PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ブライド・スナッチャーズ

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 結婚式――。
 誰もが、あるいは憧れる人生の晴れの日。
 昨今はそれを挙げないことを選択するものもいるとは言うが、さておき、めでたい式であることに変わりはない。
 愛を願った男女が、愛を誓い、新たなる門出を踏み出す日。その様な日に、花嫁が浮かべる表情とは何だろうか? 不安? 期待? あるいは喜びか。
 少なくとも――ここにいる女のような表情ではあるまい。文字に起こすならば、『悲しみ』。絶望ともとれる顔、瞳には涙の粒すら浮かんでいる。
「何をそんな悲しげな顔をしているのかな?」
 そういうのは、タキシードの男である。いかにも酷薄といった様子であり、『人気ナンバーワン悪役俳優』然とした表情をした男は、芝居がかった動きで、花嫁の顎を持ち上げた。
「今日は晴れの日……僕たちの結婚式だろう」
「離して……」
 花嫁が拒絶するのを、男は無理やりに引っ張った。
「もういいだろう。あの男は死んだ。確実にね。
 もう君を愛する男はこの世にはいない。
 何をためらっているのかな?」
 どうやら、男のセリフから察するに、この男が本来この場に立つべきであった、花嫁の本来の主人を害したのだろう。そうして、花嫁を奪い去った……ということのようだ。
「俺だけが、君を幸せにできる。この世で唯一だ。
 あきらめて、俺の物になりな」
 下卑た笑みを浮かべるさまは、まさに『人気ナンバーワン悪役俳優』だろう。花嫁の手を無理やりに引っ張り、部屋から連れ出した。
 花嫁は、悲しみの表情で伏せるばかりだ。男は気にせぬように、ずかずかと廊下を進む。
「客はもうそろっている。君との結婚をお披露目して、それで終わりだ」
 男の言葉を、花嫁は聞いてはいまい。ただ、本来愛する彼の顔と声が、胸に浮かぶだけだ。
 ――あきらめるな、ジェーン。俺は必ず帰ってくる。
 愛する男の声が、聞こえたような気がいた。「そう、私はあきらめない……あの人が、あの人が必ず……」これはモノローグ。
 ばん、と男が花嫁を引っ張って聖堂に現れると、同時に高らかなパイプオルガンの音色が響いた。祝福を告げるその音楽の、なんと白々しいことか。いずれにしても、このままでは、男の目論見通りに、花嫁の心は無残に凌辱されるのだ――。
 だが。男が花嫁を伴い、誓いの言葉を述べようとした瞬間、派手な音を鳴らしながら、聖堂の扉が開いたのである。逆光を伴って現れたのは、間違いなく――。
「ああ、ロビン……!」
 ジェーンがそういった通り。それは、愛するロビンだ!
「待たせたな……地獄からの道が渋滞してたんだよ。
 オッズマン、ジェーンを返してもらうぜ」
 がちゃん、とロビンは手にしたショットガンをリロードする。
「ちっ、死にぞこないが……!」
 悪役俳優ナンバーワン、ことオッズマンが、懐から拳銃を取り出した。これから始まるものは、言うまでもないだろう。銃撃戦である――。

 箱からピザを取りだして、呆けた顔でその銃撃戦を見つめる三人=オリーブ・ローレル (p3p004352)
、ミヅハ・ソレイユ (p3p008648)、サンディ・カルタ (p3p000438)。画面が激しく明滅する、その光が三人の顔を彩った。
「なんつーか」
 サンディが言う。
「派手だな」
「そうですね」
 オリーブがうなづいた。
「嫌いではありませんけど。あー、コーラ、貰っても?」
「ん」
 ミヅハがオリーブのグラスにボトルからコーラを注いだ。ぷくぷくと、さわやかな炭酸の泡が浮かぶ。
 休日のローレット支部である。世界は大変な状況であるが、だからこそ休日というのは必要である。働きづめではガタが来るのだから。
 そんなわけで、三人は休日をだらだらと堪能していた。具体的に言うと、ローレット支部の個室を借りて、適当な出前物のジャンクフードとドリンクを喰らいながら、練達のムービーが詰まったディスクを日がな一日消費し続けている、というわけである。今画面の中で「地獄は悪いところじゃなかったぜ、オッズマン」とウインクして見せるイケメン俳優の主演する映画も、練達で人気のアクション・ムービーであった。画面の中での大立ち回りが終わり、なんやかんやあって幸せな日常が帰ってきたようである。クソ長い上にBGMが何度も変わるスタッフロールを眺めながら、ふと、サンディが言った。
「花嫁強奪してぇな」
「強奪?」
 ミヅハがいう。
「ああいう感じ?」
 ムービーディスクのパッケージを指さす。
「うん。っていうか、今見た感じ」
「あー」
 ミヅハがうなづいた。
「わかる」
「わかりますか」
 ふむん、とオリーブが言う。
「……まぁ、確かに。
 そういうシチュエーションに、憧れないわけではありません」
 ただの冒険者に過ぎない、とはいえ、英雄的な立ち回りにあこがれないわけではない。ムービーとは、誰かのあこがれを描くからこそ成立する娯楽なのである。
「でも、こんなべたべたなシチュエーション、そうそうありますか?」
「幻想国ならありそう」
「幻想国に対しての偏見だろ、それ」
 ミヅハの言葉に、サンディが苦笑する。
「幻想国ならもっとドロドロしてるぜ。オペラとか古典演劇とかのタイプだ」
「では、こういうド派手なのは、鉄帝かな?」
「いやいや、鉄帝でもここまでのは」
 オリーブが苦笑する。
「まぁ、今は世界も大変な時期です。ローレットに、この手の依頼が持ち込まれることもないでしょう」
「あるよぉ」
 ばん、と、扉を開きながら、それは言った。
「お、武器商人 (p3p001107)じゃん」
「ローレットの登録番号までつけて呼ぶこともないだろうに」
 武器商人が三人の座っていたテーブルに椅子を持ってきて座り込むと、ぺい、と一つの紙束を投げてよこした。
「依頼、あるよ。花嫁を奪い取る感じの」
「あんの?」
 ぺい、とサンディが紙束を奪い取る。
 なんでも、鉄帝在住のロビン氏からの依頼だそうである。
 花嫁のジェーンを、悪党のオッズマンに奪い取られてしまった。
 近々結婚式を開き、大勢の部下を招集するらしいが、そこがねらい目だ。
 自分は重傷を負い、助けに行くことができない。どうか、ローレットの人間に助け出してほしい――。
「映画のパンフレットですか?」
 オリーブが眉をひそめた。
「こんなことがそうそうあるものですか」
「事実は小説っぽいとかなんとかいう格言があんだろ」
 サンディが言う。
「いいね、これ。花嫁を奪取れそうだし、ストレス解消にもなりそうだ」
 ミヅハがそういうのへ、武器商人がうなづいた。
「お、それじゃあ、依頼を受諾してこようか。
 我(アタシ)もせっかくだから参加するね。楽しそうだからねぇ」
 楽しげに笑って見せる武器商人に、三人はうなづいた。
 というわけで――ぼんくら四人の花嫁強奪、はじまりはじまり。

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 こちらは、リクエストシナリオとなっております。

●成功条件
 花嫁ジェーンの強奪

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

●状況
 花嫁ジェーンが、悪党オッズマンに奪い取られました。
 ロビンは必死に抵抗しましたが、オッズマンの卑劣な罠によって重傷を負い、今は病床で回復を待つのみです。
 オッズマンは、配下の大量の部下を集めて、近々ジェーンとの結婚式を挙げる予定のようです。
 そこで! 皆さんは結婚式に乱入し、大立ち回りを演じたあとに花嫁を強奪してきてください!
 やることはシンプル! 目的もシンプル! 実にスペクタクル! です!
 作戦エリアは結婚式場。内部は結構広いです。探索スキルがあったりすると有利ですが、なくても問題ありません。
 シナリオは、ばーん、と聖堂に堂々と乱入するところから始まります。それまでに何をしてもかまいませんが、あんまり準備に時間をかけると敵が増えすぎたりする、みたいなことがあるかもしれません。

●エネミーデータ
 『ガンスリンガー』、オッズマン ×1
  拳銃を装備した『悪役俳優ナンバーワン』みたいな顔をした男です。ジェーンを奪った悪党になります。
  持ち物通り、拳銃を利用した戦闘を得意としています。遠距離から近距離まで、隙はありません。
  一応ボスユニットなので、それなりに苦戦するかと思います。しっかり戦いましょう。

 部下の皆さん ×???
  オッズマンの部下の皆さんです。銃などで武装しています。
  はっきりといえば雑魚なので、思い思いの方法でぼこぼこにやっつけるのがいいでしょう。
  ただ、数は多め(さすがに一斉に50も60も襲ってはきませんが)ので、一応警戒はしておいてください。

 以上となります。
 それでは、かっこよくキメてきてください!

  • ブライド・スナッチャーズ完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2024年02月29日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費---RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

サンディ・カルタ(p3p000438)
金庫破り
武器商人(p3p001107)
闇之雲
オリーブ・ローレル(p3p004352)
鋼鉄の冒険者
ミヅハ・ソレイユ(p3p008648)
天下無双の狩人

リプレイ


 結婚式――。
 誰もが、あるいは憧れる人生の晴れの日。
 昨今はそれを挙げないことを選択するものもいるとは言うが、さておき、めでたい式であることに変わりはない。
 愛を願った男女が、愛を誓い、新たなる門出を踏み出す日。その様な日に、花嫁が浮かべる表情とは何だろうか? 不安? 期待? あるいは喜びか。
 少なくとも――ここにいる女のような表情ではあるまい。文字に起こすならば、『悲しみ』。絶望ともとれる顔、瞳には涙の粒すら浮かんでいる。
「何をそんな悲しげな顔をしているのかな?」
 そういうのは、タキシードの男である。いかにも酷薄といった様子であり、『人気ナンバーワン悪役俳優』然とした表情をした男は、芝居がかった動きで、花嫁の顎を持ち上げた。
「今日は晴れの日……僕たちの結婚式だろう」
「離して……」
 花嫁が拒絶するのを、男は無理やりに引っ張った。
「もういいだろう。あの男は死んだ。確実にね。
 もう君を愛する男はこの世にはいない。
 何をためらっているのかな?」

 ……などと、わざわざ依頼書(オープニング)で描いたことをもう一度ことさらに描写する必要はあるまい。まるで映画からそのまま抜け出てきたかのような芝居じみた言動を彼らが演じているのは、あるいは、非日常感ゆえの、なにか精神の高ぶりのようなものなのかもしれない。平たく言えば、テンションが上がっている、である。
 おそらく、この報告書(リプレイ)を読んでいるものならもうわかり切っていると思うが、オッズマンという悪党が、ロビンという好青年からジェーンという花嫁を力づくで奪い取り、結婚式を挙げようというやつである。ドラマと現実が違うのは、ロビンは殊更に痛めつけられており、病院のベッドの上から立ち上がることができない、という点だ。
「地獄の道が渋滞してたんだろうなぁ。
 いや、道路工事中で封鎖されちまったかな」
 と、ぼんやりというのは『金庫破り』サンディ・カルタ(p3p000438)である。さて、ここは結婚式場の外。『借りた』馬車を入口に待たせながら、サンディがのぞくのはこの式場の地図である。
「いや、彼、死んでませんよ」
 『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)が装備を確認しながらそういう。なるほどね、とサンディは言った。
「やっぱり地獄の道が道路封鎖中だったんだろうぜ。ロビンは見事生還してるんだからな。
 ある意味めでたいが、ある意味不幸か――ま? 俺からしてみれば、ちょうどいい」
「最近はめっきり重い話題ばかりだかな」
 『竜の狩人』ミヅハ・ソレイユ(p3p008648)がそういう。だが、ミヅハは普段の格好とは異なり、まるで映画の登場キャラクターのような、いささかラフなシャツとズボンをはいている。羽織ったコートにはフードがついていて、その顔はうまく隠れているようだった。
「おっ、ロビンじゃん。地獄の道が空いたのか?」
 サンディが言う通り、なんという奇遇だろうか、ミヅハの格好は、依頼人であるロビンのそれによく似ていた。なんというか、背格好も、ぴったりであり、『一見すれば、ロビンと見間違うほど』であろうか。
「それ言って飛び出すか。やっぱさぁ、いいよな、キメ台詞。地獄で踊りな、みたいなさ」
「楽しそうだねぇ、みんな」
 『闇之雲』武器商人(p3p001107)が笑う。
「依頼を見つけてきたかいがあるというものだよ。たまにはぼんくらな依頼も悪くはぁない。
 それにねぇ、こういう馬鹿々々しい喜劇には、馬鹿々々しいハッピーエンドがつきものだろう?」
「ええ。せっかくです、大笑いと行きましょう」
 オリーブが、ロビン(ミヅハ)へ向けて、銃を放った。質実剛健としたショットガンである。
「どうせなら、派手にいきましょう。一応、ゴム散弾が装てんされていますから、相手も死にはしないでしょう。
 ああ、軍警の方にはすでに通報済みです。こちらの仕事が終わったら、悪党どもはまとめてお縄、というやつです」
「え? 軍警? 大丈夫? この馬車、事後報告するつもりで借りてきたんだけど?」
 ロビン(ミヅハ)がそういう。つまり、黙って持ってきたわけだが、
「大丈夫じゃない? ほら、警察も、緊急時には車両とか借りられるわけだし?」
 武器商人が笑うのへ、ロビン(ミヅハ)が笑う。
「おっ、じゃあ大丈夫じゃん! 後で返せばよし!」
 そういうことになった!
「んじゃ、プランを軽く説明するぜ」
 まじめ腐った顔で、サンディが言った。
「ロビンが後ろからバーンする。
 俺たちが前からバーンする。
 そのあとバーンってして花嫁をさらって、帰る」
「ははぁ、完璧なプランですね」
 オリーブが楽しげに笑った。
「いいねぇ、我(アタシ)も楽しくなってきたよ。
 これくらい単純なほうが、いい」
 武器商人もまた、楽しげに笑った。
「んじゃ、ちょっと裏手に回ってくるわ。準備ができたら合図する」
 ミヅハがそういうのへ、三人はうなづきあった。
 さてはて――こんなぼんくら加減であるが、世の中、こんな具合がちょうどいいのかもしれない。

 さて、再び視点を式場の中へともどそうか。この報告書(リプレイ)を読んでいるあなたは、好青年から花嫁を奪った悪党と、その部下と、沈痛な面持ち花嫁がいる式場を想像してほしい。おそらくその通りの現実がここで描かれているはずである。そして、おそらくあなたが思い描いたように、得意満面の顔を悪党はしているし、部下どもは下品にゲラゲラ笑っているものである。
「では」
 と、朗々と声を張り上げる神父役の男も、悪党の部下である。ご安心召されよ、これからこの場でケガをする奴は、大体悪党しかいないのだ。
「異議がなければ、誓いの口づけを――」
 と、ありきたりなことを神父役の悪党が言った瞬間! まさに、こんなに派手な音は現実ではしないだろう、と思うほどの音を立てて、式場の最も目立つところにあるステンド・グラスが砕けて割れた。するとどうだろう、その光とガラスのシャワーの中に浮かぶシルエットは、「異議があるやつはいるさ、ここにひとりな!」と高らかに叫びながら、ぐるりと派手に回転して式場の床に降り立つ!
「馬鹿な、ロビンだと!?」
 悪党=オッズマンがそういうのへ、ロビンはそのフードから覗く口元を、ニヒルに釣り上げて見せた。
「悪いな、オッズマン。地獄の道が渋滞していてな。参列に遅れちまった」
「ロビン……!? あなた、どうして……!?」
 花嫁=ジェーンがたまらず声を上げ、しかしすぐにけげんな表情を浮かべた。ロビンはわずかにフードを上げると、その視線でジェーンへとウインクして見せる。
(あなた、ロビンじゃないのね?)
 そうジェーンが想うのを、なぜかロビン……いや、ミヅハは感じていた。
(ああ、そうさ。ロビンに頼まれてね。
 少しだけ隠れててくれよ)
 そうミヅハが想うのを、なぜかジェーンは感じていた。ご都合主義である。他の仕事ではこうはいかないので、そこのところをご理解いただきたい。
「ロビン……あれだけ痛めつけてやったのに、よく出てこられたものだな」
 オッズマンは気づいていないようだが、さておき、ミヅハはコートの中からショットガンを取りだして、がちゃり、とリロードアクションをして見せる。
「頑丈なのが取りえでな。毎朝のシリアルとミルクのおかげって奴さ。
 さて、花嫁は返してもらうぜ、オッズマン。
 それから……式には、友達の参列が必須だろう?
 だから、俺にも来てもらってるんだ」
 そう、ミヅハが言った瞬間、今度はどがあん、と、そんな音は立てないだろう、というほどの大きさで、式場の扉が開く。もしこれがムービーであったならば、じゃぁあん、とギターがかき鳴らされていたところだろうか。その様な効果音とBGMを想像してもらいたいが、いずれにしても、逆光の中から現れるのは、三人の影――。
「結婚式にはライスシャワーやクラッカーが必要だろう?」
 と、武器商人が笑う。そのまま、手製の爆弾を放り投げると、それはそんな音はしないだろ、というほどの大きく、音と光を放って見せた。それは、攻撃の合図だ!
 ずだん、と強烈な足音とともに、二人の影が走る!
「やれやれ、ロビンの結婚式となれば――」
「参列しないわけにはいかねぇってな!」
 片や、オリーブ――かしゃり、とクロスボウに目にもとまらぬ速度で矢を装填し、一気に解き放つ! 先端にゴム・ボールを接着されたそれは、確かに致死攻撃とはならないが――。
「おっと、だらしないですね。
 ヘビー級のボクサーのストレートよりは少しマシくらいでしょう?」
 と、頽れた男に視線を送りつつオリーブが言う通りに、それほどの威力を持ち合わせているものだ。つまり、当たれば充分以上に痛く、意識がぶっ飛ぶには充分である。
「いいねぇ、こういうの! こういうのでいい!」
 サンディが叫びながら、懐から取り出した小石を思いっきりぶん投げた。
(結局、俺は何者で。アイオンとはどういう繋がりで。あるいはまったくの無関係で。
 これから先、永い年月を過ごしていくのか。
 そもそもどの程度永く生きるのかってか、何で永く生きてこれてたのか。世界はどうなっちまうのか)
 胸中でつぶやきながら、降り注ぐ小石が、男たちを次々とぶったおしていくのを見ながら。
 にぃ、と。笑う。
「とか考えるのってまぁ、多分俺っぽくないってか、向いてねーんだよな!

 好きなように生き、やりたいようにやる!!
 よし、行くぜ!!! サンディ様のお出ましだっ!!!!」
 たん、と踏み込めば、痛烈なほどに意志が、石が降り注ぐ。強烈な石の驟雨は、次々と圧巻どもをぶち倒していくのだ!
「いいねぇ、サンディ・カルタ。それでこそ、だ」
 ヒヒヒ、と武器商人は笑った。
「さて、さて、我(アタシ)にも出番をもらおうかね。
 悪漢ども、悪党ども。今日は食ってはやらないが、しかしこの身を侵すことはできないと知れ。
 うーん、違うね。今日はそういう言葉の日じゃない。
 こういう日に言う言葉は――。
 そうだね。
 『かかってこい野郎ども、俺を殺せるもんなら殺してみな』
 ……みたいな、かい?」
「いいねぇ、充分!」
 サンディが笑い、
「ええ、ええ、大いに結構。
 それでは、しばし大立ち回りをお楽しみください」
 オリーブもまた笑う。果たして、無数の部下の前に立ちながら、武器商人は改めて笑った。
「ああ、あと、これも言っておきたかったんだ。
 『人のモノに手を出すんだったら、馬に蹴られても文句は言えないものさ』
 さぁて、武器商人・ザ・ムービーに付き合ってもらうかな?」
 果たして――悪党どもは、この不滅なる壁を突破することができるだろうか?
 まぁ、できないのだけれどね!

 さてさて、オリーブとサンディが一気に戦場をかけている間、ロビン、いや、ミヅハとオッズマンの大立ち回りが、まさに主演の格闘シーンのごとく演じられていたわけである!
「ちっ、ロビン、てめぇ……!?」
 二丁拳銃のイカしたイケメン、オッズマンの眉間にしわが寄る。放たれた銃弾を開店するように避けてから、ミヅハがショットガンをぶっぱなした。オッズマンが慌てて飛びずさって避ける。その後ろにいた神父役の悪漢が、ついでに巻き込まれて吹っ飛んだ。
「てめぇ、ほんとにロビンか!? こんな機敏な奴じゃあなかったぜ!?」
「地獄が俺を変えたのさ、オッズマン。
 地獄の熱が、俺をクールからホットに変えちまったのさぁ!」
 適当なことをスラスラといいながら、ミヅハが再びショットガンをぶっぱなした。ゴム散弾は簡易な木片位なら破壊するが、しかしオッズマンが隠れた椅子までもは貫通できなかったようで、しばしはそこを起点とした撃ち合いが続いていた。
「白熱してますね。手伝いますか?」
「主演の舞台は邪魔したくねぇけど、俺たちにもストレス解消の機会が欲しいよな!」
 と、このタイミングで二人が合流する。オッズマンが舌打ち一つ、後方の二人にけん制の銃撃を放った。二人が飛びずさり、
「なんだよ、結構当ててくるじゃねぇか」
 ぺろり、と手の甲に走った傷跡を舐めるサンディ。
「まったく。まっとうなガンスリンガーとして生きていれば、本当にモテたでしょうね」
 オリーブが嘆息する。
「ラド・バウの闘士として、まっとうに生きてはどうですか、オッズマン。
 いいところまで行けると思いますよ?」
 オリーブがクロスボウを撃ち放ちながら声を上げるのへ、オッズマンは鼻で笑いながら応戦する。
「泥くせぇだろ、ああいうのは! スマートにいきたいんでね、俺は!」
 だだだん、と頭の上をかすめていく銃弾を感じながら、オリーブが声を上げる。
「ソレイユさん、花嫁の確保を!」
「任せろって!」
 ジェーンを抱き寄せながら、ミヅハが片手でショットガンをぶっぱなした。オッズマンが飛びずさり、
「あぁ!? お前、ロビンじゃねぇのかよ!」
「気づいてやれよ、友達がいのない!」
「あんなやつ、友達じゃなかったわよ!」
 ジェーンがミヅハへと叫んだ。
「昔っからそう! 私とロビンの仲を嫉妬して、あれこれあれこれって!
 もう、ほんっと! 私、アンタのこと生理的に無理!!」
「言われてんぞ、オッズマン」
 ミヅハが肩をすくめる。「くそが!」オッズマンが叫んだ。
「てめぇらを殺して、そのあとロビンも改めて殺せばいいんだろうが!」
「だからモテないんだよなぁ、お前」
 サンディが肩をすくめる。そのまま、風の力を借りて小石を投げ飛ばした。それが、オッズマンの片腕に突き刺さるように直撃する。右手の拳銃を取り落したオッズマンの視線が、そちらへと向くのへ、
「やれ、二人とも!」
 サンディが叫び、ミヅハ、オリーブが同時にショットガンを、クロスボウを撃ち放つ。二つにゴム弾が、右横腹と、左頬に思いっきりぶち当たった。ぐえ、と悲鳴を上げたオッズマンが、その場に崩れ落ちる。
「……あ、こいつ俳優だから、顔はNGだっけ?」
 ミヅハが思わずそういうのへ、オリーブがかぶりを振った。
「いえ、こっちは現実の悪党なので。
 ま、顔の傷です。箔がついたのでは?」
 肩をすくめて見せる。ジェーンがかぶりを振った。
「余計生理的に無理になっただけよ」
「すげぇなぁ、なにやったらこんなに嫌われるんだよ、アンタ」
 ミヅハが思わず苦笑する。
「列挙してあげましょうか? まず――」
「いいえ、まずはここを脱出するほうが先です」
 ジェーンの言葉に、オリーブが言う。
「おーい、武器商人の旦那! そっちはどうだい!」
 ミヅハが叫ぶのへ、武器商人が『いつも通り』に笑って見せた。
「はいはい、問題ないよぉ」
「……相変わらず、頼りになる人……人……? ですね……」
 オリーブが思わず苦笑した。
「んじゃ、あとは走って逃げる、だ。
 花嫁さん、悪いけどお手をどうぞ?」
 サンディが言うのへ、ジェーンが笑った。
「ありがと。でも一人で走れるし、こういう時に手を取る相手は決まってるの」
「フラれちまった」
 サンディが肩をすくめる。改めて、口笛一つ、小石を放り投げる。果たして降り注ぐ石が、悪漢ども打ち叩いた。間髪入れず、オリーブがクロスボウを、ミヅハがショットガンをぶっぱなす。放たれた銃弾に、悪漢どもがたたらを踏んでいる合間に、一行は一気に式場を駆け抜ける。
「よーし、あとは軍警なんかに任せれば良し!
 後は派手に逃走だ!
 武器商人、あのへんな爆弾まいておこうぜ! 派手に!」
 サンディが言うのへ、武器商人が笑った。適当に合成した爆弾を投げつけると、『いや、そんな音はしないだろう』とばかりの音と光を破裂させて、走り出す馬車の後ろを彩った。
「ああ、最悪な気分だったけど、今はいい気分ね!」
 ジェーンがけらけらと笑って、ブーケを放り投げた。
「受け取ったやつは幸運かねぇ?」
 サンディが言うのへ、武器商人が笑った。
「一番軽傷で済むかもねぇ」
「いやー、滅茶苦茶やりましたね。気が晴れましたよ。
 それにしても、碌でもない連中でした。こんな形で式場に来るのはもう御免です。
 次はもっとめでたい形で……そうだソレイユさん、ルドラさんとの関係ってどうなんですか? 最近は進展を聞きませんよ。」
 と、オリーブが言うのへ、ミヅハはむせた。
「はぁ!? 今はそういうの関係なくない!?」
「なに、あなたの彼女?」
 ジェーンがそういうのへ、ミヅハはかぶりを振った。
「いや、全然、そういうのじゃ……」
「歯がゆいな、なんかこう、いい雰囲気にする方法とかってあるのか?」
 サンディがいうのへ、武器商人が肩をすくめる。
「どうだろうねぇ」
「そこは『あるよぉ』じゃないのか」
 サンディがケタケタと笑う。
「次回の三馬鹿商人は、深緑ミヅルド編ですかー。
 なら、世界に滅ばれる訳にはいきませんね」
 ふ、とオリーブが笑うのへ、ミヅハが顔を赤らめた。
「やらねぇって、もう!」
「ふふ。ね、スピード上げて! そういう気分!」
 ジェーンがそういうのへ、サンディがうなづいた。
「あいよ! じゃ、ひとまずミヅハの隠れ家まで、急ぐぞ!」
 そう言って鞭を入れれば、馬車は飛び切りのスピードで鉄帝の街路を進んでいった。
 かくして、まるでムービーのようなリアルの事件は、まるでムービーの終わりのように幕を閉じた。
 後は各自、ノリのいいエンディング・BGMと、スタッフロールを思い浮かべながら、この報告書(リプレイ)を閉じていただきたい――。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 リクエストありがとうございました。
 シンプルに、派手に、そして気持ちよく――!

 ちなみに、ジェーンは改めてロビンと結婚式を挙げたようです。めでたしめでたし。

PAGETOPPAGEBOTTOM