シナリオ詳細
<崩落のザックーム>盾を侵す者
オープニング
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『終焉の監視者(クォ・ヴァディス)』構成員ロサ・ジュベールは、嘗てローレットと共に『全剣王』ドゥマの配下の軍勢、そして終焉獣達を迎え撃ち、これを返り討ちにした。その際に『終焉』の脅威が弥増している状況を一同に伝え、改めて警戒を強める旨を確りと約束していた。
そして、現在。
ベヒーモス(通称でっか君)の出現から散発的に発生していた終焉勢力の攻勢は、このタイミングで一気に加速。以て『覇竜観測所』と『終焉の監視者』へと一大攻勢が実行されるに至った。
「……アア、コノ空気ダ」
何処か歪んだ響きで喋るその存在は、一見すればなにがしかの獣種であろうと見て取れた。捕食者の特性を持つ足回りは、成程その疾さを感じさせる。だが、であれば下腹部から鳩尾までを覆う両生類然とした滑りある皮、両腕を覆う鱗と鋭い爪、銀髪を靡かせつつも黒いヴェールのような靄をともなった貌といったらどうだ。何もかもチグハグに配置されたその姿は、汎ゆる要素を学び取ろうと貪欲な生命体のそれだ。それは、『終焉獣』であることは明らかだった。
後ろをついて歩く『不毀の軍勢』、その中でもひときわ派手な装飾と花をあしらった鎧に身を包んだ威丈夫は、感慨深げに空気を深く吸い込んだ終焉獣を怪訝そうに見上げると、周囲を探るように鼻をひくつかせた。僅かな咳払いに不快感の響きが混じっている。
「ふん、乾いてばかりの不愉快な空気ではないか。何も変化のない、つまらない場所だ。『全剣王』と……そうだな、ファルカウ様か。双方の不況を買ったのだから滅ぼさねばならぬ場所だ」
「分カッテイナイナ、『アーバム・リリウム』。俺ヲ虚仮ニシタ女共ノ、湿ッタ息遣イガ混ジッタ不愉快ナ空気ガ満チテイル。オ前ノ軍勢ヲ差シ出セ」
「貴様のその表現が何しろ湿っぽくて気色が悪いぞ、『ビオート』。貴様の情緒の育ち方は俺には分からん。だが、そいつらも所詮は敵だろう。滅ぼしてしまえばいい」
『アーバル・リリウム』と呼ばれた騎士は、終焉獣『ビオート』の漏らした敵意に不快感をより増した表情で見やる。この終焉獣は以前、『終焉の監視者』襲撃に際し学習目的で連れてこられ、一体だけ逃走したのだと聞いた。戻ってからこっち、激しい成長を経て驚異的な再生能力と、自傷を伴う自爆能力(およびその付与)を開花させ、戦闘を重ねるうちに無造作に能力を得ていた結果が今というわけだ。「差し出せ」というのは、文字通りに「命を差し出させ、人間爆弾にしてでも貢献させろ」ということなのは明らかだ。
(何処の馬鹿者の戦いを見てそうなった? くだらぬ術師がいた気がするが……分からない。「質問に回答しろ」という圧をビオートから感じたリリウムは、ため息交じりに返した。
「『肥料』以外の5体は好きにしろ。あの一体だけはファルカウ様の貢物のようなものだ」
「充分ダ。ソレニ――」
ビオートは些か心許ない人数の軍勢達、その更に後ろを追い立てるようについてくる巨体に目をやった。
「『アレ』ガ切札(ジョーカー)。放ッテオイテモアレが灼ク」
●
「ロサちゃん、大丈夫っすか?」
「大丈夫……大丈夫です……! 私は『終焉の監視者』としてこの地を任されたんです……! 退けません!」
「退くことなんて考えなくていいよ! ここはボク達があいつらを追い回す番なんだから!」
強大な敵の出現、その襲撃は『終焉の監視者』として初めてではないにせよ、今回の規模は滅多なものでは経験し得ない。かたかたと盾が揺れるロサの姿を臆病と笑う者は居るまい。心配そうに顔を覗き込んだレッド(p3p000395)に気丈に振る舞った彼女に向けて、ソア(p3p007025)は不敵に告げる。それが強がりや過度な自信ではなく、積み上げられた実績から来るものであることは、ロサもレッドも、仲間達も知っている。だからこそ、眼の前に現れた敵の振る舞いのあまりの大胆さに眉を顰めたくもなった。
……あれは以前取り逃した終焉獣の成長体。そしてまだ成長する余地があり、刈り取る余地もある。
鼻先を掠める滅びの匂いを振り払うように、一同は得物を抜いたのだった。
- <崩落のザックーム>盾を侵す者Lv:40以上完了
- GM名ふみの
- 種別通常
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2024年02月24日 23時50分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●砂漠往く火、砂灼く陽
「大規模攻勢がきたけれども大丈夫っすよロサちゃん。退くなんてことないっす!」
「そうですよロサさん、きっと大丈夫です」
「……そう、ですよね。皆さんがいるなら、大丈夫だって信じられそうです」
ロサ・ジュベールは特別な存在ではない。
たかだか『超人体質』を授かっただけの一介の、とても優秀な貴族にすぎない。だが、彼女が一人ではないのは周知の事実。『赤々靴』レッド(p3p000395)と『相賀の弟子』ユーフォニー(p3p010323)からの力強い「大丈夫」の言葉は、英雄たりうる者達からの太鼓判にも等しい。構えた盾の重みが少し和らいだのを、彼女は実感した。
「えらい大変なことしてんなあ……ま、全員止めるし目論見は叶えさせてはやらんよ」
「面倒な外来樹を植えても景観を損ねるからな、丁重にお帰り願おうか!」
「帰れと言われて帰れるほど、我々は生半な忠誠心でこの場に訪れたワケではない! 面妖な輩共め、全剣王への貢物として命を刈り取ってくれよう!」
「然り! 死も生も全てを、ここに置いていけ! 此処こそが、我等が一歩を踏み出す橋頭堡となろうぞ!」
終焉勢力の攻勢は既に過渡期に入りつつある。その中での一斉攻撃を前に、『晶竜封殺』火野・彩陽(p3p010663)や『陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364)が半ば呆れと、いらだちを交えて彼らに相対すのも当然のことと言えよう。だが、種を植えんとする個体を除いて前に出る軍勢は、自らの命などもとより度外視、そのうえで他者の命を刈り取ることを当然のこととして考えている様子。そもそも命を捨てるのが前提なので、『命懸け』という覚悟がなく、ただ自然に捨て身の姿勢が得物の構えに滲んでいる。命を軽んじる姿勢は、彩陽の心をざわつかせた。
「尻尾巻いて逃げた子でしょ、またやられに来たの?」
「今度ハ、貴様ガ尻尾ヲ巻ク番ダ。自慢ノ脚ヲ潰シテヤロウカ」
「ぶった斬られるのはお前さんの脚の方だろ、終焉獣。これ以上成長されても面倒臭いだけなんだよ」
ビオートと『無尽虎爪』ソア(p3p007025)には、逃がした者と逃げた者、という浅からぬ因縁が横たわっている。ここで倒さなければ成長し続ける、或いはここで追い詰めても奪った能力を復活させ得る終焉獣……そして終焉勢力からすれば、いくら突き放しても無限に追い縋る執念を持つ獣。どちらからしても断ち切りたい悪縁だ。ビオートの悪態をしかし、『老練老獪』バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)はソアから横取りするかのようにそっくりそのまま投げ返す。潰すのは貴様の未来だと言わんばかりに。その言葉を受け止めた表情がどこまで残酷であったのか、説明する必要もないだろう。
「他所でも見かけたが、不毀の軍勢ってのは周りの光景が見えてないのかね。この砂漠の最中で鎧姿とはずいぶん舐めてくれたものだ」
「脚が沈んで動けません、と。斯様な雑魚と同列に語ろうというなら笑わせる。俺はせせこましく走り回らずとも貴様等を薙ぎ倒すくらい、造作ないだけのこと! ……この地をファルカウ様の貢物に変えてやる! 光栄に思え!」
「滅ぼすとか、知らない奴に貢ぐとか、そうはさせないって言ってるんだよ。はいそうですか、ってお前の仲間達が返して貰ったのか?」
「不敬者の返答など知ったことか!」
アーバル・リリウムのいっそ適当ともいえる豪快さを前にして、『灼けつく太陽』ラダ・ジグリ(p3p000271)は大いに空気が読めない奴だと感じた。足場の不利は期待できないのか、もしくは無視できるほどの実力者なのか。どっちにしろ、おつむの悪さは感じ取れた。『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)は自らの問いに返答とも言えない返答を返した彼に、最早理解することを放棄した。
「アーバル殿! 滅びへの準備、整いまして御座います!」
「僥倖! 獣! 分かっておろうが――」
「イザトナレバ、然ウスル。アイトヴァラス、薙ギ倒セ!」
『滅びの種』を植えた軍勢の一人が、声を上げる。それを聞き受けたアーバルは得物を高らかに掲げる。
ビオートの咆哮に合わせ、種の植えられた直近から大蛇……アイトヴァラスが姿を表した。ラダがその名に顔を顰めたのも当然だ。彼女の束ねる商会「アイトワラス」と語源を同一にするバケモノが故郷へ攻め入ってきたのだ。許せる訳がない。
「アンタは最初に、確実に止め、」
彩陽は穿天明星を番え、狙いを定めた。狙いはまずビオート。その行動の自由を奪う、と絶対の決意のもと、誰よりも早く動いた。動いたつもりだ。
「ラレテハ困ル。ダカラ、オ前ハ離サナイ」
が、一瞬の偶然か本質的な性能差か、ビオートは彩陽の反射速度を超えてきた。弓手から離れない。離さないとばかりに振り上げた爪は、確実に彼の喉笛に深い傷と恐怖を刻み込む――たしかにその絶望を一同は幻視した。
三名を除いて。
●薔薇は朱く朱く
「~~~~!! っあァ゛ッ!」
一人はロサ。敵の能力を理解死た植えで、早々に狙われるのが誰かを察した彼女は、予め彩陽を庇うべく先んじていたのだ。盾越しに受けてなお重く響いた一撃と、視界に入った不定形の靄は彼女の精神を深々と揺さぶったが、彼女の肉体と精神を一時的にせよ乱すことはなかった。痛撃は痛撃だが、出血は後を引くことはない。それもそのはず、イズマの付与術式がロサを覆っていたからだ。
「ナイスっす、ロサちゃん!」
「本当……有り難いことで!」
二人目ことレッドは彼女なら成し遂げると信じていた故に快哉を叫ぶ。駆けつけられない、そもそも駆けつけるべきタイミングじゃないと歯を食いしばる視界の端で、彩陽の生み出した混沌の泥がビオートを絡め取る。効果がどれほどあるかは不透明だが、『当たった』のは事実だ。
「見違えたけど……そんな不細工じゃ虎には勝てないよ」
そして三人目。ビオートを何が何でも足止めすると己に課したソアは、かなりの距離があったにも関わらず一足のうちに飛び込み、不定形の頭部を踏み抜いた。感触は緩く、反応は鈍く、どこまで通じたかは判然としない。だが彼女の性能は、自負しうる程度には優秀なそれだ。
「重ッ――」
「――くないよ! ボクの体重はトップシークレットだから、重くなんてないんだから!」
ビオートの苦鳴に即座に反論を返したソアはそのまま彼を数度ストンピングすると、優雅な身のこなしで距離を取り、着地。絶対に逃さないという鉄の意志を以て対峙する。少なくとも最悪の撹乱手を止めうる環境は出揃ったのだ。……最小限の犠牲で。
「そのバケモノを足止めできるなら重い軽い関係ねえさ! こっちの人間爆弾は俺達で叩き潰す!」
「あなた達の邪悪さは語るまでもなく……わたしは正しく生きてきたつもりです。だから、好きにはさせない!」
バクルドは視界の隅にその戦いを焼き付けつつ、軍勢の一人……種を植えた個体目掛け一射を放つ。深々と突き刺さった一撃が決定打にはなり得なかったが、さりとて序盤で負っていい深さを超えた傷なのは明らかだ。続けて放たれたユーフォニーの術式は二度にわたって軍勢を囲むように放たれ、その悪意を炙り出すかのように炎を巻き上げる……精神をも焼き切る勢いで放たれたそれは、数名の動きを縛り付けもする。どうやら、彼女の善性と敵の悪性は相当な差がついているらしい。
「アンタ達が死にたがるのは止めはしないけどさ、そういうのは自分達だけでやってほしいからね。絶対に、『そんな暴挙は成功させない』」
そして、錬の放った式符は確実に軍勢目掛け襲いかかり、その運命に陰りを与える。彼らが望む死の形が、確実なものとしないために。
「馬鹿者共が……! それしきの連中を相手にして何故抗えぬ!」
「揃って無能だからだろう? アーバル、貴様を含めてな。そら、砂漠育ちの私が相手だ。ついて来てみせろよ!」
「小娘がッ!」
部下の不甲斐なさに苛立たしげに吠えるアーバルだったが、しかし彼とて自らの精神を適切に制御しうる男ではなかったらしい。証拠に、ラダの挑発を軽々に受けて歯をむき出しにしているではないか。その単調さは計算通り。しかし計算外があるとすれば、砂を踏みしめて高く跳躍したその身体能力。ラダの脚をもってすれば即座に肉薄はされまいが、状況がいつまでも許すか、どうか。
「また自爆特攻されちゃあ厄介っす!」
「ああ、発芽前に……お前達に植え付けられた自爆能力ごと砕いてやる!」
イレギュラーズの攻勢を前に動きを鈍らせ、回避する余裕も移動するタイミングも逸した軍勢は、しかし一か八かで数歩駆け、自爆を試みる者もいた。いたが、その心臓をレッドの魔弾が抉り取り、火花程度の爆発を起こさせる。彩陽、ソア、それに対するビオートの激戦が繰り広げられる裏で術式を編みきったイズマは、残った軍勢、その魂に刻まれたビオートの刻んだ自爆特攻、その因子を砕き、そのまま数名を跪かせた。
「これも真似てごらんよ、生きて帰られるものならね!」
「小癪ゥ……!!」
光もかくやと言わんばかりの蹴りに、鏡写しの軌道がぶつかり合う。形だけは完璧にコピーした『光速の回し蹴り』はしかし、やはりオリジナルが数段鋭い。
ソアとビオートの戦闘は、爆発的な殺気とそれに伴う血煙が舞い散り、互いの肉体を激しく削っていた。とはいえ、ビオートは絶え間なく襲いかかる彩陽の妨害を逃れ、或いはやり過ごしながらだ。無限ともとれる体力、再生能力、そして時折ソアに至近距離で仕掛ける『爆発』が厄介だが、彼女の肉体を深く傷つけるに至らない。
結果として、一対一では彼女ですら荷が勝つビオートを抑え込めたのが何より大きかった。
「大層な事を吹聴して、好き放題やって、俺なんて簡単に倒せますよってツラしてるのが許せないんよ。俺だって一端のイレギュラーズとして鍛えてきたんでね……!」
「――私が命を賭けてでも守ります。ですから絶対に、攻め手を緩めないでください」
「いやいや、死なれたら俺がレッドちゃんに顔向けできんからやめて?!」
ロサは、ソアを守ろうとしなかった。否、守ろうと割って入る余地がなかった。いかに実力を不調で押し込まれてもなお、あれは彼女の手に余る。であれば、拮抗を生み出す彩陽だけは倒れさせてはならぬ、とロサは決断したのだ。動かぬことは苦しい。前に出たい。守りたい。だが、守るべきは眼の前にぶら下げられた誇りではなく、信頼する、信頼してくれる人々と掴む勝利の糸口であると彼女走っている!
●
「そら、追いかけっこはこの程度か。もう少し楽しませてくれよ」
「如何様なまやかしかは今更語る必要もないが、俺は貴様を倒さねばならぬらしい。……だからこそ、身の丈を超えた挑発は身を滅ぼすぞ小娘!」
ラダは着実にアーバルを撃ち抜き、逃げの一手を打ちつづけた。それは無限に続く道のりで成功を繰り返す、何度も糸を通すような行為に等しい。然るにアーバルはその行為、その一瞬に生まれた隙を逃さず、距離を詰め、打ちかかる……体力は削られるが、死にはほど遠いか。
ラダがアーバルを惹きつけ、ソアと彩陽がビオートを受け止めた数十秒で、軍勢は全滅に至った。そして彼らはそれだけで満足せず、ビオート撃破に多くの人員を割く。眼の前に降りてきた勝利という『目標』が『勝利』とは別ベクトルで彼らの目を曇らせ得る。当然、ビオートがその手勢を相手に、魔法樹の発現まで生き残れるとは思えないが……それにしても、だ。
「アイトヴァラスは俺が受け持つ! ついでに魔法樹も切り倒す!」
「私もあちらを! この戦場で一番邪悪なのは、なによりあの魔法樹です!」
「少しこっちで遊んだら、そっちを潰しに往くからよ! 倒されんなよ!」
その危険性をいち早く感じ取ったイズマとユーフォニーは、因縁が無く、敵意よりも義務感が勝ったことが目を曇らせなかった要因たり得た。咄嗟に魔法樹を身を挺して守ろうとしたアイトヴァラスであったが、距離を取られ一方的に攻勢をかけられれば生半な防御では受け止めきれない。反撃に飛ばした鱗の射程が伸び、二人を責め立てるが、それも命の危機までは至らない。残り百秒で勝ちきれるとは思えないが、さりとて……仲間が此方を見るのならばまだ目はある。少なくとも、バクルドは視野を広くとっている。
「あの時のがしたのはボクの責任でもあるっす! 口五月蠅いから永遠に黙っちゃえっす!」
「自爆なんてさせない、したとしても不発にしてやるよ! 青龍のありがたーいご加護でな!」
「さっきからずっと切りつけてくれた分、今からお返ししてあげるよ! ボクもずっと構ってあげられないからね!」
「小癪、猪口才……!」
「覚えたての言葉を繰り返すだけのスピーカーが『終焉』? 面白いなぁ、そういうギャグ、冥府なら流行るかもなあ?」
レッドは、ソアはあの時ビオートとなる終焉獣を逃した。錬や彩陽は他の仲間同様、終焉獣の危険性を理解している。ここで能力を潰しても、新たな成長を促すなら意味はない。
だから、ここで絶対に倒すと決めたのだ。
そして、ビオートは強力な能力こそあったが、相性というものに無頓着だったのだ。
「そら、好みの真っ向勝負で決着をつけてやるよ。来ないのか?」
「……否、お前を殺したい、今でも殺せるという感覚はある。だが、さきの一合でその気も霧散した。……あと六十秒か」
ラダはここでアーバルを倒し切るべく、最後の挑発をしかけた。だが、接近された際の一合が効いたか、アーバルは乾いた砂地のような感情で彼女を見つめ、踵を返した。敗北を認めたのだ、この男は。そして死ぬ気はないと、全力で逃げに出た。その頃には、ビオートの首はソアの回し蹴りで弾け飛び、残されたメンバーがアイトヴァラスにとどめを刺すべく駆け出していた。
――勝利としては、最上一歩手前まで。
彼らはこの地で、攻勢を受け止めたのだ。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
お疲れさまでした。
ビオート、もう少し生かしておきたかったですが……殺意……!
GMコメント
●Danger!
当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。
成功条件
・終焉獣『ビオート』並びに『滅石花の騎士』アーバル・リリウムの撃破または撃退
・『不毀の軍勢』の全滅、『アイトヴァラス』の撃破
・『滅びの魔法樹』を成長前に破壊する
(ロサ・ジュベールの生死は成否に関連しない)
失敗条件
・『滅びの魔法樹』の完全成長(出現して15ターン経過後、出現位置からレンジ1以内で一定数の死者orパンドラ消費により達成)
・ロサ・ジュベールの反転
●終焉獣『ビオート』
『<ラケシスの紡ぎ糸>薔薇盾の輝き』にて逃げ延びた『変容する獣』です。姿かたちはOPの通りで、以下の特性を持ちます。
・肉体は光沢と滑りのある肌に覆われています。「クリーンヒット」以下の命中判定が発生した場合、強制的に一段階下げた数値で判定されます。
・肉食獣の足を持つため反応、機動力に優れ、攻撃のほぼ全てに【移】を伴います。わざと対象を地形地物にとって攻撃+移動を行って距離を大幅に詰めに来るとか、割とやりたい放題の行動半径を有します。
・顔は靄に覆われ、それ自体が精神撹乱の作用を持ちます。わざと顔を正視でもしなければ大丈夫ですが、至近距離での攻撃を受けた場合、強制的に顔に視線を向けられます(【精神系列】の抵抗1/2判定)
・腕は鱗に覆われ爪を有します。大振りですが、一撃の威力は高いものとみていいでしょう。また、【出血系列】を伴います。
・高水準の【再生】を持ちつつ、【反動(大~極体)】の自爆、『不毀の軍勢』への自爆特攻の強要を行います。
※なお、戦闘により倒せなくても、与えたダメージの総量に応じてこれらの能力を【永続的に】喪失させることが可能です。
●『滅石花の騎士』アーバル・リリウム
『滅石花(ほうせき)』を埋め込まれた不毀の軍勢の強力な個体。これ自体が強力な『滅びのアーク』のハブ的存在なので、ロサ嬢には近づけるべきではないでしょう。
基本的にはハルバードを用いたやや大味な戦闘スタイルで、BSらしいものはほぼ伴いませんが、その分基礎性能に全振りしています。
とはいえ、性格上か滅石花の影響か、全体的にきざったらしい為か鎧の表面積が何故か小さめで、防御力は贔屓目に高くはありません。……まあタフネスがあるので肉体で受けるタイプなのでしょう。
きざな外見のくせに武人タイプの豪放磊落さを感じ取れるのですが、まあちぐはぐですね……。
●『アイトヴァラス』
胴の直径が1m、体長4m程度の大蛇です。全身の鱗にちらちらと炎が混じっています。攻撃に【火炎系列】が伴います。
鱗を飛ばしたり(中距離)巻き付いたり(至近)、ヘビらしかったりらしくなかったりする攻撃を行ってきます。
主に『滅びの魔法樹』の出現地点周辺から動かず、イレギュラーズを待ち構えます。なお、鱗を飛ばす回数が過度になると加速度的に弱体化しますが、それはそれで悠長な戦いになるでしょう。
●『不毀の軍勢』×6
そこそこの実力を持った、両手剣持ちの戦士達。
うち一名は『滅びへの種』を戦闘開始時に蒔き、『滅びの魔法樹』出現時に養分として消滅します(骨も残さず)。
彼らは戦闘面でそこそこできますが、その真価は自爆特攻兵器としての使い捨てです。
●滅びの魔法樹
戦闘開始時に種が蒔かれ、5ターン目開始時に高さ1m程度まで一気に成長します。
その後15ターンをかけて成長し、それ以降に失敗条件を達成すると『滅石花(ほうせき)』を咲かせ、周囲に滅びのアークを撒き散らすようになります。
ここまでいくとその場にいる事自体危険なので、『失敗してなお破壊したい』としても3ターンが生命に影響しないリミットでしょう。
友軍
●『鋳熱の朱薔薇』ロサ・ジュベール
非常に小柄で細身に見え、明らかに戦闘要員としては心許ない姿に見えるがその実、所謂『超人体質』の持ち主でもと幻想の中級貴族の出、しかも鉱山を所領とした者の系譜だけあってバチバチの武闘派。
前回登場時よりは多少実力が上がっていますが、やはり特殊抵抗がちょっと低めなのでそのあたりはケア必須です。
呼び声には多少の抵抗は利きますが、リリウムと魔法樹へは近づけさせないのが賢明でしょう。
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
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