PandoraPartyProject

シナリオ詳細

迷い込んでこんにちは!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 幻想西部に存在する、緑豊かな『西部森林園』に今日も子供達が集まる。
 この土地では魔物が殆ど出る事が無く、現れても人間には無害なスライム的存在しか姿を見せないのだ。
 とはいえそれは森の半ばまでの話。
 町から離れ、人の気配が消えてくれば自然とその境目からモンスターは数を増すのである。

「みなさーん! ちゃんとお弁当は持ってきましたかー!」
「「はーい!!」」

 どうやら子供達は町の学び舎からピクニックに来ていた様だ。
 師の声に元気良い返事をした幼い子供達は背嚢から弁当と水筒、風呂敷やモノによってはテントまで出している子供もいる。狼煙を焚こうとした生徒は速やかに捕縛した。
「せんせー! お菓子は弁当に入れててもいーい!?」
「うふふ、ボブ君。一昨日にだめって先生言ったわよー?」
「せんせー! ロバは弁当にカウントしていーい!?」
「うふふ、ケイティ。カウントって言った時点であなたも駄目なのはわかってたのよね? どこからだしたのそのロバ」
 微笑ましくも子供達と師の仲は良好らしく。それぞれが野外の中で見せる個性に女教師はくすりと笑った。
 ロバに火をかけたり、お菓子をテントにコーティングして要塞・クッキーゼシュテルを作ろうとしている生徒を傍目に女教師は辺りを見回した。
 そうそう害のある魔物が出る事は無いとは言え、やはり周りにアンテナを張る事は重要なのだ。
(……あら?)
 だがそこで。振り返る女教師の目の前をぱんつの詰め込まれたちくわが飛び交う最中、彼女は近くの木陰から見慣れぬ影を見つける。
 小さな。サッカーボール程度の丸い背中だ。
 一瞬魔物かとも思ったが、どうにも気配が違う。見たことの無いシルエットだ。
「せんせー! 見て見てこのお弁当!」
「……ごめんね、少しここで待っててくれる?」

 女教師は恐る恐る生徒達から離れて木陰へと近付いて行く。
 まあるい背中。ふさふさと揺れている様子から、丸みを帯びているのは体毛のせいか。だとしたら相当な毛玉である。
 更に近付く。木陰で何をしているのかと思えば、その小さな生き物はカリカリと石を起用に舌先で削って四角く整えている様だった。
(この子は……!)
『クテュゥ?』
 目が合った。円らな瞳はイエローでヒマワリの様な輪が出来ている。
 ぱちぱち。くりくり。何とも形容し難い愛らしい鳴き声が響く。
 ぶっちゃけ知らない生き物だったが、女教師は暫し観察して害が無いと分かるとその生き物を抱き上げた。
「ねえ、みんな! 見てちょうだいこの……きゃああああああ!!?」
 子供達がいる方へ戻った彼女は悲鳴を挙げ尻餅をついた。
 戻った時、子供達は謎の生き物の群れに囲まれて襲われていたのだった。

●謎の生き物捕獲し隊!
「なのです!」
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)はテーブルに置かれたブドウをぽいっと口に入れる。
 お裾分けにどうです? と差し出されたあなたも一房貰う。
「実は幻想の西部にある町でおかしな生き物? モンスター? が大発生したらしいのですよ
 皆さんには現場へ行って頂いて、これを解決して欲しいのです」
 解決とはどういうことだろう。
 ユリーカはブドウの皮を上手く剥けずに潰してしまい、しゅんとしながらあなたへ向き直る。
「現場はけっこう人目につく公園みたいなところなのです。町長さんとしては謎の……呼びにくいので『ちゅんたろす』って名付けますね?
 このちゅんたろすをあんまり殺さないでなるべく痛くない様に捕獲して欲しいそうなのです。
 割とすばしっこいので手間なのと、武器を見せると集団で襲ってきますが皆さんなら大丈夫だと思うのです!」

 よろしくお願いしますね、そう笑顔で告げたユリーカは今度は綺麗にブドウの皮が剥けたらしかった。

GMコメント

 ちくブレです、今回もよろしくお願いします。

 以下情報。

●情報精度A
 不測の事態は起きません。

●依頼成功条件
 ちゅんたろす×20の捕獲(不殺でKOでも問題ありません)

●謎のナマモノ×20
 ふわっと、もこもこ。四足歩行する小型犬の様ですがどうもよくわからない生き物です。お菓子を持った子供に飛び掛かったりしていました。
 ちょっと尖った金属の尾が生えていますが、もこもこの体毛に隠れていて見えない様です。
 硬い物を見たり、見つけたりすると鋭利な舌でつっついて正方形を作ります。作った時点で満足して次の獲物(?)を求めてぴょんぴょん跳ねて移動します。
 瞳はイエローのヒマワリらしいですが、特に意味はありません。
 ユリーカ命名『ちゅんたろす』。名前の由来はこの生物はどの個体も『クテュ』『ッチュン!』と鳴くからだとか。

 体高は膝下程度までしかないと言う事もあり、回避能力が思ったより高かったりすばしっこいです。
 上手くこれらを捕えて下さい。
 何がきっかけで繁殖したのか不明なので、全て捕まえる事が重要です。

 以上。
 なんだかよく分からない生き物と戯れながら捕獲作戦を遂行して下さい!

  • 迷い込んでこんにちは!完了
  • GM名ちくわブレード(休止中)
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年11月23日 23時50分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

鳶島 津々流(p3p000141)
かそけき花霞
ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
ティバン・イグニス(p3p000458)
色彩を取り戻す者
リーゼロッテ=ブロスフェルト(p3p003929)
リトルリトルウィッチ
ノースポール(p3p004381)
差し伸べる翼
ルア=フォス=ニア(p3p004868)
Hi-ord Wavered
エゼル(p3p005168)
Semibarbaro
エリーナ(p3p005250)
フェアリィフレンド

リプレイ

●こんにちは!
 幻想西部、森林園。
 緑生い茂る中で香る土と草花の風は、木漏れ日の下を歩く者に優しく触れる。
 木々が乱雑に密集しているような僻地や戦場とは違い、ここは地元住民が散歩へと気軽に訪れる事もある穏やかな場所だ。
 いつもならば昼間は子供の姿も多い森林園だが、今現在は入口周辺にロープが張られ接近を禁じられている。
 正体不明のモンスターが現れた為である。その名は、
「ちゅんたろす……! ユリーカさんは可愛い名前を付けるのが上手いねえ」
 思わず口に出す『行く雲に、流るる水に』鳶島 津々流(p3p000141)はその響き渡る言霊に強く惹かれた。
「ちゅんたろすか……ユリーカのセンス凄いな。とりあえず今は全部無傷で捕獲することを目指して頑張ろう」
 『優心の恩寵』ポテト チップ(p3p000294)もまた思わず名前を口に出してしまう。ちゅんたろす。
 そよ風吹く森の中、彼等の視線の先では森の中を自由に飛び跳ねては「ッチュン!」「クテューン!」と鳴いている怪生物が蠢いていた。
 ちゅんたろす。もふもふの小動物らしきこれは、西部森林園に隣する町の町長の話では未確認生物という事だが。
「うーん。別にこの付近特有の生物ではないってことよね。この外見なら近辺には少し知名度ありそうだけど……どこから来たのかしらこの子達」
「奇怪な生き物には慣れてきたつもりだったのじゃが……これまた、面妖なモノが出てきたのぅ」
 近くを通っても特に襲って来る気配はない。『マグ・メル』リーゼロッテ=ブロスフェルト(p3p003929)は手頃な大きさの石や棒切れを集めつつ首を傾げた。
 『Hi-ord Wavered』ルア=フォス=ニア(p3p004868)もそれは同じで、遠巻きに木陰でせっせと小さな鋭い舌でガラス片をカリカリと削っているちゅんたろすを眺めて苦笑する。
 行動も習性も全くよく分からない。
 津々流と『色彩を取り戻す者』ティバン・イグニス(p3p000458)がニアから渡されたテントセットを組んでいる横で、ニアは一人片目を瞑っている。
 森の中を飛び交う一羽のカラスがガァと一鳴き。ニアのファミリアーである。
「石ころ、ガラス、太い木の枝……硬そうな物は大体削ってる感じだのぅ」
「舌で正方形を作るとは変わった習性を持った生き物ですね。金属の尻尾や繁殖した理由が気になりますが、とりあえず捕まえてしまいましょう」
 籠一杯のお菓子を揺らし、『フェアリィフレンド』エリーナ(p3p005250)は小さく手を宙へ伸ばす。
 それと同時に現れたのは彼女のお茶飲み友達とも言える妖精ネリーである。小さく光を撒きながらエリーナのお願いに応じたネリーは元気いっぱいにお菓子を持って、設営された簡易テントへと飛んで行った。
「クテュッ! テューン……?」
 何とも言えぬ鳴き声を上げて、近くに来ていたちゅんたろすがエリーナ達が置いた菓子に気付いた様だ。
 もこもこの体毛に覆われているちゅんたろすは、小さな岩場からぴょいっと跳ぶとタンタン近付いて来る。
「これ、一匹くらい持って帰ったら……だめかな、やっぱり」
 たまにチラッと見える鋼色の細い尻尾が見えて危ないと思いつつも、『Semibarbaro』エゼル(p3p005168)はテントに駆け寄って来たその姿を前にポツリと零す。
 せめて依頼が終わったら一匹くらい……そう思うのも致し方無いというものである。
 生き物なのかも怪しいが、それはともかく。と言いながら急いでテントの設営を手伝う『白金のひとつ星』ノースポール(p3p004381)が仲間達へ声をかけていく。
「1匹も逃さないよう、気をつけていきましょう!」
「「おーー!」」
 こうして彼等のちょっぴり長い一日が始まった。

●つかまっちゃったー!??
 森林園を飛び交う鳥達。
 彼等の視界を借りて眼下を見下ろすのはエリーナとりーぜロッテの二人だ。
「ふははー! この辺のあなた達がつっつきたい物はこの偉大なる魔女のリーゼロッテがもらっていくのよ!」
 魔女(予定)である。
 そんな事を言いながら鴉にも幾つか棒切れだったりゴツゴツした石を拾わせ、自身も大量の同じ物を抱え上げ。
 これぞ悪い魔女……可愛い生き物が欲しがる物をドンドン持って行ってしまう。
「クテュッチューン!」
「チューン! ちゅーん!」
 小鳥なのかネズミなのか子犬の鼻声なのか、何とも形容し難いか細い声で「もってかないでー」とでも言う様にリーゼロッテを追いかけて行った。
「ふはははー! 追い着けるかしらー!」
「クテューン! ……っちゅん!?」
 ズシャァア、と。木の根か何かに蹴っ躓いてもこもこしたちゅんたろすが転がってしまう。
 リーゼロッテの目は一瞬だけもこもこの下にちいちゃい脚がバタバタしているのを捉えた。
 少しだけ罪悪感を覚えるのだった。

(……リーゼロッテさんが何か哀しい眼を……? いえ、それはともかく)
 風に揺れる草葉の下を歩くエリーナはファミリアーを通して見た仲間の様子に?を浮かべつつ、近くの木々にそっと語りかけてみる。
 あのもこもこした生き物の居場所だ。
「ありがとうございます、それとお大事に……?」
 流れ込んで来た断片的情報は、しかし『方向』と『景色』だけある程度は正確だ。
 それだけ分かれば充分だとして離れようする彼女に語りかけてくる声。ふと樹木の根元を見ると正方形に削られた”根”が転がっていた。
 齧られたのだろう。少し同情しながらそれを撫でたエリーナは散らばったちゅんたろすを探してその場を後にした。
(ちょっとだけ悪戯好き、なんでしょうか?)
 よく分からない習性のちゅんたろすに彼女は首を傾げるばかりだった。
「あ……見つけましたよー」
「クテュゥン? ッチュン!」
 発見するもこもこ生物ちゅんたろす。
 エリーナは硬いクッキーとゴツゴツした石を見せ、近くのテントまで誘導していくのだった。

 ────────
 ────
 ──
「ほーらこれが欲しいのでしょう? ほーら……ほーら……」
「チュン?」
 リーゼロッテが怪しさ100%でちゅんたろすに近付いて行く。
 これ見よがしにクッキーを、控えめにジェラートを。腰には紐で括った石を見せつけ、どうにか彼女はちゅんたろすを誘導しようと試みる。
 キョトンとお尻を地面につけてテディベア座りをするちゅんたろす。関節どうなってるんだ。
 もこもこした怪生物はリーゼロッテを暫しパチクリと見つめ、差し出されたクッキーを見やる。もこもこの体毛の中からちょこんと出した鼻先が宙を探る。
「ッチュン!」
 犬と猫の間のような顔で一声鳴いたちゅんたろすは嬉しそうにリーゼロッテへ飛び付いた。
「よしきた至近距離全力攻……じゃなくて捕獲! てい!」
「くてゅーーん!??」
「わっ! ちょっと、逃げないの!」
 手掴みで捕獲しに行く。
 びっくりしたらしいちゅんたろすが一瞬リーゼロッテの腕の中で暴れるが、口元へ差し出されたクッキーをムシャリと齧ると大人しくなった。
 お菓子が好きだと言う予測は当たっていたようだ。
「ふぅ、まずは一匹ね!」
 念の為にもう一枚クッキーを齧らせながら、リーゼロッテはちゅんたろすをテントの方へと連れて行くのだった。

●~一方その頃~
「えい……! まてまてー!」
 仲間が誘導するためのアイテムを並べたり集めている間、エゼルはゴツゴツした拳大の石を投げ。正方形を作っているちゅんたろすを背後から近付いて掬い上げる様に捕まえようとする。
 だが、もこもこした体毛を奮いその手からあっさり抜け出してしまう。妙に素早いらしいその個体は彼女に向き直るとぱたぱた身震いさせた。
 エゼルはムッとした表情になってからもう一度捕まえようとする。
「はぁ、はぁ……この子。もしかして……」
「ッチューン?」
 妙に間延びした鳴き声が響く。
 まさかとは思ったが、間違いない。エゼルは目の前のもこもこに遊ばれていたのだ。それはそれで良い事だが。
「仕方ないなぁ……」
 目立つ物の方が捕まえられるかもしれない。そう思った彼女は懐から引っ張り出した【ブルー・スフィア】を目の前へ転がした。
「ッチュン!」
「つっかまえたー!」
 どうやら綺麗な海の水晶には完全に釣られたようで、スフィアに覆い被さった所を勢い良く抱き上げ捕まえる事が出来た。
「わ……ふわふわ……」
 抱き上げたその体毛は獣特有のザラザラした感覚が殆ど無く、柔らかな毛質はエゼルの手と腕の中でサラサラふわりな感触を弾けさせていた。
 エゼルは暫くそのまま抱き心地を堪能した後でテントへと向かって行った。


●なにここー? おうち!
 津々流は頭の枝角をパキッとひび割れさせ、額に汗を浮かべた。
「ちょっと待ってくれるかなあ……?! あーっ! それ僕の角だから! ちゅんたr……あっ、まってそれダメだからね……!」
「クテュッ、チュン!」
 四方八方から飛び掛かって来るちゅんたろす。
 一匹一匹は精々が超小型犬程度の大きさしかないが、それが五匹を越えてぴょんぴょんしてくるとなると話が変わる。
 なまじ手は出さないと決めていただけに、まさかの不意打ちで押し倒されてしまう。
 ピュルル! とツンツンしてくるちゅんたろすの鋭利な舌が何だか痛い。もこもこの体毛が顔に乗るとそれだけで息が出来なくなる。
(この毛……見た目以上に濃い密度……!)
 その道のプロが見たならば『ポメラニアンの50倍のモフ度』と表現するかもしれない。
「……ほら、それ以上は私の仲間が窒息してしまう。おいで」
「クテュン?」
 助け舟を出す様にポテトがバスケットの中からシフォンケーキを差し出して声をかける。
 振り向くもこもこ。宙を彷徨う様に鼻を動かしている隙に津々流が抜け出して距離を取って行く。
「津々流は大丈夫か?」
「あはは、この子達大きさ以上にちょっとずっしりしてるよね。可愛いけど」
「ああ、そうだな。可愛いが一体どこから来たのやら……そういえばちゅんたろすに話しかけてみると言っていたが、それはどうだったんだ?」
 二人は手持ちのお菓子やクッキーを差し出し、ポテトに至っては朝焼いて来た手作りのマフィンなどをあげて誘導している。
 もきゅもきゅ。もむもむ。ムシャリガブグシャハスタァ。
 可愛らしい音を立てて差し出されたお菓子を食べながら着いて来るナマモノ達を前に、思わずポテトが微笑んでしまう。
「うん、意思の疎通を図っては見たんだけど。どうやらこちらの声が一方的にしか通じてないみたいでねえ、この子達の事は何も」
 ぴょん、とまた飛び付いて来たちゅんたろすを抱き止めながら津々流が頭を振る。
 しかし逆に言えば、イレギュラーズの言葉は分かるという事でもある。ポテトはぷるぷるゼリーを白い体毛を揺らすちゅんたろすに差し出しながら「説得して誘導はできないのか?」と訊ねた。
「…………君も見た通り、どうも僕はこの子達にからかわれやすいみたいでねえ」
「……なるほど、ん?」
 津々流に頷いたポテトは差し出したチョコレートから急にちゅんたろす達が後退りを始めた事に気付いて止まる。
 試しにチョコを近づけると、怯えた様子で下がる。
(チョコが苦手なのか?)
 やはり見た目通り、犬に近い生態なのだろうか。
 ポテトは疑問を浮かべながらも、今度は別のキラキラした硬いキャンディーを出して見せて再び誘導を開始した。
 暫くして、彼女達は設営したテントへと誘き寄せる事が出来た。
 ──
 ────
 ────────
 森の中に敷かれた石やお菓子、硬そうな調理器具。
「ッチュン! ちゅーん!」
「クテュー?」
「クトゥルッ!」
 並べられ、散らされたそれらを追っては齧り、舌で削って正方形にして行くちゅんたろす達。
 中には削ろうとして転がってしまうビー玉を延々と追いかける個体もチラホラ。大体は白い毛並みだが灰色や金色の体毛も駆け回っている。
 彼等は知らない。自分達が誘導されている事に。
 その先にあるのはイレギュラーズ特製の捕獲用テントである。既にそのテント内には数匹のちゅんたろすが思い思いに過ごしており、角ばったテントの天井を見上げてちゅんちゅん鳴いていた。
「かわいいですね~……!」
「ビー玉を追いかけてる姿が愛らしいな、撒いて良かった」
 そんな様子を、ノースポール、ニア、ティバンの三人がテント近くの草むらで隠れ潜み、観察していた。
 正方形にする作業のせいで何とものんびりした光景をずっと眺めているわけであるが、彼等もそれが好ましい状況だと頷く。
「ねぇ、捕まえて来たわよ!」
 そこへ現れるリーゼロッテ。声をかけられたティバンはそちらへ向くと「貸してくれ」と言い、ジタバタしているちゅんたろすを貰い受ける。
「…………」
「クテュ―ゥ??」
 金の瞳がヒマワリの様な模様が広がっているイエローの瞳に映る。
 互いの瞳に映る光が交わり、まるで咲き誇る一輪の花を思わせる美しさを彩って魅せた。
 ……しかし。それはティバンの意図する結果ではなかった。

「どうやら魔眼の効果が無い様だな……」
 ティバンが首を振ったのと、二つあるテントの中がちゅんたろすでいっぱいになるのは同時だった。

●なかま! ともだち! いけにえ!
「か、回収ゥー! 回収じゃ! ちょっと縛っても尻尾はどうにもならん、テントが破られる前に……うを!?」
「ネリー、そっちから顔を出してる子にクッキーを!」
「一匹そちらへ逃げましたエゼルさん!」
「わ、わかった……!」
 バスン、バスン。上手くテントを閉じたは良いものの、その後二つのテントを数人で移動させようとした際にそれは起きる。
 やはりというか、出口の無い空間で暴れ始めたちゅんたろすにテントを内側から金属の尻尾で突き破られようとしていたのである。
 保護結界の及ばぬ破壊。つまりそれらはちゅんたろすの意思によるものだ。
 遂には穴から飛び出してしまうちゅんたろすも出て来て、場は騒然となる。
「~~!」
 エリーナと共にクッキーや石を放り投げる妖精ネリーが身振り手振りでまた一匹脱走したのを示す。
「待って下さい……っ」
 直ぐに捕まえるエリーナ。
 しかし他はそうもいかない、エゼルもまた苦戦していればリーゼロッテも手持ちのお菓子が尽きた事で逃げられそうになっている。
 この状態で逃げ切られてしまったなら、恐らく見失うだろう。ただでさえ小さいのだ。
「ええい、大人しくせぬか!」
「ちゅーーん!」
 持ち上げたテントを片手で支え。胸元でばたつく、もこもこのナマモノを抱き締めたニアが叫ぶ。
 振り返れば6匹ばかり脱走してそれらをティバンや津々流、ポテトがお菓子やビー玉を持って駆け回っていた。
 ニアとエリーナ、自分とリーゼロッテだけではテントを満足に移動させるのは難しい。
 これ以上は持たない。そう結論付けたノースポールが最後の攻勢に出る。

「ちゅっ……ちゅん!」

 変身したノースポール……否、その姿は彼女の因子たる象徴『シマエナガ』そのものであった。
「クテュッ!」
 テントから顔を出していたちゅんたろすが止まる。それは他の個体も同じだった。
 数秒の空白が何だか恐ろしい。
「……ふわふわした姿が仲間に見えたり……しないかな!?」
「えっ? どうなのかしら……?」
 テントに空いた穴へ入って行くノースポールを前に首を傾げるリーゼロッテ。なるほど、ふわふわで意気を統合しようという作戦。
 しかし哀しいかな。恐ろしい事に今のノースポールがちゅんたろすの鳴き声を真似てしまうと……
「ちゅんちゅん! くてゅーん!」
「クテュ!」
「ッチュチュン!」
「クテュゥン!」
 何だか意外に悪くないかもしれない。密かにその場の誰もが思う。
 そして何より、思いの外ちゅんたろす達のウケが良い。何を言っているのか不明だが少なくとも逃走する気が失せたのかテントの中でノースポール共々もみくちゃにされながら大人しくなっていた。
 上から下から横から前から後ろから。ふわもこたっぷりのプレスを受けながら、ノースポールが仲間へ叫ぶ。
「今のうちに、皆さんでもう片方のテントを運んでから来てくださいーっ!!」
「うむ……! 待っておれ!」
 如何に抵抗して逃げようとしても、イレギュラーズが片方に集結すればそれほど苦戦はしない。
 ノースポールがテントから出て来れたのはそれから数分後の馬車の中だった。

● ”何処” から。
 馬車にちゅんたろす20匹を確保した後、念の為に森林園に他にいないか確認しに来たイレギュラーズが辺りを見回す。
「……よし、いない! お仕事完了! 疲れたのよー」
「にしても、こやつらは何なのかのぅ。名状し難き可愛さ……何かの予兆か? のぅ?」
「私も触りたい……」
 御者台から小窓を開けてちゅんたろすをつんつんしているニアに、エゼルが自分も触りたいと近付く。
 馬車の中からはノースポールの「確かに何が原因なんでしょう?」と声が響いて来る。恐らく目的地まで彼女はずっとちゅんたろすと同席する事になるだろう。
 そんな最中、ポテトは風に揺れる森の木々を仰いで小さな声で囁き問いかける。

「……───」

 それは、森だけが知っているちゅんたろす達の秘密。
 ポテトは、依頼が完了した後でギルドへ報告する事になるだろう。新たな依頼の標となるその秘密を。
 この穏やかな森の『下』に何がいるのかを。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

依頼は成功。
皆様が運び込んだちゅんたろすは無事に町長の所へ運ばれ、順を追って領主やその他の機関へと移る様です。
その筈でしたが……どうやら流れが変わったようです。

まずはお疲れ様でしたイレギュラーズの皆様。またのご参加をお待ちしております。

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