PandoraPartyProject

シナリオ詳細

希望を片手に。
希望を片手に。

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●希望を片手に。
 こんなはずじゃなかった。
 我儘で、生意気で、鈍くさくて。
 あんな妹のことなんて嫌いなはずだった。妹が高熱で寝込んだと聞いたから、意地悪をして仕返ししようと思ったのがいけなかった。
 粗末な布団の中で汗を流し、頬を紅潮させ、いつもの生意気さをちっとも感じさせないほど弱った妹の側に立った瞬間、自分が情けなくなった。
 俺が馬鹿みたいに立ち尽くしていると、妹は重たそうな瞼を開けて俺を見た。
 そして、とても温かくて、とても小さな手で俺の親指を握ったんだ。
 だから、俺は――。

 ――そう簡単に解決できるのなら、君がそう思う前に誰かが解決している。
 そんな自明の事実を理解していながら、人は時にそれを忘れ、自らの抱く英雄願望に溺れてしまう。しかし、溺れ落ちた先で真珠を手にする幸運の持ち主が存在するのもまた事実だった。
 大人達が決して近付こうとしない魔物の巣に足を踏み入れてしまった少年。彼は勇敢であったかもしれないが、無貌でもあった。
 少年が握っている薬草は、彼が英雄であることを証明している。しかし、その後方で細長い眼を紅く光らせる魔物は、彼が愚者であることを証明していた。
 舞台は、枯れ木の密集する森林。夏にはうんざりするほどの生命力を見せつけるこの森も、この寒さの中ではただ静寂に身を委ねるばかり。
 隠れる場所も、逃げる場所もほとんどない枯れ木の森で少年が生き延びられたのは幸か不幸か、彼を追跡する魔物の性質に起因するものだった。
 少年を付け狙う魔物は一言で表せば"極めて巨大な蛇"。鈍い紅眼と丸太のように太く長い体躯が特徴だ。
 性格は嗜虐的で、獲物が衰弱するまでひたすら追いかけ回し、衰弱したところを複数で取り囲み、捕食する。ただの蛇と違って少数の群れを形成するのがこの種の厄介な点だ。
 本来夜行性であるこの魔物達は、今の時期であれば巣穴の中で大人しく眠っているはずであった。だが、少年の求める薬草は温暖な巣穴の中でしか花を咲かせない。彼は眠り耽る魔物の隙間を縫うようにして巣穴の奥にたどり着き、薬草を掴み取った。が、巣穴から出る直前で魔物が目を覚まし、追いかけ回されることになったのだ。
 魔物が執拗に少年を追うのは餌を欲しているというより"眠りの邪魔をした侵入者の徹底駆除"が理由であるが、どちらにせよ少年の未来は変わらない。

「くっ……! はぁっ……!」
 肌を裂くような寒さ。背後から迫りくる恐怖の擦れ音。人の影すら見当たらない孤独感。全てが少年を絶望へと追いやろうとする。
 だが、少年の目から希望の色は消えていなかった。
 いつもはすぐ諦めてしまうのに。何をしても大して長く続かず、すぐに逃げ出してしまうのに。
 自分の"まだ生きたい"という気持ちがそうさせるのか。或いは、右手に握られた温かな薬草があの時のことを思い出させるからなのか……。
 そんなこと、どちらでもいい。
 今はただ、家に帰って妹の笑顔が見たい。
 母さんに思い切り叱られて、父さんに「でも、よくやったぞ」と褒めてもらいたい。
 そして、妹の見ていないところで泣きじゃくりたい――。

●依頼
「とまあ、そんなこんなで村からいなくなった息子を探してほしいということさ」
 ギルドローレットの情報屋、『黒猫の』ショウ(p3n000005)はそう言いながら羊皮紙を片手に腰を下ろした。
 妹のために薬草を探しに行った息子を助けてほしい――。
 依頼の内容は、極めて明確だ。
「実は今回の舞台である森は前にギルドが別件で調査を行ったエリアでね。居場所の目星も、起こるであろうトラブルの目星もある程度はついている」
 そして彼は続けた。

 今回の依頼目的は少年の救出・保護。だが、魔物との交戦が想定される。
 敵はレッドスネークと呼称される蛇型の魔物。数は四匹。
 魔物は撃退・討伐どちらでも良いが、こちらからの逃亡は魔物の性質上望ましくない。
 舞台は冬の森で、時刻は昼、天候は晴れ。邪魔になるものは極めて少ない。
 ただし時間的余裕がないため、可能な限り素早く少年を保護すること。
 
「幻想王都からそれほど遠くない場所での事件だからね、間に合わないってことはないだろうさ」
 ショウは微笑し、頭の後ろで両手を組んだ。
「しかしまあ、妹のために命がけで薬草を取ってこようなんて、中々良い話じゃないか」
 でもね、と彼は付け加える。
「どんな英雄譚も、英雄が死んでしまえば美しき悲劇へと変容する」
 ――つまり、頑張ってくれということさ。
 彼の言葉を最後に、イレギュラーズは依頼の舞台へと赴いた――。

GMコメント

●挨拶
 皆様はじめまして、玉城と申します。
 新米ではありますが尽力いたしますのでよろしくお願いします。
 最初の依頼ということもあって、極めて単純明快な戦闘依頼となっております。

●情報確度
 Aです。想定外の事態は起きません。

●目的
 少年の捜索・保護。
 魔物の撃退or討伐。
 撃退は問題ありませんが、ダメージを与えずに逃亡すると執念深く追ってくるため、敵前逃亡は非推奨です。
 しかし、一定のダメージを与えて撃退すると学習し、当分は人間に危害を加えなくなるでしょう。
 無論、討伐しても問題ありません。

●舞台
 王都から少し離れたところにある森林で、昼・晴れ・微量の積雪。
 ギルド指定の場所へ到着した状態からスタートしますので、簡単な捜索活動を行って少年を探してください。そう遠くない場所にいると想定されます。
 
●敵
・レッドスネーク4匹
 丸太のように太いが、長さも十二分な紅眼の蛇です。真っ昼間でも妖しく光る紅眼は威嚇だけでなく、装飾品としての価値もあります。
 巨大な見た目とは裏腹にかなり慎重な性格をしており、攻めるよりは相手の攻撃を待つなどして隙を狙うことが多いです。
 とはいえ、奇襲行動も目撃されており、攻撃性はそれなりに高いです。

 毒は持っておらず、単純な肉弾戦が繰り広げられるはずですが、狡猾な連携行動が厄介なので分断するのが得策でしょう。
 攻撃パターンは噛み付いたり、締め付けたり、体当たりしたり、のしかかったりと単純ですが、連携させると面倒です。また、巨体に見合った力を持つので注意が必要。
 なお、ある程度弱らせれば逃走を試みるはずです。

 個体としての強さは高めですが、それほど寒さに強いわけではない上に夜行性。さらに眠りから覚めたばかりで動きが鈍いので真面目に戦えば撃退は達成できるでしょう。

●その他
・少年の捜索→少年と接触→敵の撃退or討伐、が一連の流れです。
・戦闘中、少年の防衛も忘れないことが重要です。
・孤立した獲物を狙う習性があるため、集団行動も忘れないほうが良いでしょう。
(当然、彼らの狡猾な習性を逆に利用するという手もあります)

 それでは、皆さんお気軽にご参加ください。

  • 希望を片手に。完了
  • GM名玉城(休止中)
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年02月07日 21時20分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

R.R.(p3p000021)
破滅を滅ぼす者
シャルレィス・スクァリオ(p3p000332)
疾風蒼嵐
郷田 貴道(p3p000401)
人類最古の兵器
野々宮 奈那子(p3p000724)
希望を片手に
ナルミ スミノエ(p3p000959)
渦断つ刃
ラルフ・ザン・ネセサリー(p3p004095)
ゲーム上手
白銀 雪(p3p004124)
銀血
桜咲 珠緒(p3p004426)
司令官

リプレイ


 王都から少し離れた北東地帯にある冬の森で、一匹の白うさぎが口を開けて空の一点を見つめていた。
 視線の先にいるのは、雪景色に馴染む銀髪を靡かせ飛行する銀髪の少女――『銀血』白銀 雪(p3p004124)だった。
 空に浮かぶ少女はじっと地表を見下ろし瞳を動かしていたが、暫くそうした後、彼女は目当てのものを見つけたのか、ふわりと髪を浮かせて下降した。
 さくりと小気味良い音を鳴らして雪上へ着地すると、白うさぎがびくりと飛び跳ね、白雪を周囲に散らかしながら逃げて行った。
「……」
 雪が慌てて逃げるうさぎの背を無表情のまま見つめていると、そこへ今回の依頼仲間であるイレギュラーズが駆け寄り、合流する。
「雪さん、どうだった? 私の勘が正しければ、例の男の子はこっちにいると思うんだ」
純朴さを体現したような清美の青髪を揺らしながら『駆け出し冒険者』シャルレィス・スクァリオ(p3p000332)がやってきてそう言うと、
「……大蛇の痕跡は見つけた。それを追えば結果的に保護対象も見つけられるはず」
 それを聞いた巨躯の男、『ボクサー崩れ』郷田 貴道(p3p000401)は切れ長の目を細め、豪快に笑った。
「HAHAHA、それじゃあ勇敢で無謀なボーイを救いに行くとしようか!」
 口調は軽いが、彼の眼には一切の巫山戯もない。
「何があっても、この身に代えても、絶対助けるんだ! 病気の妹さんに薬草を届ける為にも、絶対助けてあげなくちゃね!」
 シャルレィスは自らが守るべき者の存在を思って手を強く握り、この依頼は絶対に失敗できないと”決意”する。
 それは依頼人のため、あの子のため、そして……自分自身のために。
 三人の様子を尻目に灰色の髪と包帯を纏った姿が異質極まりない『滅びを滅ぼす者』R.R.(p3p000021)が口を開いた。
「俺が破滅の予兆を”聴く”、これで更に具体的な方角が掴めるはずだ……俺の耳元で謡え、そして破滅の来たる方を教えろ……!」
 と、呟き目を閉じた。
(破滅は逃さない。が、破滅も俺を逃しはしない……か)
 そこへ、シャチを二足歩行にしたかのような奇妙にして大型の生物が現れ、
「拙者も助力いたそう」
 と言って目を瞑る二足歩行のシャチ――『渦断つ刃』ナルミ スミノエ(p3p000959)は己の有する反響定位能力を用いて少年を探し出す。彼は見た目こそ不可思議だが性質は実直にして誠実。彼の無駄のない身のこなしからは彼が常日頃より鍛錬を行っていることが窺い知れる。
「私もお手伝いします! あの子の声を聴ければきっと助けられるはず……!」
 ナルミに続き『特異運命座標』野々宮 奈那子(p3p000724)がそう言って耳を澄ます。
 彼女は此度が初の戦場であり、緊張と恐怖を隠せずにはいられない。
(やっぱりこわい……でも、あの子はもっとこわい場所にいるはず。みんな誰かの為に頑張ってるんだ、私だって……!)
 そうして彼らは各自少年の現在位置と蛇の向かう場所を特定する。彼らはすぐさま隊列を組みその地点まで疾走した。

 目的地が近付くとイレギュラーズは臨戦態勢に入る。
 移動の最中、部隊の最後方にいたラルフ・ザン・ネセサリー(p3p004095)の顔には一切の安堵もなかった。
(ここまでは当然にして必然。わざわざ我々が駆り出された意義はその先にある)
 ラルフから滲み出る闘志を感じ取った桜咲 珠緒(p3p004426)は自らの履物と相性の悪い足場を軽快に駆けながら、
(油断しないでください、などと忠告する必要はなさそうですね)


「はぁっ、はぁっ、」
 逃げなければ。逃げなければ。
 耳を通して伝わるのは背後から忍び寄る”人ならざるもの”の這い寄る音。それは狩人によってわざとらしく発せられる死の音。
 だが、暫くすると少年の足が突如杭を打たれたかのように止まる。背後から忍び寄っていた音が消えたのだ。
 今まで自分を追尾していた”恐怖”が姿を消し、冬の森が静寂を取り戻す。
「はぁっ、はぁっ、」
 助かった、の?
 少年は表情を動かすこともできず、ただ呆然とその場に立ち尽くしていた。
 音が再開することはない。その状態が続き、やがて疲弊に呑まれていた少年はつい、その場に小さく蹲ってしまった。油断ではない。限界だったのだ。それが悪魔の誘いと気が付いていても、身体は抗えなかった。
 その瞬間だった。死の音が蘇る。それは先程より激しく、すぐ背後から。
 音に気がついた少年は顔を上げ、振り向いてしまう。そして、認識してしまう。
 自らを呑み込まんと巨大な口を開いた一匹の大蛇の姿を。
「あっ――」
 もうだめだ。
 少年は諦め、目を閉じようとする。そして全てに別れを告げようとした。それが運命なんだと思った。
 ――――だが。
 少年の視界が閉じられることはなかった。
 そんなことは”彼ら”が許さなかった。
 少年は目撃する。自らを呑まんと襲いかかってきた大蛇の顔が軽々と弾かれるのを。
 何処からともなく現れた巨躯の男による痛烈な打撃によって。
 少年の眼前にあるのは大蛇の口ではなく、そんなものよりずっと大きく見える背中を向けた男――貴道だった。
「ヘイ、ボーイ! よく頑張ったな、ナイスガッツ!」
 背後より呆然と見上げる少年の視線に気がついたのか、貴道は勢い良く振り向いたかと思うと、キラリと光る白い歯を見せて言った。
「見てな、ボーイ! ユーの蛮勇は報われる! あとはミー達に任せとけ!」
 しかし暫く頭を仰け反らせ怯んでいた大蛇は貴道の見せた一瞬の隙を狙って、彼の背中に突進を仕掛ける。
 それを見た少年が疲労と冷気により枯れ果てた声で、
「あ、あぶないっ!」
 と叫ぶが、そんな心配など切り捨てるかのようにして、
「それも計算済み、ですぞ!」
 茂みから飛び出したナルミの一太刀が大蛇の首を浅く抉る。さらに、呼応するよう放たれた貴道の追撃によって大蛇は耳を劈くような悲鳴を上げた後、素早く距離を取った。
 そして、蜷局を巻き、舌をちらつかせ、警戒の態勢に入る。
「無事でござりますか!伝えたい事は数あれど、今はこの森を抜けましょうぞ」
 ナルミが言い終えた後、彼が現れたのと同じ方向から女性の声が届く。
「良かった、間に合ったのね!」
 安堵の色を交えた表情で現れた奈那子が言うと、彼女は少年の側までやってきて手をぎゅっと握った。氷のように冷たい手を温めるように、優しく、強く。
「突然、ごめんね」
 奈那子はそう微笑んで手を離す。少年はきょとんとしていて、目を白黒させているが、やがてハッとしたように目を見開いて、
「ダメだよお兄ちゃん達! あいつ、一匹じゃないんだ!」
 そう慌てる少年の周囲には既にイレギュラーズが勢揃いしていて、
「心配することはありません。こちらも一人ではありませんから。さて、藪をつついて蛇を出すとしましょうか」
 柔らかな声色でそう言った珠緒が、さらに続ける。
「良ければ、祈ってください。それが天へ届くまでに、終わらせましょう」
 彼女はそう言って術を用い、離れた茂みへ己が魔力を解き放つ。すると、少年に襲いかかった蛇とは別の個体が悲鳴と共に飛び出し、苛ついたようにイレギュラーズを見つめた。
「では、私も動くとしよう」
 少年の脇にいたラルフが低く呟くと、腰にかけた魔銃を取り、さらに別の茂みへと射撃する。すると同じように悲鳴を上げながら三匹目の蛇が転がり出てきた。
「す、すごい……」
「ボーイ、もう何も恐れる必要はない。なにせここにはヒーローが”九人”も揃っているんだからな」
 貴道のその言葉に少年は、目を大きく開いた。
「お兄ちゃん達……ありがとう」
 少年が呟くと、その手を引いて雪が彼を立ち上がらせた。
「……まだ油断する時じゃない。わたし達はあなたを助けるためにここに来た。だからこそ、言っておく」
 ――――勝手に動かないで。それがどんな時でも、死にたくなければ。
 ”死”という言葉を耳にして、少年は忘れかけていた恐怖を思い出して顔を蒼くするが、そんな少年を見て雪は無表情のまま告げる。
「大丈夫。わたしが守るから」

 そんなやり取りを背後に、シャルレィスは怪訝な面持ちで辺りをうかがっていた。
(おかしいな、もう一匹いるはずなんだけど……)
 イレギュラーズは違和感に気が付き周囲を警戒するが、眼前で横一列に並ぶ三匹以外の気配はない。
「予定通り……俺とラルフが一匹ずつ受け持つ。そして状況に応じてアンタらによる援護も要求する」
 R.R.が低くそう言うと、
「でも、まだ隠れてるのが一匹いるみたい、だね」
 とシャルレィスが不安を隠せない声色で言う。奈那子も口を開く。
「うん。私もずっと音を探っていたけど、全然聴こえない……」
 警戒を強くしても既に見えている大蛇以外の気配はない。
 互いに睨み合いを続けていたが、その静寂をラルフが粉砕する。
「なに、奴らが兵を隠すというのなら我々はその間数の有利が得られるわけだ」
 彼はそう言うと、遠距離より左方の大蛇に向けて魔力による痛撃を撃ち放った。大蛇はその魔弾を諸に食らって大きく仰け反った。
 大蛇は怒りで我を忘れたのかラルフへ食らいつこうと迫りくる。が、ラルフは素早い身のこなしで躱し、その大蛇を誘き寄せた。
「予定通り、こいつは私が引き受けよう」

 ラルフに続いてR.R.も右方にいた大蛇へ痛烈な魔力の一撃をお見舞いし、大蛇を引き離すことに成功する。
 これによって三匹の大蛇は見事に分断される形になった。
「アンタ達に言葉を語る舌があれば、少年を食らわんとする言い分の一つでもあるのだろう。だがアンタ達が破滅をもたらす存在である以上、どんな理由があろうとも慈悲は与えない――――破滅よ、滅びを知れ」
 無論、いくらイレギュラーズといえど一対一で恐るべき大蛇と戦うのは得策ではない。しかし、二人の目的はあくまでも分断とマーク。
 彼らが大蛇を引きつけている間、他のイレギュラーズはそのサポートを行いつつ残された大蛇への集中砲火を行う手筈だ。

 本来なら優秀な兵を大量にかき集めてやっと相手できる魔物を、ラルフとR.R.の両人は徹底的にマークする。蛇が少年を狙おうものならすかさず妨害を行い、大蛇が自らへ襲いかかろうものなら回避を行いつつ距離を取る。
 一向に獲物を仕留められない大蛇はやがてその高い知恵を禄に扱えないほど頭に血を上らせ、暴走を始めた。だが知恵なき獣は彼らの敵ではない。
「破滅は不要だ。世界にも、俺にも、そして少年にも」
「一匹倒せば形勢は決まる、焦る事はない」

 一方で残された大蛇を討伐すべくシャルレィスが剣を構え、流れるように振るっていた。
「私だって、誰かを守ることくらいできるんだ!」
 大蛇の腹を抉る一撃は、厚い鱗が邪魔をして致命傷とはいかずとも苦痛を与えていることは確かだ。
 しかし蛇もただやられるばかりではない。至近距離までやってきたシャルレィスに巻き付きそのまま圧死させてやろうとするが、
「ですが、当然。世界とは思うようにはいかないものです」
 いつでも援護できる位置を保っていた珠緒がそう言って、術式を解放し魔力を放つ。それを食らって隙を見せた大蛇にシャルレィスが斬りかかる。
「まだ油断は禁物です。弱ってきてはいるものの、致命傷には至っていません」
「へへ、油断なんてするもんか! 絶対に守ってみせる、あの子も、皆も!」
 そう話す二人の元へ、マークを行っていたメンバーの補助を行っていた奈那子も加わり、
「皆さん、私もお手伝いします!」
 と言って大蛇の至近へと駆ける。華奢な肉体を利用した俊敏な動きで大蛇の尻尾によるなぎ払いを躱し、獲物を用いて流れるような連続攻撃を叩き込む。
 シャルレィスと珠緒もそれに続いて攻撃する。彼女らによる連携攻撃は凄まじく、これまでは余裕を持って動き回っていた大蛇の動きも鈍り始めていた。
(このままいけば問題なく討伐できますね……)
 珠緒がそう確信した時だった。
 視界の隅で、茂みが揺れる。
 ほんの微かな揺れだ、戦場を知らぬ者なら風のせいだと見逃すほど微かな。
 しかし、彼女はそれが何であるかを即座に理解することとなる――。

 衝撃は、重たい。雪が構えたのは骸の盾。予め彼女が出現を予想し、警戒していなければ少年は既に最後の大蛇の腹にすり潰されていただろう。
 雪に守られた少年は愕然とした表情で、
「お、お姉ちゃん……!」
 と声を震わせるが、
「……わたしが守る。たしかに、言ったはず」
 雪はまるで動じることなくそう言うと、少年の手を引いて素早く後退する。大蛇はそれを見るなり、もう一度飛びかかろうと構えるが、
「おっと、彼らには指一本触れさせませぬぞ!」
 今まで伏兵を警戒し続けていたナルミはすかさずその前に立ちはだかった。間髪いれず大太刀による斬撃を放ち大蛇の鼻先を刮削した。
「では続けて参りますぞ……肉を斬らせて骨を断つ!」
 ナルミは血飛沫を噴出しながら怯んでいる大蛇の隙を逃さない。すかさず懐へと潜り込んで鱗すら破砕するほどの一閃を放った。
 そこへ、加勢に現れた貴道も巨体を活かした痛烈な打撃を加え入れる。
「ミーを忘れてもらっちゃ困るぜ! さあ、さっさと自分達のホームへと帰りな!」。
「ただ縄張りを守っただけなれば、命まで取るのも哀れでござろう。だが、ここで退かぬというのなら……」
 彼らの力を前に勝てないことを悟ったのか、その大蛇は怯えたように森の奥へと消えていった。

「おや、本当に逃げたでござる」
「多分、こっちが終わったからだよ!」
 拍子抜けしたようなナルミ元へ駆け寄りシャルレィスが言った。
 疲弊と達成感を交えた顔つきの彼女の後方には巨大な大蛇が横たわっている。シャルレィス、奈那子、珠緒の三名によって見事一匹の大蛇が仕留められたのだ。
「とてもこわかった……でも、やれたんだね、私達」
「うん、あの子を守ることができて、本当によかった!」
「撃つばかりでしたが、それが最善手ということもあるわけです」
「HAHAHA、ミーも殴ってばかりで拳が痛い!」
「あの鱗まみれの蛇を殴って痛まないほうがおかしいですぞ……」
 和やかな空気に包まれる五名の元に、ラルフとR.R.、そして雪と少年が歩み寄る。
「こちらも終わった。破滅は滅し、俺を憎悪させる者はいない」
「私の任務も完遂だ。結果は一匹討伐、三匹の撃退といったところか」
「後はこの子を村へ送り届けるだけ」
 雪が無表情のままそう言うと、少年は雪から手を離しておずおずとイレギュラーズの前に立った。
「あ、あの、お兄ちゃん達……ありがとうございました。それと、ごめんなさい」
 少年は軽く俯いて言葉に迷っている様子だったが、暫くしてイレギュラーズの目をしっかり見据え、口を開く。
「勝手にこんなところに来て、勝手に危ない目に遭った俺なんかを守ってくれて、嬉しかった。その……みんな、とっても強くて、あたたかくて、かっこよかった」
 そう言い終えた時、少年の頭上から大蛇の紅眼が降ってきた。
「うわあ!?」
 鮮麗な光を放つ眼球を両手で受け止めた少年は尻餅をつく。手で持つというよりは抱きかかえるのがやっとな代物だから当然のことだった。
「例え無謀であろうとも、アンタは妹の破滅に立ち向かった。俺はその意志に敬意を示す。……強く成れ、破滅に抗う為に」
 R.R.はそう言って皆に背を向け一足先に帰路を辿る。
「君は愚かだな、だがやり遂げたのだ、その 未熟さと勇気を私は評価する」
 続いてラルフも振り向くことなくそう告げ、歩みを進める。彼は途中、何かを回顧するように目を瞑ったが、皮肉的な冷笑を浮かべたかと思うと、そのまま姿を消した。
「そいつは、ユーの勇気の証だ。同時に恐怖の象徴でもある。今日を忘れるなよ、ボーイ。ユーにとって、いずれ価値ある日になるはずだからな!」
 貴道も同じく、少年にそう告げると背を向けながら手を振り、その場を去る。
「そなたが今回の件にて一番の勇者で御座る。その慈悲と勇気を大事にしてくだされ」
 それでは拙者もこれにて――。
 ナルミもまた、そう言って王都へと歩み出しいった。
「皆さん先に行ってしまいましたが、村へ護衛するまでが依頼だということを忘れているのでしょうか」
「大丈夫よ、きっと森の入り口で待っててくれてる……はずよね?」
 珠緒と奈那子がそんなやり取りを行っていると、
「あ、あの、お姉ちゃん。これ、どうすれば……」
 少年は困ったように大蛇の紅眼を抱えてシャルレィスを見つめていた。
「それは君のもの。今日一番の勇者は君だもん、ね!」
 シャルレィスがウィンクをしてそう言うと、照れたような表情を見せた。
「あ、でも両手が塞がるのは大変だね。薬草を落としちゃうといけないし、私が持っておくよ!」
「ありがとう、お姉ちゃん! それと……ずっと僕を守ってくれてありがとう、銀髪のお姉ちゃん」
「……それが私の役割だっただけ。でも、次があるなんて思わないで。今後同じようなことがあったのなら、人を頼りなさい」
 少年はその言葉を胸に刻み、イレギュラーズによって村へと送り届けられた。
(余談だが、彼らはその道中で不可解な幸運に幾度か遭遇することとなる)
 こうして、イレギュラーズの依頼は無事完遂された。

 少年は家に帰るなり母にこっぴどく叱られたようだが、父は怒りながらも息子の活躍を認め、終には村中へ自慢して回ったらしい。しかし、イレギュラーズによる忠告を胸に刻んだ少年は二度と慢心しないだろう。
妹の病も少年が持ち帰った薬草によって落ち着き、今ではもう二人で遊び回れる程に回復したとのことだった。

成否

成功

MVP

ラルフ・ザン・ネセサリー(p3p004095)
ゲーム上手

状態異常

なし

あとがき

皆様お疲れ様です、玉城です。
今回のシナリオは自分にとっては初のシナリオ・リプレイでしたが色々と頭を抱える事態に直面してしまうことが多かったです。
特に細かいパフォーマンスに関しては書ききれない部分も多く出てしまい、非常に申し訳ないです。
とはいえ、皆さんの格好良いキャラクターを動かせたのは非常に楽しく、またこのリプレイを通じて色々なことを学ぶことができたので感謝せずにはいられません。
(なお、元々はレッドスネークの目を報酬にしようかと思っていたのですが、討伐数と要求数を考えるとおかしな話になってしまうので、代わりに称号を発行させていただくという形になりました)

では、参加してくださった皆様、本当にありがとうございました。
今後ともシナリオ執筆を続けていきたいと思っていますのでどうぞよろしくお願いします。

PAGETOP