾分か気は楽になっていた。
「ユーリエ姉ちゃん!」
「あはは、それはぱんつだよ~?」
 頭上を飛び交う鷹が一鳴き。花の上をパタパタと蝶の様に飛んでいるコウモリの羽音が一瞬遠のく。
 アレンが持って来た物に苦笑しながら、ユーリエは片手間にファミリアーの視界を借りて捜索を続ける。
「……? これは……」
「機械の残骸……でしょうか、私にお任せください! これが何らかの用途有る道具なら使い方はわかるでしょうから!」
「わぁ……! お姉ちゃんすごい!」
 不思議そうに掲げていた彩乃の手から金属バケツのような物を受け取り、まじまじと観察するユーリエの目が見開く。
 彼女はそのまま屈み、足元の花と土を掘り返す。それを金属バケツの中へ……
「植木鉢みたいに使うの?」
「……です、か?」
「うーん……なんだろう? 実はこれでおしまいなんですよ、私のギフトで分かるのはここまでですねっ」
 なぜこれだけの事にこのような大袈裟な物を使っていたのだろうか。ユーリエ達は悩まし気な声を漏らした。
 ────────
 ────
 ──
「魔除け……ということは、もしかしたら植物もその花の傍は安心するの……かな……? 聞き込めるとしたら、そこもありそうかも」
 ユーリエとアレンが次々と機械の残骸を持ち出してはどんな使い方をするのか当て合いしてる最中、彩乃は黙々と花々へ秘め事の様に囁いていた。
 返って来る声は彼女が努めて優しくするものだから。子供の様にはしゃいだ声が彩乃の中へと響いていく。
 ”赤色で、傍にいると安心できそうな花。どんな赤なのか、どの辺なのか”
 要点を短く纏め、『声』に集中して囁き合う彩乃は、さざ波の如く広がる花々の声の中から一つだけ拾い上げた。
「……! ユーリエさん」
「は、はい! なにかありましたか!」
 砕けた硝子の箱と壊れた機械メットを手に持って、使い方を実演していたユーリエが振り返る。
 彩乃は一度少年アレンの方へ視線を映して、それから告げる。
「ありました……小さいけれど、この子が。紅い花『アグラフォーティス』です」
「見つけた!? すごい! アレン君、お花が見つかりました……よ……?」
「……え?」
 彩乃は一瞬、自分の目を疑った。
 彼女達が振り向いたそこに、少年の姿は無かったのだ。


「みんなお疲れ様っキュ!」
 日が暮れる前。
 ユーリエ達が花畑の入口へ戻って来た所、出迎える様にレーゲンとグリュックが手を振っていた。
「そっちはどうだった? 僕達は残念だが収穫無しでね」
「それらしい花はわたしも見つけましたの。けれど、似た種の花だったみたいで外れですの」
「オレっちも、本来は花が嫌いなんだけどなー。それなりに真面目に探したつもり、で……」
「おや、その言い回しはもしや」
 ラデリが訝し気といった様子を演じて首を傾げる。
 エクリプスはレーゲンの方へ近付き、一度ハイタッチをして見せた。どういうわけなのかと見ていれば、その答えはグリュックがバッグから出した一輪の花が示していた。
「実はレーちゃん達と会ったんだよね、精霊に。事情を説明して頼んだら結構アッサリ教えてくれたんだ」
「それが例の花か。しかし精霊とは……それで途中から姿が見えなかったのだな」
「どういうことっキュ? レーさん達はずっとみんなと花探しをしていたっキュ」
 その場におかしな空気が流れ込む。
 何かがずれているような、言い様の無い不快感を一同は言葉にせずとも覚えていた。
「そういえば、私達も途中からアレン君とはぐれてしまって……ここには来ていないんですか?」
 ユーリエと彩乃の問いに仲間達は首を横に振る。
 涼やかな風が吹いたその時、誰かが気味の悪さを訴えようとした。
 刹那。フッと湧いたようにスティーブンの背後に人影が現れ、彼の袖を小さく引いた。
「お花が見つかったのね?」
「シャーネイさん、と……アレン君!」
 依頼人が健在な事に一同は安堵する。
 そこで、漸く全員が揃ったのを確認したレーゲンはユーリエと共に少女へ花を渡した。
 小さな掌に渡った二輪の花は風に揺れる。

「皆さん、ありがとうございました。これはどちらも、確かに探していた物です」
 柔和な微笑みと共に少女は静かに頭を下げた。
(……この子はこんな雰囲気を出す娘だったかな)
 ランドウェラはそれまでと様子が変わった少女に一瞬眉を潜める。
 だが依頼はこれで完了した。後は、花を手にした子供達の自由である。

「……えへへ。二つも貰っちゃった、やったねアレン」
「うん! 綺麗だねぇシャーネイ!」
「ね、アレン」
「うん? なぁに?」
 一輪ずつ花を手にした子供達は互いに見つめ合う。
 そして、少年の手に触れた少女は先ほどよりも更に、その容姿に似つかわしくない程に。優しく、哀し気に微笑んだ。
「そろそろ、おうちに帰りましょう……?」
「…………」
 手に持った花が淡く光を放つ。
 瞬間。少年アレンの姿がまるで映像がブレる様に、風に揺れる灯火の様に不安定な形へと変わってしまう。
「これって……!?」
 止めるべきか、誰かが迷う。
 しかし、寸前で気付くはずだ。シャーネイが『来てはいけない』と首を振っている事に。
「アレン、覚えてる?
 貴方はここで沢山の研究をしていたの。すごく、すごくがんばっていたのよ?
 でもね……結局貴方はこの花畑を作っただけで、元の世界に帰る為の機械は作れなかった。
 この混沌世界に否定されたと……あなたはずっと昔に沢山泣いて、疲れていたの」
 少年の姿がどこかへ消えようとするのを引き止めるように、火花が散る。
 花が燃える。紅い噴煙の中に子供達の姿が消える。

「これは少しだけ、長い夢を見てるだけ──だからもうそろそろ、帰らないとね。そうでしょう?」
「……うん……うん……そうだよね、そうだったね……シャーネイ」
「おやすみなさい。また、今度会いましょう」

 刹那に吹き荒ぶ風が紅い煙を散らした。そこにはもう、少年の姿は無く。ただ独り静かに佇む少女の姿が在るだけだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 「驚かせてごめんなさい、今は……一人にして欲しいの」

一筋の涙を流す少女はイレギュラーズへ一言、感謝の気持ちを伝えると共に謝罪する。
あなた達はそれをどうする事も無く、ただ静かに頷いて立ち去るのだった────

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