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シナリオ詳細

大海原でのお仕事一つ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●それはとんでもない依頼

「ひえ」
 ローレットで依頼書の整理をしていた『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は突如素っ頓狂な声をあげた。
 何の気なしにそれを目にした貴方達は何かと思って声をかける。
「か、海賊から依頼が届いてるのです」
 海賊から、どいう事かと説明を求めれば、ユーリカは依頼書を読み上げ始める。
「え、ええと……違法薬物を取引している商船の情報を掴んだが、戦力が足りてないので協力してほしい……らしいのです」
 ようは海賊が悪人を見つけたから討伐に強力してほしいという事なのだろう。
 だが、海賊という身である以上表立っては動けない。
 故にローレットへ依頼が流れて来たという事だ。
「依頼主はフリーダという海賊みたいなのです。あれ、そういえば前どなたか戦ったって話でしたっけ」
 そういえば、と心当たりがあるのを思い出す。
 商船を襲い商人を攫うという海賊団、その一団と一度戦ったことはある。
 相手もこちらを知っており、それ故に依頼を回してきたのかもしれない。
「えっと……皆さん受けるのです? 一応、正規の形なので悪名は広がる事は無いのです」
 だとすれば何の問題もなさそうだ。
 ユーリカは依頼の説明は海洋の海の上、海賊船の上でされることを説明してくれた。


●自由な海の海賊船

「よう、アンタ達がローレットの連中だね」
 カラカラを笑いながら海賊団の船長、フリーダはローレットの面々を見た。
「もうじき連中が通る位置だ。うちの連中は他の航路に回っててここに居るのは少しの船員とアタシだけ」
 僅かな兵力。そしてこれから戦うことになるのは武装した違法薬物取引を行っている犯罪者たち。
 装備も豊富で、船も大きい。だというのに彼女は全くそれに怯える様子もない。
「アタシは船から離れらんないけど、船の武装はいくらでも使うといい」
 彼女がそういえば手下達が「うっす、指示頂ければ武装は動かします!」と陽気に答えた。
「目的は船と薬物を沈めてくれりゃいい。けど、命は奪うんじゃないよ。あんなんでもまだまだやり直せるかもしれないからね」
 誰も殺さず、商人を捕らえてついでに身代金を頂く。
 もしかしたらこれがこの海賊団の本当の姿なのかもしれない。
 そんなことは思ったが一旦聞く事はおいておこう、今はこれからやってくる悪人たちを退治する必要がある。
 遠くに見える悪趣味で大きな船。
 確かにやりがいはありそうだ。
「よーし野郎共。あの船から何もかも根こそぎ奪っちまいな!!」

 女船長は陽気に笑い、高らかに宣言した。
 さぁ、これからちょっと変わったお仕事の開始だ。

GMコメント

 再び海洋を舞台に、どこかで見た海賊団、そして悪逆商人退治。
 そんな海の荒くれ者たちのお仕事を用意させていただきました、トビネコです。

 依頼の目的は船と違法薬物を処理する事。
 そして、可能な限り人の命は奪わない、という事です。
 後者はあくまで海賊達のポリシーのようなので、完全に守る必要はありません。


●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●状況について
 海洋の大海原、その一つの航路の真っただ中で違法商人たちに襲撃をかけるタイミングです。
 襲撃はうまく進んでおり、不意を打って突撃する事が出来ますが、連中は船の装備もしっかりしており、巨大な大砲がいくつも装備されています。
 乗り込んでしまえば大砲はどうにでもなりますが、海賊船はどうなるかはわかりません。
 攻め込む方法、戦術、皆様に一任されている為、うまく対応して頂ければ幸いです。

●商船と違法商人達
 商船は非常に大きく、海賊船より一回り大きい船です。
 船の両脇に5問の砲台、前方や後方にも2門ずつ砲台はついています。
 それ故に速力は遅く、海賊船の方が早く動くことが出来るでしょう。

 違法商人達は大した実力を持っていませんが、船の中には護衛として雇われた強力な用心棒たちがいます。
 それぞれ射撃と近接戦をどちらもこなせるうえ、薬物によって痛みに対して感覚を鈍らせている為、苛烈な攻撃を続けてきます。
 用心棒の数は5人。これらを打ち倒せば商人たちの制圧はあっさりと終わるでしょう。

 砲門は商人たちが動かしている為、制圧するより砲台を潰した方がいいというアドバイスは貰っています。

●海賊達について
 今回皆さんに依頼を出した海賊達、船長は女海賊のフリーダといいカトラスを用いて荒々しく戦う女性です。
 海賊船の操作は彼女の手下達が行ってくれますが、フリーダは基本的に船を護る為に待機しています。
 砲撃をある程度彼女はカバーしてくれますが、全てのカバーは不可能の為、こちらにもある程度人を回す事をお勧めします。


●海賊船について
 船の両脇に3門ずつ大砲を装備しており、乗り込む為の小舟が皆さんが一人一つ使っても困らない程度配備しています。
 乗り込む際には投げ縄と彼らは使っていますが、乗り込む手段は皆さま次第になるでしょう。

 速力重視の為耐久力はそこまで高くない為、大砲を3発でも受ければ沈んでしまう可能性は大いにあります。
 お気を付けください。


 依頼の説明は以上となります。
 海賊達からの依頼ですが、ちゃんと皆様の名声が上がる様に色々と手続きはされるようです。
 無事に依頼をこなせること、祈っております。

  • 大海原でのお仕事一つ完了
  • GM名トビネコ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年12月02日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳
北斗(p3p000484)
遠い海からやってきたトド
イシュトカ=オリフィチエ(p3p001275)
世界の広さを識る者
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
弓削 鶫(p3p002685)
Tender Hound
フォーガ・ブロッサム(p3p005334)
再咲の
ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)
氷雪の歌姫

リプレイ


 女船長の宣言と同時に、海賊達は砲撃と船を動かす準備に回る。
 もちろん相手となる連中にも動きがないわけではない。
「準備よし……と」
 『特異運命座標』秋宮・史之(p3p002233)は一通り船に仕掛けを終え、大詰めを『水底の冷笑』十夜 縁(p3p000099)に任せると、仲間達に振り向いた。
「それじゃお先に、船の上でまた会おう」
 勢いよく海に飛び込んだ。
 水中に適した行動をもって、仲間達を導く……つもりだったが。
「あ、しまった」
 水中に適した装備と、状態にし切れていなかった。
 溺れる事は無いが、これでは水に落ちたも同然だ。
 必死に商船か海賊船に戻ろうとするが、そのどちらにも追いつこうとしても追いつけない。
 そんな史之の身体がぐいと引き上げられる。
「大丈夫ぅ?」
 トドだ。
 いや、『遠い海からやってきたトド』北斗(p3p000484)がしっかりと体を掴み、水中を泳ぐと小舟まで史之を運ぶ。
「心配したよぅ、でもよかったぁ」
「あ、ありがとう……」
 焦ったかな、と思いながら商船を見つめ直す。
「それじゃあ、おいらはぁ、ひと足お先にぃ」
 北斗が泳いでいく姿を見送ると、肩にがっしりと手を置かれた。
「気にしすぎんな。これからが本番だぜ?」
 『義に篤く』亘理 義弘(p3p000398)が鍵縄を片手にニッと笑う。
 一人で突っ込んでも沈むだけ、連携こそがこの状況で最も大事だといい伝えると、彼の耳に砲弾が装填される音が響く。
「ってことで、後数秒後に俺達が撃たれる。が、そのちょっと前に乗り込むぜ?」
「了解……!」
 やるしかない、と気を取り直し、二人は砲撃のタイミングを見計らい鍵縄を船へを放り投げた。



「面白い縁もあったモンだ」
 縁は、豪快に指示を出したフリーダを見て笑う。
「なんだい十夜、アンタは行かないのかい?」
「なあに船に乗り込むのは勇ましい奴らに任せてるのさ」
 小舟に乗り込んだり、海に飛び込んだり。はたまた距離が詰まるまで射撃を行ったり海賊船の砲台に向かったり。
 思い思いの手段で戦線に向かうイレギュラーズ達を見て縁は一服を終える。
 それと同時に、船を覆うように保護の結界が展開された。
「これで少しばかりはマシってね」
 史之と縁が展開した結界に飛び交う流れ弾は触れ、逸れていく。
 確実に狙う攻撃に身にこれで集中できるだろう。
「やるじゃないか。お前達、流れ弾は気にすんじゃないよ!」
「合点!」
 海賊船は速力を活かし、商船の斜め後方へ回り込む。
「うん、ここなら問題なし」
 尋常ならざる視力をもって、商船の砲の位置と動きを観察。砲門自体の数は多く前後左右をカバーしている造りに見えるがその分動きは鈍く、長時間止まらなければ後方斜め後ろであれば安全であると判断した『Tender Hound』弓削 鶫(p3p002685)は船を底に移動させるように指示していた。
「流石だね。安全地帯の見極めは出来ても、それが実行できるかは別だ」
「おいおい、うちの連中を舐めてもらっちゃ困るよ。あんたらには劣るかもしれないけどね?」
 ふふふ、と『世界の広さを識る者』イシュトカ=オリフィチエ(p3p001275)は笑う。
 対するフリーダはゲラゲラ笑っていて対照的だが、不思議な縁がある以上いがみ合う事もない。
「で、どうするんだい?」
「まずは攻め込む起点を作ります。いうなれば敵の砲と足を潰す。そしてその為に」
 パチンと指を鳴らすと、縁とフリーダに浄化の鎧が朧気に纏わされる。
 おいおい、と苦笑いを浮かべながら縁は迎撃の準備に移りだす。
「ま、少しは働くとしますか。この位置なら砲撃は来なくても、反撃はあるだろうしね」
 必死で砲塔を動かす敵の動きとは別に、こちらに向けて長銃や弓矢を構える者達の姿が見えた。
 流石にこれは保護結界でもなんともできない。
 一斉に放たれる掃射。狙いは自分達ではなく、砲手である『再咲の』フォーガ・ブロッサム(p3p005334)や海賊達。
「そうはいかないぜ?」
 両手に構えた大楯でそれを受け止める為に船から飛び出し、続け様に自身から広範囲に衝撃波を放つ。
 青い衝撃は揺れる波のように空間を揺らし、矢弾をまとめて吹き飛ばす。
 しかし、被害を完全にゼロにする為に中空に飛び出した縁の身体が会場へと落ちる。
「っとぉ、助かるよ」
「全く、少しはやる事残しな?」
 そんな縁の身体をどこから出てくるのか、フリーダが片手で強引に支えて引き戻す。
 全く不満そうではなく、むしろ嬉しそうに彼女は笑う。
「いやはや、百聞は一見に如かずと言いますが実際見るとすさまじいですね」
 難を逃れたフォーガはフリーダのまさかの行動にあきれながらも笑った。
 確かにとんでもない人物だが、そのとんでもないことを成し遂げれる実力はあるというのは非常に頼もしい。
「装填完了、行けますよ」
 ひとしきり大砲の争点が完了して、フォーガは精密に狙いを据える。
 狙いは後方の砲台、それと別の砲台に向けて鶫は自身の持ち込んだ砲の引き金を引く。
 同時に海賊船の大砲が凄まじい音を立てて立て続けに放たれる。
 単発装填式電磁噴射砲、すなわちプラズマジェットキャノンにより加速した重金属弾は商船の砲台を貫き、加速した衝撃が船体を歪める。
 立て続けに突き刺さる砲弾が歪んだ船体をさらに歪ませ、その穴を大きく、別の砲弾は相手側の砲台を破壊していく。
「あら。ほとんど終わってますわね?」
 海中からぴょこんと『特異運命座標』ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)が顔を出す。
 完全に機能はしなくなっているも、まだ何とか動かそうとしている海賊がいる以上手は抜かない。
 魔術による砲撃が砲台に完全に止めを刺し、後方は完全に鎮圧された。
「うまくいきましたね」
 ガコン、と音を立て薬莢を排出、加熱したアフターバーナーが放熱を行う。
 ふと、振り向けば後ろで待機していた海賊が腰を抜かしているのが見えた。
「ああ、私の後ろのは立たないように。燃えちゃいますよ?」
 わかったと言わんばかりに頷くと、彼はすぐに立ち上がる。
 存外この海賊達はタフだなと思いつつ、再び砲を構えなおす。
「おっと」
 が、流石にそれだけの砲撃をすれば敵のヘイトを引こうというもの。
 船から身を乗り出した商人たちの手には数多の銃や弓。さらには側面の砲もこちらを向いている。
 これ以上構えていてはまずい。船も移動させねばと指示を回す。
 が、相手もそう簡単には逃がさない。手早く準備を終え、雨あられと銃弾と矢弾が降り注ぐ。
「おっと、危ないねぇ」
 盾を構え、割り込む縁。
 迫る攻撃はその大楯に阻まれ、海賊達の守りにはフリーダが割り込み降り注ぐ攻撃を薙ぎ払って防いでいる。
 彼女に降りかかる被害も、イシュトカの支援によりほとんどダメージは無い。
「しかしまぁ、だいぶ近づいたし反撃といこうかね?」
「そうね、乗り込めているみたいだし……一気に」
 縁と鶫はそれぞれ、射線から逃れながら商船の側面に移動しながら狙うべき砲台に視線を向ける。
 商船側では慌てて砲台を再度動かしているが、その速度に合わせる彼らでもない。
「では一斉砲撃、行きますよ?」
 縁は魔砲による一撃を砲台目がけ、鶫が同じように砲撃を別の砲台目がけて放つ。
 強烈な一撃、計算された一撃は商船を貫き、船の反対側で爆発が起こる。
「今度はありますわねー!」
 ようやくしっかり攻め込める、と言わんばかりにユゥリアリアは術式を砲台に叩き込む。
 炸裂する一撃が砲台を叩き壊し、 残った砲台も海賊船からの砲撃で沈黙していく。
「よーし、砲撃後に私達もいきましょうか」
「ふふ、ではひと足お先に。支援はお任せしますよ」
 イシュトカとフォーガはそれぞれの手段で船に飛び移っていく。
 片側から相手の攻撃手段はほとんど終わっている。
「それじゃあ、こちらは支援狙撃ね」
 狙撃するにはあまりに強力だが、鶫は船上の相手を狙い始める。
「んじゃ、おっさんは後はゆっくり……」
 縁が眼下を見ると、海に放り捨てられて溺れている敵船員の姿が見えた。
「られないねぇ」
 しかたない、と笑いながら縁は彼らを助けるために海に飛び込んだ。



 時を同じくして、北斗は砲撃で歪んだ船体に泳ぎ、接近していた。
 修復しようと必死になっているが、このチャンスを逃がすのはトドだってしない。
「そこですよぅ!」
 ふわりと海上でホバー移動を開始すると、砲弾で歪んだ個所に全力で体当たりをかける。
 突然トドがホバー移動で迫ってきたことに困惑する商人達は放っておき、体当たりによって巨大な穴が開き、北斗はそこから船の中になだれ込む。
 既に船の上部ではどたばたと戦闘の音が響いてきているが、こちらはそこまで数はいない。
 むしろ、北斗の体当たりで付近に居た商人たちはほとんど気絶してしまっている。
「よいしょーぅ」
 どすん、と意識を保っていた商人達は北斗ののしかかりであっさりと意識を失った。
 だが、同時に銃声が響き、北斗の胴に銃弾が突き刺さる。
「あいだっ!」
「ひっひひ、こんなところにトド? へへ、なんだっていいやぁ!」
 少々予想外のダメージを受けてしまったが、相手は一人。
 あれが情報にあった用心棒だろう。
「うぉーっ。ですよぅ!」
 倒す対象なのであれば引く理由もない。
 攻撃に集中し、強烈な頭突きから始まるトド流喧嘩殺法を叩き込む。
 だが、相手は相手でその攻撃を受けてもひるまず、手に持った剣を北斗に叩き付ける。
「い、いたた。これはちょっと頭おかしいですぅ」
 返す一撃で思い切り噛み付くも怯む様子はない。
 ダメージは蓄積しているであろうに、これが薬物の影響なのだろうか。
 再び用心棒が北斗に銃を押し付ける。
「見えたよ」
 が、その銃が放たれるよりも先に、海賊船から鶫の放った狙撃により手に持つ銃が吹き飛んだ。
「助かるよぅ!」
 ようやく一気に攻め込める。
 胴体に荒々しい殴打を叩き込み、膝を折らせると北斗は思い切りのしかかる。
 流石にこれだけ叩き込まれれば相手も動かなくなった。
「ん?」
 そんな北斗の視線に、積み上げられた積み荷が見えた。
 中身は……薬物だ。
「こんなのはァ、不要なんですよぅ」
 ならば、と船内から薬物の詰まった樽が北斗によって投げ捨てられていく。
 すべて沈めてしまえばもう出回ることはないだろう。


 北斗が船底で暴れている頃、商船の上は乱戦になっていた。
「砲台はあらかた潰れてる。ってことは残りはこいつらか」
「とはいえ案外やる……一つずつ潰そう」
 義弘と史之の周りには武装した用心棒が4人と、銃を構えた商人達。
 乗り込むまでは出来たが、舵を狙って破壊したいもそこまでは踏み込めないでいた。
「だな。少しばかり頼むぜ?」
「了解……!」
 一歩深く、史之は前に踏み込む。
「俺の名は秋宮史之。この船をもらいうけにきた。さあこい! 一人残らずギタギタにしてやる!」
 大きく上げた名乗りに商人たちはどよめくが、逆に用心棒連中は恐れる気もないのかまとめてこちらに向かってきた。
「予想以上に単純!」
 だが、流石にこのまままとめて攻めるのは難しい。
 であればと防御に意識を集中し、守り耐える事を考える。
 障壁を展開して攻撃を受け止めていれば、すぐ後ろで義弘が動きを見せた。
「いい名乗りだ、こっちもやらねぇとなぁ!」
 鍛え上げられた義弘の肉体が、用心棒連中をまとめて薙ぎ払う。
 鬼の如く、嵐を巻き起こすその一撃は用心棒をまとめて吹き飛ばす。
「おらおらぁっ! 素人連中はすっこんでろ!」
 眼光鋭く、周囲の商人達を睨みつければ彼らはその勢いに負け、一気に怖気付いた。
 同時に、周囲に歌が響く。
 絶望を告げる冷たい声、呪いにも似たその響きは商人達から一気に戦う気力を奪い取り、起きあがろうとする用心棒たちにも重く重くのしかかる。
「無事ですかー?」
「ユゥリアリアか!」
 マストの上を見上げれば、ユゥリアリアの姿が見えた。
 用心棒たちの動きが鈍ったところに、彼女は遠距離術式を用いて打ち込んでいく。
「一転構成、良い流れですね」
「うむ、ここから仕留めてしまおう」
 続けて飛び込んできたフォーガが起きあがろうとする用心棒の顎を剣の柄で打ち抜き、脳を大きく揺らしたところへテンポよく打撃を叩き込んでいく。
 立て続けに連撃を受けた相手はたまらず揺れ、崩れ落ちる。
 フォーガと背中合わせにイシュトカは殺傷性の低い術式を放つが、感覚を鈍らせている相手はその程度ではひるまず、一気に肉薄する。
「っと、いけない」
「させませんわー!」
 だが、振り抜かれる剣はユゥリアリアの放つ凍てつく鎖によって縛られ、届かない。
「ふふ、助かるよ。ではこちらでどうかな!」
 ならば、と今度は術式による衝撃波を放ち、用心棒を一人船の外へと吹き飛ばす。
 命に別状はなさそうだが、これで戻ってはこれないだろう。
「へっ、やるねぇ! しかしてめぇら、クスリと女の売り買いはうちの組じゃご禁制。悪いがぶち壊させてもらうぜ!」
 大きく振るった拳が、用心棒を撃ち抜く。
 衝撃波を伴った一撃により、用心棒は打ち抜かれ、大きく吹き飛ぶと商人たちごとまとめて吹き飛ばした。
「史之!」
「ああ!」
 あと一人。
 防御に転じていた史之は一気に反撃に出る。
 カウンター気味に放つバッシュにより、最後の一人は大きく仰け反る。
 そこを目がけ、残りの四人が一気呵成に攻め立てれば、抵抗の余地もなく最後の用心棒は意識を失う。
 気が付けばもう抵抗する相手はいない、イレギュラーズ達は勝利を確信した。


「無意味な抵抗をしなければ、捕って食いは致しませんよ」
 フォーガの見た目に怯えながら、商人たちは一人一人縛り上げられていく。
「ふふ、中々いい役回りだね?」
「ええ、全く」
「おっと」
 イシュトカと共に笑う二人。商人たちは彼らに大いに怯えながら抵抗の気力は欠片もなくなっていた。
 縛り上げられる商人たちの中で、ひときわ豪華な衣服に身を纏った人物を史之は見逃さなかった。
「やぁ、船長だね。せっかくここまで運んだ荷物、沈めてしまうなんてもったいないと思わない?」
 史之がそう伝えれば、交渉するまでもなく彼は頷く。
「だったら後はこっちに回してもらうよ。船長」
「ああ、ぶっ壊すよ」
 あ、これ結局交渉しなくてよかったな、と思いながらもリッツバーグの方角を向いて史之は女王を思い敬礼した。
「大体焼き終わりましたわー」
「水に捨ててだめにもしたよぅー」
 ユゥリアリアと北斗が確実に薬物を処理して戻ってくれば、フリーダはにっと笑う。
「よぉーし、いいね。それじゃあ最後の仕上げだよ、十夜! 鶫!」
「ええ」
「仕上げるとしようか」
 船の中心部分で待機していた縁と鶫が、それぞれ砲を撃ち込み船体に大きな穴をあける。
 凄まじい衝撃音と同時に、船は歪み、割れ、ゆっくり船体が海に沈み始めた。
「よーし、引き揚げてこいつら突き出すよ!」
「あいあいさー!」
 仕事は終わった。
 これで一つだが、違法薬物の取引をして増える涙は無くなる事だろう。
 きっとこれから海賊達の勝利の宴は騒がしくなる事は間違いない。
 参加するかどうかはそれぞれだったが、依頼の成功を今は喜ぶとしよう。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お待たせしました、トビネコです。
依頼は無事解決、きっとこれから海賊流の勝利の宴が始まるんだろうなぁと思いつつ、無事に皆さんが帰還したことを喜びましょう。
再び、何か依頼が回ってくるかもしれませんが、その時はまたよろしくお願いします。

今回はご参加ありがとうございました。

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