PandoraPartyProject

シナリオ詳細

セクシー大根isなに? 或いは、そんなもの植えるから…。

完了

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●セクシー大根
 セクシー大根というものがある。
 とても悩ましいポーズをしている二股大根であり、悩ましく艶やかな鳴き声を発する大根である。
 繁殖力は強く、そして美しく、美味しい。
 何より、セクシー大根は足が速いのだ。食べごろになると土から抜け出し、逃げ出すのである。
 そんな大根があるわけない?
 それは大根に似た魔物なのではないか?
 なるほど、そのような疑問ももっともだ。何しろ上記の説明文の中に、大根である要素など「セクシー大根」という名称以外に無いのだから。
 だが、ある。
 セクシー大根は実在するし、上述した説明の中に誤りなど1つも無い。
 つまり、まぁ……。
 セクシーな大根は、勝手に動くし、鳴くし、逃げるのである。
 ……なにこれ?

「参ったな……まさかこんなことになるなんて」
 フーガ・リリオ (p3p010595)が頭を抱えて項垂れている。
 その足元を、1本の大根が歩いて行った。
 腰(大根に腰があればだが)をくねらせ、艶やかに。なんてことない森の地面が、その大根にはスポットライトと拍手喝采が降り注ぐ、ランウェイにでも見えているのかもしれない。
「おい、何だこれ? なんでうちの畑に、こんな珍妙なもんが植えられてんだ?」
「珍妙なもんじゃなくって、セクシー大根だよ。武器商人 (p3p001107)さんのところで種を仕入れて植えといたんだ」
「珍妙なもんだよ、それァ」
 クウハ (p3p010695)が視線を向けた先には、うっすらと雪の積もった畑がある。
 畑に植えられているのは、白菜をはじめとした冬野菜だろう。その中に幾つか、もぞもぞと動いているものがある。
 あるというか、居る。
 動く野菜が、そこに居た。
「収獲するぞ。セクシー大根をすべて……あ、コラ! 館に入ろうとするんじゃねェ!」
 クウハは森の洋館に侵入しようとするセクシー大根を捕まえに。
 フーガは仲間に助力を乞うべく。
 それぞれ行動を開始した。

●セクシー大根
 武器商人(年齢不詳、性別不明)はかく語る。
「“食糧問題”というものは多くの世界において珍しいことではない。土の問題、気候の問題、病・災害による作物への打撃……要因は様々あれどその結果、作物が失われ人々は飢えに苦しむこととなる。それを解決すべく開発されたのがセクシー大根というわけだね」
 あまりにもアクロバティックな解決方法である。
 争いを無くすために、人類を全て滅ぼせばいい……それに似た力任せの解決方法である。作物が枯れたりしないために、作物自身に移動能力を持たせるという辺りが特に。
「それがどうしてこんなことになってますん? ほら、望乃さんが蹴られましたやん」
 火野・彩陽 (p3p010663)が指差す先には、地面を転がる佐倉・望乃 (p3p010720)の姿があった。大根に蹴られたにしては良く飛んでいた。
 しばらく大地を舐めていた望乃だったが、やがてよろよろと顔を上げ、土に塗れたまま問うた。
「こ、これ……【飛】や【懊悩】、【魅了】持ってますよ? セクシー大根ってこんなのなんです?」
「……なにそれ、知らない」
 望乃の疑問を、武器商人が否定する。
 少なくとも、武器商人が扱っているセクシー大根にはそのような、およそ戦闘能力と呼ばれるものは備わっていない。
 自走能力全振りである。それもどうなんだ、という話ではあるが。
「突然変異じゃねぇノ? ここの地面、変なもんでも埋まってんのカ?」
 赤羽・大地 (p3p004151)は、クウハの方へ視線を向けた。
 クウハは腕を組んだまま、数秒の間、思案する。
「あり得ねェ話じゃねェ……色々いるからな、ここにゃ」
 と、そう呟いて。
 どこか陰鬱で、不気味な森の洋館の方へ視線を向けた。

GMコメント

●ミッション
セクシー大根の完全収穫

●ターゲット
・セクシー大根×?
数十本のセクシー大根。詳しくは以下参照↓
https://rev1.reversion.jp/guild/193/shop/detail/113

突然変異種のようで、ただ走るだけでなく【飛】、【懊悩】、【魅了】を伴うドロップキック(セクシー)を放つ。

●フィールド
幻想。森の洋館。
https://rev1.reversion.jp/guild/1335
セクシー大根は、森の洋館の畑に植えられている。
森の洋館周辺は、鬱蒼と樹々が生い茂っている。
セクシー大根は以下の3カ所に分散して逃走している。
① 畑 広い畑です。見通しは良好ですが、白菜などが植えられているため踏まないように注意しましょう。
② 森 鬱蒼と樹々の生い茂った森です。視界や足場が悪く、死角も多くなるため注意が必要です。
③ 洋館内 森の洋館内です。部屋数が多く、また家具などの障害物も存在します。

手分けしてセクシー大根を収穫しましょう。

●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります

  • セクシー大根isなに? 或いは、そんなもの植えるから…。完了
  • GM名病み月
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2024年01月28日 22時10分
  • 参加人数6/6人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(6人)

武器商人(p3p001107)
闇之雲
※参加確定済み※
赤羽・大地(p3p004151)
彼岸と此岸の魔術師
※参加確定済み※
フーガ・リリオ(p3p010595)
青薔薇救護隊
※参加確定済み※
火野・彩陽(p3p010663)
晶竜封殺
※参加確定済み※
クウハ(p3p010695)
あいいろのおもい
※参加確定済み※
佐倉・望乃(p3p010720)
貴方を護る紅薔薇
※参加確定済み※

リプレイ

●彷徨えるセクシー大根
 セクシー大根。
 その名の通り、セクシーな大根である。
 品種改良の結果、誕生したのか。それとも、過酷な大自然を生き延びるために進化したものか。或いは、夢か幻か。
 とかく珍妙珍奇なる根野菜であることに間違いはなく。
 そして、セクシーであることもまた確かであるのだ。

「これが、そうカ。驚いたな……本当に動いているし、セクシーダ」
「や、びっくりした。無駄にセクシィな二股大根がこんな進化をするとはねぇ」
 鬱蒼とした森の中、『彼岸と此岸の魔術師』赤羽・大地(p3p004151)が手にしているのは、身をくねらせるセクシーな大根。件の“セクシー大根”である。
 大地の手の中で藻掻く、或いは腰をくねらせる大根を見て、『闇之雲』武器商人(p3p001107)はいかにも愉快そうな笑みを口元に浮かべた。
「今度はクウハの洋館で育てて研究してみようかなァ」
「止めておいてやれよ」
「……え、だめ? そっかァ」
 そう。この武器商人という怪しい輩こそ、セクシー大根の開発者である。つまりは、此度の騒動は、大元まで辿れば武器商人が発端であった。

 畑の畝を歩いているのは、数本……或いは、数体のセクシー大根だった。
 畝をランウェイとでも思っているのか。
 列を作って、威風堂々、優美華蓮に歩く様はファッションモデルのそれに似ている。
「完全においらのせいだ」
 畑に大根を植えたのは、彼……『世界で一番幸せな旦那さん』フーガ・リリオ(p3p010595)に相違ない。
「クッ……先程は油断して地面に転がされてしまいましたが、特異運命座標に同じ技は二度も通用しないのですよ!」
 拳を握る『世界で一番幸せなお嫁さん』佐倉・望乃(p3p010720)。その頬や髪には、泥がこびり付いている。セクシー大根のドロップキックを腹に受け、地面を転がったからだ。
 傷付いた妻を見て、フーガは表情を暗くした。
 自分が興味本位で大根を植えたばかりに……そんな後悔が胸を締め付ける。だが、誰が想像できただろうか。セクシーなだけの大根が、まさか戦闘能力まで備えるなんて。
 そんな馬鹿な話があるものか。
 だが、あるのだ。
 馬鹿な話だが、目の前に起きていることは現実だ。
「ケジメを付けなくては……衛兵を舐めんな!」
「えぇ! 全員捕まえて、セクシーお大根料理パーティーです!」
 顔を見合わせた2人は、大根を捕獲するべく畑の方へ踏み出した。

 大根が駆ける。
 その短い足を必死にばたつかせ、暗い廊下を疾走している。
「ラディッ……シュッ!!」
 葉の部分を大きく振り回して姿勢を制御。
 廊下を滑るようにして、曲がり角を通過した。見事なドリフト走行を決めた大根の後を、『あいいろのおもい』クウハ(p3p010695)が追いかける。
「まさか大根と追いかけっこすることになるとはな……」
 人なら飽きるほどに追いかけた。
 獣を追い回したことも数えきれないほどにある。
 だが、大根を追いかけるのは初めてだ。なぜなら、本来、大根は逃げないからだ。
「慈雨が言うにはアイツら鳴き声も上げるらしいが、悲鳴はどうだ? イイ声でなく大根ってのも妙な気分になりそうだな……」
 大根を追いかけながら、クウハは猫のような笑みを浮かべた。

 クウハの住まう館には、数多の怪異が住んでいる。
 最初から住んでいた者もいれば、クウハがスカウトして来た者もいる。いつの間にか勝手に住み着いていた者もいる。
『いやぁ、なにこれ! なにこれ!』
『大根! 走ってる!?』
『館主がまた、どこかから変な物を連れて来たのか?』
 館の1階、談話室には複数人の“霊”がいた。
 霊たちの話題は、談話室の前の廊下を歩いて行った数本の大根のことでもちきりだった。
 セクシー大根は、何を思ったか廊下の前を何度も何度も行き来している。
「……どっからまずつっこんだらええんやこれ?」
 少し離れた柱の影から、『晶竜封殺』火野・彩陽(p3p010663)がそれを見ている。
 談話室前を行き来している大根と、それを見ながら言葉を交わす霊たちの姿を眺めている。
「大根動くの? こっちだと動くの普通なの?……いや、うん。普通か」
 普通ではない。大根は大根なので、まぁ、基本的には歩かない。
「こっちやと色々おかしくはないんかなあ。うーん……毒されてる? どっちやろ」
 毒されている。
 このようなトンチキ極まる出来事が多発するのが混沌という世界ではあるが、まぁ、確実に毒されている。ぜひ、自分の中の“常識”を大切にしてほしい。
「まあええや。とりあえず全部とっつかまえたらええんかな?」
 それはそう。
 今更、大根の1本や2本が加わったことで困るような館ではないが、今回に限りは捕らえることが正解である。

●大根を捕まえ、そして調理せよ
「でぇこん!」
「D、Deeeeeeee!」
「ラデッシュ!」
 その鳴き声は、奇妙なほどに艶めかしい。
 まるで女性のような声で、大根たちが鳴いている。腰をくねらせ、脚線美を強調するかのようなポーズを取りながら、じりじりと後ろへ下がっていく。
「でぇっ!?」
 だが、いつまでも下がり続けられるわけはなく。
 大根たちの背が、洋館の壁にぶつかった。
 追い詰められたのだ。
「堪忍なぁ」
 そう言って彩陽はキリリ、と弓を引き絞る。
 番えた矢に、黒く禍々しい霊気が集約する。ざわり、と館全体が震えた気がした。
 館に住まう霊たちが、嗤ったのである。
 不気味なオーラに気圧されたのか、セクシー大根たちが怯えたように身体を震わせる。怯えた仕草さえもどこか色っぽい。
 当然だ。
 彼らはセクシー大根なのだから。
 セクシーさを失ってしまえば、それはもう、ただの大根である。
 怯えていても、震えていても、存在意義を失わないためにはセクシーであり続けるしかないのだ。
「大丈夫大丈夫。不殺つけといたるからな。死にゃあせんよ」
 呼吸を止めて。
 指から、ふっ、と力を抜いた。
 刹那、風を斬り裂く音がした。
 放たれた矢が、虚空で揺れる。否、霊力で形成された矢が、数十本にまで分裂したのだ。
 降り注ぐ矢が、大根たちを撃ち抜いた。
 大幅に手加減して放った一撃である。大根たちが、砕け散るようなことは無かった。彩陽の放った矢は、大根たちの脚を、腰を、葉を掠めて……床の上に転がした。
「でぇ……こん……」
「らでぃ……らでぃ」
「でぃぃぃ……でぃぃぃ」
 転倒してなお、大根たちはセクシーだった。
 よろよろと、立ち上がろうとする。
 立ち上がって、逃げ出そうとしていた。
 生きる意思が強いのだ。
「殺しゃしねェっていうけどよ、俺達に食われりゃ結局死ぬだろコイツら」
 だが、逃げられない。
 大根たちはもう終わりだ。
 頭部から生えた葉を掴み、クウハが大根に顔を寄せた。大根はクウハの顔面を蹴り飛ばすべく足を必死にバタバタさせるが届かない。
 大根の蹴りが強烈であることはクウハとて理解している。
 今更、不意を突かれて蹴られるような油断はしない。
「他にも何匹か紛れ込んでんだろ?」
 声を低くし、クウハは大根へ囁いた。
「多少館が荒れるぐらいはこの際気にしない。派手に遊ぼうぜ?」
 そもそも、クウハの館には内臓を撒き散らしながら移動するような霊が住み着いているのである。
 大根によって、多少、館が荒らされる程度……汚れのうちにも入らない。

 誰にも気づかれないうちに。
 じわじわと、大根たちは周りをすっかり囲まれていた。
 スライムだ。
「でぇこん?」
「ラディ? ラディ?」
 大根たちには、それが何か分からない。
 それもそのはず。少し前まで、土の中に埋もれていたのだから当然だ。
 だが、そんな大根たちにも理解出来たことがある。
「愛する夫に手当てしてもらったので、元気百倍です!」
 望乃が、自分たちを捕獲しようとしていることは明白だった。
 先にも1度、望乃には捕まりかけた。
「でぇ……!」
「ディッシュ!」
 逃げ場はない。
 あるとすれば、望乃を倒して、強引に突破することだけが大根たちの生きる道なのである。
 まぁ……スライムの包囲網を突破する方が、圧倒的に楽なわけだが。
 けれど、しかし……。
 圧倒的な強者に立ち向かうことが、真なるセクシーなのではないか。
「らでっぃ!」
 大根が跳んだ。
 そのセクシーな脚で地面を蹴って、土砂を盛大に撒き散らして、高くへ跳んだ。
 そして放つドロップキック。
 直撃すれば、望乃を弾き飛ばすことも容易であろう。
 とはいえ、しかし……。
「何が何でも望乃が一番だ! おいらが絶対に望乃を護ってやる!」
 フーガが、望乃を庇う。
 交差させた両腕で、セクシー大根の蹴りを防いだ。
 骨が軋む。
 腕ごと上半身がもっていかれそうになる衝撃に、フーガは歯を食いしばる。
 倒れない。
 地面を両足で踏み締めて、大根キックを防いで見せた。
「逃げようなんて思うなよ! 悔しけりゃ最後まで自慢の太ももで勝負しろ!」
 フーガが吠えた。
「らでぃぃぃいぃぃいいいいいいいいっしゅ!!!」
 セクシー大根が呼応する。
 今ここに1人の男と、1本の大根による、激闘が幕を上げたのだった。
 
 大根に鮫が襲い掛かった。
「陸鮫さん、あとでビールと鶏と大根の香草煮をご馳走しますからかっ飛ばして下さい!」
 望乃の視線は、まっすぐ大根へ向いている。
 セクシー大根とフーガの戦いを見ることはしない。フーガが勝つに決まっているのだから、見る必要はない。
 今はただ、大根を捕縛することに全力を注ぐだけである。
 
 空に光が瞬いた。
 望乃の放った信号弾だ。
「おや? どうやら始まったようだねぇ」
「じゃあ、こっちもさっさと片付けないとな」
 武器商人と大地の前には、数匹のセクシーな大根がいた。
 大根たちは、泥に塗れて地面に転がっている。
 泥に塗れてなお、大根たちはセクシーだ。弱々しく鳴く声さえ、艶やかである。
 ポツリ、と雨が降り始めた。
 水に濡れた大根は、悲しみに泣いているかのようにも見えた。
「あんまり時間をかけると大根同士が出会って繁殖してしまうかもしれないからね、急ぐとしよう」
 まさしく、泣いているのかもしれない。
 自分たちの末路を予感し、嘆き悲しんでいるのかもしれない。
「そういえば……この前読んだ本に、ちょっと試してみたいレシピが……」
「やるなら小さい鍋で作れヨ?皆に振る舞うなラ、無難に美味い奴を沢山の方が良イ」
 まぁ、大根の悲しみなど、武器商人にも大地にも、全く関係のないことなわけだが。

●いざ、キッチンへ
 セクシー大根は、もう動かない。
 動かない以上、それはもう、普通の大根である。
 例え、さっきまで元気に鳴いていたとしても、駆け回っていたとしても、所詮は大根。
 人には人の生き方があり、終わり方があるように。
 大根には大根の生き方があり、終わり方があるのだ。
 それはつまり……。
「刈り取った命は、俺達が責任を取って弔わねばならない……。さァ、皆始めようゼ。食材達を散らした事への贖罪ヲ!」
 調理。
 そして、実食である。

 収獲されたセクシー大根の数は悠に数十本。
 山と積まれた大根を、どう処理するかが肝心であった。奪った命だ。無駄にするわけにはいかない。美味しく食べてやる責任がある。
 食材を無駄にすることは、何よりも大きな罪であるのだ。
「クウハ、クウハ。我(アタシ)、だし巻き卵が食べたい。大根おろしとお醤油で食べるやつ」
「まぁ、作ればいいんじゃねェかな。これだけ大根がありゃありとあらゆる料理が作れるし……とはいえ、数十本となると流石に食いきれねェ」
「あと、風呂吹き大根もいいなァ。お味噌で食べるの」
「味噌……あったかな」
 武器商人とクウハがメニューの相談をしている。
 その間にも、望乃はさっそく調理の準備に取り掛かっていた。
「ほかほかおでん、煮物、大根おろしのパスタも美味しそうですよね。もちろん、お味噌汁と、和風ハンバーグも」
「あぁ、大根味噌汁と和風ハンバーグがいいな……『大根おろし』付きで」
 最終的なメニューがどうなるかを問わず、大根は洗って、輪切りにしたり、摩り下ろしたりする必要がある。
 望乃が調理器具を手に取るその横で、フーガは大根を持ち上げた。
 さっきまで、セクシーに動いていた大根だ。
 今となっては、少し艶めかしいだけの普通の大根のようにしか見えない。
「大根おろしのハンバーグ? ……うん。ええんちゃう? 美味しいやろうし」
 普通の大根のようにしか見えないけれど、彩陽は少しそれを食べることに懐疑的だった。
 だって、絶対、普通の大根じゃないのだから。

 料理と言うのは、簡単そうで難しい。
 正しくは、人によっては簡単で、人によっては難しいというべきか。
 ある者は言う。
 手順通りに作れば誰でも美味しい料理が作れると。
 ある者は言う。
 適量とか、少々とか、お好みでとか、曖昧な指示が多すぎると。
 だが、誰もが口を揃えている言葉もある。
 それはある種の絶対的な法則にして、唯一無二の共通認識。
 カレー、鍋、おでん……やばくなったら、そのどれかにすればいいのだ。
「黄金海鮮出汁がある。味を染み込ませてやれば……まぁ、美味くなるだロ」
 ふわり、と漂う湯気の香りが、大地の食欲を刺激した。

 晩餐会が終わった。
 静かな夜だ。
 月を見るためか、食後に紫煙を燻らすためか。
「傷ませんのも勿体ねぇし……ある程度漬物なりに加工するとして」
 庭へと出たクウハの手には、数本の大根が握られている。
 今日の晩餐会でかなりの量を消費したが、何しろ元々、分母が大きい。全ての大根は、6人ではとても食べきれない。
「料理好きの奴らに分けてやる分と冷凍保存する分。今日明日で食う分を確保して」
畑に空いた、幾つかの穴へクウハは大根を突っ込んだ。
 「残りはまた地面に埋めちまうか。やっぱ土に埋めとく方が長持ちするからな」
 葉も、まだ無事である。
 上手くいけば、土の中ですくすくと大きく育つことだろう。
「今度は勝手に出てくんなよ?」
 紫煙をふわりと燻らせながら、クウハは館へと戻って行った。

 クウハの姿が消えてから、数十秒の時間が経った。
 もぞり、と柔らかな土が蠢く。
 そして、土の中から這い出したのは……案の定と言うべきか、1本の白い大根である。
「でぇこん……でぇこん、でぇこん、でぇこん」
 大根はその身を震わせていた。
 傷つき、泥に塗れた大根は、全身で怒りを表現していた。
 仲間を喰われたのである。
 大根の怒りは当然と言えよう。
「でぇぇ……もんっ!!」
 怒れるセクシー大根。
 否……“リベンジャー”大根の誕生であった。

成否

成功

MVP

火野・彩陽(p3p010663)
晶竜封殺

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様です。
逃げ出したセクシー大根は無事に収獲されました。
依頼は成功と成ります。

……なにこれ?

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