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シナリオ詳細

<Je te veux>濃密なる滅びの気配

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ギルドマスター『レオン・ドナーツ・バルトロメイ』が失踪中、その代理として踏ん張るユリーカ・ユリカ。
 まだ年若い情報屋である彼女は亡き父の栄光を追いかけ、父代わりであり兄代りであったギルドオーナーの背を見てきた。
「まったく、レオンは何時も勝手なのです」
 呆れつつも、ユリーカは集まるイレギュラーズへと集めた情報を伝達する。
 実際見た者もすでに多いかもしれないが、ラサ南部砂漠コンシレラにて、R.O.Oで観測されたでっか君……終焉の獣『ベヒーモス』の出現が確認されている。
 でっか君の背から崩れ落ちる欠片は小型の終焉獣となり、転移陣を使って混沌各地へと出現しているという。
「終焉獣の目的は、パンドラ収集器の収集だと分かりました!」
 ベヒーモスの糧は不明だが、パンドラを呑み込み、滅びのアークを吐き出しているようにも見える状況。
 ともあれ、イレギュラーズならだれもが所持する収集器。
 ユリーカはそれを保護した後、空中庭園のざんげの元へと届けた後、収集器としての役割を解いて持ち主へと返すようユリーカは告げる。
「持ち主が喜ぶなら、そうすべきなのですよ!」
 レオンならそういう判断はしないのは間違いないだろうとイレギュラーズは考えつつも、そのままユリーカから今回の依頼について聞くことに。

 ラサの南部砂漠地帯コンシレラ。
 その南方には『覇竜観測所』がある。
 覇竜領域への交易路が存在しており、その関所としても機能している。
「西にある影の領域には、巨大なベヒーモスが座ったままになっているのです」
 さながら山のように聳えるそれ……でっか君は、かなり遠くからでも視認できるのだとか。
 さて、その背から零れ落ちた欠片から産み出されたちっさ君を含む終焉獣の群れがコンシレラ地下に点在する地下遺跡の一つに潜伏しているという。
「時折、近場の集落だけでなく、わざわざネフェルストまで出向いて収集器を奪いに行ってるようなのですよ!」
 プンプンと腹を立てるユリーカに同意するメンバーも少なくはない。
 窃盗は元より、終焉獣が跋扈している状況を、イレギュラーズとして見逃すわけにはいかない。
 ユリーカは、観測所から得た情報を元に、終焉獣らの潜伏先を地図で指示して。
「今はできることを一つずつやっていくしかないのです」
 できる限り、発見した終焉獣は叩いていきたい。
 ユリーカはそうイレギュラーズらへ願うのである。


 ラサ南部砂漠コンシレラ。
 冬でも日中は相当に暑くなる砂漠の中を移動するメンバー達は、指定された地点へとたどり着く。
 情報の通り、西に見える巨大なベヒーモスの姿を臨みつつ、地下への入り口を探す。

 その地下遺跡は、砂の下に埋もれた石造りのものだった。
 比較的広い空洞のみが存在するそこは、地上から零れ落ちる砂が流れ落ちてくる。
 空洞の床は階段などの段差や、柱があったと思しきものの根本だけが残っている。
 中央にはさらに地下から水の沸くオアシスがあり、飲むことはできそうだ。
 ただ、その空間はあまりにも濃い滅びの気配で満たされており、入るだけでも気分が悪くなりそうだ。
 そんな場所に潜んでいたのは、小さなベヒーモス……といっても、3mほどもあり、並のイレギュラーズでは見上げるほどの体躯があるが。
 続いて、体の中身が透き通っている蒼白い獣。
 進化途中であるそれらは、近場に生息する砂狼を模したと思われる。
 そして、漆黒の体躯を持つ終焉獣は、これまで確認されていないタイプだ。
 見た目だけなら、指揮官型であるクルエラで確認されていたが、その劣化版といった印象。
 しかし、人の部位をした終焉獣の能力をいくつか所持しており、侮れぬ相手だ。
 …………!!
 それらは警戒心を強め、布陣を組む。
 イレギュラーズの突入を認め、それらは一気に牙を剥く……。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 <Je te veux>のシナリオをお届けします。

●概要
 舞台となるのは、南部砂漠コンシレラの地下。
 いくつか存在する名もない地下遺跡の一つに、終焉獣が巣食っていることが確認されたので、その掃討に当たります。
 どうやら、終焉獣の中にはパンドラ収集器を保持している者もいるようですので、回収してくださいませ(ラサ国内で流通する小物やアクセサリーのようです)。

 遺跡の広さは30×30m程度。場所によって高低差はあり、中央に直径10m程度のオアシスがあります。
 天井は比較的高いですが、それでも10m程度。
 下手に頭上へと攻撃が及べば、落盤の恐れがあるので注意が必要です。
 また、不可視ですが、滅びの気配も濃い場所です。人によっては体調不良を感じるかもしれません。

●敵:終焉獣×6体
〇終焉獣:虚偽の人体×2体
 全長2mほどの黒い人型。
 他シナリオで出てきたクルエラ、チアウェイを思わせますが、クルエラ程の力はありません。
 ただ、他の人体部位型終焉獣の力のいくつかを所持する点は同じで、今回出現する個体は以下の能力を使用可能です。
 ・爪を使った引き裂き。
 ・地面の叩きつけ、跳躍してからの踏みつぶし。
 ・伸ばした髪による締め付け、激しい風の巻き起こし。

〇『終焉の獣』小型ベヒーモス(通称:ちっさ君)×1体
 全身3mほど。R.O.Oで登場した「でっか君」から零れ落ちた欠片から変形した存在です。
 四本足の獣で、どす黒い霧でこちらに封印を含む状態異常、咆哮と共に飛行対象への状態異常、狂化による自己強化、終焉をもたらす浸食を行います。

〇変容する獣:砂狼×3体
 全長3mあまりある大柄な狼です。
 他の変容する獣よろしく中身が透き通った蒼白い体躯をしています。
 進化の途中なのか、ラサの砂漠に生息する砂狼の姿を模したような姿をしています。
 知能は獣程度のようで、上記の人体やちっさ君に従い、敵対する者へと躍りかかり、爪や牙を使って襲い掛かります。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 それでは、よろしくお願いします。

  • <Je te veux>濃密なる滅びの気配完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2024年02月29日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)
月夜の蒼
ルナール・グリムゲルデ(p3p002562)
片翼の守護者
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
皿倉 咲良(p3p009816)
正義の味方
マリエッタ・エーレイン(p3p010534)
死血の魔女
三鬼 昴(p3p010722)
修羅の如く

リプレイ


 ラサ南部。
 砂漠を行くイレギュラーズは、西方に聳え立つ巨大な生き物を目にする。
「でっか君の総本山……んんー、まあその辺りは今回はいいや……」
 『月夜の蒼』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)は距離があってなお、視認できる終焉の獣を一瞥だけして目を反らす。
「ここのもベヒーモス……姿を見ない地域はもうないほどに、あちこちで確認できてしまっていますね」
 『死血の魔女』マリエッタ・エーレイン(p3p010534)が言っているのはオリジナルではなく、今回現れる小型ベヒーモス……通称ちっさ君のことだ。
「レオンが行方不明になるわ終焉獣があちこちにいるわ、マジでトラブル続きっスね」
 しかも、どこから手を付ければなどと考える暇もないと『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)は唸って。
「ユリーカの言う通り、目の前の問題を一つずつ片付けていかねぇとな」
「そうだね、やれることを一個ずつやっていかないとね」
 レオンがいない状態で、色々不安に思う人もいるだろうと関係者を慮る『正義の味方』皿倉 咲良(p3p009816)は、自分達が前を向いて踏ん張っていかないとと気合を入れる。
「どこまでこちらの手が回し切れるか……」
 現状のローレットがどれだけ対処できるかとマリエッタは憂うが、ともあれここにいる以上放置はできぬと、問題の遺跡へ仲間と突入していく。

 階段と坂が入り混じる傾斜を降りていくと、メンバーはやがて地下の空間へと至る。
 中央にオアシスを湛えるその空間の中央部に、『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)は終焉獣の一隊を視認して。
「終焉獣はこんな狭い所にまで入り込むのか。まさに蔓延ってるな」
「よりにもよって、こんな分かりずれぇ所にいるってのが嫌らしいな」
 葵も獣どもの小賢しい知恵にうんざりしていたようだ。
 空間を下りながら、『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)は真上から敵配置を確認する。
 オアシスの畔に砂狼を象った変容する獣が3体、その中にちっさ君と両サイドに漆黒の人型……虚偽の人体が1体ずつ。
「チアウェイとも似てますが……同じではない、同じベースのタイプという事でしょうか」
 指揮官個体クルエラにチアウェイという敵がいたが、それに似た体躯をしていることもあって、マリエッタは落ち着いてから分析したいと語る。
 攻勢に出る為にも、敵情報はいくらでも必要なのだ。
 また、その狭い空間には濃い滅びの気配で満ちていて。
「……なんて気配だ。まるで、滅びの坩堝に突っ込んでいく気分だな」
「こんなにも滅びの気配が濃いのはいったい……」
 汰磨羈の呟きに、マリエッタはパンドラ収集器が終焉獣に回収されたというのがキーなのだろうかと考える。
(もしや、パンドラそのものを滅びの気配に変換している……?)
 それが可能ならば、対策は必須だとマリエッタは確信していた。
 その思考を、滅びの気配が邪魔をする。
 メンバーはその空気に吐き気すら感じてしまうが。
「ちゃんと踏ん張ろ! 病は気からっていうでしょ?! つまりそういうこと!」
 自分達が気弱になってたらダメだと、咲良は気合を入れる。
 傍では葵も闘志を全開にして、その気配に立ち向かう。
「こんなモン当てられたトコで、今更ビビってなんかいられねぇっスよ!」
 アウェーの空気感など疾うの昔に慣れていると豪語する葵はむしろこういう場面でこそ、やる気が沸き立つとテンションを高める。
 濃密なその気配に耐えつつ、メンバーは改めて討伐すべき敵に対して。
「わざわざこんなとこまで出張してきて滅びを狙ってくるなんて、よほどあっちの人たちも必死なんだね」
 ならば、それを止めるのは当たり前。
 それに早く戦いを終わらせないと、こちらもきつくなってくると、咲良は皆に同意を促す。
「一番の敵はやはりベヒーモスか」
 掃討に当たる障害は全長3mもの巨体がある小型ベヒーモスと、『修羅の如く』三鬼 昴(p3p010722)は見定める。
「えーっと3メートル? ちっさ……ちっさくん、でいいのかなこのサイズ感で?」
 やや狭いこの空間では、みちみちに感じるのではと考えるルーキスは、少し面白……と思わず噴き出しそうになって咳払いした。
「3メートルで小さい……??? うん、まぁ、ベヒーモスならそうか……」
 呼称に困惑する『片翼の守護者』ルナール・グリムゲルデ(p3p002562)は、もっと大きな個体を見たい衝動もあったが、それはそれで難儀なことになりそうだと首を振る。
「厄介な仕事はさっさと終わらせるに限る。……さて、仕事の時間だ」
 空間の底へと降り立ち、ルナールが同意を促すと、メンバーは次々に身構える。
「流石に頭が崩れるのはいやいやよー。ということで」
 ルーキスが無いよりマシってことでと保護結界をきっちり展開し、天井の落盤対策を行う。
 イズマもまた保護結界を展開し、敵が持っているはずのパンドラ収集器も合わせて守ろうとする。
「誰かの大切な物が、可能性が奪われ続ける現状は許せない。可能性を奪い返してやろう」
 そう言うイズマに、咲良がうんうん頷いて。
「滅びに向かって動こうとしてるなら、こっちだって全力で抵抗するまでだよ!」
 勝負服を纏う彼女は、滅びの気配を振り払うように大声を張り上げて。
「よっしゃ!! なんでもかかってこーい!!」
 ブオオオオオオオオ!!
 ちっさ君も応じるように、空間がこだまするほどの大音量で吠えたのだった。


 濃密な滅びの気配に満たされた地下遺跡。
 体に如何ほどの悪影響があるかもわからぬ空間内での戦い。
 咲良はできるだけ効率よく戦えるようにとエネミースキャンを使う。
 素早い動きの変容する獣、多用な技を使う虚偽の人体。そして、霧を発してこちらの動きを封じ、狂化して殴り掛かってくるちっさ君。
 まずは距離を保ち、咲良は敵中央部の人体を捉え、速力を活かして攻め立てる。
 地下遺跡とあって、限られた空間で交戦せねばならぬ状況もあり、咲良は十二分に注意して立ち回る。
 連鎖して動くイズマが彼女と自身合わせて聖骸闘衣を使う。
 その後、イズマはちっさ君の抑えにかかるようで、名乗りを上げる構えをとっていた。
 イズマらタンク役となる仲間のサポートには、マリエッタがつく。
 大いなる御業を己に宿すマリエッタは、仲間が比較的万全に近い状態ということもあり、敵陣を堕天の輝きで照らしてプレッシャーを与えていく。
 遠距離攻撃が得意な葵はできる限り壁際に位置取り、愛用のサッカーボールをリフティングしつつ迎撃態勢を整えていた。
 一方、汰磨羈は前線に出て、終焉獣らと対する。
 汰磨羈も魂魄から引きずり出した根源たる太極を引き摺り出し、限界を越える出力を一時的に得る。
 下準備を終え、汰磨羈は敵を注視し、妖刀を抜く。
 相手、特にちっさ君の動きを見ていた汰磨羈は相手が刹那頭上を向き、体からどす黒い霧を発してきたのを認めて。
 明らかに広範囲のメンバーの力を封じてくるもの。
 そう判断した汰磨羈は封印を回避しつつ各個撃破の策を取る。
 とはいえ、戦うには狭い空間。
 ばらけると攻撃するのに厄介だと考えるルナール。
 この後、イズマの名乗りの効果が発揮されれば、イレギュラーズに有利な展開となると踏み、ルナールは彼を庇うべく身構える。
 戦い直後のこのタイミング、唸りながらも砂狼の姿をした変容する獣がメンバーへと飛び掛かり、人体が鋭い爪を振るう。
「狭い中でよくもまあ動き回ること」
 ルーキスは識別効果のある攻撃なら問題ないと考えて。
「とはいえ崩されるのは御免被るから、手早くおねんねして貰うよ」
 まずは敵陣にケイオスタイドを巻き起こすルーキス。
 混沌に揺蕩う根源の力は泥となり、異質な存在である終焉の獣を一気に洗い流さんとする。
 仲間達が動く中、昴は敵の間をすり抜けるようにしてちっさ君へと迫って。
「さぞかし、力に自身もあるのだろうが……」
 体格ではちっさ君に分があるものの、昴にも鍛えたこの体がある。
 力負けするつもりなど毛頭ない昴は、破砕と金剛の闘氣をそれぞれ纏い、敵へと迫っていた。
 そのまま、昴は覇竜穿撃でちっさ君の巨体すらも穿とうとする。
 敵の守りを極力削ぎ、己の力を最大限発揮し、渾身の打撃を繰り出す昴。
 ちっさ君が態勢を大きく崩せば、仲間達がさらなる効果的な攻撃を与えることもできるはずだ。
「どうした。狙えるものならやってみろ……!」
 準備を整えたイズマが名乗りを上げて終焉獣らを煽る。
 鼻息を荒くする獣どもは躍起になり、イズマを打ち倒そうと獣の膂力で襲い掛かってくるのだった。


 戦場としては敵の巣穴とも言える場所。
 いわば、イレギュラーズにとってアウェイだが、メンバーはそれを払拭する策で獣を攻める。
「ストップっス」
 纏めて愛用のサッカーボールで撃ち抜いていく葵は一時的にでも敵の能力を封じ、思うようには立ち回らせない。
 それらに対し、汰磨羈もケイオスタイドを顕現させて敵陣の運命を漆黒に塗り替えんとする。
 それだけではない。
 彼女は予め重力を無視した力を持ち、敵を一気に壁際へと押し流す。
 それらをイズマが追ってさらに抑えるのだが、彼は一旦オアシスへとノアの舟板を置く。
 敵の攻撃によって、自分たちの体だけでなく、敵に奪われたパンドラ収集器がオアシスに落下した場合に備え、すぐに回収できるようにと配慮していたのだ。

 獣どもは滅びの気配に満たされたこの場で、イレギュラーズがこれだけ抵抗してくるのは想像以上であったのは間違いない。
 ――《クラウストラ》はかく語りき。
 ルーキスは虚空に著した円陣に自らの指を触れさせる。
 さながら鍵を突き入れるような仕草で顕現させた雷撃が敵陣へと降り注ぐ。
 異質なる獣であろうと、苛烈なる嵐に抗うのは難しいようで、ある獣は体を痺れさせ、ある獣は体を竦めて動きを止めていた。
 攻撃が宙を切ることもあり、思うように攻撃できぬ獣達。
 昴はそうした仲間の攻撃による恩恵を受け、ちっさ君からの煩わしい攻撃を受ける回数を減らしつつも、『対城技』鋼覇斬城閃で激しい攻めを繰り出してちっさ君の体に渾身の打撃を見舞っていく。
 ブオオオオオ、ブオオオオオオオ!!
 苦しい状況から立て直そうと、ちっさ君は不気味に唸って己を狂化しようとする。
 昴も対策は講じていたが、この場は葵が速く対処に出る。
 生成するのは、絶対零度の氷の杭。
 それを、葵はサッカーボールと同じように蹴り飛ばす。
 一直線に飛んでいく氷杭は白い冷気と凍結した塵が尾を引く。
 その美しさに気を取られる敵に一度氷杭が突き刺さると、体温が瞬く間に奪われて全身を蝕む。
 狂化が一気に冷めてしまったちっさ君は忌々しそうに歯噛みしていた。
 そのちっさ君を支援しようと砂狼や人体が動くが、汰磨羈がそれを許さず、仲間の火力圏に押し戻す。
 再度状況が整えば、汰磨羈は陽と陰の太刀を交互に浴びせかけ、人体を一気に切り裂いていく。
 仲間がうまく足止めしてくれていたこともあってか、汰磨羈も足止め以上に攻撃に主軸を置いて立ち回っていた。
 イズマも、敵を地下遺跡の隅に敵を押し込み、自由に立ち回らせない。
 ちっさ君を抑える彼だが、他の敵にも多く狙われる。
 祖霊たる星々の瞬きによって、自らの傷を癒して獣どもの攻撃を凌いでいたイズマだが、一時は厳しいと判断してか、呼び寄せたワイバーンに騎乗して飛行する一幕も。
 そんなイズマをルナールが庇い、前線を支える。
 相方ルーキスと足並みを揃えながらも、ルナールは集まる敵へと勇気と覚悟を抱いた一撃を見舞いつつ、守りを固めて獣達の攻撃に耐えていた。
 一時はイズマへと回復を多めに施していたマリエッタも、ルナールの傷が深まれば、無穢のアガペーを与えて癒す。
 仲間達の回復の合間に、マリエッタは攻撃も織り込み、血によって生み出された武装で敵を個別に囲い、圧搾し、くし刺しにする。
 うまく敵を隅に追いやったことで、咲良はこの空間を最大限に活かして立ち回る。
 仲間達が近場に位置取っていたこともあり、咲良は速力による攻めが主軸となっていた。
 ただ、攻撃する中で、近づくこともあった咲良は敵の爪、髪の締め付けを喰らうこともあり、猛攻を仕掛けつつも敵の体力を奪い取る。
「他の人たちのサポートに甘えてばかりなのは性に合わないからね!」
 悠然と構える彼女を、彼女は威嚇しつつ鋭い一撃を差し向けていた。


 滅びの使途はイレギュラーズの戦略に対応できずにいた。
 やはり、獣の考えなのかもしれないが、時折人体やちっさ君が頭上を見上げていたところから、何か狙っている節も感じさせた。
 ブオオオオオオオ!
 おそらくは、その策の為にとちっさ君が激しく嘶き、己を狂化しようとしたが、幻想楽曲を奏でていたイズマがすかさず対処に当たって。
「収集器もパンドラも譲る気は無い。全て返してもらうぞ!」
 敵陣を纏めて叩きつけ、再度壁際へと押し込みつつちっさ君の狂化を打ち消したイズマ。
 怯みながらも、ちっさ君が咆哮を上げるが、昴は構わず真正面から躍り込んで。
「その巨躯、打ち砕いてみせよう」
 ここぞと、昴は自身の最高火力を叩き込むべく、闘争心を極限にまで高める。
 限界を越えた力、速さ、技で繰り出される武技の乱舞。
 ちっさ君は最後の一打を受け、壁へともたれるように崩れて。
 アオオォ、オオオォォォ……。
 スバルの打撃箇所から、霧散していくちっさ君の姿に、昴はさらなる気合を入れて残りの敵の掃討に向かう。
 他を掃討してちっさ君と対するつもりだったルーキスだが、仲間が想った以上に早くちっさ君を攻め落としたこともあって。
「キミ達からすればただの餌でも、人によっては大事なものだ。返してもらうよ」
 手狭な遺跡にも飽きていた頃合いとあって、ルーキスは魔力を凝縮させ、宝石を核とした仮初の剣、禍剣エダークスの刀身を直接叩き込む。
「…………!」
 人体も頭上を気に掛けつつ攻撃を繰り返していたが、逃走をはかっていたのか、それとも落盤を狙っていたのか……。
 いずれにせよ、思うようにはさせぬと、壁と挟む形の敵を追い込む。
 極度の陽で満たした妖刀から繰り出される一撃が人体の体を激しく灼く。
 急激な相転移と膨張により、人体に埋め込まれた光が爆発を巻き起こす。
 両手で天を仰ぐように崩れ落ちる人体。
 傍ではイズマが抵抗を続けるもう1体の人体に受け、こちらも光を発していた。
 イズマが詠唱していたのは、古竜語魔術。
 さながら大地を染め上げる暁光が地下空間を照らす。
 跳躍しようと踏ん張った態勢のまま、もう1体の人体は掻き消えていく。
 虚偽の人体を倒したが、メンバーの疲弊は激しい。
「猫の手? ……も借りたいとはこういう状況の事を言うんだろうな……?!」
 ルナールも一時、戦神の詩を紡いで仲間を支えるが、残る敵は変容する獣のみ。
 余裕もって壁際からの攻撃を続ける葵が放ったシュートが砂狼の体を強く打ち付け、その蒼白い体を弾け飛ばす。
 続き、窮屈そうに駆ける1体へと咲良が迫る。
 高く空へと跳ね上げた彼女は、自身も跳躍してさらなる一撃を見舞う。
 獣は地面へと墜ちることなく、虚空へと姿を消した。
 敵が減ったことで、回復役を担っていたマリエッタも一気に畳みかける動きへとシフトして。
「――其よ平伏せ。此は完全にして無限の光り也」
 高能率のマリエッタはここまで交戦が続いてもなお、高火力の一撃を放ち、変容する獣以上の眩い光でそいつを灼き払う。
 地面に影のような跡を残し、変容する獣もまた存在ごと滅び去ったのだった。


 終焉獣を討伐し、イレギュラーズは事後処理を進める。
 イズマがオアシスに沈めたノアの舟板を回収する傍らで、マリエッタはパンドラ収集器を捜索、あちらこちらへと落ちている物を拾い集める。
「こういうのを各地で探すのも、また骨が折れそうっスね」
 新手が出現する可能性もあると、葵は回収を終えるまでは気を緩めない。
 指輪や髪留め、お守りに武器飾りと、メンバーはパンドラ収集器を一つずつ集めていく。
 しばしの時を要したが、収集器を全て回収し終えたイレギュラーズは地上へ戻る。
 滅びの気配に包まれた空間から外へと出たメンバーは、暑さこそあれど澄んだ空気を吸い込んで。
「いやあ、砂っぽい遺跡と違って外は良いなぁ」
 ルーキスは何より、頭の上がいつ崩落するかを考えずに済むのがとても楽と本音を語る。
 そんな彼女の隣へとルナールがすっと立って。
「終わった事だし、早く帰ろうルーキス」
「えー? ただでさえ仕事明けなのに私が作るのぉ?」
「仕事終わりは奥さんお手製の甘味が欲しいからな」
 そんなルナールの素直なコメントに、ルーキスは小さく笑って。
「全く旦那様が甘味好きだと困りますねー」
 依頼を達成したこともあり、彼女は気楽に仲間達と共に帰還するのだった。

成否

成功

MVP

イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPは他メンバーからも名前が挙がり、抑えに活躍した貴方へ。
 今回はご参加、ありがとうございました!

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