シナリオ詳細
リリスガーデン誘拐事件
オープニング
●身代金要求
輝くネオンサインと淫靡な女性の客引きたち。
これはネオフロンティア海洋王国が見せる夜の顔。
中でもひときわ華やかな歓楽街、リリスガーデン。
欲望が渦巻く一方で、それを食い物にする犯罪もまた横行している。
「今回は、その捜査に加わって欲しいそうなんだ」
そう言って、『黒猫の』ショウ(p3n000005)は障子戸の向こうに見える夜景へ振り返った。
ゆったりと海上をゆれるここは屋形船。もとい船型料亭『爆鰻』である。
イレギュラーズたちが依頼説明のために通された畳じきの和室には人数分の御膳が並び、それぞれに上質な重箱が置かれている。
蓋を開ければほくほくとしたウナギの蒲焼きとご飯。いわゆる鰻重である。
ショウの分がないことから察するに、働くイレギュラーズたちへの前金代わりなのだろう。
「といっても歩き回ったり聞き込みをしたりするわけじゃない。
平たく言うと……『囮』さ」
海洋の銀行会社社長ゴウン氏が誘拐された。
先日明朝、事務所に出勤すべくきまった時間に徒歩で家を出たゴウン氏はしかし、夜になっても家に帰ってはこなかった。
翌朝家族の待つ自宅に送られてきたのは暴行を加えられた拘束されたゴウン氏の写真と、身代金の要求であった。
「要求した内容は『トランクケース四台に分けて、同時刻指定したポイントにて受け渡しをせよ。受け渡し人は必ず一人で現われること』というものだった。
けど、こちら側の掴んでる情報はこれだけじゃあない……」
「リリスガーデンの捜査員を舐めるんじゃあないよ」
がらりと襖が開き、恰幅のいい女性が現われる。
「あたしは調査員の一人でこの事件を任されてる。本名じゃあないけど、スーザンって呼びな」
スーザンと名乗った女性はショウと入れ替わるように座敷に座ると、四枚のカードを扇状に広げた。
「犯人グループの調べはついてるんだ。奴らの人数は8人。四箇所にそれぞれ受け渡し人を呼び寄せ、二人がかりで始末したあと金を持って逃げるつもりさ。
まあ典型的な身代金目的の誘拐だね。手口も荒っぽい。
けれど、それができるくらいには戦闘の心得があるってことさ」
虚空に手を翳すスーザン。するとどういうわけか透明なホワイトボードが浮かび上がった。
「聞きな。作戦はこうだ。あんたたちは今から二人組を作って貰う。ペアのうち片方が受け渡し人になって現場へ行く。
その間もう一人は身を隠して犯人グループの襲撃を待つんだ。犯人グループの二人が現われたら、有利を確信しているところを奇襲して倒す。
この場所に殺人罪なんてありゃあしないんだ。手心を加える必要はないよ。吐かせるべき情報だってないんだ。
奴らを突き出す然るべき場所ってやつがあるとするなら、そりゃあ墓ン中以外にないのさ」
一人がおびき寄せ、もう一人が隠れる。
シンプルだが一方にはそれなりの技術や覚悟が要求される内容だ。
「それと……これだけは言っておくよ。あんたたちの役割は囮だ。それは、あんたたちならそれが可能で、命を無駄に捨てるようなことにはならないと確信してるからさ。
他ならぬ、このアタシがね」
期待に応えておくれよ。ここの代金はもう払っちまってるんだ。
スーザンはそう言って、キレイにウィンクをした。
- リリスガーデン誘拐事件完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2018年11月07日 21時55分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●リリスガーデンは夜に咲く
ネオフロンティア海洋王国の夜にこそ花開く島規模の歓楽街リリスガーデンは、その華やかな賑わいに闇が混じり入ることがある。
ネオンサイン豊かな夜景を料亭の窓から眺める『年中ティータイム』Suvia=Westbury(p3p000114)。
トランプカード形状の指令書を受け取ると、座敷を立った。
「誘拐とは何とも物騒な話ですね。安心して夜道を歩けるようにしないといけませんので、わたしもご協力させていただきますの」
ではお先に。スカートの端をつまんで座敷を出て行くSuvia。
ケイド・ルーガル(p3p006483)は小さく手を上げて挨拶を返すと、どこかやりづらそうに頭をかいた。
(今回の仕事、女が多すぎやしないか……いや、言ってる場合じゃないな)
ケイドが口の中の飴玉を噛み砕くと、ミントの味がはじけるように広がった。
一方、『泡沫の夢』シェリー(p3p000008)は指令書に目を通していた。
(ふむ、随分と杜撰な計画ですが。誘拐したとてその後の保証がある訳でもないでしょうに)
「ずさんな計画だなって思ってる? 私もだよ」
『「冒険者」』アミ―リア(p3p001474)がカードの表面をこすって指令内容を消し去ると、そのままポケットへとしまい込んだ。
「ま、こっちとしては楽で助かるけどね。わざわざ生かす必要もないって話だし」
腕っ節にものを言わせて金を得て、どこかへ高飛びしようという計画なのかもしれないが……。やはり、彼女たちの言うように杜撰な計画のように思えた。
人間、誰しもが賢くは無い。万引きをして人生をダメにする者もいれば、高等な詐欺で生き延びる者もいる。逆に言えば、後者のような知能犯が相手では太刀打ちできなかったかもしれない。
ある意味、シンプルでローレット向きの仕事だったのかも、とも。
『穢翼の黒騎士』ティア・マヤ・ラグレン(p3p000593)が先に行っるからと、座敷の外へと出て行った。
がらがらぴしゃりと後ろ手に閉じる引き戸。
「誘拐した挙句に身代金を要求するなんて、随分と自分勝手な連中だね」
『慈悲はいらんだろう。此方を殺すつもりならば容赦する必要はない』
「うん、こういう連中は早めに処理しないとね」
料亭の外では、『絆の手紙』ニーニア・リーカー(p3p002058)と『エブリデイ・フェスティバル』フェスタ・カーニバル(p3p000545)が指令書のカードをじっと見つめていた。
特殊な魔術暗号鍵を用いて文書を浮き出す仕組みになっているようで、こうして見ている限りはただのトランプカードである。
唇を突き出すようにするニーニア。
「大丈夫かなあ。他のチームもうまくいけばいいけど……ん、だめだめ。まずは自分に集中しなきゃだよね」
ぺちぺちと自分の頬を叩いてみせるニーニアに、フェスタがにっこりと笑って返した。
「大丈夫大丈夫。それに、刑事ドラマみたいでカッコイイよ」
「けいじ……?」
「相棒! ってかんじ」
「あいぼー……?」
「二人で頑張ろうね! 鰻重パワーもつけたしっ」
フェスタはカードにキスをして見せて、ぱちんとウィンクした。
にっこりと笑って返すニーニア。
二人はぱちんと手を打ち合って、夜の町へと消えていった。
●アミ―リア&シェリー
歓楽街の十字路はあらゆる人間が交差する。
老若男女。背の高い黒人やらいわおのような鉄騎種やら、見た目人間ぽくない奴もひっきりなしだ。
そんな中に、アミ―リアは立っていた。
誰が誰を見ていても不思議でない人混みのなか、アミ―リアが両手で自分の髪を触った。
一見緊張状態の人間が反射的にとる仕草にも見えるが、テレパスによる指示がなされその中に場所の指示が含まれたことを示す仲間へのサインだ。シェリーはそれを十字路の端で観察していた。
歩き出すアミ―リアにつきそうように小鳥を夜空に飛ばし、ファミリアーで五感を共有する。
そうしていると、アミ―リアをじっと観察している男性がいることに気づいた。
恐らく犯人のうちの一人だろう。
しかしもう一人は見当たらない。二人組で現われるはずだが……。
テレパスによる指示は幾度か行なわれた。慎重さゆえ、到着前に場所を連絡されることをさけようとしているのか。
アミ―リアがそのたびに両手で髪をさわるので、観察していたシェリーに限ったことでなく、第三者的に見ても疑問に思えてくる所である。
歓楽街のあちこちを暫く行ったり来たりさせた後、アミ―リアは人通りも光もない薄暗い裏路地を通るように指定された。
空からの視界は暗く、ファミリアーでの追跡が難しいエリアだ。
その意味するところに気づいて、シェリーは現場へと急いだ。
二重尾行の可能性。
小鳥をずっとアミ―リアが見える場所に移動させ続けていた所か、それとも気配消失を解いて動き出したところを察知されたかは分からないが、少なくともどこかでシェリーの監視に犯人側が気づいた可能性があった。
が、それでも構わない。
犯人グループの『詰め』はあくまで二人組による実力行使。
アミ―リアは挟み撃ちによる襲撃をエーテルロングソードで防御して耐え、シェリーの到着を待っていた。
到着直後に絢爛舞刀で攻撃を開始。あわせるようにアースハンマーで攻撃を重ね、犯人グループのうち一方を追い詰めた。
「ま、ほら! 一回二回死んだ所で変わらないって!」
アミ―リアは倒した犯人を掴んで盾代わりにすると、残るもう一人を脅しつけた。
必死の抵抗を見せる犯人に、退路を塞ぐようにしてシェリーが追撃をしかけた。
「それじゃ、ばいばーい」
聞きようによってはあっさりと。アミ―リアたちは犯人たちの命を奪い去った。
●ティア&Suvia
ホストクラブの客引きがあの手この手で町を賑わす風景は、ここが夜に起きる町だと知らされる。
清濁、というよりは濁の部分だけを集めたような場所ではあるが、そのくせギラギラとした夢に満ちていた。
そんな町の片隅を、ティアは静々と歩いている。
立ち止まり、かがみ込む。
つまみ上げたのは僅かに香る紅茶の茶葉だった。もしティアに鋭い嗅覚があったなら、それが開封されてからまだ新しいものだと判断できたかもしれない。希少な茶葉の種類まで特定できたなら、それはもはや『彼女』との暗号鍵にすらなっただろう。
とはいえ、人間は手持ちのカードで勝負するもの。
ティアは慎重に『意図的な痕跡』をたどり、対象の尾行を継続した。
ティアが追っているのは犯人グループだが、厳密に言えばその犯人グループに指示されて動いているSuviaの足取りである。
トランクケースを手に賑やかな町を歩く。メイド服に裸足というなかなか変わった服装故に人目をひくことはあるが、あらゆるものの行き交う町のこと。一瞬より長く注目されることはそうそうない。
ずっと感じている視線があるとすれば、それはテレパスによって指示を送ってくる犯人のものだろう。
「…………」
Suviaは指示を送ってくる犯人の姿が見えていた。
というより、柱の陰から視線だけを送っては先行する人間がいたので途中から気づいていたというのが正しい。
(もう一人はどこで合流するつもりでしょう……)
少なくとも、Suviaからトランクケースを奪うために二人がかりになるタイミングがあるはずだ。捕らえるべきはそのタイミングで、ティアが駆けつけるべきもそのタイミングである。
「……」
集中を、演技を止めてはならぬ。
(あとで美味しいお茶をいただくため。頑張らせて頂きますの。うふふ……)
目印が小刻みになったことを、ティアはなにかしら重大な意味として受け取っていた。
町の中をぐねぐねと移動するルートが急に引き返すような進路をとったことも気にかかる。
もしや尾行がバレたのだろうか。少なくともSuviaに指示を与えている人間の視界にははいらないようにじっと気配を消していたはずなので、気づく人間がいるとしたら『もう一人』のほうだ。
となれば、Suviaが危ない。
ティアは地面を蹴り、走行速度をあげた。
ショートカットをかけて裏路地へ突入する――と、Suviaが二人組の犯人グループと交戦している姿が目に入った。
挟まれた状態で無理矢理にソーンバインドを叩き込むSuviaの姿。
このままではまずい。ティアは思いを力に変え、ディスペアー・ブルーの魔術を展開。更には死骸盾の魔術を同時展開した。
「伏せて」
Suviaに当たらないように。とはいえ敵の中心にいるのがSuviaなのでどうあっても範囲に入ってしまうので……その間を取る形で、Suviaに回避を呼びかけつつィスペアー・ブルーを放った。
着弾の直前に飛び退くSuvia。
犯人グループもまた似たように飛び退いていく。
偶然なのか必然なのか、逆方向に飛び退いたことでSuviaに攻撃の余裕が生まれた。
同時に、ティアもターンして接近してくる犯人グループに対応すべく漆黒の魔術を展開しながら迎撃にかかった。
結果。
犯人グループのうち一人を抹殺。もう一人に重傷を負わせたものの、逃げられてしまった。
『奴もこれ以上のことはできないだろう。結果としては十分だ』
「そうだね」
怪我をした傷口を押さえ振り向くと、Suviaが深く息をついた。
「さて、お茶にしましょうか」
●フェスタ&ニーニア
どこかだぼっとした防寒着に身を包み、フェスタはトランクケースを引いて歩く。
もし暗闇に目をこらして見るものがあったなら、そして高い視力をもっていたなら、彼女の足下にオレンジ色のインクが数滴ずつ垂れていることがわかるだろう。
ペンにインクを補充するためのスポイトを服の中に隠し、フェスタが目印代わりに落としているものだ。
フェスタが決めたサインはそれだけではない。
道を曲がる際にはトランクケースを上げたり肩を押さえたりして、遠くから自分を追ってきているニーニアにサインを送っていた。
一方のニーニアは、フェスタの出すサインをじっと見つめ、物陰から物陰へと尾行していく。
このときの尾行スキルは対象に気づかれずに追跡する技術なので微妙に用途が異なるが、あながち無関係とも言えない技術だ。
このとき気付かれてはいけないのは、フェスタではなく彼女にテレパスで指示を送る犯人のほうだ。
更に言うなら……。
(フェスタちゃんを尾行してるのは僕だけじゃないはず。だって、犯人グループも二人組だもんね)
あらかじめ受け渡し場所を定めて待ち伏せするなら、最初からその場所に来させれば良い話である。
一度分散させ、安全を確保しようとするなら、この人通りの多い町をあっちこっち移動させゆさぶりをかけるほうが得策。そして無防備になったと考えた段階で取り囲むのだ。
ニーニアは町の地図を頭に思い浮かべてみた。才能ゆえというかギフト能力ゆえ、この町の恐ろしくごちゃごちゃした地図が浮かんでくる。
少なくとも人通りの多い場所で襲撃はしかけない。
となれば……。
(狙い目は、この先……の空き地、かな)
ニーニアは誰にも見られていないのを確認して、あえてゆっくりとフェスタを追跡した。
「おっと、ここが終点だ」
フェスタの前に現われたのはナイフを持った男だった。
この世界のことである。果物ナイフのような小さい刃物ではない。人の首を大根のように切り落とせるコンバットナイフだ。
それまでテレパスによって指示を送っていた男が、ついに堂々と姿を現わしたのである。
つまりそれは……。
「ケースの中身を置いていきな……と言いたいが」
「顔を知られてるしな。悪いが死んで貰うぜ」
ずっと後ろの物陰から、拳銃を持った男が姿を見せる。
「そっか。しょーがない」
防寒着の下から手を上げる。
降参の姿勢――のように見えた両腕には、コンパクトに畳まれたシールドが装着されていた。
「響け、【THE BLUE】!」
左右のシールドが同時展開。先端から刃を露出させ、すぐ眼前の男めがけて振り込む。
THE BLUEから放たれた殺気の波動を、ナイフの男は受け流した。
「空振りだったな!」
男はナイフを振り込むが……フェスタの表情には余裕があった。
「そうでもないよ」
もう一方の盾CODE REDでナイフを受けつつ、自らの後頭部を狙う拳銃の気配を……あえてスルーした。
なぜなら、拳銃を突き出す男の手首に、真っ黒なレターカードが突き刺さったからだ。
「ぐわっ!?」
たちまち猛毒におかされる男。
闇からぬっと飛び出してきたニーニアが、裁判官のハンマーのように加工された消印スタンプを叩き込む。
ぺっこんというシャチハタめいた小気味よい音と共に、男の額に日付とニーニア・リーカーの文字がスタンプされる。
「二人組か――」
「もう遅いっ!」
フェスタのシールドが再び変形。ナックルモードに切り替えると、ナイフの男を猛烈なラッシュパンチを叩き込んだ。
フェスタとニーニアのコンビ。
無事、犯人グループの撃滅に成功。
●メートヒェン&ケイド
足の美しいメイドが歓楽街を歩いている。
手には大きなトランクケース。
時折十字路に立ち止まっては、周囲を見回していた。
メートヒェン。彼女はテレパスで送られた指示通りに路地を進み、歓楽街をジグザグにうろうろと歩かされていた。
だがもし、見ている者に鋭い視覚能力があったなら、メートヒェンの手からたびたびつや消しされた黒いビーズが落ちていることに気づいただろう。
それが地面をはずむ音を、鋭い聴覚を持っていたなら気づいたことだろう。
だが全ては雑踏の中に消え、メートヒェンもまた雑踏の中へ紛れていく。
客引きの声が、ストリートミュージシャンの演奏が、砂浜をなでるさざなみのように全てを洗い流す。
メートヒェンの気配は夜の町の中に溶けて消えていく……ように、思えた。
(相手はビーズの仕込みには気づいてないみたい、だね。さて、これから私をどこへ連れて行くつもりかな……?)
広く賑やかな町の中、メートヒェンの気配を常に察知し続けている人間が少なくとも二人いた。
ひとりは、彼女にテレパスで指示を送っている誘拐犯。
もうひとりは、表から一本はずれた裏路地を、メートヒェンと平行するように進むケイドであった。
音に事欠かぬ歓楽街で、エコーロケーションを働かせてメートヒェンの位置を確認しているのだ。
時には自らの噛み砕く飴玉の音や、足踏みの音、それらを反響させて地形や人の動きを観察する。
ビーズの落ちる音が聞こえることは、残念ながらなかった。それを察知するための聴力が欲しい……とは思ったが、今回の場合はメートヒェンの位置と周辺人物の動きを追えているのでよしとした。ここまで『見えて』いればビーズの合図は必要ない。
(音で追いかける作戦は我ながら上手くやれたな……)
エコーロケーションでメートヒェンらしき物体をつねに補足し続ける作戦。これは遠くから見て追いかけるよりも、目印を観察して追跡するよりも、ずっと効果的な作戦であったようだ。
特にそれを実感したのは『メートヒェンを追いかける存在』と『メートヒェンを先導する存在』の二人を確認した時だった。
メートヒェンが他に護衛をつけていないか、ないしは途中で逃げ出してしまわないかを確認するために、テレパスで先導する係と後ろからこっそりついていく係に分かれていたのだ。
ケイドはそのすべてに気づかれぬよう、見えない場所から耳だけで尾行を続けた。
「ここが終点かな?」
小首を傾げるメートヒェン。
伸縮ロッドやナイフを装備した男たちが、彼女が丸腰であることを確認して近づいてくる。
「死にたくなかったら大人しくしてな」
「いい子にしてたら生かして返してやるからよ」
その言葉になんの保証もないことは、状況からわかる。
あんなにまばゆく光る歓楽街も、裏へ入っていけばこんなにも真っ暗だ。
文字通り、リリスガーデンの暗部。男たちはメートヒェンを前後から取り囲むように立ち、にやりと笑った――その時である。
「分かった。いい子にするよ――なんて」
トランクケースを蹴りつける。
ロックが開き、中身をぶちまけながら飛ぶケース。
そんなものを注目しないわけがなく、犯人グループは咄嗟に手を伸ばした。
大きすぎる隙。
その隙を、ケイドのスナイパーライフルが打ち抜いた。
「がっ!?」
後頭部を打ち抜かれて崩れ落ちる犯人。
真っ暗な中でどうやって狙いを定めたのか? ここまでのいきさつを知っている読者諸兄にはもうおわかりだろう。
「『丸見え』なんだよ……」
がり、とレモン味のキャンディを噛み砕くケイド。彼はエコーロケーションによって犯人の位置と障害物の位置は全て把握していたのだ。
返す刀ならぬ返す脚でメートヒェンのハイキックが炸裂。
ナイフを持っていた犯人の側頭部を打ち抜き、見事に絶命させた。
「ごめんね。武器は持っているんだよ」
靴底をタンと慣らして、メートヒェンは片眉を上げた。
この後、誘拐されたゴウン氏は無事救助され、犯人グループもみな逮捕された。
事件の裏にローレットが活躍したことを、リリスガーデンの人々は知っている
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
――mission complete!
GMコメント
【依頼概要】
ひとりは身代金の受け渡し人に扮し、もうひとりは隠れて奇襲を狙う。
二人一組でこなす4件同時作戦です。
依頼者側も半数くらいの損失は覚悟しているので、成功条件は『2件以上の成功』となります。
【受渡担当・隠密担当】
まずはPCを『受渡担当』『隠密担当』に分けましょう。4人ずつぱっきりと。
勿論基準は向き不向きです。
ペアは「ぜひこの人と組みたい!」というのがなければ、スーザンさんに任せてみてもOKです。スーザンさんは人を見る目があるのでいい具合に振り分けてくれるはずです。
受渡担当は至近距離で囲まれた状態から戦闘にパッとうつる準備を。
隠密担当はしっかり隠れて移動する準備をしてください。
スーザンの話によると、受渡担当は特定の目印とトランクケースを持って現場へ行き、そこへテレパスを使った念話などを使って移動の指示を出されます。
ですので、隠密担当は一箇所でじっとするのではなくこっそりついて行くのが基本になります。(なので気配遮断だけだとキビシイかもです)
【犯人グループ】
二人組の犯人グループが現われ、受渡担当へ襲いかかってくるでしょう。
そこへ隠密担当が奇襲をかけ、がっつりと戦闘を行ない二人組を倒します。
倒せなさそうな場合は即撤退してください。そのチームは失敗扱いとなります。
奇襲が成功した場合は、うまくいった度合いに応じて犯人グループ二人組にファンブル値が加算されます。
ファンブル値アップってのはそれはもうえげつないことなので、うまくすればとても有利になることでしょう。
【余談】
相談することなくなってきたなーと思ったら鰻重を食べててください。
デフォルトが特上なせいで特上とか並みたいな概念が無い高級料亭の鰻重ですのでとっても美味しいはずです。
いや、最初っから食べててもいいですよ、もちろん。
【アドリブ度】
ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。
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