PandoraPartyProject

シナリオ詳細

花冠ヴァジニティ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●花嫁のために

『あの霊峰の頂上にある花を飾った花嫁はね、とっても幸せになれるのよ』

 君が窓の向こうの山脈を指差し幸せそうに笑った。その笑顔は花よりきっと綺麗だと思ったけれども言葉には出せず。
 僕は、彼女のためにその花を摘んでこようと心に誓う。

……とはいえ、そんな霊峰に一人で向かうことを考えると、足がすくむ。彼女が言う霊峰とは魑魅魍魎が跋扈する場所だ。だからこそ花嫁のために摘んできたことに価値があるのだとは理解はする。理解はするが、実力というものはいかんせんどうしても現実として目の前に立ち塞がるのだ。
 それでも、彼女の笑顔をみるためには、彼女を世界一幸せな花嫁にするためには必要だ。
 先程から武器をもっては座っての繰り返しで、非情にも時計の針は進んでいく。そんな自らの優柔不断さに嫌気がさすがどうしようもない。
 名家で育ちそれなりに、武術も習った。だけれども僕には武術の才能というものがなかったのだ。
……そうだ、最近ローレットにイレギュラーズたちが集まっていると聞いた。少しくらいは彼らに手伝ってもらっても、問題はないだろう。うん、そうだ、そうにちがいない。最終的に自分で摘めば問題ないのだ。
 後顧の憂いが無くなった僕は立ち上がり、武器を腰に下げるとドアを開ける。太陽の光が目を灼くが、まるでそれは勝利への光のように見えた。
「彼女のために、幸福の花を持ち帰ってみせる!!」
 意気揚々と剣を中天に掲げ、まるで物語の勇者のような足取りで僕はローレットに向かった。


●虚栄心と現実と
「というわけで、お仕事なのです!」
 情報屋ユリーカ・ユリカ(p3n00002)は羽をぴこぴこと揺らしながら、貴方達に近づいてくる。彼女の後ろには恰幅のいい若い青年が身に余るような武器を腰にぶら下げ、汗を高級そうな絹のハンケチで拭っていた。見るからに貴族のボンボンという風体だ。
 ユリーカは貴方達が彼に目をやることに気づくと「この人が今回のお仕事の依頼者のカルロス・ドミニク子爵さんなのです」と紹介する。
 名前を呼ばれた彼はぷるんと立派なお腹をゆらし、うむ。と返事をした。

「では説明をするのですよ」
 
 彼、ドミニク子爵は近日婚約者との結婚式を控えている男性だ。愛しい婚約者殿が子爵領地内にある霊峰に咲く、花嫁が花冠に飾ったら誰よりも幸せになれるという伝承のある花――ヴァジニティを所望したのだ。
 誰よりも彼女を愛する証として、その花を捧げたい。だけれども現実はかくや厳しいもの。ドミニク子爵だけでは、ゴブリンが徘徊するお山の頂上にたどり着くことは難しいだろう。
 そして白羽の矢がたったのがイレギュラーズである貴方達なのだ。

「私は、武術にはその、秀でてはいないが、まあみてくれ。この武器は我が家に伝わる由緒正しき剣で……」
「というわけで、皆さんにはドミニク子爵のお手伝いをしてほしいのです! お山はそこそこの勾配ですから、準備は怠りなくですよ! 住み着いているのは20匹くらいののゴブリンの集団なのです。数は多いのですが、それほど強くはないですし、統率もできていませんので皆さんでしたら余裕だとおもいますのでさっくりやっつけてくださいなのです!」
 由緒正しき剣について語りだそうとしたドミニク子爵を遮るようにユーリカがぱたぱたと手を降りながら貴方達に詳細を伝える。
「無事! お花をゲットしたら、結婚式にも招待してくれるとのことなのです。すっごく豪華ですよぅ! 頑張ってきてくださいね!」

GMコメント

はじめまして、鉄瓶ぬめぬめです。若輩者ですがよろしくおねがいします。
 まずはゴブリン退治です。ちょっぴり情けない子爵さんをたすけてあげてください。
 
●成功条件はゴブリンの退治と花を摘んでくることになります。


●カルロス・ドミニク
 数日後に結婚式を控えた恰幅のいい若者です。
 妻(予定)のために霊峰の頂上に咲く花を摘みにいきたいのですが、魔物がたくさんいるので一人ではいけないので、皆様にお手伝いを求めました。
 優柔不断で気弱で怖がり。一応武装はしていますが役には立ちません。
 本人としては最後に花を摘めたらいいと思ってますが、今後のために言いたいことを言ってもらっても構いません。
 戦闘時には一応戦おうという意思はありますが、足がすくんでしまうようなタイプです。


●敵さん
 カルロスは魑魅魍魎といってますが、ゴブリンさんたちの群れです。
 皆様でしたらそれほど苦もなく倒せると思います。
 登頂に向かう道沿いに20匹ほどいますので、さくっと倒してください。
 ばらばらと統率もなく飛び出してくるので、ペース配分にはお気をつけください

 棍棒で殴るかんじの単純な攻撃しかしてきません。連携もしてきません。

 登頂のお花はたくさんありますので、ご遠慮無くお摘みください。
 白いユリのようなお花になります。

●ロケーション
 わりと勾配のある山道ですのである程度のご準備をしていただくとよいかと思われます。
 時間は昼間。天気は快晴です。
 怪しげな木のむこうからゴブリンさんは飛び出してくるかもしれません。


●事後
 うまく花を摘めたら、結婚式にご招待してくれるようです。
 貴族の結婚式ですのでとても豪華で、食事もとてもおいしいものが振る舞われます。
 ぜひご参加ください。(自由参加です)

  • 花冠ヴァジニティ完了
  • GM名鉄瓶ぬめぬめ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年01月17日 23時30分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アルペストゥス(p3p000029)
煌雷竜
セララ(p3p000273)
魔法騎士
オフェリア(p3p000641)
主無き侍従
ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)
黄昏夢廸
巡理 リイン(p3p000831)
円環の導手
ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)
想星紡ぎ
リョウブ=イサ(p3p002495)
老兵は死せず
艶蕗(p3p002832)
風前の塵

リプレイ

●冒険の始まり
「そうか、君たちが助けて……うぉっほん、僕の従者というわけ……うわぁ!!!ドラゴンだ!!!」
 開口一番情けない姿を晒すカルロスに『煌雷竜』アルペストゥス(p3p000029)は翼の羽毛部分で擽るように、害意の無いことを示した。クルルッっと心なし鳴き声も優しくなっている。
「子爵様、それでは道中の説明しときやす」
 そんな二人(?)の光景を前に『風前の塵』艶蕗(p3p002832 )は黒い髪を掻き分けると説明を始めた。ふと、そんな仕草に郷愁を覚えるが本当にそれが自分のものであるかは定かではない。
(山登りか……運動は苦手なんだよな……)
 勾配を見上げうんざりする気持ちを隠しながら『星を追う者』ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)は心のなかで愚痴る。
(好きな人のために花を……か。その為に無謀なことをしないで頼るってのは、なるほど。理性的ではあるんだろうな)
「はいはい、こんなところで騒いでいたら早速疲れちゃいますよ」
 仕立屋【アンベール】で都合をつけた防寒着に袖を通すようにと促しながら注意する『主無き侍従』オフェリア(p3p000641)の声は優しい。
「ふむ……なるほど、上物の上着だ。ほう、この肩周りの稼働域の仕事の丁寧さは特筆ものだ。激しい動きでも邪魔はしないようだ」
 ふむふむと感心しながらカルロスは通した腕をぐるぐると振り回す。
(愛し合う二人のために働くっていうのはやりがいがあるよね!)
 愛と正義の『魔法騎士』セララ(p3p000273)小学五年生は『魔法少女』だ。現代日本で悪漢を倒し、転移後も世界の平和を守るために尽力している。とはいえティーンエイジの彼女はまだまだ少女だ。ウサギの耳のようなリボンをぴこぴこ揺らしながらピクニックにごきげんである。 
 飲食物類を整理していた『黄昏夢廸』ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)は思う。
(人に頼んでまで成し遂げたいこと、それはきっと愛……なのだろうな。だが可能な限り自分一人で、と思うのは僕と私だけか……?)
 家族(あいするもの)のために。それに少し羨望を覚えていることに首をふり、『私は何も望まない。だから誰も私を望むな』と自分に言い聞かせた。
(初仕事は、二人の輝かしい門出の為、か。悪くないね、力を尽くそう。さあ、ドミニク子爵。君の冒険譚(うた)はどのようにピリオドをうつのだろうか)
 深青の瞳を細め『老いたる鯨鯢(カー・オン)』リョウブ=イサ(p3p002495)はこの若者の未来に思いを馳せる。この旅が佳いものであるよう、この老いぼれ、力を貸そう。
「体力には自信がある方です!死神ですしっ!みんなで頑張って登りきりましょー!」
 『円環の導手』巡理 リイン(p3p000831)は右腕を高く揚げ元気によく通る可愛らしい声で宣言する。さあ、冒険の始まりだ。

●行程と休憩と
「疲れた。まだ頂上はみえんのか?」
 最初の遭遇戦から間もなく、先程まで逃げ回ってはアルペストゥスに回収され、空中に持ち上げられれば大騒ぎしてあわや落ちかけて涙目になっていたカルロスが文句をいう。
 とは言え、実際に勾配はきつく、全員で持ち寄った登山装備がなければ、もっと苦労していただろう。概ね行程は快適という状況だ。艶蕗の鉈もまた、登山道で邪魔をする草枝を効率的に排除することができた。
 前衛のセララとリィンの幼女二人――片方はその年齢は定かではないが大喜びで鉈を振り回す姿は多少……まあまあ倒錯的ではあったが、概ね問題はない。
「はいはい、子爵様。もうすぐやってに、次は走り回って体力を削らんといてくれやすか?」
 艶蕗の言葉にカルロスはぐぬぬと黙る。
「次のお客さんだよ、終われば休憩にしよう」
 油断なく付近を警戒していたリョウブが皆に声をかければ、イレギュラーたちは前衛後衛に別れ、戦闘準備を整えた。木の影から数匹のゴブリンが現れる。
「インストール! いきますよ! リィンちゃん! 悪さをするゴブリンは魔法騎士セララがお仕置きだよ!」
 セララは懐から『騎士』のカードを取り出して、剣を構えゴブリンに向かって走り出した。
 棍棒の攻撃を盾でいなせば、煌めく細剣ががら空きになった胴を一閃する。
「はい! あら事は得意です!」
 鎌を振り上げたリィンは至近まで距離をつめるとその小躯に似合わぬ剛力でもって子鬼を一刀両断した。その鮮血が彼女の白いコートを汚すことはない。
「そう簡単に通しはしませんよ」
 前衛二人のブロックを掻い潜って、最奥にいる最も美味しそうなお肉を狙おうとするゴブリンをオフェリアがマークすれば、リョウブの魔力で編んだロープが動きを阻害する。
「ガァァァウ!!」
「蒼き大気よ、振るえ食い尽くせ!」
 背後からは、ランドウェラとアルペストゥスの青い衝撃波が二対、空を切り裂きゴブリンに炸裂する。その迫力にはカルロスがひっ、っと息を飲んだ。
 艶蕗とウィリアムは顔を見合わせ苦笑すると、今度はおとなしくアルペストゥスの側で動かないカルロスに安心し、平安の世の呪術と星の繋ぎ――アステリズムを思わせるような綿密な術式が螺旋を描き、哀れな犠牲者に向かう。
 そもそも、ゴブリンはそれほど強いわけでもなく、連携もせずに思うがままにバラバラと攻撃してくるだけだ。彼らイレギュラーズが、連携し、効率的に戦えば敵にはならない。あっという間に片付けると、彼らは宣言通り休憩をとることにした。

 敷かれたシートの上にはお菓子やサンドイッチが所狭しと並べられた。
 艶蕗とリィンは、集めてきた小枝で手早く火を熾すと、テキパキとお湯を沸かしてゆく。
「おい、その、軍服の男、えっとランドウェラだったか? お前右腕はどうした」
 戦闘中右腕を庇うような行動を目ざとく見ていたカルロスがランドウェラに話しかける。ランドウェラは少し困ったように眉を歪めて「ちょっとね」と言いよどめば、カルロスは「言いたくないのなら深くは聞かないが、その、大事にな。困っているなら僕の主治医に見てもらっても構わんぞ」と言い捨て、並べられたサンドイッチに手をつける。
(尊大な態度のくせに優しいところもあるのね、やっぱり悪い人ではないみたい)
 オフェリアが凛としたかんばせを緩め微笑む。
「わぁ、そのクッキーおいしそう!」
「そのお弁当も素敵ですよぅ!」
 年少組(?)がきゃっきゃと騒ぎ、ランチタイムが始まった。暖かい淹れたての紅茶が鼻孔を擽る芳香をたてて、ちょっとしたパーティーの様相だ。

「疲れたね、老いぼれには少々この山登りは厄介だよ。休憩は大切だ。でないといざと言う時に全力をだせないからね」
 そんな二人を眩しそうに見つめながらリョウブはカルロスの隣に腰を下ろすとバリトンで響く穏やかな声で話しかけた。
「不得手の把握は大事だよ。事実、君はそれをどう克服するかを考え、補った。さっきも、彼に声をかけていた。君は目ざとく優しい。ツワブキ君もそこは褒めていた。そこが君の長所なんだろうね。そこを伸ばしていけばいいと思うよ」
「ふん、そんなこと当然だ」
 ぷいと顔をそむけるカルロスは耳まで顔が赤い。そんな若人の未熟さをくすぐったくも思い、鯨眸の老人は問いかける。
「君の花嫁の話を聞かせてくれないか?」
「……あの人は僕みたいなでぶっちょにも優しくしてくれる。まあ僕の家は金持ちだからな。それが目当てかもしれん。それでも……たとえ金目当てであったとしても幸せにしてあげたい。だからせめて、ヴァジニティを手にいれたら、少しは気が引けるかなって……みなおしてくれるかなって。少しくらいは僕のこと好きになってくれるかなって……」
「子爵は彼女の幸せも考えているんだね。その気持ち、伝えないなんて勿体ない。結婚式の時くらい、素直になるといい」
きっと笑顔になってくれるさ、と締めればカルロスは少し思い込んだような顔をして、リョウブの言葉を胸に刻み込む。
「見栄をはっちゃダメだよ。大切なのは愛だからね」
 クッキーをかじりながら、セララも笑いながら声をかければ「わかっている!」とカルロスが声を荒げた。

●花冠ヴァジニティ
 その後の行程も序盤にくらべ慣れてきたこともあり、随分と効率的にイレギュラー達はゴブリンを屠っていく。大きな怪我をすることもなく、
「これで、最期、だとは思います」
 じゅうく、にじゅう、と呟いた艶蕗に答えるようにオフェリアは息をつくと頂上を見上げた。
「やっとついたか!」
 甘い花の香りを鼻孔に感じ、ロープを伝い、彼らは頂上に到達する。
「わぁっ……!」
 一面のヴァジニティが蒼空の青と対比するようにましろな花を咲かせている。まるで地上の楽園のようなその花畑に女性陣は感嘆の声を漏らす。
「今度は花嫁さんも連れてきて直接見せてやったらいいんじゃねぇか? きっとこの綺麗な光景は見たいだろうさ」
 息も絶え絶えのカルロスの肩をぽんと叩くとウィリアムは「まあ、あれだ。『お幸せに』って奴だよ」と労う。
「依頼も依頼も貴人やねんやったら当たり前。話からして家長でやしょ? 家と雑色(従者)全員の運命を背負ってる身な訳で、それで独力でとか抜かす方が最低や。寧ろもっと自信持って欲しいもんでやんすな」
 艶蕗がカルロスの背をおしながら、優しい声でここまでできたんやからと、花を摘むことを促した。
 カルロスがポキリと白い花を手折れば、オフェリアが美しい白い絹のハンカチを渡し、容器を手渡す。
「綺麗なまま持ち帰らないと、ですから」
 ランドウェラは美しく咲くヴァジニティを二本手折り、口付けるとその美しさを愛でる。
「あー! だめですー!お花は食べるものじゃないですー!」
 白い花をかじろうとする幼き竜をリィンが注意する声が響いた。彼女もまた大切な友人のために、あのこが幸せであるようにと願いながら、達成した依頼を自慢するために花を手折る。
「あ、ウィリアムさん! そのお花誰にあげるんです?」
 目ざとくこっそりと花を摘むウィリアムをみつけたセララはにしし、と笑い「愛ですか?」と尋ねるが、ウィリアムは「内緒だ! 秘密だ!」と突っぱねた。胸に思い描くあのこのために、と素直に言えるほど、彼は年を重ねてはいない。
「ほら、帰るまでが冒険だぞ!」とランドウェラは騒がしい仲間たちに注意を促した。
 帰りの道中でカルロスが坂を滑り落ちて見事なでんぐりがえりを披露したことは特筆すべき事項であろうか?

●幸せの門出
 結婚式はとても豪勢なものであった。さすがは貴族サマといったところか。贅を尽くした料理の数々。着飾った親類縁者の人々と、多少気後れするものの、彼らは暖かく迎え入れられた。
 招待されたイレギュラーズは遠目からカルロスたちを見つめる。すこし緊張気味のカルロスの隣には色とりどりの花冠をつけた花嫁が幸せそうに笑顔を浮かべている。確かにカルロスの言うとおり美しい花にも勝る笑顔だ。
 そんな姿を見つめながらイレギュラー達は微笑む。

「ねえ!貴方達が、この花をカルロスが詰んでくるのを手伝ってくれたんでしょう?」
 ややあって、挨拶回りにきた花嫁が彼らに声をかけた。その花冠には白い美しい百合の花が誇らしく飾られている。
「ありがとう、あの人すごくわがままだったでしょ? 迷惑はかけてなかった?」
 そう問いかける花嫁に彼らは苦笑しつつも「勇敢でしたよ」と答えた。
「いいのいいの、気を使わなくても。本当に見栄っ張りで、臆病で……かわいい人でしょ? 私ねあの人が本当に大好きなの!」
 幸せそうに惚気ける彼女からは、お金のため、なんて様子は見受けれない。
「別に花がどうしても欲しかったわけじゃないの……って違うのよ。嬉しいわ。すごく嬉しいのよ。ちょっとだけ、無茶をいってみたの。私の事どれだけ好きなのかなって。無理かなって思ってたから貰えた時はすごくびっくりしたの」
 だから、本当にあの人を助けてくれてありがとう。と微笑んだ花嫁は呼び声に答えると踵を返し、一度だけ振り向いた。
「帰ってきたあの人から初めてはっきりと愛してると言われたの。ねえ、貴方達はどんな魔法をつかったのかしらね」
 そう問いかけてから、彼らに背をむけて歩きだした背中にランドウェラは「二人が終わるまで、その愛が続く事を祈ろう」と優しい祈りを捧げた。
「随分と子爵は素直になったようだね」
 とリョウブが微笑む。
「はい!ちゃんと漢をみせたようですね!」
 嬉しそうにリィンが天使のような笑顔で祝福した。その隣でセララは「ふっふっふー。ブーケはボクが貰うのだ!」と野望をたぎらせている。
「ほんにな。怨むみ呪うより、祝い寿ぐ方がずっとずっと上等やもの……」
 賑やかな場に少々気後れしつつも参加した艶蕗が淀んだ瞳を細めた。
「ええ、幸せになってほしいものです」
 満足そうに頷いたオフェリアには少しだけ疲労の色が見える。無理もない。突貫作業でこのわがままな貴族様から花嫁のウェディングドレスの仕立ての仕事が舞い込んだのだ。ギリギリまで徹夜していたのだ。
「あの調子なら花嫁さんも幸せにできるんじゃないかな」
 ウィリアムは眩しそうにそう言った。そうなって欲しいと願いながら。

 
「クォオオオオ!」
 高らかに響く咆吼が聞こえる。カルロスが空を見上げれば、鳥のような竜のような孤影を見つけた。彼にはわかる。あれはオパールの美しい鱗を持つ竜に違いない。
「せっかくだから来てくれたらよかったのに、あのふさふさの毛のさわり心地はセシリアも喜んだだろうに」
 その姿が驚かせると気を使ったのだろう彼を少しだけ寂しく思い、見えてはいないだろうけど、飛び去る影にぶんぶんと大きく手をふった。
 
 その後、セララの描いた式の様子を描いた漫画が新婚夫婦のもとに届く。幸せを形にしたそれが。
「僕はもっと、痩せているはずだ!!」
 カルロスはそう叫ぶとぷるんと大きなお腹を揺らした。

成否

成功

MVP

リョウブ=イサ(p3p002495)
老兵は死せず

状態異常

なし

あとがき

初の依頼のご参加ありがとうございました。
子爵はとても貴方達に感謝しております。思った以上の高待遇とお気遣いをいただけて
登山も恙無く問題なくできました。

子爵に勇気をくれたロマンスグレーのあなたにMVPを。
貴方がいたおかげで彼は素直になれました。


素敵な竜のあなたに称号を
お花は手折る意思のある方に発行しました!
幸せになりますように。

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