PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ファントムナイトドリーム

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 夢を見ている。
 楽しい、騒がしい、賑やかな夢。
 そこでは誰も彼もが笑顔で、夜空に輝く月は青く光っていて、屋根から屋根へと渡したロープに吊るしたランタンが町を煌々と飾っていて。
 楽しい、楽しい、夢を見ている。
 お祭りだ、お祭りだ。
 口々に歌う、人々が歌う。
 何時間、何日経っても沈まない月を、誰も疑わない。
 山の谷間から昇らない太陽を、誰も望まない。
 ここは夢の世界。
 終わりを望まれない、楽しい夢の世界。
 繰り返す10月31日を、ただひたすら無為に過ごす、閉ざされた世界だ。


 ローレットにその情報が入ったのは、ハロウィンを目前に迫ったある日のことだ。
 幻想の西端にある町が今、深いモヤに包まれている、という情報だ。
 そこで今、何が起きているのか。
 それを調査し、詳細を得た『黒猫の』ショウ(p3n00005)は、イレギュラーズを緊急に集めた。
「小さな町が今、眠っている」
 そう切り出した彼は、事情を理解出来ない、と言いたげなイレギュラーズを前に、言葉を続ける。
「厳密に言えば、眠らされているというのが正しい。町を覆う白いモヤにより住民は全員眠り、とある夢を見させられている状態にある」
 それは、
「ハロウィン。大人から子供まで、全員が参加出来るイベント、その夢だ」
 とても楽しい夢なのだそうだ。
 終わってほしくない、永遠に続けばいいのにと、そう願ってしまうほどに。
「それを維持しているのは、五人の魔術師だ。彼らの力によって町は眠り、人々は夢を見る。終わらない夜を繰り返す」
 だが当然、肉体は生きている。
 眠り続ければやがては衰弱し、命を落として腐り果てていくだろう。
 それを看過するほど、幻想に生きる者達は暢気ではない。
「町には魔術師の他、眠り続け夢を見ている人達の思念体が闊歩している。君達が町の領内に入れば、それらは君達を、終わらないパレードに引きずり込もうとするだろう」
 ただし、それらは害意や敵意を持っているわけではない。
 ダメージを追う事はないということだ。
「だが、人は弱い生き物だ。楽をしたい、何も考えず、ただ享楽に身を委ねていたいと、そう思う瞬間は誰しも持っているだろう」
 意志を絡め取られたら、動きは鈍る。
 小さな町とは言え、それを包むだけの実力を持った魔術師と相対するのであれば、そう言う不利は痛い。
「で、だ。肝心の魔術師だが、どうやら町の中心。広場となったそこにいるらしい」
 イメージとしては五芒星。その各頂点に一人ずつ居るという感じだ。
 術の維持のため、彼らはそこから動けない。
「だが町は、今は彼らのテリトリー。視認可能範囲内にいれば、君達に攻撃が届くと思った方がいい」
 思念体の妨害を振り払いつつ、魔術師達を倒して、町に朝を迎えさせる。
 それが今回の依頼だ。
「魔術師の処遇は現場の君達に委ねよう。そもそも何故、今回の事件を起こしたのかもわからないから。
 ……それじゃあ、ハロウィンを楽しむためにも、よろしく頼むよ皆」

GMコメント

 ユズキです。
 ハロウィンだからイベシナだそうかなーと考えていたら閃いたのがこれというのは、いやはや、全く。
 ははは!

●依頼達成条件
 魔術師が施す魔術をぶち破る

●現場
 小さな町。町民の数として100人も居ない位。
 全体的に白いモヤがかかっているが、視界としての問題は無い程度。
 ふよふよと浮遊霊の様な、実体の無い不定形な思念が辺りを漂っている。
 魔術師がいるのはその中央広場。

●思念体
 侵入したイレギュラーズにまとわりついてきますが、ただ彼らはイレギュラーズにも楽しい思いをしてほしいという歓迎をしているだけです。
 振り払うとすぐ消えますが、10秒程でもやもやっと復活します。
 振り払わないと、なんだかこのまま眠ってもいいかな、と思ってしまいます。具体的には防御技術が落ちます。

●魔術師
 数は五人。
 それぞれが赤、青、白、黒、緑のローブを着ていて、色で識別しあっている。
 扱う魔術は、不殺属性の白い光弾を打ち出すのみで、町の中での命中精度がずば抜けて高い。

●その他
 魔術師全員の意識を落とせばモヤは晴れます。
 また、一人落ちる毎に町全体の魔術が弱まります。
 思念体の復活時間が長引いたり、光弾の命中精度が落ちる等です。
 魔術師の生死は成功条件には関係しません。

 以上を踏まえて、よろしくお願いいたしますね。

  • ファントムナイトドリーム完了
  • GM名ユズキ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年11月10日 20時55分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ドラマ・ゲツク(p3p000172)
蒼剣の弟子
ティア・マヤ・ラグレン(p3p000593)
穢翼の死神
イシュトカ=オリフィチエ(p3p001275)
世界の広さを識る者
ノースポール(p3p004381)
差し伸べる翼
ルフト=Y=アルゼンタム(p3p004511)
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
希望の蒼穹
アリス・フィン・アーデルハイド(p3p005015)
煌きのハイドランジア
フェアリ(p3p006381)
名も無き小妖精

リプレイ


 町は今、眠りの中。ただ静かに、幸福な夢を見る。
 その不確かさを表すような、白いモヤのかかるそこへ、イレギュラーズは足を踏み入れた。
 その瞬間、まるで歓迎するように、彼らの回りにとりつくものがある。
 淡い光の球体だ。尾を引いてふわりと行き、体にぶつかって霧の様に散ってまとわりつく。
「随分と不可思議な物語が起こっているのですね」
 それを見て、『蒼剣の弟子』ドラマ・ゲツク(p3p000172)は声を漏らす。
 瞳と同じ赤いローブで身を包み、申し訳ない力の加減でそれを払う。
「……なるほど」
 球体、つまりは思念体が及ぼす効果は、睡眠への耐性として現れた彼女のギフトでは、恐らく防げない。
 そう思う理由は、思念体から来る意識の感覚にある。
「どちらかと言えばこれは、そう……気絶に近いですね」
 気づけば意識が閉ざされる。睡眠とは根本的に違う。そういう事を確信する手応えだ。
「楽しい夢を見させてくれる魔法……」
 そう、これは魔法だ。自然的な欲求からなる睡眠の機能とは違う。
 そう青のローブを着た『希望の蒼穹』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)は理解し、そしてその魔法への検証を行う。
 ドラマの体から、埃を払うようにして、手で球体の軌跡を拭く。
 すると、淡い光は白いモヤへ溶ける様に消える。
 どう? とドラマに問えば、彼女は小さく頷く。
「うん、他の人のも払えるみたい」
 これで、自分以外をフォローできる事が証明された。
「楽しい夢を見せるだけなら良いんだが……」
 ふぅと息を短く吐いたルフト=Y=アルゼンタム(p3p004511)は思う。
 残念だな、と。
 どういう意図で実行したことか、それはまだわからないが、夢の末路が衰弱死という辺り、
「いや、もしくはこれ自体が儀式か、贄としての犠牲か」
 判然としない。
「聞いてみるしかないですね」
 白のローブ、白い髪の『白金のひとつ星』ノースポール(p3p004381)が言う。
 接触後は交渉、まずは声を掛けてみよう、と。
「楽しい夢は素敵ですが……覚めない夢は危険ですから」
 話し合いで済めばいい。何か困り事や事情があるなら助けてもあげたい。
「そうだね」
 肯定する。
 頷いて言う『煌きのハイドランジア』アリス・フィン・アーデルハイド(p3p005015)の格好も、青いローブの姿だ。肩に付く思念体を手で払いながら、再度頷く。
「そうだよ、楽しい夢を見れるのは、きっと悪い事じゃないんだ」
 だって世界には、悲しい事や辛い事がたくさんあるのだから。
 でも、
「それでも、夢はいつか覚めなきゃいけない。夢は一時の安らぎであって、立ち止まり続けるものじゃないから」
 現実逃避の為じゃないと、そう思う。
「彼らの目的、か」
 害も無く、奪うわけでもなく、ただ楽しい夢に沈ませる。
 他のイレギュラーズが首を傾げるのと同じ、『世界の広さを識る者』イシュトカ=オリフィチエ(p3p001275) も少し考えてみる。
 なんなのだろうか。行動を起こすからには理由と、そして求める結果があるはずなのだろうが。
「……終わらない祝祭の夜、か」
「よくわかんないや」
 翼の羽ばたきと少しの浮遊で思念体を払う『穢翼の黒騎士』ティア・マヤ・ラグレン(p3p000593)は、総合した結果、理解するに至らないと首を傾げる。
「永遠にその一日を続けさせるのに、意味はあるのかな?」
『特別な日を繰り返し過ごしたい。そう思い、願う者もきっといるのだろう』
 疑問には、彼女の胸元に下がった十字架が答える。
 そういうものだろうか。
 考えてはみるが、しかし、やはりよくわからない。
「とりあえず、依頼はきっちりこなさないとね」
「そうっすねぇ」
 飛ぶティアの隣で、同じく飛ぶ翅で進む『名も無き小妖精』フェアリ(p3p006381)は、
「おかしな事件っす」
 思う。
 大々的な魔術を使わなくても、ファントムナイトは訪れるのだ。
 それなのに、どうしてわざわざ、こんな事をするのか。
「あたしにはわかんないっす」
 夢より現実。リアルな思い出の方がずっと大切なのに。
「ま、聞いてみるっすかねぇ」
 どうしてなのか、そしてどうするかは、そこからだ。


 町の広場は、石畳で出来ていた。
 建物が円形に、外周を埋めて広がる場所だ。
 その円を、五人の魔術師がそれぞれ、五つの頂点を定めて管理している。
 あぐらに座り、色のついたローブを羽織り、フードを被った魔術師達。
 その姿はまるで、
「……眠っている?」
 意識を落とした様に項垂れ、呼吸する体は規則正しく上下に揺れる。
「私達はローレットのイレギュラーズです。この町を、目覚めさせに来ました」
 ノースポールが言う。
「このままでは、町の人々は衰弱して死んでしまいます。どうか、魔術を解いていただけませんか?」
 問いかけだ。声が届く距離の筈だが、応答は無い。
 やはり、寝ているのか。
 そんな疑問を抱えつつ、アレクシアが続ける。
「ねえ、みんなを楽しませたいなら、一旦魔術を解いてくれないかな?
 このままだとーー」
 一歩。歩み寄る距離に、魔術師が反応した。
 いや、正確には魔術師が、ではない。
「ちょっ、嘘ぉ!?」
 五人の魔術師から光る魔方陣、そこから出現する光弾が、踏み出したアレクシアへ集中する。
「危ない!」
 それを、ノースポールが庇う。
「危ないのは君だ!」
 前へ行くその姿に、イシュトカが即座に動く。
 彼女の背に手を向けて、発動するのは防護の魔術。
 上空から降る浄化の鎧が、ノースポールに装着される。
 その護りが成立すると同時に、五つの光が彼女の体に炸裂。その衝撃に思わず膝を付いた。
「話し合いは拒否か」
 その攻撃の隙に前へ出るルフトは、そう言う声を自分で否定する。
 否、と。
「そもそもの意思を捨てたか」
 術の発動に伴い、意識を切り離したのか、と。
 それなら。
「自分からそうしたんだ。殺されても、文句は言うなよ……!」
 手を握り、開く。
 簡略的な動作で作動させるのは、手のひらに発動を条件つけた神秘の術だ。
 その条件は、
「手始めに吹き飛ばす」
 接触した対象への衝撃付与だ。
 魔術師が五つの頂点を構えているのは情報として知っている。なら、そこから退かせば都合が悪いことが起きるのでは?
 それを確かめる一手でもある。
 だから行った。
 開いた五指を鉤爪の様に曲げ、ぶちこむ。
「ーー!」
 しかしそれは、魔術師に届く前に防がれた。
 透明で、堅い感触を持つ防護障壁に阻まれたのだ。
「ルフトさん、一度退がってください」
 コツン。
 杖の尻で石畳を突き、縦に構えたティアが魔力を満たす。
 横っ飛びに敵の側を離れるルフトを目で確認し、それから防護障壁を見る。
 淡い、膜の様な光だった。
『どうやら球状に囲われているらしいな』
「そっか。じゃあ、丸ごと包んで壊すよ」
 敵の状況を冷静に解説した神様の声に、ティアは頷く。
 見れば、ルフトの攻撃は無効化されたわけではなく、震えて歪む膜へのダメージは通っている。
 つまりは、あれをぶち壊してから直接殴ればいいというわけだ。
「どっちにしろ、加減出来ないし」
 殺さずにも向き不向きがある。
 そしてティアにはその手が無い。だから、撃つ。
 杖から放つオーラの塊は大きく、防護壁に直撃すると共にその範囲を包み込んで襲う。
 ミシミシと、攻撃の音が鳴り響く。
「うぅんと、どうしようか」
 追撃か、回復か。
 判断を悩むのはアリスだ。
 現状況を見るに、ダメージ量としてはノースポール一人が負った形で、他全員は無傷、ということになる。
 イシュトカのサポートでダメージの軽減はあれど、体力の削れ具合は目算でおよそ……。
「半分、いやそれより少ないくらいかな」
 光弾が五発で約半分。耐久のある彼女でそれなら、
「……集中攻撃されたら、それで落ちる人も出る、ね」
 体力の猶予や、防御に回す余力の薄いイレギュラーズは危険だ。
「回復は、よろしくお願いします」
 パタンと、魔術書を両手で挟む様に閉じてドラマは言う。
「先はまだ長いですから」
 回復は十全にして損はない。なにせまだ、一人目なのだ。
 とはいえ、思う。
「残りもこうであるなら、楽かもしれません」
 動かない上に、攻撃方法もわかっている。一人倒すごとに効力の弱まる領域の魔術。
「補給を絶やさなければ、各個撃破で行けるはずです」
 だから、ドラマは接近する。
 自身の高い魔力を書に集中させ、物理的媒介を通して神秘をぶちこみに行くつもりだ。
 だが接近する彼女に、迎撃の光弾、二射目が発動した。
 五つ。
 確かな威力は先程見た。それが、向かう者へと飛ぶ。
「ーー私が、護る!」
 それを、阻みに出るのがアレクシアだ。
 ドラマを追い抜き、前に出ると同時に手を翳し、横に抜く。
「障壁、展開!」
 そうして前面に開くのは、縦長に連なる防護壁だ。
 着弾する光が一撃、二撃と壁にぶつかり、砕かれた壁の合間から三、四、五と追い弾が来る。
「くぅ……!」
 それを、交差させた腕で受け止め、押し通り行く。
「行くよ!」
「行きます」
 そうして敵の眼前、辿り着く二人の攻撃が、球面の壁を叩く。
 アレクシアは聖の光、ドラマは魔力を撃ち込む打撃を入れ、
「こわ、れて!」
 たわむ壁はついに、ばら蒔かれる様に砕けてきらめき、そして消える。
「寝てるみてーなもんっすけど、いいんっすよね」
 その光のきらめきを、フェアリが突き抜けて行く。
 上から大きく振りかぶった妖精の杖を、俯く魔術師の額にコツンと当てる。
「この魔術、止めてもらうっす」
 そうして発動した非殺傷の魔術が、その上体をはね飛ばして落とした。


 一人。
 魔術師を倒した事により、辺りの白いモヤが少し薄れる。
 浮遊する思念体の数は、目に見えるほどの減少は無いが、僅かに動きが鈍った様にも見えた。
 順序や手筈は、今のでいいだろう。
「では次だな、回復を取りつつ、一人一人無力化しよう」
 イシュトカはそう思う。
 一人倒れても変わらない他四人は、目に見える限り変化は無い。
 同じように座り、眠るように維持し、そして、迎撃の光弾が四つだ。
「よろしくお願いします!」
 前に立つのはノースポール。呼び掛けに、アリスが応える。
「了解! お願い、ゲンティウス!」
 発動させる治癒魔術は、両手に掲げる杖から発する。癒しの光でノースポールの傷を塞ぎ、耐える為の力を与えた。
 直撃する。
「行くよ!」
 光弾から次の光弾まで、インターバルがあるのはこれまでで理解できている。
 なので、ノースポールがそれを食い止めた隙を、イレギュラーズが行く。
 防護の壁をぶち破り、非殺傷の術や直接的な打撃で昏倒させる。そういう流れだ。
「楽しい事は好きだけど、今はゴメン!」
「起きた時に、遊んであげるっす」
 アレクシアが思念体を払い突撃し、同じように払ったフェアリは杖を水平に構える。
 そうして杖先から撃ち出した魔力の弾丸を導きに、イレギュラーズは行く。
 体力が減れば回復をし、盾として働ける役割を二人あてがい、削りと不殺をしっかり使い分けて戦った。
 思念体による妨害への対処も忘れず、攻撃の合間に自他への振り払いも完璧だったと言えるだろう。
「色分け作戦は、撹乱には至らなかったようですが」
 識別していると言っても、それで誤魔化せるものでもなかったようだと、最中にドラマは思う。
 そもそも意識を外に向けていないのだから、視界に頼って攻撃してこない時点で効果も薄かったのだろう、と。
「まあ、でも、関係ないよ」
 元々お試しの様な試みだ。事実利にはならずとも、不利にもならない。
 だから関係ないと、ティアのオーラが防護を砕き、
「こいつで最後だ」
 ルフトの蹴りが魔術師の側頭部を叩き、意識を落とした時。
 辺りを包むモヤは晴れ、一日ぶりの陽光を浴びた町並みは、輝きに満ちるのだった。


「聞かせて下さい、どうして今回の事件を起こしたのか」
 ローレットへ事件解決の報せを送り、連行の為の手を待つ間。
 不明瞭だった事件の全容を聞くため、目を開けた魔術師の一人にティアは言葉を作った。
 並べて寝かせた広場の中心。他四人は意識を戻していない。
「町もそのうち、目を覚ますと思います」
 今はまだ静寂の町も、次第に活気が戻るだろう。その前に。
「下手をすれば、三桁の命を奪ったかもしれない。正直に、真意を話せ」
 聞かなければならない。
 ルフトの魔術が込められた瞳を見返した魔術師は、そのまま空を見上げる。
「人が願うからだ。辛いことから逃げたい。楽しい事だけ見ていたい。考えることを放棄したい」
「その声は……」
 カラカラに渇いたしゃがれ声に、イシュトカは息を吐きながら思う事を口にした。
「つまり、悪戯目的の愉快犯でも無ければ、人を楽しませる善意でも無いのかね。それにその消耗では君達だってーー」
 町の衰弱と共に死んでいた筈だ。
 それでは心中と変わりはしない。
「生きにくいまま生きていくのは、生きていると言えるか。それならば夢の一時と共に生き、夢の終わりと共に逝く方がいい」
「……終わりがあるからこそ、素晴らしい一時になる、と。そう思っていました」
 破滅願望に近い、勝手な言葉だ。
 とは言え、大元の考えが根本的に違うと、ノースポールは気付いていた。
「でも貴方達は、終わりを終焉にしたのですね」
「醒めない夢は悪夢と言うか……ほんとに楽しい夢のまま朽ち果てるつもりだったとはね」
 大分予想と違う目的に、アレクシアの顔はしかめられる。
 事件は止めても、魔術師達の考えがこれならば、恐らくはもう二度と表に出される事はないだろう。
 あまりに危険過ぎるからだ。
「ーーなるほど」
 何故かを聞き、術式の正体を知り、考えを理解した。
 聞きたいことは聞けた、だから。
「お説教です」
「いっーー!?」
 ごすっ。
 ドラマの持った魔術書の角が、魔術師の額に落ちる。
「うわ痛そうっすね」
「ええ、痛くしましたからね」
 でも。
「でもそれが、生きている証拠です。反省、してください」
 その言葉に目を丸くした魔術師が、その目を閉じた頃。
 ローレットからの馬車が到着したことによって、犯人達は連行されていく。
 荷車の車輪が石に跳ねて行く音を聞きながら、八人はそれを見送る。
「ん、これ……」
 はぁ、と溜め息と共に落ちたルフトの視線の先、ふわりと風に拐われる白い羽があった。
 それを指で捕まえ、マジマジと眺める。
「綺麗だな……」
「あ、それ、私の羽ですね……良ければ差し上げますよ?」
「えっ、あぁ……うん、ありがたく」
 少し照れつつ、丁寧に懐へその羽をしまう。
 これにて、町の悪夢は終わりだ。
「……ま、実は大がかりな生贄の儀式とかじゃなくて、よかったっすね」
 フェアリの呟きを、吹く風が遠くへ運ぶ。
 あちこちの家から開く扉の音に、目覚めの始まりはあって、
「ーーおはよう」
 長い夜は今、明けた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

依頼への参加ありがとうございます。
敵としてより人間臭さの方が強めだった相手でした。
またの参加をお待ちしてます。

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