PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ミュート・ザ・サイト

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●その声は届かない
「――、……」
 『博愛声義』垂水 公直(p3n000021)は集まったイレギュラーズに言葉をかけようとして、少し考えた。それから手元にあったクリップボードに挟んだ羊皮紙に筆を走らせると、一同に見せるように向け……あろうことか、読み上げる直前に水をかけて文字をにじませてしまった。
「いきなり何だよ。依頼内容を伝えるんじゃないのか」
「……ん、いや。少し君達に考えてみてほしかったんだよ。『相手に言葉が伝わらない』ってどういうことなのかを」
 公直の回りくどい行為に一同は呆れたような態度を見せるが、さりとて彼が無意味な行為を、依頼について伝える場で行うはずもなく。
「というのもだね、今回の敵……というのか『目標物』というのか。それの影響で、戦場になる街では言葉が通じない、伝わらない。文字にして伝えようとしても、書いた端から消えてしまうそうだ」
 これはまた七面倒臭い相手を見つけてきたものである。話は続く。
「詳しい経緯は省こう。別に君等、殺人者がいたら卒業アルバムを眺めるクチじゃないだろ? 卒業アルバム、知らない? そっか。それは脇に置いておくとして。『願いを叶える呪具が』『複数の人間の願いを立て続けに聞いた結果願いを歪め』『街から音と意思疎通の手段を奪った』。この3点だけ覚えておいてほしい。そう言えば、先立って調査に向かった連中の話だとテレパシーの類もダメだったそうだよ」
 意味のわからぬ単語が混じったかも知れないがそれはともかく。人々が意志を伝え合う事ができない環境。『崩れないバベル』はそも、『建てられなければ意味がない』ときた。
 意思疎通ができない人々がどうなるかといえば、まあ。苛立ち、怒り、相争うことだってあろう。度の過ぎた静寂は正気を削り取るだろう。
「そんなこんなで二週間。今の街の治安は最悪極まりない。力があっても音が聞こえないんじゃ不意打ちで死んでも文句は言えないだろうね。君達には呪具『フィフス・ライラック』の破壊を目指して貰いたい、ん、だけど。こいつが願いを叶えた後に壊すには手順を踏む必要があってね……ああ、話が長い? そうだね。あとは資料に纏めよう。あと、まあ、言わなくてもわかると思うけど」
 いくらムカついても殺しだけはご法度だよ、と。口の前に人差し指を立て、彼は告げた。
 これを白カワウソがやるなら可愛げもあるが中年じゃあなあ、とイレギュラーズが思ったかは定かではない。

GMコメント

 最近は音をたてると死ぬのが流行りだそうです。
 あ、舌打ちしても音消えますからね?

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●達成目標
 『フィフス・ライラック』の破壊
 ※達成までの間に市民の殺害を行ってはならない

●フィフス・ライラック
 『5枚の花弁のライラック』を模した、大体50cm立方程度の真鍮細工。
 願い事を聞き届け叶える、といえば聞こえはいいが、多くの人々の意思を統合して歪んで叶えてしまう特性を持つ呪具である。効果範囲は半径5kmほど。
 発動後、『ライラック・ラミナ』を『常に5体』生成し、効果範囲内に待機させる。自らを狙う者がいればこれを迎撃させる。
 所在地は巧妙に隠されている。破壊自体は容易な方。
(願い事の効果については後述)

●ライラック・ラミナ×5(×∞)
 呪具に生成された迎撃システムの一種で、実体をもつ呪い。
 『常に生み出される』ため、撃破後3ターン経過で再生成される。
 ただし、一度再生成される度に初期遭遇地点と『フィフス・ライラック』間の相対位置が10%ずつ縮まっていく特性をもつ。
 おおむね単独行動を行うが、その分個体性能も割と高い。……のだが、攻撃が苛烈な分体力に極めて難有り。
・イクスプロウブ(神遠域・業炎)
・呪香(物特レ:自分を除くレンジ1までの全対象。ダメージ補正小、呪い・猛毒・不運・呪殺)
・イノセンチア(神超遠単・致死毒。ダメージ補正小)

●市民
 呪具により意思伝達手段を奪われ、混乱のさなかにある人々。
 基本的に攻撃的であるが非力なので、【不殺】付きだろうが【無】でない限りは一発カマしたらころんだって死ぬくらい消耗するだろう。
 自分で転んで死ぬならノーカンっちゃノーカンなんだがあんまりよろしくない。

●戦場
 幻想市街地。イレギュラーズの行動範囲は大体半径1km程度に絞られます。
 ライラック・ラミナは個別に巡回しており、遭遇すれば即戦闘になります。
 複数に分かれて殲滅しつつ相対距離を縮めていって呪具の潜伏地点を探るとか。まあそういう戦法が有効でしょう。
○戦場効果「ライラックス・ミュート」
 戦闘終了まで継続。言語伝達、文字伝達、テレパシー等が使用できない。
 毎ターン、ランダムに2名【封印】を被る。持続1ターン、呪いによる延長あり。

  • ミュート・ザ・サイト完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年11月11日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

サンディ・カルタ(p3p000438)
金庫破り
主人=公(p3p000578)
ハム子
善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)
レジーナ・カームバンクル
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
ミニュイ・ラ・シュエット(p3p002537)
救いの翼
レスト・リゾート(p3p003959)
にゃんこツアーコンダクター
藤堂 夕(p3p006645)
小さな太陽
ケドウィン(p3p006698)
不死身のやられ役

リプレイ

●呪われた町
 呪具『フィフス・ライラック』の呪いにつつまれた町へ。
 隣町の酒場前。通り過ぎるネコを横目に『夢色観光旅行』レスト・リゾート(p3p003959)はほうと息をついた。
「願いを叶える呪具『フィフス・ライラック』……誰が作ったのかしらね~?」
 混沌の世には、おかしなモノやとんでもないモノを作り出す人間はごろごろいる。特に練達方面には数え切れないほどにだ。
 レストはそんな不特定な誰かの顔を想像して、もう一度息をついた。
(平凡な魔法使いが長い時間をかけて? それとも、偉大な魔法使いが気まぐれで作ったのかしら……?)
 小鳥を使役し、肩にとまらせる『レジーナ・カームバンクル』善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)。
「あれは伝達を阻害する呪いらしいけれど……元の願いはなんだったのかしらね」
「一体どの様な願いが集まり捻じ曲げられた結果の有様なのやら、だ」
 『あるでんて』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)は悪魔の話を思い出した。
 ファウスト伝説におけるメフィストフェレス。あれは、忠実にみせかけて契約者をたくみに操作しようとする話だったか。
 他にも猿の手なんて話があって、願いを率直に叶えた結果持ち主を不幸にする話だった。
 かの悪魔のごとく『願いへの悪意ある歪曲』なのか。それとも、猿のごとくただの道具が人の願いや機微を理解できなかったのか。
 どちらにせよ、今回の不幸はまだ取り返しのつく不幸のようだ。
(愚痴の一つも零したくなるけど、何言っても独り言なんだよね……)
 『応報の翼』ミニュイ・ラ・シュエット(p3p002537)はこれから行なうであろう物理的な解呪方法をおさらいして、どこか気の重そうな目をした。

「はいっ『ヤバイ』、はいっ『フォローミー』!」
 『特異運命座標』藤堂 夕(p3p006645)が手をへんな形にしてババッと掲げていた。
 言葉が伝わらなきゃハンドサインだとばかりに事前に決めたジェスチャーである。
 呪いの効果『ライラックス・ミュート』は言語、文字、テレパシーによる伝達を封じるものである。広義にとらえればハンドサインも言語伝達に含まれそうな気もしなくもないが、(仮にそうならもっと深刻な状況になっているはずなので)そこまで不安視することはないだろう。
 遠くの仲間と大声で伝達ができないだけであって、近くの仲間とは意志の疎通が可能。そうでなくてもあらかじめ作戦をたてておけば『噛み合ったスタンドプレイ』が出来るはずだ。その点に関しては、きっと問題ないだろう。
 暫くすると、『殺括者』ケドウィン(p3p006698)が酒場から出てきた。
 別に昼間から呑んでいたわけではなく、情報を集めて例の町の詳細な地図を手に入れようと行動していたらしい。
「おかりなさい! どうでした?」
「……まあ、見てくれ」
 ケドウィンが取り出したのは五枚ほどの地図だった。
 どれもなんとなーく同じ町を示しているように見えるが、微妙に位置関係が違ったり変なところが膨らんでいたりものによってはカクカクに書かれていたりした。
 どうやら、郵便屋さんが各家に間違わぬように届けるための図であったり、大きな道だけをフォローした図であったり、上空から見たものをざっくりメモしただけものであるらしい。
 『アニキ!』サンディ・カルタ(p3p000438)と『ハム男』主人=公(p3p000578)が集まってきて、それぞれを見比べる。
「んー……正確な地図とは言えないね」
「出現地点を繋いで計算できるかと思ったんだが……この地図じゃ無理そうだな」
「グー○ルマップとかないんですねー、この世界」
 夕がサンディたちの間から顔をだしてさらっとそんなことを言った。
 正確には、町の道や家の配置を記録した人は居ても、正確な測量をしようって人がいなかったらしい。この辺りはどこも似たようなものである。
 地図をその辺でポンと手に入る環境は、もしかしたら蛇口をひねれば水が出る国くらいに恵まれたことなのかもしれない。
「けど、『地図が使い物にならない』と分かったのはある意味収穫だったな」
「あちこち回って複数手に入れなかったら、このうち一つをアテにして派手に迷ってたかもしれないしね」
「自力で探すしかないとわかればやりようもある。マッピングをしながら歩けばいいだけだしな」
「空を飛べば大体分かりますし、なんとかなりますよ!」
 サンディたちは頷き合い、例の呪われた町へと向かった。

●言葉を奪われた町
 サンディが町に入ってすぐ感じたのは、住民たちからの敵意だった。
 といっても、刃物をもって襲いかかってくるような敵意ではなく、『誰も信じられないから自分に関わってくれるな』という排他的な敵意である。
 家々はカーテンを引き、ドアの鍵を閉め、時折刺すような視線だけを感じる。
 『目は口ほどに物を言う』とはいうが、こうも露骨に物語るものだろうか。
(混乱してて攻撃的……ってのはこういうことか)
 まだこちらの様子をうかがっているだけだが、変な動きをすれば呪いの疑いをかけられ一方的に攻撃されるおそれもある。慎重に行動せねば……。
 サンディは一旦『上から探してみよう』といったジェスチャーをすると、高い跳躍力で家々の屋根によじ登り、更に煙突をよじ登って高所を目指した。
 一方で公はピリピリが限界にきつつある住民たちを刺激しないように町を歩き、ライラック・ラミナの捜索にあたった。
 ライラック・ラミナの側から近寄ってこないのは、おそらくフィフス・ライラックを攻撃する意図をこちらが示していないからだろう。
 住民が攻撃されていないことで、それはなんとなく推察がつく。
(もし呪いを解きたいって気持ちにすら反応するなら、今頃住民の大虐殺になってる筈だしね……そうならなくて本当によかったよ)
 頭上を夕が飛んでいく。
 天嬢不知という盾にサーフボードのように立ち乗りした夕が、空をそれこそサーフィンでもするように滑って飛んでいた。
 極彩色のエネルギーラインが飛行の軌跡を描くさまを、時折住民が無言のまま見つめている。
(その辺をフツーに歩いててくれれば見つけやすいんだけどなー……て、あれ?)
 空中で盾(ボード)を制止させると、夕は大通りをふらふらと移動する板状の物体に目を細めた。
 板のような、花弁のような、よく見れば房のような、何とも言えない物体が町の大通りをジグザグに移動していた。
 資料に示されたライラック・ラミナに間違いない。
 住民たちはそれを確認してはいるが、不気味さにおびえて家に閉じこもっているようだ。
(早速発見! みんなー!)
 夕は『ついてきて』のハンドサインを出すと、皆が見えるように大回りで飛行した。
 その様子を見たケドウィンは町の簡易地図と夕の向かう方向を見比べた。
(大通りの方、か? それとも川のほうか? 行ってみればわかるか)

 ライラック・ラミナは呪いの効果範囲に自動生成されるオプションである。
 意志ある存在というよりは『実態をもつ呪い』であるため、フィフス・ライラックを狙う者を発見、ないしは報告(?)されるまではほぼフリーだ。
 だからこそ隠れるようなことはなく、大雑把に探すのに向いていた。
 レジーナは使役した鳥を町上空に飛ばし、共有五感から目視で捜索。
 一方でレストも町のカラスを使役してレジーナとは逆方向の町を捜索していた。
「…………」
 エクスマリアが空を見上げる。
 ミニュイが空中で反転するようにして、ライラック・ラミナの発見サインを出していた。
 飛行の様子からして先行し、動きを押さえるつもりなのだろう。
 エクスマリアは大量の重火器を頭髪に絡めるようにして装備すると、上空のミニュイを追いかけるかたちで走り出した。
 同じく空からその様子を確認していたレジーナとレストも現場へ急行。
 こうして、2チームに分かれたイレギュラーズたちはそれぞれ1体ずつのライラック・ラミナを発見したのだった。

●ライラック・ラミナ
 公園らしき場所をうろうろしているライラック・ラミナ。
 いち早く発見したミニュイは先手をうって急降下爆撃をしかけた。
 具体的には非戦闘状態にある相手の真上より、高速で垂直降下をかけながら翼を羽ばたかせ、衝撃の青という魔術を行使した。
 攻撃を確認。ミニュイを敵対目標と認識したライラック・ラミナは改めて戦闘態勢にはいった。
 急降下爆撃を終え低空飛行による戦闘状態へ移行するミニュイへ、イノセンチアによる攻撃を開始。
 低空飛行ターンで公園の幹を盾にしたミニュイは直撃をさけたが、翼への被弾は免れなかった。
 強引に押される形で着地。足でブレーキをかけて転倒をふせぐ。
 追撃にと動き出そうとしたライラック・ラミナに、エクスマリアによる砲撃が始まった。
 今度は直撃をうけたライラック・ラミナが派手にあおられ、木の幹にぶつかって回転する。
「……」
 エクスマリアは頭髪を三脚代わりにして地面に突き立て、対物ライフルの狙いをつける。
 ライラックス・ミュートの効果によってエクスマリアに【封印】効果が発生したが、構わず通常射撃。再びライラック・ラミナに命中させる。
 ファンブル値や反応、回避能力を大きく犠牲にしているが、エクスマリアは素の状態で充分に強い高火力(攻撃力×命中)のガンナーである。
 特殊抵抗が利くこともあって、彼女にとって【封印】状態はたいした脅威にならなかった。更に言えば、長く沢山撃つ必要のある長期戦にも強い。
 この先ライラック・ラミナと最大10回は戦うことになるだろうが、その間に通常攻撃だけでしのぐことだって可能だろう。むしろ、単体相手ならそのほうが都合がよいくらいだ。
 そうしている間にレストとレジーナが到着。
(回復……は、まだ必要なさそうね)
 レジーナは場の状況を読んで攻撃姿勢を選択。
 ライラック・ラミナの中距離ラインまで近づくと、『大罪女王の遣い』を発動させた。
 レジーナ自身を模した黒装束の少女が現われ、ライラック・ラミナへと襲いかかる。
 それがよほどつらかったのだろうか。ライラック・ラミナは攻撃対象をレジーナへと変更。回転をかけながら急速に接近をかけてきた。
 狙いは恐らく呪香だろう。ダメージ量はともかくとして、猛毒や不運、更に呪いまでかけられてはたまらない。
 ガード姿勢を抜いて直撃させてきた呪香の異常状態がレジーナに現われる――より早く、リゾートが旅行鞄のロックを外した。
 中から飛び出した癒やしアイテムの数々の中からいい香りのアロマを手に取ると、大胆にもレジーナめがけて投擲した。
 ぱきーんと割れる小瓶。広がる清らかな香りが異常状態をかき消していく。
 レジーナは再び構え、ミニュイもまた構え、二人の攻撃がライラック・ラミナへと集中していく。

 一方こちらはサンディたちのチーム。
 ケドウィンとサンディは勢いよくライラック・ラミナへ突撃。
 サンディの強烈な蹴りがライラック・ラミナへと叩き込まれる。
 派手に蹴り飛ばされたライラック・ラミナが回転しながら地面を滑るのを、ケドウィンはキラーステップによって追撃した。
 息をするように間合いを詰めたケドウィンが、ボウイナイフを差し込み、切り裂いていく。
(今だ――)
 公は連撃を食らったライラック・ラミナの背後へと周り、暗黒剣の構えをとった。
 逆十字型力場発生装置から形成させたエネルギーフィールドが刃のように走り、ライラック・ラミナを更に切り裂いていく。
 そこで、ライラック・ラミナは反撃にでた。
 呪香を振りまくことによる異常状態の散布である。
 直撃を受けたのは公とケドウィン。サンディはギリギリのところで威力を半減させ受け流した。
(呪いや不吉状態か。かなりきついが……)
 ふと見ると、公はかなり余裕そうにしていた。
 そう。公は毒にも不吉にも耐性があるのだ。つらいのは封印だけだが、逆に言えばそれさえ無ければ無理矢理突っ込んでいっても問題が無い。
 公は盾を押しつけ、ライラック・ラミナを大通りの端。壁際まで押し込んでいく。
 『今だ!』と叫んだような気がした。
 戦いの動きでそれがわかった。
 盾をエアボードにして駆けつけた夕は空中で飛行状態を解除。
 腰の後ろにベルトで固定していた天嬢転化のロックを解くと、パッと大量の紙片を周囲に散らした。
 言葉にはならないが、『行け』と唱えたに違いない。
 シャープペンシルを白い紙片に走らせてから、ライラック・ラミナめがけて突きつける。
 描いたネコだかイヌだかわからないキャラクターが召喚され、ライラック・ラミナへと襲いかかった。

●集合
 ライラック・ラミナを撃破した後からは行動力の勝負だった。
 フィフス・ライラックは再生成したライラック・ラミナと5キロ圏内に広く展開していた残りのライラック・ラミナたちをそれぞれ分散して割り当て、サンディたちとエクスマリアたちの2チームへと攻撃させはじめたのだった。
 自分の位置を隠すつもりがないのか、それともそういう思考が回らないのか、再生成されたライラック・ラミナが接近してくる方向を大体把握してひたすらに迫っていけばフィフス・ライラックの位置を推定することは難しくなかった。
 しいて言えばすっ飛んでくるライラック・ラミナが『再生成されたもの』なのか『別の場所から飛んできたもの』なのか微妙にわかりづらいので初めのうちは方角が大雑把になってしまうのがつらかったが、そうはいっても10回くらい戦えば生成ポイントがフィフス・ライラックのポイントとほぼ重なるので、もうパワーによるごり押しが通用した。
 ここに至るまでに活躍できたのは、充填能力によってスタミナを確保できたレスト、夕、レジーナたちであり、彼女たちの役割が回復寄りだったおかげで他の仲間たちの継戦能力は格段にアップした。
 こうしてイレギュラーズたちは度重なる戦闘を乗り越え、ついにフィフス・ライラックのポイントへとたどり着いたのだった。
(全員集合……だな)
(あっちもこっちも、な)
 ケドウィンはナイフを、サンディは靴に仕込んだ飛び出し刃をそれぞれ構え、5枚そろったライラック・ラミナへと突撃した。
 強力な範囲攻撃が可能なライラック・ラミナの弱点があるとすれば、それは至近距離での乱戦だ。
 サンディの蹴りとケドウィンのナイフが刺さり、ライラック・ラミナが反撃の呪香をふりまく。
 そうなると残るライラック・ラミナたちはサンディたちに範囲攻撃を仕掛けようにも必ず味方を巻き込むことになり、仕方なく後退してイノセンチアでちまちま攻撃するしかなくなるのだ。
 そうなればこっちのもの。
 ミニュイは待ってましたとばかりに翼を羽ばたかせ、ディスペアー・ブルーの術を展開した。
 遠距離範囲攻撃の強みは集中砲火を重ねやすいこと。
 それが味方から離れた集団であったならベストなのだ。
 エクスマリアは頭髪の中から回転弾倉式グレネードランチャーを露出。次々に爆弾をシュートすると、ライラック・ラミナたちを爆撃していった。
 そうしている間にレストがサンディたちに駆け寄り、香水の瓶をシュッてしてまわる。
 その直後に【封印】状態に襲われたが、夕が飛ばした無数の紙片がハリセン型に折りたたまれレストにかかっていた【封印】状態をすぱーんと払いのけていく。
 ビッと親指を立てる夕。真似しておっとりと親指をたてて返すレスト。
 崩壊寸前のライラック・ラミナたちが焦りを見せるが、レジーナは状態を立て直す隙など与えずに追撃。『大罪女王の遣い』を再び発動させると、自らを模したシンボルがライラック・ラミナにアタック。破壊していく。『元の世界』ではさぞかし恐ろしいコンボに使われたであろう能力である。
 全てのライラック・ラミナを破壊されたフィフス・ライラック。
 公はそんな呪具にゆっくりと歩み寄ると、ACCをソードモードにして振り上げた。
「    」
 なんと言ったのか、他の誰にもわからない。
 が、やるべきことは皆が知っていた。

 ――それからすぐに、町にかかっていた呪いは解かれ、人々は言葉を取り戻した。
 混乱状態は自ずと解け、人々はやや戸惑いながらも日常へと戻っていく。
 住民の誰かが、去り際のイレギュラーズに感謝の言葉をかけたが。
「……」
 イレギュラーズたちは黙って後ろ手を振った。
 黙ることに、どうやら慣れてしまったらしい。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 代筆担当の黒筆墨汁でございます。
 このたびは大変お待たせしてしまいました。
 代筆とはいえ皆様のサイレントな活躍を描けたことを光栄に思っております。
 もしまた皆様の活躍を描ける機会があれば幸いでございます。
 是非また、PPPの世界でお会いしましょう。
 心よりお待ち申し上げております。

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