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シナリオ詳細

妄想魔王と勇者の戦い

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●妄想具現化装置モウソーン
 その遺跡と装置は、あるひっそりとした山間の谷底に存在していた。
 複雑な迷宮を抜け、その装置を見つけたことを喜んだ老冒険者は、早速装置を持ち帰って解析を始めた。
 初めて見る機構、複雑な回路――何年も掛けて解析を続けた結果、ついにその使用方法を見つけたのだ。
「いよいよですね先生」
 弟子が緊張を押し殺し言う。
「うむ、では行くとしよう――」
 老冒険者――先生は意を決してその装置を被り、ベッドに身体を横たえた。
「すたぁと、でりうじょん!」
 魔法の言葉を叫ぶと装置が明滅し――そして、先生は意識を失った。
「――! 先生!? どうしたんですか!? 先生!!」
 慌てる弟子の側にある装置をモニタしていた魔法ヴィジョンに、突如映像が映り込む。そこに映る影――ローブを纏う男の姿は――先生だ!
「ふはははは! ついに、ついにやったぞ!
 私は全能なる力を手に入れたぞー!!」
「先生!? 何を言っているのです!? そこは何処ですか!?」
「無駄だ、弟子よ。私は心ゆくまで堪能し、この世界を支配するのだー!
 ――ふふふ、私を止めたいか?
 ならば、残る八基のモウソーンを被る勇者を見つけて見せるが良い!
 私は逃げも隠れもしない! 勇者など返り討ちにしてくれるわー! がはははー!」
 高笑いを上げる先生の映像を前に、悔しそうに拳を握る弟子。
「先生――! 貴方をきっとこの装置から救い出してみせる!!」
 そういって、弟子は残る八基の装置を手に旅立った。
 勇者、英雄、その他諸々が集うというローレットを目指して――


「つまりどういうこと?」
 話を聞いたイレギュラーズが首を傾げる。
「遺跡から見つかった装置の名はモウソーン。被った人の眠れる欲求を満たす魔法アイテムね。
 いろいろ調査した結果、先生と呼ばれる人物は『魔王』として勇者と戦い、そして勝つことが夢だったみたいね」
「頭のおかしい爺さん?」
 鋭いイレギュラーズの突っ込みに『黒耀の夢』リリィ=クロハネ(p3n000023)が面白可笑しく笑う。
「まあそう言わないの。
 装置は人の生命力を喰らう、呪われたアイテムのようね。
 放っておけば先生は死んでしまうでしょうけど、お弟子さんはそうしたくは無いみたいね。
 先生を助けるためにローレットへと協力を頼みに来たわ」
 用意された八基のモウソーン。それを被るに足る勇者、英雄、その他諸々を用意して欲しいと言うことだ。
「モウソーンを被って訪れる世界は意思と妄想力が全て。
 魔王を倒すにたる、勇者を形作る妄想力が試されるわ。
 中途半端な勇者像では、長年魔王になることを夢見てきた先生には勝てないでしょうね」
「それ、負けるとどうなるんだ?」
 素朴な疑問にリリィがピシャリと答える。
「殺されれば――現実でも死ぬわね。
 ……ああ、でも安心して頂戴、死ぬ前に装置の緊急脱出ボタンを押すから平気よ」
 そんなボタンがあるなら先生のも押せば良いのに。当然の疑問だが、そのボタンは後から弟子によって付けられた物だ。都合が良いがそう言う物なのだ。
「死ぬ前に助けるけれど、脳が痛みを錯覚して、身体は内部からボロボロにされる可能性があるわ。
 とても危険な戦いになる。油断せずに勇者になりきって頂戴ね」
 いつもの依頼書を受け取ったイレギュラーズは、さて勇者と言われてもな……と頭を捻った。
 長年夢見た魔王に挑む、最強の勇者パーティー。
 果たしてモウソーンは、どんな像を結ぶのだろうか――

GMコメント

 こんにちは。澤見夜行(さわみ・やこう)です。
 魔王は強敵ですが、どうか安心してください。
 コメディ、ギャグに突き抜けたシナリオです。
 さぁ、勇者の名乗りをあげろ!

●依頼達成条件
 魔王先生を勇者パワーで打ち負かす

■失敗条件
 勇者パワーが足らず魔王先生に打ち負かされる

●情報確度
 情報確度なんて気にするな!
 不測の事態も勇者パワーで乗り切るんだ!

●勇者パワー
 貴方の妄想力がすべて力となって具現化する!
 勇者が、勇者たる、勇者だけが持つ熱い想いと力を具現化させろ!
 あ、勇者じゃないという方達は、勇者のパーティーメンバーとして力を奮いましょう。次なる勇者になれるかもしれません。

■参考例
 ・勇者名乗り
 魔王と勇者の戦いは正々堂々名乗りを上げて、魔王に剣を突きつけるとこから始まります。
 悪の権化魔王に対する熱い想いをぶつけましょう。

 ・勇者奥義
 魔王と勇者の戦いに奥義は必要不可欠!
 渾身の力を籠めた最大級の奥義を叩きつけましょう。
 数が多いと力が分散しちゃうのでほどほどにね!

 ・勇者の優しさ
 時に魔王を許す勇者の心が必要です。
 暴力だけでは解決しないこともあるのです。慈愛に満ちた優しきメッセージを送りましょう。

 ・その他
 勇者っぽいことならきっと大丈夫です!

●戦闘地域
 モウソーンによって具現化した世界になります。
 扉を開ければすぐそこは魔王の玉座になります。
 玉座は広く戦闘に支障はでないでしょう。あとモウソーンがソレっぽく演出してくれます。

 有用そうなスキルやアイテムは色々盛られて演出されるかもしれません。
 なお、判定はちょっぴり厳しめです。パンドラもごりごり削られるでしょう。ご注意ください。

 皆様の素晴らしいプレイングをお待ちしています。
 宜しくお願いいたします。

  • 妄想魔王と勇者の戦い完了
  • GM名澤見夜行
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年11月10日 20時55分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

セララ(p3p000273)
魔法騎士
ヨハナ・ゲールマン・ハラタ(p3p000638)
自称未来人
清水 洸汰(p3p000845)
理想のにーちゃん
シグルーン・ジネヴィラ・エランティア(p3p000945)
混沌の娘
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃
鴉羽・九鬼(p3p006158)
Life is fragile
御天道・タント(p3p006204)
きらめけ!ぼくらの
ワルド=ワルド(p3p006338)
最後の戦友

リプレイ

●我ら勇者八人魔王に挑む
「――start deliusion――!」
 妄想再現マシン”モウソーン”を被った勇者(イレギュラーズ)八人が、その魔法の言葉を唱える。
 瞬間、足場がなくなったかのように浮遊し、落下。目眩を起こすようにぐるりと回って、空が不明になる。
 訪れる恐怖感に目を閉じて、しばらくすると地面の接地感が訪れる。恐る恐る目を開けば、そこは魔王の城だった。
「ここは……ここが魔王の城……!」
 勇者っぽく呟く、『魔法騎士』セララ(p3p000273)。実に王道勇者っぽい身なりだが可憐な少女だ。
「し、信じられない話だが、魔法の言葉を唱えたら本当に魔王の城に来てしまった!」
「嗚呼、ハラタ! シグ達はどうなってしまうの!?」
 ご丁寧な解説をありがとう。すでに解説役としてスタートしてしまっている『お気楽未来人』ヨハナ・ゲールマン・ハラタ(p3p000638)と『自称カオスシード』シグルーン(p3p000945)。出番は多いけど勇者としては微妙な感じだが、大丈夫か?
「でっけぇ扉があるな。こりゃ魔王も巨大に違いないぜ。
 へへ、燃えてきたな!」
 称号も揃えてきた『勇者スプラッシュ・クォーター』清水 洸汰(p3p000845)は強敵であればあるほど燃えると言う。準備万端な勇者パワーに期待ができますね。
「よし、ではまずはこの扉を破壊するとするか。このオレのパワーでな」
「いやいや、普通に開ければいいんじゃないですか!?」
 勇者(パワータイプ)な『無影拳』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)もといゼシュテライザーが拳を鳴らして扉を破壊しようとする。
 それを止めるのはこのチーム内一番の妄想を働かせているだろう『Life is fragile』鴉羽・九鬼(p3p006158)だ。秘めたる勇者像が九鬼の姿を勇者らしく彩る。
「オーッホッホッホッ!
 天網恢々疎にして漏らさず! 悪は必ず御天道様が見逃しませんわ!」
 そう、このわたくしッ! と、指を鳴らせばどこからともなく声が響き渡る。
 \きらめけ!/           \ぼくらの!/
        \\\タント様!///
「――が! 魔王を打倒してみせますわー!!」
 ジャスティスなんちゃらポーズを決める『きらめけ!ぼくらの』御天道・タント(p3p006204)は、まあいつも通りです。ジョブ名:『タント』って感じです。
「敵も味方も面白い人達が集まりましたね。
 まあ私も……はっちゃけますか!」
 ピカピカ発光してるタントの後ろで、ワルド=ワルド(p3p006338)が糸目を細めて、暗黒微笑を湛えていた。
 様々な勇者像を描き出したこの八人が、モウソーンによって魔王とかした先生を救い出す英雄となれるか否か。
 それは、すべて八人の妄想力にかかっているのです。
 勇者八人が、魔王の玉座への扉を開いた――

●妄想魔王と勇者の戦い
 重く軋む扉を開く。
 暗闇に染まったフロアに、火の粉が飛び、続々と明かりが灯っていく。
 魔王の玉座。その奥、まさに玉座に座る魔王(先生)が重い腰をあげる。その姿形、まさに魔王に相応しい巨体に他ならない。
「来たか……勇者達よ。
 ククク、良いぞ。それらしい奴が揃っているではないかっ! 待っていたぞ、このときをー!!」
 すでに若干テンションがおかしい魔王が、両手を広げて喜びを表現する。
「さあ、勇者よ! まずはこの場まで来たことを褒めようではないか!
 私が、全世界を支配する魔王様だー!!」
 オーバーアクションの魔王は礼儀正しく名乗りを上げる。当然勇者もこの礼儀作法に則らなければならない。
 反応すばやく名乗りを上げるのは、洸汰だ。正々堂々名乗り口上を添えて注意を引く。
「オレはこの世界に舞い降りたヒーロー、スプラッシュ・クォーターこと、シミズコータ様だ!
 魔王だかマグロだかなんだか知らねーけど、オレ達勇者が、アンタの野望を打ち砕いてみせるぜ!」
「ほう、少年系勇者か。良いぞ。実に良い。自ら勇者と名乗らないタイプというのも悪くはないな!」
「おおっと勇者洸汰さん、早速のポイントゲットだ!」
「年齢的には勇者適齢期ギリギリな気もするけど、見た目の勝利だよね」
 魔王の反応に対してヨハナとシグルーンがどうでもいい解説を加えていく。
 洸汰に続き前にでるのは勇者ゼシュテライザー。なお彼の名前は終わりまでゼシュテライザーです。
「オレは力のユウシャ、ゼシュテライザー! フィジカルにおいてミギに出るモノ無し!」
「ふん、パワーを誇示するタイプか。勇者というよりはパーティーメンバーな雰囲気があるが……亜種としてはそういうのもいるか?」
「拳一つで海を割り、山を砕き、全てを粉砕するという力こそパワーといったゼシュテル人の理想の姿ですね! 所謂脳筋!」
「魔王的にはちょっと微妙そうだけれど、特撮ヒーローっぽさはあるよね」
 名乗りは続く。
 二対の聖剣を手に名乗りを上げるは王道少女勇者セララである。
「ボクの名は勇者セララ! 聖剣騎士団の騎士団長にして勇者だ!
 この聖剣に誓って、魔王を倒す!」
 びしっと剣を向ける立ち姿に魔王が喜色のオーラを侍らせる。
「いいぞ! 昨今ありがちな剣二本という盛り盛りな感じがあるが、実に王道! 若者受けの良い少女というものアリだ! がはははー! 貴様にこの魔王が倒せるかな!?」
 魔王が実にノリノリになったところで、少女が続く。ぼくらのタント様である。
「そう! 我が身に纏うこの《発光》こそ御天道様のきらめき!
 今日に燃えて明日を照らす勇者の証ですわー!」
 ギフトを発動し、いつものかけ声を背に自信満々で経つタント。ぴかぴかと発光してとても眩しい。とくにデコが。
「うぉっまぶしっ!
 というか勇者なのか。どこぞの金持ちの町娘に見えるが。まあしかし”太陽”を背にするのは実に勇者らしいな! ……らしいか?」
 首を捻る魔王だが、間違いなくタントの勢いに流されている。疑問符を付けてる今のうちに次へと進もう。
「我が名は鴉羽 九鬼!
 世界すら滅ぼさんとする貴方の闇……私が聖なる刃で斬り払ってみせよう!」
 霊が宿る大太刀を突きつけて名乗りを上げるは妄想逞しい九鬼だ。
 ですます口調から凜々しい口調に変わってしまう当たり、結構入れ込んでいる。
「むむ、何やら強い力(設定)を感じる武器を持つ女勇者か!
 見目麗しさも伴って、衆目を浴びるに相応しいといえよう。いいぞ! かかってくるがよい!」
 魔王さん、結構九鬼さんをお気に入りです。
 そして最後の一人が、タイミングを見て乱入する。銃を精密に乱射――モウソーンはこういった矛盾も再現するのだ――しながら名乗りを上げる。
「ダダ魔王!我々が現ダダダれた以上ダダダダ、貴方のダダ野望もダダダここまでです!ダダダッ!!!」
「どわー! なんじゃこの危ない奴は! えーいダダダと銃を乱射するな! 怖いわー、ほんと」
 思わず素がでてしまう魔王がびくびくと震える。銃は怖いですからね。
 気を取り直して。
「ふっふっふっ、いいぞ勇者達よ。素晴らしい名乗りだ。
 ――では始めようではないか! 魔王と勇者の戦いをな!!」
 瞬間、魔王を包むマントがはためき、虚無を映し出す。同時、玉座とその周囲が一変し、虚無の地平を描く戦闘フィールドへと変化する。
「あ、あれは――!」ヨハナが声をあげる。勢いままにシグルーンが問いただす。
「アレを知っているの!? ハラタ!」
「あれは虚無の羽衣! 魔王の周囲を多い全ての攻撃を無効化してしまうという、魔王の必需品であり、チート装甲!」
「そんな! それじゃ魔王に一ダメージも与えられない! どうしたらいいの!」
 勝手に設定を喋っているが、言った物勝ちなので、魔王もその設定に乗っかる。
「ふふふ、詳しいじゃないか。
 そう、この虚無の羽衣。光り輝く”太陽”の紋章がなければ破れんのだ!!」
 魔王の言葉通り、勇者達の攻撃が衝撃吸収クッションのような手応えですべて受け流される。ダメージ無効を良いことに魔王が手当たり次第にダークネスでカタストロフィーな魔法を垂れ流す。
「く、どうしたら……!」
 セララが唇を噛む。
 太陽の紋章。そんなものが今、手元にあるのか……。太陽……。……あっ。
「あった! 太陽の紋章! ちょっとこっちきて!」
「へ、なんですの?」
 セララに引っ張られたタントが戦闘に躍り出る。
「さあ、遠慮無く全力で光って!」
「いや、もうこれが全力ですわよ……って、刀身に光を反射させてデコに当てないでくださる!?」
「ああーっ! そうか! 煌めき輝く御天道のデコを太陽に見立てたんだっ!」
「光ってる! 光ってるよ! タント!」
「いやぁー! わたくしのデコはアイテムじゃないですわよー!」
 ぺかーっと光るタントの輝きが、魔王の虚無の羽衣を打ち払っていく。
「おぉぉ……我が羽衣が溶けていく……! おのれ、勇者。ならばここからが勝負の時よ!」
 本当にそんなので良いのか、と思うが、モウソーンの判定なので良いのです。
 チート防御がなくなったことで、ようやくまともな戦いとなる。
「魔王! なんでこんなことをする!」
 セララの問いに魔王は笑いながら答える。
「これぞ、我が夢、我が人生の目的よ!
 この世界であれば我が夢が今まさに叶うのだ!」
「暴力で夢を達成しても意味なんてない!」
「暴力を振るわない魔王などいるものかー! がははは! 喰らえ、エントロピーコラプス!」
 規則性を崩壊させる魔力塊が夥しい量放たれる。
 その悉く避け、回避できないものを受け流しながら洸汰が走る。
「オレは、勇者である以前に、皆を守るヒーローだ!
 ……オレを支えて、一緒に戦ってくれる皆のためにも、ここは譲れねーかんなー!」
「我の進行をやすやすと止められると思うな! がはははー! メギドフレイムフォールダウン!」
「嗚呼! 洸汰さんが創世の炎に飲み込まれた!!」
「オォォ――! やらせるか!」
 ゼシュテライザーが洸汰を救い出し、その炎を纏ったまま魔王に肉薄すると爆裂する拳を叩きつける。
「“ライト”ヒール……。
 そう! これなるは、きらめきの化身たるこのわたくし! タント様の!
 皆を想う力が最も籠められた、光輝なる秘技なのですわー!」
 ぺかーっと光り続けながら、タントが勇者達を回復する。
「ぬぅ……太陽の化身、貴様がよもや勇者達を支える癒やし手とは! 太陽の精霊の加護を受けているのか!?」
 魔王が舌打ちし、回復手たるタントに狙いを定めるも、それを勇者達が防ごうと隊列を組む。
 実に勇者パーティーらしい様相を呈してきた面々。ちょっと楽しくなってきています。
「守りも時には必要! ダークネスウォール!!」
「させません! 私の煌めく白刃は闇を断つ!!」
 魔王の闇の障壁を九鬼の聖なる斬撃が切り払う。
「『聖なる斬撃は闇の障壁を切り払う』、レガド伝事典に記された通りだ!」
 レガド伝事典とはなんなのか。それは口走ったヨハナにしか分からない。
「む……! あれはいけません!!」
 狙撃者として銃を緻密に乱射していたワルドが声をあげる。
「ふははは! 世界と共に滅びるがいい! ディストラクションワールド!!」
 小さな黒い球体が迫る。
「いけない! あれが地面に触れたら爆発的なエネルギーできっと世界そのものが壊されてしまう!!」
 ヨハナのわかりやすい解説を聞くが否や、ワルドが走る。
「勇者達は守ります!」
「ああっ!? ワルドさんが!」
 黒い球体を抱え込み破滅的な爆発の直撃を受けるワルド。その手はこんなときでも銃を乱射していて、世界を破滅させるほどのエネルギーの行き場よりも、銃弾の飛び交う先が(身の危険を感じて)気になってしまうほどだ!
「がふっ……あとは頼みましたよ勇者達」
 倒れ込むワルドはやっぱり銃を乱射していた。
「我が必殺の一撃を防ぐとは見事。だが私には真の必殺技、そして究極履行技が残っているのだ!!」
「ずるい! ずるいぞ魔王! 奥の手をいくつも隠し持つなんて!」
「HPトリガー技とか或る感じだね」
 隠された魔王の新必殺技『メガロ・カオス・インパクト』、そして究極履行技『ブレイブジェノサイダー』が勇者達に放たれる。
「だめーーーー!! もう、仲間たちは殺させない!(死んでない)」
 シグルーンが必死に封印を試みるが、これは効果をなさない。
「そんな! シグの力じゃ、抑えきれない……?!」
「ふははー! 消えろ勇者どもー!」
 黒き閃光が世界を包む。
 ゼシュテライザーが必死に自爆技でダメージを減らそうとするも、その威力は想定を上回り、勇者達の体力を全て奪い去った。
「がはははー! その程度の妄想力で魔王を夢見て六十年の儂に叶うと思うてか!!」
「くっ……なんて力なの」
「ああ、勇者達よ。ここで倒れてはモウソーン世界の平和は奪われてしまう! 立て! 立つんだ!」
 倒れたヨハナがナレーション的台詞を言うが、本人も戦闘不能だ。
「ふん、ここまでだな。所詮子供染みたお遊戯と思うてか。
 真剣に、夢を、妄想を語るものだけが、この世界の勝者となるのよ!!」
 魔王の言葉に、手を握る。
 お巫山戯依頼だと、確かに思った。しかし、真剣に望んだのだ。
 負けるわけにはいかない、そう勇者は最後には必ず勝つから勇者なのだ。
「ぬぅ……その輝きは!?」
 勇者達が可能性を手繰り寄せる。パンドラの光に包まれて――同時にどこからともなく会ったこともない人達の応援の声が聞こえて――
「言っただろ、オレを助けてくれる仲間のためにも、まだ倒れるわけにゃいかねぇって……!」
「まだだ、人々の応援がある限り、ゼシュテライザーは(フィジカル的に)膝を付かない!!」
「負けません……! 負けるわけにはいかないのです!」
「ボクは負けない。何度だって立ち上がってみせる!守りたいものがあるから!」
 それぞれの想いを迸らせながら立ち上がる。銃を乱射していたワルドもこっそり立ち上がる!
 じゃんじゃんじゃーん! どこからともなく軽快な音楽が響き渡る。
 テーマソングを背にタントが立ち上がる。「わたくしも、わたくしにも……どうか、この手に、戦う力を!!」
「おぉぉ……この輝き、これこそ……!」
 魔王が光り溢れる勇者達に目を細める。
 いまだ! 奥義をぶつけるんだ!! どこからかそんな声が聞こえた。
「どんなデッドボールだって、こいつで打ち返してみせる!
 喰らえ、オレの全力の一撃!」
 ピンチヒッターはどんな時でも諦めない! 洸汰の諦めない一撃が魔王に見舞われる。
「オォォ――!! 喰らえ! 万物必倒イルアン・グライベル!!!」
 握り込まれた拳は、どのような苦境も打ち砕く。ゼシュテライザーの必殺技が叩き込まれる。
「喰らいなさい魔王!! わたくしの全力!――《ライトニング》ッッ!!」
「刃に宿る十二の英霊よ! 私に力を――『XIII』!!」
 タントの放つ迸る稲妻と共に、肉薄した九鬼が怒濤の連撃を見舞う。
 そして――
「世界を……いや。ボクの大切な人達を守るために。
 魔王、お前を討つ!」
 セララが二本の聖剣を合体させ、一本の黄金の光輝く聖剣へ。頭上に掲げて力をチャージすると、光の翼伴うブーツで空高く舞い上がる。
「人々が、友人が、戦友が。今までボクと関わってきた全ての存在がボクに力を貸してくれる!
 これが絆の一撃だ! セララスペシャル・ブレイバー!」
「お、おぉぉぉ――!! 負けてなるものか!! 儂の望みは――まだ!!!」
 振り下ろされる聖剣に対抗するように、禁断の隠し技『エンド・オブ・ザ・デリュージョン』を放つ。
 黄金と虚無がぶつかり合い……戦いは魔王と勇者、ともに倒れる結末を導き出した。
 傷付いた身体を引き摺り起こし、勇者達が立ち上がる。
 魔王も、ゆっくりと腰を起こし、地面に座り込んだ。
「儂は負けたのか……」
「君の野望は露に消えた。だけど、キミは生き残った。
 もしもキミの心が折れていないなら。理想をまだ追いかけるなら――今度は別の手段で。魔王としてじゃなく、一人の人間として夢を目指そう。ね?」
 セララの言葉に、魔王――否、先生は目を細め、言葉を零す。
「戻って、良いんじゃろうか……」
「犯したツミはデシにツグナエばいい。まだ間に合うさ。オレたちとイッショに帰ろう」
「共に帰りましょう、貴方を待っている人が居ます。
 貴方の望みを理解してくれる人が居らず、孤独だったかもしれませんが……。
 これからは魔王として復活を望むなら、
 私が何度でも勇者として相手になりましょう……!」
 イグナートと九鬼の言葉に、先生は頷いて……しかし考え込む。
「いや、しかし、やっぱりちょっと惜しい……」
「……さあ、戻りましょうか」ワルドが銃を構えて、とても慈愛に満ちた行動を取った。
「わーったわーった、帰るわい!」
 そうして、無事和解を果たした魔王と勇者は現実へと帰っていった。

 暗転。
 そして目を覚ますと、そこは現実だった。
「帰ってこれた……ギっ!?」
 突如全身を襲う激痛。表面上は何も変化がないのに……これが内部から破壊されるというものなのか。
 これはしばらく安静にしないとね。そう思う横では弟子に抱きつかれた先生が痛みに壮絶な悲鳴をあげるのだった。
 めでたし、めでたし。

成否

成功

MVP

セララ(p3p000273)
魔法騎士

状態異常

セララ(p3p000273)[重傷]
魔法騎士
ヨハナ・ゲールマン・ハラタ(p3p000638)[重傷]
自称未来人
シグルーン・ジネヴィラ・エランティア(p3p000945)[重傷]
混沌の娘
鴉羽・九鬼(p3p006158)[重傷]
Life is fragile

あとがき

澤見夜行です。

全体的にお上品になってしまいましたね。
もう少し妄想を捗らせて設定を盛っても良い気がしました。
非常に厳しい戦いになった上での結果です。パンドラはいっぱい減りました。

MVPは王道的勇者なセララちゃんに。
主旨を良く理解して妄想を捗らせた九鬼さんには称号を贈ります。

依頼お疲れ様でした! 素敵なプレイングをありがとうございました!

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