PandoraPartyProject

シナリオ詳細

FANTASIA

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「サーカスってのはなぁ、真摯に芸を磨いて身一つで食ってる連中なんだよ。マンホールだか何だか知らねぇが、そんなインチキ野郎と一緒にすんじゃねぇ。わしは本物のサーカスが見てぇんだよ」

 王都『メフ・メフィート』からはるか遠く離れた幻想の、ある地方の村の酒場では義足の老爺が酒を煽りながらくだを巻いていた。
 酒場の常連客は皆、「爺さん、またか」という顔をして適当に相づちを打っている。
 同調も反論も愚痴や昔の自慢話を長引かせるだけだと分かっているからだ。

 老爺はこの村の生まれで、若い頃にサーカス一座の空中ブランコ乗りになったが、練習中の事故で片足を失った。 
 村へ戻ってからは雇われ職人となって日銭を稼いでいるが、サーカスへの情熱には今も並ならぬものがある。

 その彼が許せないのは、幻想を揺るがす事件を起こした『シルク・ド・マントゥール』と、それによって生まれたサーカスへの偏見だ。

 勿論多くのサーカス一座は老爺の言うように人々を楽しませようと日々研鑽を積み、夢を売ることに誇りを持っている。
 『シルク・ド・マントゥール』の一件でサーカス芸人を詐欺師か強盗団のように思う者も現れたが、それはごく一部の者達の間であって、幻想全体の風潮ではない。
 だが旅芸人という物に対する偏見そのものは昔からあるし、その旅芸人すら寄りつかない地方では都会に対する畏怖も絡んで悪い噂ばかりが一人歩きしがち。
 変化の乏しいこの村では格好の酒の肴となったていた。

「私も子供の頃にサーカスを見たことがありますよ。一度きりでしたが、それは綺麗で凄くて、まるで夢を見ているようでした。あの感動を子ども達にも教えてあげたいものですねぇ」

 四十に差し掛かる村の司祭はよその村の生まれだが、唯一老爺の話に懐かしそうに目を細めた。
 そしてこの村に来てくれるサーカス一座があるかどうか探してみましょう、と微笑んだ。


「司祭様はツテを頼り、村で興行を行ってくれるサーカス団を探したのです。でも村の人口や移動費を考えると興行しても収益が見込めず、みんな断られてしまったそうなのです。そこでローレットならばどうかって話なのですよ!」

 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は集まったイレギュラーズに事の起こりについて話した。

 つまり今回の依頼はイレギュラーズ達でサーカス団を結成、幻想の辺境の村まで行って興行して欲しいというもの。
 依頼者である司祭の希望としては、ただ手品や大道芸的なものを見せるのではなく、衣装や演出にも凝って見る者を見たこともない異世界へと誘うような、そんなレビューとして優れたものをということである。

 イレギュラーズに話が回ってきたのは一芸どころか二芸、三芸もある者が多いからだ。
 ギフトを使えばなお演出に幅が出るだろう。

「サーカスと言えば空中ブランコや玉乗り、火輪潜りなどがスタンダードな演目だけど、それにこだわる必要はないのです。アッと言わせる技と人を魅了する演出があれば何だっていいのですよ。
 それには演技指導や大道具・小道具、衣装を担当する人も必要なのです」

 ユリーカは従来のサーカスに囚われず、自由な発想で頑張ればいいと言う。
 けれど経費のことを考えたら、出せるのは8人が限界だ。
 8人全員が演者となり、同時に裏方も担当しなければならない。
 全員野球ならぬ全員サーカスである。

「皆さんならきっと大人も子供も楽しませることが出来ると思うのですよ。強いて言うなら問題は若い頃サーカスで働いていたというお爺さんかもしれないです……」

 つまりサーカスを見たことのない連中だと思って手を抜くと、元サーカス団員の爺さんからブーイングが飛びかねないからだ。

 子ども達をはじめとする村人に本格的なサーカスを見せて感動を与えたい。
 それと同時にサーカスを愛しながら不幸な事故で夢を断念した老人に、もう一度夢を見せたい。
 そんな願いを依頼者である司祭は持っているのだと言う。

「まずはサーカス団の名前を考えるところからなのですよ! エイエイオーなのです!」

 ユリーカはそう言って出立前の話し合いの音頭を取った。

GMコメント

 私の『Pandora Party Project』での2本目のシナリオです。
 前回が悪依頼で重めだったので、今回は夢と希望に溢れる感じでいってみることにしました。
 我こそはと言う方は以下の注意書きを読んで是非ご参加下さい。

●目的
 幻想の辺境の村でサーカス興行を成功させる。
 村人を感動させ、なおかつ元サーカス団員の老人を唸らせること。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●描写範囲
 サーカスのレビュー(ショー)の本番シーンを、心情などを織り込みつつ描写します。
 大道具や衣装製作などの裏方作業はメインでは描きませんが、文章中に「ユリーカが制作した衣装~」といった感じで裏方作業をした人が分かるように書きます。
 衣装やメイク等などの外見描写にも力を入れたいと思います。

●プレイングに書いて欲しいこと
 1・舞台に立ってどんな芸を披露するのか
 (コンセプトや衣装案、演出などご自由に。細かく設定しなくてもGMが適宜補います)
 2・心情
 (どうしてその演目を選んだのか、この興行にかける意気込み、舞台に立つことについての思いなど)
 3・裏方としてやりたいこと
 (メイク担当とか、大道具担当とか、衣装製作担当とか、宣伝担当とか)

 相談は必須ではありませんが、他のPCを指名して同じ演目を行う場合、相手のお名前を必ず書き、内容も示し合わせて下さいね。

●アドリブ
 アドリフ多め、盛り多めです。
 プレイングに指定がなかった場面でも、GM判断により主役のサポートなどで登場することがあります。
 また他のPCのプレイングを見て被ったり不足がある場合には全体的に調整をかけ、適宜プレイングを改変します。
 プレイング遵守を希望される方にはあまり向かないかもしれません。
 むしろ私に自分ちの子を預けるから目一杯使ってね!…と言う方に向いています。

●その他
 教会の近所の空き地に大型のテント小屋を作成し、夜に興行を行います。
 観客は子供から老人まで、ほぼ村の人達全員です。

  • FANTASIA完了
  • GM名八島礼
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2018年11月04日 22時35分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

サンティール・リアン(p3p000050)
雲雀
チック・シュテル(p3p000932)
赤翡翠
狗尾草 み猫(p3p001077)
暖かな腕
ミーシャ(p3p004225)
夢棺
メイメイ・ルー(p3p004460)
祈りと誓いと
鴉羽・九鬼(p3p006158)
Life is fragile
リヴィエラ・アーシェ・キングストン(p3p006628)
水晶角の龍
オズ・ヨハネス・マリオット(p3p006699)
魔科学ドール

リプレイ

●プロローグ
 照明が消えてテントの中が真っ暗になり、さんざめく村人達が静かになると、ヴァイオリンによる行進曲が鳴り響く。

「みなみなさま、ごきげんよう! 僕は見習い魔女サティ! この音楽が聞こえるかい? そうさ、サーカスがやってきた! 僕らの名前は『シルク・ド・ノネット』、星灯りを辿って歌えや踊れ、お祭り騒ぎの始まりだ!」

 箒に跨がり宙を飛ぶ『雲雀』サンティール・リアン(p3p000050)が星のステッキを振ると、天井に向けて放たれた魔力の波動が光りを放つ。
 金糸銀糸で星を刺繍した黒いマントの下、オレンジ色の袖と半ズボンとはかぼちゃのように膨らみ、とんがり帽子のサンティールをお伽噺に出てくるファントムナイトの魔女のように見せていた。

 星のステッキが指し示したのはテントの出入り口。
 色とりどりの衣装を身につけたサーカス団のメンバーが手拍子を打ち鳴らし、左右二カ所の出入り口から入ってステージに上がる。

 右からは新緑のローブを羽織った『埋れ翼』チック・シュテル(p3p000932)が星の杖を掲げて歌いながら。
 後に続くは赤青黄の星の三姉妹。
 赤い星の『Life is fragile』鴉羽・九鬼(p3p006158)、青い星の『機械仕掛けのマリオネット』オズ・ヨハネス・マリオット(p3p006699)、黄色い星の『さまようこひつじ』メイメイ・ルー(p3p004460)はそれぞれ手拍子を慣らして軽快にステップを踏んだ。

 左からは紫のミニドレスの『夢棺』ミーシャ(p3p004225)と、水色のロングドレスの『水晶角の』リヴィエラ・アーシェ・キングストン(p3p006628)が、揃いの星の髪飾りでヴァイオリンを掻き鳴らしながら。
 踊りながら後に続く『御猫街に彷徨ふ』狗尾草 み猫(p3p001077)は黒猫の毛並みを引き立たせる橙色のドレスに垂れ星の簪を挿している。

 ステージを注視していた観客は思わぬ登場に度肝を抜かれた。
 掴みは上々。

 7色の星がステージに揃うと、サンティールはステージの中央に下り、立ちマントの裾を指で摘まんでお辞儀。

「これより幕を開けるのは夢と希望に満ち溢れた協奏曲。どうかみなさまも手拍子を! 僕らとみなさまの九重奏、最後までお楽しみください!」

 サンティールに煽られ客も手拍子。
 始まる前の緊張はとっくにどこかに吹き飛んだ。

 みんなと一緒なら大丈夫。
 きっと良い舞台になると。

 仲間が曲と共にステージから捌けると、み猫だけがステージに残された。

●第一幕・星織姫の舞
(うふふ、えろうかいらしいおべべやにゃいの。これはえろう踊り甲斐がありますにゃあ)

 み猫が纏うドレスは、ある世界で妓女と呼ばれる歌や舞で人々を楽しませる遊郭の女性が纏う物で、橙色のドレスの胸元は星刺繍した絹織物。
 裳と呼ばれるスカートは柔らかな布地で作られており、旋回する度に大きく広がって、薄緑の領巾が宙を舞った。

 メイメイ作のこの衣装は、異世界の伝説に出てくる機織りの姫君をイメージしたものだとか。

 観客は昨日までサンィールと共にチラシを配って歩いていた飄々としたブルーブラッドの女性の艶めかしさに釘付け。
 ギフト『み猫じゃらし』を発動すればなおのこと、み猫の一挙一投足に目が離せない。

 機織りの姫君の夫を慕う恋心、星の河に隔たれ会えぬ切なさを、チックがバラードによる陰コーラスで盛り上げる中。
 一際大きく領巾を振ると、あっという間にみ猫は裳を脱ぎ捨てて早変わり。
 裳の下は絹織物のドレスになっており、胸元から裾へは橙色から紫のグラデーション。
 ドレスに描かれた星の音符の五線譜は、河の流れのように流線を描いている。

 楽曲がリヴィエラとミーシャの軽快な二重奏へと変わる。

(星織姫はただの待つだけの女ではありまへんにゃあ。星の河を渡って恋しいお方の元へ自分から会いに行きますのが、今どきのおなごはんにゃろ)

 み猫は踊りながら軽やかにステージを跳躍して回る。
 ぽーん、ぽーんと、川の中の飛び石を踏むように。

 恋しい人を探して。
 恋しい人の元へ。

 そして最後に領巾を翻して一際大きく飛ぶと、着地と同時、歓声が上がった。

●第二幕・赤と青のアルルカン
「くるくるぴょんぴょん、織姫様が星の河を渡ったら、道化師の姉妹が仲良く玉乗り。目を離したらいけないよ。二人はどこまでも転がっていくから!」

 サンティールが現れ、み猫が舞台袖へと捌ける間の時間を稼ぐ。
 代わりに現れたのは赤と青の女道化師。

 オズの衣装は右脚だけ素足を剥き出しにした身体にフィットしたレオタード。
 右肩から胴を巡って左脚、そして左足首まで螺旋を描く星のスバンコール付きのフリルはゴールデンイエローで、華やかなオレンジ色の髪が一際自慢のプロポーションを引き立てていた。

 九鬼はオズとは対象的に左の生脚を晒した赤のレオタードで、金色の髪は光を散りばめてキラキラと背で揺れている。
 痩身を這うフリルはレモンイエローで、螺旋に強調された肢体はどこか九鬼の儚げな印象を強調するよう。
 いっそ逆にそそる‥‥のだが、本人はいたって天然。

 そしてギフト『無刀』によって透明化して見せていた玉とナイフをオズへと投げた。
 突如表れた玉とナイフがまるで手品でも見ているかのようだった。

 しかもそれを受け止めるオズもさるもの。
 玉はともかくナイフは刃がむき身のままであるにも関わらず、お手玉のようにジャグリングして見せる。

 (ふふ、みんな驚いてるね? でもこれだけじゃないんだ)

 オズが九鬼に目配せすると、九鬼は霊刀【因業断】こと略称『イン』を取り出した。

「嘘つきは成敗!」

 いつの間にかジャグリングの白玉の中に混じっていた道化師の仮面の絵は、シルク・ド・マントゥールのシンボルマーク。
 その玉だけを『イン』がはじき飛ばした。

 ジャグリングしたままオズが大玉の上に飛び乗る。
 手元の小さな玉から足下の大きな玉へ客の視線が移った。

ボールの上でバランスを保ち、逆立ちして宙返りを繰り出せばその確かな技が人々を魅了する。
 そして九鬼も──

「わわ、難しいですね‥‥あわわわわわ!」

 道化師姉妹の妹は元気いっぱいだがドジっ子。
 大きな玉に乗れば転がり落ち、また乗れば玉と共に転がる。

 客席からドッと笑いが起きた。
 次にああっとハラハラする声。
 そして沸き上がる頑張れコール。

(ドジは恥ずかしいですが、笑顔は絶やしません‥‥!)

 繰り返されるトライ&エラー。
 そしてオズの手を借り見事玉の上へと立つと、大きく腕を広げて歓声に応える。

 失敗してもめげずに挑戦を続けること。
 諦めなかったその先に成功はあるのだと。

 星が描かれた大玉に乗る九鬼の達成感溢れる笑顔は、そう物語っていた。

◆第三幕・動物達のダンス
「めえめえ、めえめえ、迷子の子羊やってきた。けれど子羊は泣かないよ。ごらん、お友達がやってきた」

 玉に乗ったま転がして去って行く二人に代わり、サンティールが再び箒に乗ってステッキを振ると、二頭のロバとカピブタを連れたメイメイが現れる。

 みんなの衣装を徹夜で作ったメイメイ。
 でも自分もステージに上がるなんてびっくり。

「ロバのピピさんと、カピブタのロロさん。それからコルトさんも一緒に芸を披露します! みんなで奏でる素敵な、時間‥‥楽しんで、行きましょう!」

 胸は早鐘を打ちながら勇気を振り絞ってか細い声を張り上げる。
 この日の為に誂えた帽子とピンクのワンピースには、五線譜に星の音符。

 みんなと同じだから怖くない。
 この衣装があるから怖くない。

 ヴァイオリンの演奏に乗り動物達と共に踊り始める。
 カピブタにはフリルのスカート、ロバと老ロバにはミニハットとベストを着せて。

 動物疎通で出す指示に3匹と1人のチームワークは抜群。
 軽やかに踊ったり飛び跳ねたり、芸の稚拙さは楽しさでカバー。

(「本物」には程遠いかもしれません。でもこれがわたしの身一つなのです。ただ、ただ、楽しくて、わくわくで、ドキドキした気持ちを少しでも感じて貰えたら、わたしは‥‥嬉しいです)

 舞台から捌けてきたみ猫は「きれいなおべべにえろぅ励まされたにゃあ」と言って自分のロバも貸してくれた。
 玉から落ちても挫けずに笑顔を見せた九鬼からは、失敗しても大丈夫と勇気を貰った。

 だからとびっきりの衣装を着て、失敗さえも笑顔で、声が小さくても見振り手振りで、精一杯、夢を届けて。
 パニエを入れてたっぷりと膨らませたスカートの裾を掴み、編み上げのピンクのブーツを片足後ろに下げてお辞儀する。

「‥‥喜んで、貰えたのかな?」
「もちろんだよ」

 舞台の片隅でBGMを演奏していた同じ羊のブルーブラッドのミーシャが、すれ違い様にエールを送ってくれた。

●第四幕・星空の音楽会
「動物たちの向こうでは、きらきらぴかぴか、星の精霊達が音楽会。耳を澄まして聞いてごらん」

 司会のサンティールが半ズボンにブルーブラックの燕尾を合わせて現れると、ステッキを掲げてステージを一周。

「さあ、いよいよおれたちが主役だ。ん‥‥村の人達に楽しい気持ち、届ける「手伝い」‥‥少しドキドキする、けど、皆と一緒なら‥‥うん、大丈夫、だよね」

 旅一座【Leuchten】に所属するチックは、夢を届ける喜びを既に知っている。
 星のランプを片手にステージへと踏み出した。

「楽器が凄いんじゃない。みんなが合わさるから凄いんだって、見せつけてあげなきゃ。だね」

 ミーシャも頷いて名器ストラディバリウスを片手にステージへ。
 同じストラディバリウスを持つリヴィエラとは同じミッドナイトブルーのドレスだが、ミーシャは肩を出したドレスの上からミニ丈でラッパ袖のボレロを纏い、ワンショルダーのリヴィエラのドレスは肩の部分が大きなリボンで結ばれている。

 二人はずっと演奏で仲間達の芸を助けてきた。

 オープニングはきらきらと輝く星のように。
 オズと九鬼の出番の時にはわくわくと踊りたくなるように。
 そしてメイメイの時にはのびのびと楽しく和やかに。

 リヴィエラが高音ならミーシャが低音を担当して。

 そしてチックもまた二人の美女を引き連れて壇上へと上がった。

 み猫のダンスの時は陰コーラスに徹したが、今は彼も主役の一人。
 夜空色の立襟の長衣には五線譜が流紋のように曲線を描き、背のスリットからはみ出した真白い羽根と銀色の長い癖っ毛が今は神々しくさえ見えた。

(演奏を選んだのは、音が届くなら、みんなを魅せられるから。遠くで演技が見えないなんて言わせないよ。でもこれは演奏会じゃ無い、サーカス。だものね。目も耳も、全部で楽しませてあげる!)

 チックの透明感のある歌声に合わせて演奏したまま、ミーシャはアシストを勤めるみ猫とメイメイが持ってきたトランポリンへと飛び乗った。
 そしてヴァイオリンを奏でたまま高く飛び上がると、背を反って空中でバク転。
 さらにその沿った背の真下をリヴィエラが横切ると、一瞬軌跡が十字を描いた。

 すれ違い様に振りまかれた銀の星の紙吹雪は、床に付く前にチックのマジックフラワーが雪を溶かすかのように消した。
 嘘つきサーカスはこれでおしまい‥‥そんな歌詞に合わせて。

(夜が終わって星が消えても。サーカスが終わって寝付いた時も。夢に出てくるくらい楽しい時間を過ごして貰えたら、とても素敵だよね)

 ミーシャはトランポリンを利用してもう一度高く飛び上がると、今度は捻りを加えて回転する。
 高度なアクロバット技術とステージ演出で人々の目を惹き付けた。

 空から星の紙吹雪を撒いていたリヴィエラが空中ブランコへと座り、チックがランプをサーカスのテントに設置された空中ブランコ台に向ける。
 星灯りが示す先では、新たな衣装を身につけた道化師の姉妹が待ち受けていた。

●第五幕・空中ブランコ乗りの夢
「さあ、みなさまご注目! ゆらゆらぶらり、道化師姉妹が華麗に夜空を飛んでくよ。どこまでも、どこまでも、夜空に軌跡を描いて」

 サンティールが司会する中、九鬼は空中ブランコに腰掛けると、大道具担当のオズとチックが設置した空中ブランコ台を勢いよく蹴った。
 オズやミーシャの指導でしっかり練習したのだから大丈夫と、己に言い聞かせて。

 マリオネットの名に恥じぬ芸を見せてきたオズだったが、空中ブランコだけは外せないと思っていた。
 何故なら空中ブランコこそがサーカスの花形だから。
 そして元サーカス芸人という老爺が空中ブランコ乗りだったから。

(田舎だからと夢を諦めちゃってる人達を見るとムズムズするね! 笑顔が一番! それに懐かしいものが無くなってしまう淋しさはオズも漠然とだけど知っているからね。だからほんの少し魔法をかけてあげるよ)

 二台の空中ブランコが起こす風圧が、リウィエラが天井に吊された星形のランプを揺らした。

「九鬼君、行くよ!」

 オズはもう一つのブランコに乗って蹴り出した。
 そして座面を掴んだまま後ろへと倒れ、くるりと回ってぶら下がった。

 そして二人のブランコが最も近づいた瞬間、手を離し、三回転。

 観衆が息を飲む。
 音楽も鳴り止む。

 九鬼がオズの手を捕まえ、オズがしっかりと手首を掴むと、爆発するような歓声が起こる。
 そしてオズは九鬼の手を離して空中を回転しながら着地。

(お爺さん、見てくれたかな? 貴方がかつて誰かにくれた夢もきっととても素敵なものだったはずだよ)

 オズはギルドまで依頼に来た神父の隣に、やたら気難しい顔をしている老人がいるのに気づいた。

●グランドフィナーレ
 照明が落ち、チックは手に円形に集めた金色の星をブーケのように持ってステージに現れた。
 手にした星の塊から延びるリボンのストライプは五線譜。

 ある異世界で行われる歌劇で、フィナーレに最初に登場する歌手のことをエトワールと呼ぶのだという。
 エトワール‥‥それは星という意味だ。

『銀河を五線譜にして曲を奏でよう
 星達を音符に変えて歌を口ずさもう

 愛はきらめく星の瞬き
 夢はささやく星の囀り』

 どこか眠たげで賢者のようなチックも、今はどこかの国の王子のよう。
 ボサボサの髪もきっちり整え、軍服調の上着とズボン、長靴を履いている。

『さあ、星のサーカスのはじまりだ
 さあ、夜の祝祭のはじまりだ

 手に手を取って踊ろう
 星と星を繋いで歌おう

 星という名の希望を
 どこまでも続く夢を』

 オープニングと同じ勇壮のマーチのリズムで歌われるそれに、み猫がバックで踊る。

(うちが踊っている中を歌ってくれたんやさかい、今度はお返しに踊らにゃあ)

 王子服に合う青いドレスを来たみ猫の手にもまた星のブーケ。
 そして水色のバルーン袖のワンピースドレスのメイメイもまた、動物たちと一緒に籠一杯に白・赤・ピンクの星形の花を入れて現れる。

 花を渡しに行ってはどうだろう、と言ったのはチックだった。
 ただ見て貰うのではなく、自分達から村人達へ、思いが受け継がれる意味でと。
 ノネット、九重奏とは、8人の演者とお客様による9つのハーモニーを意味しているのだからと。

『花を配るなら、星の形をした花は、いかが、でしょう‥?』

 メイメイが作り上げたメンバーの衣装には、全て何かしら星がモチーフに使われている。
 だからどうせならお客様にも星をと、いう訳で彼女が選んだのがこの星形の花。

 遠くの客席へはサンティールが自分と同じ光る星のステッキを届けて回る。
 チックも手拍子を始めた客席へと下りると、星の花を子供に手渡した。

(暖かい‥‥思いの光が。この先もずっと、灯り続けていると‥‥良いな)

 鈍いのは相変わらず、村娘達の熱い視線に全く気づかないまま、チックはそんなことを思った。

 ●アンコール
 九鬼とオズもフィナーレに合わせて華やかな五線譜と星のドレスに着替え終えると、客席に下りて花を配って回る。

「おじいさんもお一つどうぞ」

 リヴィエラの上空から元サーカス団員の老爺に差し出したのは、不滅の意味を持つ夜空色の星形の花だった。

「私、今とても嬉しいの。元の世界では鎖で繋がれて見世物にされていたから。私もずっと演者としてみんなと一緒にステージに立ってみたいと思っていたの」

 鉱龍と呼ばれる種族である彼女の角は、紫水晶で出来ている。
 美しい見世物として飼われていた彼女だったが、容姿以外のものを披露できること、他の人と協力して作品が作れることを心から喜んでいた。
 高いところの飾りの取り付けは率先してやり、ミーシャと共にずっとBGMを担当してきた。

「素敵な機会をくださってありがとう。私は夢が叶って本当に幸せ。だからおじいさんも一緒に、もう一度夢を見ませんか?」

 リヴィエラが手を差し出すと、老人の嗄れた手が華奢な白い手に重なる。
 老人の顔は相変わらず気難しげなままたったが、その目には透明な涙が浮かんでいる。

「お爺さ──ん!」

 九鬼が二人に気づいて手を振った。
 いきなり若い女性にモテ出して照れくさそうな老爺に代わり、隣の司祭が笑いながら小さく手を振り返す。

 フィナーレの曲が終わるとミーシャはまたすぐにヴァイオリンを構え直した。

「アンコール行くよ、最後まで楽しんで貰えたらいいな」

 ミーシャは呟いたが、拍手は鳴り止まず、まだまだ九重奏は終わりそうに無かった。

成否

大成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ご参加頂きありがとうございました。
 皆様から頂いたプレイングを夢いっぱいに膨らませ、星達が奏でる饗宴を描かせていただきました。

●構成について
 歌あり演奏あり踊りあり、そしてサーカスの王道、玉乗り、トランポリン、ジャグリング、ナイフ投げ、動物ショーに空中ブランコと、パラエティーに飛んだ構成でした。
 また、司会等、ステーシを支える役割もばっちりこなされ、よく相談され考えられていたと思います。
 その為、文句なしに大成功と致しました。

●描写について
 8章に分け、それぞれメインとなる方を据えて心情を盛り込みました。
 また可能な限り他の参加者様との連携や交流も盛り込んだつもりです。
 衣装についてはこういう機会ですから、ご提案があったもの以外にも私の趣味で色々着ていただきました。

●テーマについて
 星というのはとても良いテーマだと思いました。
 星は希望の象徴でもあり、行く手を示す指標でもあり、夜空に散らばる小さな星々は地上に生きる人々とも捉えられます。
 そして暗い夜、何も見えず、夢を忘れ、希望を見失いそうになっても、耳を澄ませば音楽が聞こえてくるかもしれません。
 そんなテーマを色々散りばめてあります。

 最後に。
 お気に召して頂けましたでしょうか?
 ご感想などお寄せ頂けますと幸いです。

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