シナリオ詳細
アメンボアカイナミナゴロシ
オープニング
●命がけの害虫駆除
夏の怪物退治が一段落した秋のネオフロンティア海洋王国。
しかし完全なる平和が訪れたわけでは無い。
この世界に生きる限り、どこかしらに危険はある。
夏の終わりから秋にかけて発生する害虫『ストライダー』もそのひとつである。
波のおだやかな日。海上を船のようにすいすいと滑る1メートル大の黒い物体。
これがたった一つではなく30体近く群れ、陸地めがけて走っていたならば、それは間違いなくストライダーだ。
彼らはコウロギ被害のごとく船の底や魚を食い、時には船に乗る人々まで喰ってしまうという恐ろしい害虫なのだ。
みつけたならばやることはただひとつ。
向かって、戦って、殺すのみだ!
さざなみの音が近く、白い円形テーブルに『色彩の魔女』プルー・ビビットカラー(p3n000004)がついていた。
イタリアン料理が自慢のレストランのテラス席。
赤ワインの揺れるワイングラスを手に、ぼうっと波の向こうを眺めている。
「海洋王国での『夏の怪物祭り』も終わったわね。随分といろんな怪物を見たと思うけれど……海洋の秋も案外見所満載なのよ。
そのひとつが今回入った駆除依頼の対象――『ストライダー』ね」
ストライダーは言ってみれば巨大アメンボである。
アメンボと大きく違うのは脚を除いたボディが1メートルくらいあることと、割と人を喰うことである。
さらには鋭い円錐状のカルシウム塊を弾丸のように発射し、海中の魚などをかって食べることもあるそうだ。そんなわけで地味に水泳能力もある。
「小型船を一台貸し出して貰えるそうだから、それに乗ってこれから海へ出て貰うわ。
発見されたポイントまでいって、群れをなしているストライダーを全て倒してから帰ってきて貰う。
もし無理だと思ったらちゃんと撤退してくること、いいわね?」
プルーはそこまで説明してから、いくらかのコインをテーブルに置いた。
「あと、行く前にちゃんとご飯も食べておくのよ。空腹のまま戦いに出るのはよくないんだから」
- アメンボアカイナミナゴロシ完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2018年11月02日 23時00分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●ストライダーの海
ある生物学者は言う。自然は決して人間の味方ではない。人間が大地に立ち空気を吸い日光を浴びて生きるのは、人間の側が自然に適合したからにすぎないと。
あちこちに歪みを抱え、歪み続けることで安定を保つこの混沌という世界の人間たちもまた、その歪みに適合したのかもしれない。
(そう、また海。しかもこの寒いのに……しかもアメンボって)
「だから、海上戦闘は苦手だって。わかってるのかしら」
眼前に広がるは海。足場は既に船であり、ずっと遠くになにかしらの島が見えていた。
ネオフロンティア海洋王国の海域にて自然発生するモンスター『ストライダー』の駆除業務を引き受けたイレギュラーズたちは今、ストライダーの集団移動地点に待ち伏せるかたちで船を出していた。
「これ、ポチや大人しくしてなさい」
『揺蕩う老魚』海音寺 潮(p3p001498)はポチを箱に詰める形でこれより怒る戦闘から隔離すると額をぬぐった。
「みんなで船に乗るのが楽しいらしいのう。今回は遊びではないからここでじっとしとるんじゃよ」
そんな彼をよそに、『死力の聖剣』リゲル=アークライト(p3p000442)が船の手すりから身を乗り出して遠い影を見つめている。
「ストライダー……大きなアメンボか。私が乗ったら沈んでしまうんだろうか」
そもそもハッキリ害虫と言われているだけあって、人になつく生物とも思えなかった。小さくため息をつくリゲル。
彼は関わりの無い虫とはいえ生命をあやめることに無念さを感じているようだが、一方の『レジーナ・カームバンクル』善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)は逆の考えを持っていた。
「ようはアメンボの大軍……よね。それがうじゃうじゃ。苦手な人間には、ゾッとするような光景ね」
「うわあ……」
七鳥・天十里(p3p001668)がぞっとした様子で自分の二の腕を撫でた。苦笑して肩をすぼめる。
「虫系って、あまり得意じゃないんだよね。だってアメンボとか、何あの長くてピンとした脚! 気味悪いよ! 弾も当たり辛そうだし、うー、さっさと倒して帰りたい」
害虫駆除を専門にする業者はむしろその辺の感覚が死ぬというが、場慣れせぬ者にはやっぱりキツい環境なのだろう。誰だって虫の群れに埋もれていたくはない。
まあでも、虫が居なければ花はつかず土はこえず世は人の住めぬところとなるという。混沌の世にそういった生命循環システムがあるかは知らないが、嫌いなものが好きなものと間接的に連動しているのはよくあることだ。
『マリンエクスプローラー』マリナ(p3p003552)はいつものぼんやりした調子で船の舵によりかかっていた。
「ストライダー……海の人喰いイナゴと呼ばれてるとか呼ばれてないとか。じっちゃんがそんな話をしてた気がします。胡乱ですけど」
陸の小さい海洋王国にもイナゴ災害のようなものはあって、そのひとつにストライダーの大量発生があるという。ストライダーは木や布すら食べてしまうので、作物や備蓄食料がつきるのは勿論家も服もボロボロになるとしてひどく恐れる世代もある。
それゆえ毎年定期的にストライダーの生態を調査研究する人間がおり、発生時期になると定期的にこうした駆除依頼が出て数が間引かれるという。
地味に、どこの世界でもやっていることだ。
「海に洗剤を撒けば浮けなくなるらしーですが、海を汚すのは海の男がやる事ではないのでその案は却下でごぜーます。しかし、いくら船をガジられようと私がいる限りはしずまねーのでごぜーます」
ふんす、と胸を張るマリナ。彼女が乗る船はとにかく沈まないという。
「でも船が傷つくのは嫌ですし、船を完食されちゃうのはどーしようもないので、なるべく早く方をつけたい所ですね」
ストライダーが乗組員への攻撃を優先するとはいえ、船が脅かされるのは嫌なのだろう。
「ローレットの依頼は船が傷つくものが多すぎでごぜーます……」
「季節のものですし、仕方ないんですけどね……」
『フェアリィフレンド』エリーナ(p3p005250)がはーあと深く息をついた。
横で『水葬の誘い手』イーフォ・ローデヴェイク(p3p006165)が肩をすくめる。
「アメンボなんてかわいいモンじゃナイ。デカいしヒトに危害を加えるどころか食人までやるなんテ、某マリンパニック物語の怪物かナ?」
ここからは操縦を変わるよといって、マリナと舵を交代するイーフォ。
遠い海面をすすむ濃い灰色の集団が見えた。
ぞっとするその光景こそ、害虫モンスター『ストライダー』の群れである。
●灰の波
「うわあっ、やっぱり気持ち悪い! なんか足の所にざりざりしたのがある……!」
読者諸兄のなかに、ベッドに蜘蛛の大群が這い上がってきたという経験があるかたはおられようか。
いたらいたでちょっと反応に困るところだが、想像するに難くは無いはずだ。
船に巨大アメンボこと『ストライダー』の大群が押し寄せるのは、そういう気分と光景である。
天十里はなんかその辺にある縄的なものやらなんやらを使って柱と腰を接続すると、可愛らしい武装ポーチからルージュスティックを取り出した。
ナチュラルメイクの天十里に口紅は必要なさそうだが、その通りこれは口紅なんかじゃあない。
底のねじをひねるとカチリと音がなり、回転をかけて投げると海上で爆発を起こした。
爆発を受けてちらほらと散り始めるストライダー。
船を囲むような回り込み方をし始めるのを観察しつつ、エリーナは妖精剣に願いを込めた。
「おねがい、スティーリア!」
氷の妖精がどこからともなく現われると、まだ散っていないストライダーめがけて飛翔。雪の結晶めいた軌跡を渦巻くようにひいていくとストライダーたちの肉体表面を氷結させていった。
動きの鈍ったストライダーに、マリナがすかさず魔導銃を構えた。
「船に近づくんじゃねーでごぜーます!」
ライフルに連射の魔法をかけると、無数に分裂した幻影の銃による連続乱射が仕掛けられた。
接近するストライダーを一方的に攻撃できたのはここまでだ。
ストローのような器官を露出させると、そこからポンプ銃のようにカルシウム弾を発射してきた。小型船を取り囲むような配置からの集中攻撃だ。
「さっきから、あいつら邪魔よ――黙ってくれないと、照準がブレるわ」
イーリンはストライダーを複数まとめてライン攻撃できる箇所を探したが、船そのものが取り囲まれ単独で敵側面に回り込めない状況では難しい。仮に回り込めても円形に並んだ団子にクシを通すパズルみたいなことになるだろう。
「船をっ」
「安全戦闘、安全運転第一。つかまっててネ!」
イーフォは船を走らせて包囲状態の中を移動しはじめた。
船をブロックできるほどの巨体ではないようで、ストライダーは突き進む船をよけるようにしながら追跡を開始。
一方でイーリンは『紫苑の魔眼・清憐』を発動させた。
「済まない、生き物は皆友達というが、君達と俺は仲を違えざるを得ない運命のようだ。君達を全力で駆除しよう。だから君達も容赦なく俺を齧れ! 最大限の抵抗を見せろ!」
リゲルは叫びながら銀の剣を振り込むと、ストライダーめがけて飛翔斬を連発していく。
できれば名乗り口上を使って引きつけたかったが、ストライダーがレンジ3の扇状ラインに集まっている上こちらも遠距離攻撃のレンジを維持している。
ストライダー側もわざわざ至近距離にせまる理由は(命中アップ以外に)ないため、リゲルだけで海の飛び込むくらいでないと名乗り口上のラインには入りそうに無かった。更に言えば、レンジ3以内なら距離に関係なく攻撃できるストライダーは火力集中が容易なので、注意を引く作戦はかなり悪手になるだろう。
「手を止めず攻撃するのだわ」
レジーナが『天鍵:緋璃宝劔天』を発動。無数の武具を召喚するとストライダーへ集中させていく。
できれば『大罪女王の遣い』のほうも使いたかったが、リゲルと同様の理由で中距離まで接近できないため戦闘スキルが絞られているのだ。
敵の第二波がくる。無数のカルシウム弾が殺到し、潮は急いでシェルピアを展開した。
「ううむ……状況と敵の能力を見誤っていたかもしれんのう」
こちらは船一隻。敵はレンジがある程度自由に選べて反応値と回避が高い。
船と的の位置関係や角度と船内の陣形をかなり厳密に整えれば1レンジ分くらいは幅をもたせられるかもしれないが、今回はそのあたりを割と失念していたようだ。
また、【致命】対策として潮がシェルピアとエンゼルフォローを用意していたが、味方が集中攻撃を受けると高確率で【致命】状態になるであろうことと潮以外の回復手段がエリーナとレジーナのみでありその際手番調整を要すること。加えてその調整手段を決めていなかったことで、結果土壇場でわちゃわちゃしてしまった。
「回復が満足にできないのだわ」
レジーナがヒールオーダーを仕掛けようとするも、ストライダーの集中攻撃と【致命】状態の波によって満足に回復ができない。
いっそのこと回復を捨てるか、整備された【致命】対策を用意しておくかというどちらかの判断が必要だったのだろう。
ク、と歯噛みするリゲル。
「これは人間と虫族との戦争を縮図化した戦いなのかもしれない。君達も生きるために必死なのだろう。だが俺は人類を守りし騎士なんだ。本当に済まないッ!」
追いすがるストライダーに飛翔斬を連射するリゲル。
相手が弾き飛んだところで、リゲルに無数のカルシウム弾が直撃した。
「ぐっ!?」
甲板に倒れるリゲル。
イーフォとマリナがアイコンタクトを交わし、それぞれ操縦と戦闘を交代した。
「敵が散ってる。けど……」
イーフォはロベリアの花を惜しげも無く連発していった。
というのも、戦闘の距離が絞られていることと、散ってはいても2匹くらいならなんとか範囲におさめられそうだったからだ。10発と撃てないが、戦闘の後半から参加した身としては充分なはずだ。
「うー、船がガタガタいってるでごぜーます。たまにはのんびり長距離航海なお仕事とか行ってみてーですね……」
なんとも悲しそうに舵をきるマリナ。
できれば味方の攻撃レンジに合わせてうまく調節したい。
船が二隻くらいあればそれもできた気がするが、今はなんとかレンジ3のスキルを全員に強制するのが精一杯だった。
船の揺れによる被害を激減させているという意味でかなり成果はでているので、それはそれで充分なことだ。これはマリナの能力というよりチームワークの話である。
例えば爆弾を投げ尽くした天十里は血蛭の距離に入れられないので、オーラキャノンで攻めるほかない。
天十里の放ったオーラ弾がストライダーを貫き、べしゃんとなったストライダーが海に浮いたまま息絶える。
「そういえばこれ、死骸って海に浮いたままでいいのかな? あとで回収とかしたほうがいい?」
「海は何も無駄にせん。いずれ魚が食うじゃろう」
潮も必死にエンゼルフォローをかけながら、額にうかぶ汗をぬぐった。
「――ッ」
イーリンは防御姿勢をとって前に出た。
ストライダーたちの攻撃が集中する。
「イーリン?」
「大丈夫、早く。やって――」
ストライダーは再び船を囲むように展開。そのうえで集中攻撃をしかけてくる。
全身に走る痛みや治癒能力を奪う毒のようなもの。
潮はそれを解除すべくエンゼルフォローをかけようとしたが、揺れる船に軽く足をとられそうになった。
腰と柱に結んだロープを掴んで体勢を固定。大きく手を突き出すと、イーリンの【致命】状態の治癒を試みた。
「もうこれ以上の回復はいいわ。粘れば負ける」
リソースはただ大きければいいわけではない。個々の能力バランスが大きく異なる混沌において、各自のリソースの使い方こそが重要なのだ。どんな状況にも器用に対応できるイーリンは長時間耐えしのぐことにそう特化しているわけではない。が、防御を固めればそこそこの時間耐えしのぐことができる。その間に火力を集中すれば、ストライダーを倒しきることは不可能ではない。
「わかりました……ネリー!」
エリーナは妖精を呼び出すと、ストライダーめがけて弾丸のように発射した。
更に仲間たちの攻撃が集中していく。
ストライダーの足がもげ、傾いたところにネリーがターンして再びの攻撃。
小さな木剣を握ったネリーが突撃していく。
相対的に見れば巨大な化け物の胴体に剣を突き立てると、そのまま強引に臀部めがけて切り裂き進んでいった。
それが、最後の一撃であった。
●海はかえっていく
「そーとーやばかったのでごぜーます」
マリナは木箱にぐでーんと寄りかかり、完全に脱力していた。
彼らの撤退条件は半数までの戦闘不能。または操舵手一名の戦闘不能時。プラスしてそれ以上勝機が見えない時とされていた。逆に言えばギリギリ勝てそうなら残るリソースを投入することもやぶさかではない、ということである。
今回はその残るリソースを全力投入することになった。
レジーナやマリナはかなり消耗し、イーフォもあまりよい調子には見えない。
船を操作しながら色々と考えている。
潮もいざとなったら干し肉を放り投げて逃げられないか試そうとしたくらいだ。
イーリンはというと、自分に刺さった骨の弾丸を観察しながら『魚の骨でも飛ばしてるのかしら』と熱心になにやら考えているようだ。
そんな仲間たちを横目に、リゲルは手すりによりかかって小さく敬礼した。
「次に出会う時は友達になれると……いいが、流石に無理だろうな」
「というか、暫くは見たくないです。すごく苦しかったですし」
エリーナがすとんと木箱に腰掛ける。
天十里が肩をすくめて苦笑した。
「戦術が半分くらい使えなかったのが痛かったかな?」
「かみ合わせですねえ」
とはいえ、結果を出したことは事実。
ストライダーの駆除に成功し、イレギュラーズたちは船を港へかえすべく島へと向かった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
あとがき
――mission complete
GMコメント
【オーダー】
『ストライダー』の駆除。
推定30匹ほどの害虫モンスターを全て駆除してください。
モンスター側が逃走する心配はありませんが、PC側が戦力消耗にて不利になると判断したら撤退も考えましょう。
【フィールド】
小型船を一台貸し出されます。
モーターボートみたいな規模のやつを想像してください。大体八人乗りのやつです。
自前の小型船があれば是非持ち込んでください。その場合船上での判定にボーナスをつけます。詳細は後述します。
(ストライダーは船をがじがじして沈めるといわれていますが、軽く数十分かけてガジるので今回は気にしなくてOKです。ストライダーもそんな余裕ないでしょうし)
【ストライダー】
アメンボ的なモンスターです。
水上をすいすい移動する性質をもち、回避と反応に優れています。
カルシウム塊を弾丸のように飛ばす攻撃(物遠単【致命】【万能】)が主な攻撃方法です。
地味に水泳も可能ですが、大体は水面にいます。
【水上での戦闘について】
・船の上で戦う場合揺れが発生しますので、『ファンブル+10』のペナルティがかかります。
・何かしら有効な技能を行使する場合ペナルティが軽減されます。
・船を誰かが操作する場合、同乗者全員分の移動を代行できます(同乗者が攻撃や防御に集中できるメリットはとても大きい筈です)
・『操船技術』を行使するなら、船の操作に集中する場合に限り同乗者全員のペナルティを軽減できます。
・自前の小型船を用いる場合、同乗者全員のペナルティを軽減できます。ただし乗員のひとりが必ず装備している必要があります。
・『水中行動』をもつ場合ペナルティは無視されます。
・『飛行』を用いる場合、船のみを足場として認めます。ただし船に接触していないため同乗者にカウントされません。(船上を飛ぶか普通に船に乗るかのどちらかを選びましょう)
【アドリブ度】
ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。
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