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シナリオ詳細

<Je te veux>希望ヶ浜に夜は降るなり

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●夜の希望ヶ浜学園
 そこは東京だった。
 異世界に召喚されながらもその空気になじめなかった現代日本の住民たちや、その子孫。
 そういった者たちが暮らすここは再現性東京と呼ばれ、その中でも希望ヶ浜地区は有名だ。練達の中に作られた小さな現代日本風都市である。
 あなたはそんな希望ヶ浜地区の希望ヶ浜学園内を、ゆっくりと歩いていた。
 廊下に差し込むのは夜の月明かり。
 生徒のいない校舎内は静かで、灯りも消えたとなるとどこか不気味ですらある。
 あなたはポケットからスマホ(aPhon)を取り出し、表示を確かめる。
 薄暗い廊下に灯るディスプレイの中には、希望ヶ浜学園校長黄泉崎ミコトからの呼び出しメッセージが書かれていた。
 またぞろ夜妖でも出たのだろうか。そんな気持ちで歩いて行くと、校長室の前へとたどり着く。
 扉についた小窓からは光が漏れ、そこに誰かいることを思わせる。おそらくは、彼だろう。
 何気なく開いて見れば、即座に感じる酒精の香り。
 ソファに腰掛けた黄泉崎校長は悪びれもせずにブランデーの瓶を開き、グラスに注いでいる所だった。
「おお、来たか。待っていたぞ」
 ふと見れば、そこには何人かのイレギュラーズたちの姿もある。
 なるほどこれは、夜妖でなかったとしてもなにかの事件に違いない。

●狙われたパンドラ収集器
「そっちも聞いているか? ラサの南部砂漠コンシレラでベヒーモスが動きを見せたらしいな。
 なんでも、背中からぼろぼろと終焉獣を湧き出させては転移陣を使って世界各地に飛んでいるとか。
 その目的はパンドラ収集器の強奪。奪ったパンドラをベヒーモスに持ち帰って喰らい、まるで呼吸でもするように滅びのアークを吐き出すそうだ。
 ここへきて滅びの加速などされてはたまらん。なにより、収集器を奪われるのもたまらんな」
 校長のパンドラ収集器は何かと誰かが問えば、校長は部屋の隅に立てかけられていた木刀を顎で示した。
「この土地にはイレギュラーズも多い。ベヒーモスにとっては絶好の狩り場になるだろう。お前たちには、ここの防衛を頼みたい」
 なんだ、夜妖事件ではないのか……と思いつつも、街の危機。というならそれは対処しなければまずかろう。
 そうしていると、校長が意味ありげに窓辺に立ち、外を眺め始めた。
「見ろ、早速だぞ」
 校長がグラスを小さく掲げ外を指し示す。
 言われて外を見てみれば、校庭に転移陣が出現し、その中から複数の小型ベヒーモスと無数の終焉獣が湧き出るところが見えた。
「校舎に多少被害が出てもかまわん。小型ベヒーモスと終焉獣の駆除を頼みたい。できるな?」
 そう問いかけたあと、校長はこうも付け足した。
「それと、俺は戦力にならんからここから見学させてもらうぞ。なにせ、犬に噛まれただけで死ぬからな」
 校長はそう言って、おどけたように肩をすくめて見せた。
「なに、終わったらせめて酒くらいは奢ってやる。未成年にはジュースをな」
 では、頼んだぞ。そう言い残し、校長は自らの椅子へとすとんと腰掛けたのだった。

GMコメント

●シチュエーション
 夜の希望ヶ浜学園に小型ベヒーモスと終焉獣の群れが出現しました。
 狙いはおそらく校長の持っているパンドラ収集器でしょう。
 彼らを迎撃し、学園と街の平和を護りましょう!

●フィールド
 小型ベヒーモスと終焉獣たちは夜の校舎内へと侵入しようとしています。
 急げば間に合うので、外での戦闘が可能でしょう。
 多少強引に突破されても追いかければ問題ありません。

●エネミー
・終焉獣×多数
 まず最初に突破を試みてくる終焉獣たちです。
 大半が四足歩行の獣めいた姿をしており、牙や爪で攻撃してきます。
 小型ベヒーモスと連携されるとかなり不利になるので、序盤に潰しておきましょう。

・小型ベヒーモス『ナイトヘッド』×3体
 闇を操る魔術を行使する小型ベヒーモスです。
 闇の槍や鞭、棍棒といったものを作り出し攻撃をしかけてくるでしょう。
 連携されるとかなり厄介なので、こちらもばらけて個別に対応するのが良いと思われます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <Je te veux>希望ヶ浜に夜は降るなり完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2024年02月14日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳
ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)
月夜の蒼
華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
ココロの大好きな人
茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)
音呂木の蛇巫女
エーレン・キリエ(p3p009844)
特異運命座標
囲 飛呂(p3p010030)
君の為に
柊木 涼花(p3p010038)
絆音、戦場揺らす
紅花 牡丹(p3p010983)
ガイアネモネ

リプレイ


「ジュースで満足すると思ってんのか!
 くそ、終わったらせめて追加で飯も奢れってタカってやるからな、校長先生!」
 校長室を出る直前、びしっと指を突きつけて『点睛穿貫』囲 飛呂(p3p010030)は叫んだ。
「ああ、いいだろう。必要経費だ」
「校長先生の奢り……とびきり美味しいものを期待してますね?」
 ちゃっかり話に乗った『灯したい、火を』柊木 涼花(p3p010038)は背負っていたギターをケースから出しつつ走り出す。
「いつになったら平和になるのやら……。
 イレギュラーズのことは心配はしていませんが、一般の方が巻き込まれたら大変です。
 手早く片付けないとですね!」
「ああ、だな……!」
 ライフルをケースから取り出し素早く組み立てる飛呂。
 そんな二人を追い抜いて、『ガイアネモネ』紅花 牡丹(p3p010983)は豪速で階段まで走って行った。
 全段抜かしで踊り場の壁を蹴ると、更に全段抜かして着地する。それを繰り返し高速で一階まで降りると校庭への扉を押し開けた。
「っし、一番乗りだぜ」
 などとやっていると、窓から『侠骨の拳』亘理 義弘(p3p000398)が飛び出し飛行魔法を使って安全に着地する。
「校長のパンドラ収集器が木刀とは、何故わざわざこれを? と思わざるを得ねえが
 ともかく、破壊されては困るものだ。仕事はきっちり行わねえとよ」
 その隣には、翼を羽ばたかせた『蒼剣の秘書』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)がゆっくりと着地する。
「イレギュラーズ達は大丈夫、こういう危機を何度だって乗り越えて来たのだもの。
 皆が安心できるよう、ここは圧勝して見せないとなのだわ」
 それから少し遅れて『月夜の蒼』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)が校庭へと出てくる。
「やれやれ、そんなにパンドラ収集器が欲しいのか。
 虱潰しに集めて喰って、滅びのアークを貯めるためにそこまでやるかね。
 まあ言葉の分からない獣に聞いたところで無意味だろうけど。
 向かってくるなら片付けるまでさ、今回も楽しい大掃除といこう」
 その一方。
「夜妖事件ではないのか……ウチめっちゃ怪異出ると思ってめっちゃその気だったんだけど! ちょーしぴえーん!
 え? 終わったらジュースを奢ってくれるって! わははは! 経験が生きたな!
 私ちゃんぶどうジュースな! ぶどうジュース! 濃縮還元じゃないたけーやつ!
 そんじゃ終わったら夜の学園でパリろーぜ! まずは声出しうぇいうぇーい!
 え? 夜だから静かに? ぴえん」
 などと言いながらスマホ片手に『音呂木の蛇巫女』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)が校庭へと出てきた。どうやら直前まで校長と話していたらしい。スマホをポケットに入れると刀にスッと手を伸ばす。
「そんじゃま、さっさとお仕事こなしますか。べひんもすだっけ? どーせ夜妖とかわんないっしょ」
「まあ、かもな」
 牡丹も片翼をバッと広げて戦いの姿勢をとる。
 なにげに牡丹と同じくらいの速さで校舎の凹凸をアクロバティックに伝い到着していた『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)も刀を抜き、まっすぐにそれを構えた。
「全然考えもしなかったが……パンドラとアークが相反しあうモノであるならパンドラを喰う怪物が出てくるのは確かに道理だ。
 であれば、イラギュラーズのパンドラ収集器を喰らおうとする連中もいるわな、そりゃ。
 ……ま、そんなふざけた真似など絶対にさせないわけだが」
 ちらりと見れば、二階の窓から飛呂がライフルの狙いを終焉獣たちにつけている。
 涼花も準備万端と行った様子でギターを構え、ピックをたてていた。
 華蓮はきりりと弓に矢をつがえ、ルーキスは『星灯の書』を手に魔術を練り上げている。
 そして義弘がファイティングポーズをとったところで、全員は一斉に動き出したのだった。


 真っ先に飛び出したのは誰有ろうエーレンであった。
「まずは俺が敵を弱らせる。そこを叩いてくれ」
 剣の閃きが走り、鳴神抜刀流・衰滅之手引『散華』が繰り出される。
 敵集団の長所の「要」を一瞬で見抜きすれ違いざまに斬り抜けるという卓越した技である。
 迎撃に出ようと牙を剥いた終焉獣だが、あまりの速さに一方的に切られるばかりだ。
 そうやって足を切断され大きく体勢を崩した終焉獣。
 エーレンが今だと叫ぶと、義弘がそこへ突っ込みどこからか持ち出してきた金属ロッカー(所謂掃除用具入れ)を振り回して終焉獣を殴りつけた。
 冗談のように吹き飛んでいく終焉獣たち。
 当然だ。エーレンによって派手に弱った終焉獣は隙だらけであり、そこに『ワイルドキングストリーム』を叩き込まれれば誰だってこうなる。
「まずは終焉獣の数を減らすことだ。今のうちに――むっ」
 咄嗟にロッカーを翳して防御の姿勢をとる義弘。
 そこへ小型ベヒーモス『ナイトヘッド』の棍棒が叩き込まれた。
 闇によって作り出された棍棒はしかし、鋼で出来ているのかと思えるほど重く鋭い一撃を入れてくる。実際に義弘が持っていたロッカーは大きくひしゃげ使い物にならなくなってしまった。
 ならばと放り捨て、素手で対抗する義弘。
 撃ち込まれた二発目の打撃を両手でがしりと受け止める。
 腕には結構な衝撃が走ったが、とめられない程では無かった。
 そこへ槍を持った二体目のナイトヘッドが突っ込んでくる。
「おっと、連携されると困るんだよね」
 そこへ悠々とした調子で割り込んでいったのはルーキスだった。
 突っ込んでくるナイトヘッドとその周辺に配置された終焉獣めがけ『ケイオスタイド』の魔術を発動。突如湧き上がった混沌の泥が終焉獣たちの足をとる。
 攻撃に加わろうとした終焉獣たちはそれに失敗して転倒するが、ナイトヘッドは違う。槍を突き出しルーキスへと繰り出してくる。
 それをギリギリのところで回避し、フウと息をついた。
「んー、飛んで火に入るなんとやら。
 目的が解ってるなら対応もしやすい、とはいえ物量が多いのだけが厄介かな!」
 避けきれずかすってしまった傷口を押さえる。回復仲間任せだ。ここはひとまず終焉獣たちをばらけさせるのが必須だろう。
「さあ、こっちだよ!」
 踊るように敵を誘い、『ソトースの銀鍵』を放つルーキス。発動した魔術によって空間がグニャリと歪み、魔術に巻き込まれた終焉獣がその体を歪ませる。
 怪我を負ったルーキスを癒やすのは華蓮の役目だ。
 『紅蓮華』の術を用いてルーキスの傷口に意識を集中。すると槍によってえぐられた傷口が瞬時に修復され、破れた服だけが残る形となった。
「ん、ありがと」
「どういたしまして。それより次が来るのだわ」
 ヒュンという音がして華蓮は急いで前に出た。
 そして彼女の腕に闇の鞭が巻き付く。
 ナイトヘッド三体目による攻撃だ。攻撃が連携してしまうとかなりキツイことになる。できるだけ狙いをばらけさせておかなければならない。そして攻撃を受け流すことに関して、華蓮はかなりの腕前だ。
「こいつは暫く引きつけておくのだわ。終焉獣をその間に――」
「おっけーおっけー!
 終焉の獣をやっつけるベヒンモスもやっつける。
 どちらもやらないといけないのがウチらのつらーいところだが。
 今から力とパワーでそれを証明してもらおうじゃないかーい!
 よーし、さっそく初めてみっか!
 ――私ちゃんらになら、きっと、それができるはずだから」
 秋奈はナイトヘッドと離された終焉獣たちに突っ込むと『名乗り口上』を放ちながら剣を振るう。
「せっかくだからバレンタイントークしようぜ!」
 しれっとナイトヘッド一体を範囲に収めて『名乗り口上』をぶつけてみたのだが、どうやらレジストされてしまったらしい。ならばと仲間たちに任せて『絶ぽこちゃかニューイヤー』を叩き込む
「ないないぜよー! うぇいうぇーい!」
 終焉獣を思い切り蹴散らす秋奈。
 飛呂は窓から狙いを付けつつ、そんな終焉獣たちめがけ『プラチナムインベルタ』を放った。
 発射された特殊弾頭が分裂し、終焉獣たちへと降り注ぐ。
 それは終焉獣の装甲を焼く酸の雨となって防御を崩しにかかった。
「BS付与は成功。次だ」
 冷静に弾を入れ替え、今度は殺傷能力の高い『ジャミル・タクティール』の拡散弾を放つ飛呂。
 魔術によって拡散したライフル弾が次々に終焉獣の体へと命中し、その動きを影に縫い付けるかのごとく封じていく。
「このまま畳みかける。涼花さん、攻撃に集中してくれ」
「わかりました――!」
 涼花はギターをかき鳴らしその音を魔術へと変換していく。
 発動した魔術は『シムーンケイジ』だ。
 予め飛ばしておいたファミリアーの小鳥が校庭の空をぐるりと周回飛行し、適切な位置への魔術発動をサポートする。
 発動した魔術は熱砂の竜巻となって終焉獣を包み込み、巻き上げていった。
「涼花、こっちだ!」
 そう声をあげたのは牡丹だった。
 『あまたの星、宝冠のごとく』を発動させて終焉獣たちを引きつけていた牡丹は、自らを囮にして終焉獣を団子状に密集させていたのだ。
 こくりと頷き再び『シムーンケイジ』の魔術を発動させる涼花。
 四方八方から襲いかかった終焉獣たちにザッと膝をついた牡丹。彼女を中心にして突如として巻き起こった熱砂の竜巻が、牡丹に襲いかからんとしていた終焉獣たちを巻き上げて上空へと吹き飛ばす。
 どさどさと落ちてきた終焉獣はぎゃんと声をあげ、その殆どは動かなくなった。
「よし! それじゃあ――仕上げだな!」
 牡丹はギラリとナイトヘッドの方を向くと、片翼を広げて飛び込んでいった。


 ナイトヘッドへと派手な膝蹴りを叩き込む牡丹。
 ダメージこそは少ないものの、注意を引くには充分な一撃だ。
 ナイトヘッドは闇から棍棒を作り出すと牡丹めがけて思い切り振り込んできた。
 それを大きな跳躍によって回避する牡丹。
「こいつはオレが引きつける。今のうちに撃ちまくれ!」
 牡丹が呼びかけたのは飛呂だ。
 飛呂は窓から狙いを付けるとナイトヘッドの頭部めがけて特別製の弾丸『Snake Venom:Neurotoxin』を発射。
 邪神の神秘を利用したという特別な毒がナイトヘッドの頭部に炸裂し、その動きを大きく損なわせる。それでも牡丹を狙い続けたナイトヘッドが大ぶりな一撃を繰り出すが、今度は大きく飛び退くことで牡丹はそれを回避する。
 二度にわたって空振りをしたナイトヘッドは、自分が敵の術中にはまったことを悟った。だが、もう遅い。
 飛呂は既に『ラフィング・ピリオド』の弾を装填し終えており、ナイトヘッドの頭部めがけて狙い違わず発射していたのだ。
「――ッ」
 ハッとして振り返るナイトヘッド。その頭部が弾け、がくりと膝をつく。
 そしてそのまま、ナイトヘッドはその体躯を地面に倒れさせたのだった。

「いくぜ、テンアゲコール! か弱い乙女ぇー! MC私ちゃんでウェーイ!」
 ナイトヘッドに狙いをつけて注意を引き続ける秋奈。
 相手の間合いを詰めて強引に刀で斬り付けるその一方、闇の槍による攻撃がざくざくと秋奈の体を傷つけていた。
 そんな体を治療するのは涼花の役目だ。
 ギター演奏に力を込め、治癒の魔術を発動。秋奈の全身にできたいくつもの傷を治療していく。
 そして隙を見つけ――。
「そこです!」
 『ソウルストライク』の魔術を生成、ギター演奏がサビに入ったと同時に無数の魔術弾がナイトヘッドの体へと叩き込まれていく。
「勝ったな!」
 その様子を見ていた秋奈はニッと笑ってエーレンに視線を向ける。
 エーレンは頷き、秋奈とは反対側になるように回り込みナイトヘッドに刀を向けた。
 踏み込みはほぼ同時。
 どちらに対応しても死ぬという絶死の交差剣。
 秋奈の剣はナイトヘッドの脇腹を斬り割き、エーレンの剣はナイトヘッドの首を斬り割く。
 それでもしつこく生き残ったナイトヘッドが闇の槍をエーレンへと突き出してくる。死に物狂いの一撃だからだろうか。それはエーレンの脇腹に鋭く突き刺さり肉をえぐる――が、それでもエーレンを止めることなどできなかった。
「――鳴神抜刀流・太刀之事始『一閃』」
 くるりと身を翻し、刀でもってナイトヘッドの腕を切り飛ばすエーレン。
 手にしていた槍ごと落とされたナイトヘッドは今度こそよろめき、その場にがくりと膝をついた。
 『モード・シューティングスター』によって底上げされた機動力がそのまま威力へと上乗せされた一撃だ。そうそう逃げ切ることなどできはしない。
 ナイトヘッドは最後の悪あがきを見せるかのように腕を伸ばしたが、その腕もまた秋奈の二刀流斬撃によってスパンと切り落とされ、無残にその場に転がることになったのだった。

 残る一体と渡り合っていたのは義弘、ルーキス、華蓮の三人だ。
「こうしているだけでもこちらの有利は確定なのだわよ」
 腕に鞭を巻き付けられ、棍棒で殴られ続ける華蓮。だが彼女は自らに治癒の魔法を連打し、ダメージを相殺し続けていった。
 結果どうなるのかと言えば、『祝詞』の【棘】効果によってナイトヘッド側にダメージが蓄積し続けることになるのだ。
 華蓮のエネルギー切れを狙うという手もナイトヘッドは思いついていたが、それも望み薄だろう。能率五割を超える華蓮のエネルギー切れはかなり先の話だ。
 そんな中で、ルーキスはナイトヘッドを追い詰めにかかった。
 急速に接近するルーキスに対して、焦ったナイトヘッドが槍を繰り出す。
 が、それをルーキスは体力で受けた。
「一発ぐらいなら耐えられるだけの耐久はあるからね。
 私の仕返しは重たいぞ、遠慮しないで持っていくと良い」
 至近距離で発動する『禍剣エダークス』。
 宝石を核として生み出した剣がナイトヘッドの体へと突き刺さり、激しい暴走を引き起こす。
 爆発した剣の衝撃は凄まじく、ナイトヘッドは思い切り吹き飛ばされることとなった。
 闇の武器を一度消滅させ、地面をごろごろと転がるナイトヘッド。
 そこへ、義弘が猛烈な速度で突っ込んでいく。
 ならばと槍を作りだし投擲するナイトヘッドだが、義弘はその槍をがしりとキャッチ。素早く反転させるとナイトヘッドの体へと突き立てる。
「ここでやられるわけにも、収集器を奪われるわけにもいかねえからよ」
 深く相手に突き立て、ねじる。
 ナイトヘッドはうめき声をあげて抵抗したが、その抵抗もむなしくその場にがくりと倒れ伏すことになったのだった。


 戦闘が終わった校庭に、ふらりと校長がやってくる。
「ご苦労」
 そう言いながら煙草をふかす姿はなんとも言えない。
 義弘は肩をすくめ振り返った。
「全部終わったら、酒をおごってくれるんだろう? 俺はおでんの屋台で大根でも食いながら一杯、でもいいんだがよ」
 義弘が振り返ると、それじゃあ満足しないぞとばかりに腕組みする飛呂や秋奈の姿があった。
「ああ、そういう約束だったな」
 ついてこい、と車のキーを取り出す校長。
 義弘もまた車のキーを手に取り、そのあとについて行く。
 戦闘後のジュースは随分と格上げされて振る舞われることになったようだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

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