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シナリオ詳細

ヴァルジャンと怒れる山岳

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ヴァルジャンという亜竜について、君はどれだけ知っているだろうか。
 威厳有るその姿は力強く、その鱗は堅く炎のような赤と金によるファイアパターンの模様で覆われている。
 角や爪は鋭く、その琥珀色の瞳からは強い英知すら感じるという。
 その翼を広げれば、炎の輝きを帯び、長い尾はしなやかだ。
 そんなヴァルジャンは美しき亜竜として知られており、性質も穏やかであることが覇竜領域でも広く知れ渡っている。
 だが、そんなヴァルジャンに異変が起きていた。
「ヴァルジャンの巣が暴走を起こしただと?」
 情報屋ジギリスタンとその護衛役のエイトスは突然の異変に驚きを隠せない様子でいた。
「まずは現地で様子を確かめるしかねえ。急いで向かうぞ」
 噂を耳にするや、ジギリスタンたちの行動は早い。
 エイトスに護衛料となる金をぽいと渡すと、エイトスはそれをキャッチして素早くドレイクへと飛び乗った。

 場所は亜竜集落フリアノンからやや東。ドレイクでそう長く走らぬ距離の山岳地帯に巣はあった。
 たどり着いてみればギャアギャアとヴァルジャンたちが鳴き声をあげており、空を激しく飛び回っている。
「こいつは……一体何が起こっていやがる」
「危ねえ!」
 エイトスは剣を抜いて飛び出し、ジギリスタンを狙って急降下強襲を仕掛けてきたヴァルジャンの攻撃を剣で弾いた。
 空中に飛翔し、剣を構え直して更なる攻撃に備えるエイトス。
 するとヴァルジャンは喉をカカッと鳴らしたかと思うと炎の球を吐き出しぶつけてくるではないか。
「くらうかよ!」
 エイトスは油断なく剣を振るい炎の球をはじき返す。
 が、それだけではどうやら終わらなかったらしい。
 ヴァルジャンは群れを成して飛び出してきたかと思うと一斉にエイトスめがけ炎の球を発射。
「う、おおおお!?」
 数発はしのげたものの、マトモに喰らって鎧が炎上し始める。
「エイトス!」
 ジギリスタンが回復ポーションを取り出して投げてやると、それをキャッチしたエイトスが素早く回復。炎を除去しつつ後退する。
「ダメだ、これ以上は近づけねえ。突破するにはローレットの力がいる!」
「やはりか……わかった、撤退だ!」
 ギャアギャアと騒ぐヴァルジャンの群れを引き離すべく、ドレイクを全速力で走らせる二人。なんとか、彼らはヴァルジャンの群れから逃げ切るとことに成功したのだった。

「――と、いうわけでな」
 負傷したエイトスを横に、情報屋ジギリスタンは集まったイレギュラーズたちを前にあたまをかいた。
「事前情報の不足は情報屋としちゃ恥ずかしい限りなんだが、亜竜ヴァルジャンの巣が原因不明の暴走を起こしちまっている。巣へと踏み込んで、この原因を見つけて解決してほしいんだ」
 イレギュラーズのひとりが手を上げ、心当たりはないのかと尋ねた。それに対して頷くジギリスタン。
「ああ、以前にもこうして巣の暴走がおきたことがあったんだが、その時は巣に住まう怒りの精霊が暴走を起こしたことで連鎖暴走を起こしたというものだった。今回ももしかしたら同じケースかもしれねえ。その場合、怒りの精霊と戦って倒すことで巣の暴走を抑えることが可能になるはずだ。頭に置いておいてくれ」
 ジギリスタンは依頼料となる金をずいっと差し出すと、丁寧に頭をさげた。
「近くの亜竜の巣が暴走するってのは集落にとって危険なことだ。どうか、この件を解決してやってほしい。頼んだ……!」

GMコメント

●シチュエーション
 原因不明の暴走を起こした亜竜ヴァルジャンの巣。
 暴れるヴァルジャンたちを倒しつつ巣の中心へと向かい、その原因を解決するのだ!

●エネミー
・ヴァルジャン
 飛行可能な亜竜です。
 鋭い爪と牙を持ち、炎の球を吐き出す力を持ちます。
 高い再生能力を有しているため倒す際は集中攻撃を基本としたほうがよいでしょう。
 また、ヴァルジャンの特殊な鳴き声にはBS回復能力もあるとされ、群れを相手にするときは注意が必要です。

・ヴァルジャンリーダー
 所謂群れのボスにあたる存在です。
 通常のヴァルジャンよりも強力ですので、戦う際は注意してください。

・???
 おそらくはヴァルジャンの巣を狂暴化させている存在です。
 情報屋は怒りの精霊の暴走であると見ているようです。

●フィールド
 山岳地帯です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • ヴァルジャンと怒れる山岳完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2024年01月08日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
ソア(p3p007025)
愛しき雷陣
ラムダ・アイリス(p3p008609)
血風旋華
ユーフォニー(p3p010323)
竜域の娘
火野・彩陽(p3p010663)
晶竜封殺
紅花 牡丹(p3p010983)
ガイアネモネ

リプレイ


 ドレイク馬車に揺られ、事件の現場へと向かう一行。
 遙か遠くに見えるヴァルジャンの群れはギャアギャアと騒いでおり、その声がここまで聞こえてきていた。
「原因不明の暴走、か。
 その原因が不明のまま、ただ殺して終わらせるのは避けたい所だな。
 ──よし。ひとまず、可能な限りは無力化に留めつつ、調査するぞ!」
 『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)の言葉に、『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)がこくりと頷く。
「原因をハッキリさせない内は、暴れてる連中を抑えても意味ねぇしな
 以前もあったみてぇっスけど今回も同じとは限らねぇ
 あんま面倒事にならないといいんスけど……」
「亜竜の暴走、か。世界が滅びかけているようだし、な。直接的でない悪影響も、出てくるのだろう、か。
 なんにせよ、大人しくなるよう、尽力しよう」
 『愛娘』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)の言葉に振り向く『無尽虎爪』ソア(p3p007025)。
「世界が滅びかけてることも……関係してるのかな」
「世の中が物騒だというのは事実だから、な」
 一方で、『血風旋華』ラムダ・アイリス(p3p008609)が腕組みをして考え込んでいる。
「亜竜とはいえ、あんなのに暴走されたら流石に被害は洒落にならないか……。
 足止めを引き受けたは良いけど……極力殺さないでねときたか……これはちょっと安請け合いしたかな?
 ふむ、野生の獣みたく群れのボス辺りをわからせたら少しは大人しくなるかね?」
「そうですね。もっと言えば、怒りの精霊さんを鎮めることが出来れば……」
 『竜域の娘』ユーフォニー(p3p010323)は以前同じ事があったという話しを思い出して語る。
「……単純にあれかあ。怒って暴れてるだけなんかもしれんのな。
 となると無駄に殺してまうのもかわいそうって奴か。
 ちょいときつい事もあるけどやる事はやってしまいましょか」
 『晶竜封殺』火野・彩陽(p3p010663)も弓を手に取り、不殺効果のある矢を確かめた。
「さて、と。そろそろだ。連中の暴れてるエリアに入るぜ」
 『ガイアネモネ』紅花 牡丹(p3p010983)が馬車から飛び降り、戦う準備を整える。
 仲間たちも同じように馬車を降り、御者には退避するように求めた。
 そして牡丹がゆっくりを浮遊を始める。
「この面子の中で一番高く飛べるのはオレだしな! 航空猟兵の腕の見せ所だぜ!」


 ヴァルジャンは翼をもって飛行し、爪と牙をもち炎をはくというかなりオーソドックスな亜竜だ。一番面倒なのは上空から一方的に炎を吐かれ続けることだが、それを回避するために動いたのが牡丹であった。
「怒りはBS回復阻害&他の敵のBS回復誘発による被弾減らしどちらにも使えるしな!
 上向きに撃ったり高度的に味方を巻き込む心配もねえだろ!」
 自ら暴走するヴァルジャンの群れへと突っ込んでいくと、『あまたの星、宝冠のごとく』を発動させてヴァルジャンたちを誘引する。
 味方が【怒り】状態になったことでBS回復の鳴き声を発するヴァルジャンたちも現れるが、範囲の問題かそれらも纏めて地上へと降りてきた。
 ヴァルジャンの一体が牡丹の頭に噛みつこうとしたその瞬間、首に彩陽の放った『穿天明星』の矢が刺さる。
 そこから放たれるのは神気閃光の爆発だ。元々に込められた封殺の力とも合わさり、数体のヴァルジャンが動きを止める。
「怒りに当てられてるだけなんやったらこの子らも犠牲者みたいなもんやしねえ……せやから気絶させるというのは理にはかなってんのかな?」
 そう言いながら第二の矢を弓に番え、放つ彩陽。
 再びの神気閃光が辺りを包み込みヴァルジャンが首を振る。
 地味にタフな亜竜だ。極力殺さないという作戦は大事だが、その分骨が折れそうだと彩陽は次の矢を番えながら考えた。
「今井さん、お願いします!」
 ユーフォニーが『世界にさざめく色』を纏ってから叫ぶと、今井さんは特殊手榴弾のピンを抜いてヴァルジャンの群れめがけて投擲した。
 ズドンという音と共に派手な爆発が起き、ヴァルジャンたちが今度こそその場に倒れる。どうやら殺してはいないようで、ぐったりとしているが息はあるようだ。
「ヴァルジャンをかわして巣の中心へは行けないみたいですね」
「そうみたいだね。まずはこれを突破しないと」
 アイリスは肩をすくめて刀に手をかけた。
 至近距離に迫ったことでヴァルジャンが爪を繰り出してくるので、それを剣で弾いているのだ。魔導機刀『八葉蓮華』の拘束高速能力も、ここではお披露目できそうにない。
 ならば――と対群拘束術式『神狼繋ぐ縛鎖』を発動。影から射出された鎖がヴァルジャンたちを拘束し、締め上げていく。
 苦し紛れにと吐き出された炎の玉がアイリスに直撃するが、それをものともせずにアイリスは突き進む。
「悪いけどしばらく大人しくしていてちょうだい!」
 ソアの光の如き速さの回し蹴りとそこからコンボで繰り出される激しい爪と雷が周囲のヴァルジャンたちを次々と焼いていく。
 ヴァルジャンの爪を頑丈な腕で受け止め、逆に自分の爪で斬り付けるというシンプルな攻防だがそれだけにソアの攻撃はヴァルジャンたちに有効だ。
 上空のヴァルジャンが炎を次々に吐き出して砲撃してくるが、ソアはジグザグに走ることでそれを回避。何発か着弾したものの、炎を緩和させて振り払った。
「ヴァルジャンリーダーの姿は……まだ見えないか」
 激しく炎がいくつも爆ぜるなかを平然と突き進む汰磨羈。
 妖刀『愛染童子餓慈郎』に不殺の力を込めると、自らに『絶界・白旺圏』を付与した。
 更に『グラビティ・ゲート』を付与し、飛行状態から砲撃してくるヴァルジャンめがけ『絶愆・織獄六刑』を放った。
 ぎゅん、と重力が下向きに働いて墜落したヴァルジャンめがけ『絶禍・白陽剣』を繰り出す。
 別称『ビッグバン・ディスインテグレータ』。あらゆる物質を爆散させるというその一撃は見事にヴァルジャンを殺すことなく吹き飛ばした。
「外的要因による暴走であれば、ヴァルジャンを殺さず無力化で済ましてもいい」
 エクスマリアはスターライトエンブレムで自らに不殺の力を纏わせると、両手の平に魔力を集中。ヴァルジャンの群れに向けて『ケイオスタイド』の魔術をぶっ放した。
 激しい衝撃を受けて次々に墜落するヴァルジャンたち。
 そこへ更なる『アイゼン・シュテルン』。凄まじい衝撃が走り、ヴァルジャンたちが纏めて吹き飛んでいく。これで殺していないというのだからすごい。
 一方で葵はヴァルジャンの放つ炎を跳躍で回避すると、『強行・深層領域』と『プロトコル・ハデス』を自らに付与。
 『ジャミル・タクティール』を発動させ、サッカーボールを蹴飛ばした。
 ドゴゴゴゴと激しいバウンドをかけて無数のヴァルジャンへ命中したボールはヴァルジャンたちを墜落させていく。
 トドメは不殺攻撃もちの仲間たちに任せ、葵は更なる別の目標にむけてサッカーボールを蹴りはなった。
 すると――。
 がしっとボールをキャッチする個体が出現。
「何――!」
 その個体はボールを投げ返してくると、激しい炎の玉を放ってきた。
 動きの違いですぐにわかる。
「あれが、ヴァルジャンリーダーか」


「悪ぃ、ソイツらの処理は任せるっス!」
 まずは得意の『フロストバンカー』。
 氷の杭を出現させ、それをシュートしてヴァルジャンリーダーへと直撃させる。
 見事にBSは入ったものの、周囲のヴァルジャンによって回復されてしまうらしい。
 こいつはとにかくやりづらい。ならばと『ルーラーゾーン』のシュートに変更して葵はヴァルジャンリーダーへとサッカーボールを放った。
 ボールがヴァルジャンリーダーへと直撃。
 それ以上の攻撃を嫌がってか、ヴァルジャンリーダーは葵から距離を取り始める。
 だが、逃がさない。
 エクスマリアが声を出すと、『天を踏む駿馬』が飛んできてエクスマリアは素早くそれに飛び乗った。
 空に逃げようとするヴァルジャンを追いかけ、手を――厳密には『黒金絲雀』を装着した手を突きだした。
 『アイゼン・シュテルン』の魔術が完成し、炸裂。巨大な杭の如き魔術塊がヴァルジャンリーダーに激突し、その衝撃でヴァルジャンリーダーは思わず墜落してしまった。
「申し訳ないが。原因が分かるまでの間、少し眠っててくれ」
 汰磨羈がヴァルジャンリーダーめがけ急接近。
 『絶愆・織獄六刑』を解き放つ。
 周囲のヴァルジャンの鳴き声で魅了状態を解除したヴァルジャンリーダーは反撃とばかりに炎の玉を放ってくる。
 対して汰磨羈は妖刀でそれを真っ二つに切断。急速に距離を詰め、『絶禍・白陽剣』を繰り出した。
 高い再生能力があっても致命状態を付与し続けていけば再生はできまい。
 汰磨羈は解除されてもいいように白陽剣を撃ち続けた。
「畳みかけろ。リーダーを残しておくと厄介だ」
「おっけー! 殺さずに……はちょっと難しいかな?」
 ソアはそう言いながらも『纏雷』を発動。身に宿る雷の因子の極大活性化させる。そして『無尽虎爪』の強烈な爪の連撃でヴァルジャンリーダーへと攻撃を集中させた。
 抵抗しようとソアを爪でなぎ払うヴァルジャンリーダー。あまりの衝撃にソアは吹き飛ばされるも、地面をガッと引っ掻くことで強制ブレーキ。地を蹴って再び距離を詰めるとヴァルジャンリーダーへ爪の連撃を再開する。
「周りのヴァルジャンがいい加減に邪魔だね」
 アイリスはだんっと地面を踏みつけると対群拘束術式「神狼繋ぐ縛鎖」を再び発動。大量の鎖が影から飛び出し、ヴァルジャンたちを拘束し始める。BS回復をこれ以上連発されても厄介なのだ。
 ヴァルジャンリーダーがそれをやめさせようと牙で噛みつき攻撃をしかけてくるが、アイリスはそれを高速のスウェーで回避。更なる「神狼繋ぐ縛鎖」を解き放つ。
「暫く大人しくしとって! 原因を取り除いてくるから……!」
 彩陽がヴァルジャンリーダーめがけ封殺の力のこもった矢を放つ。
 見事に封殺が成功し、ヴァルジャンリーダーの動きが止まる。
 その隙に牡丹がヴァルジャンリーダーに炎を浴びせ、注意を自分に引きつけた。
「そら、撃ちまくれ!」
「はい!」
 ユーフォニーは今井さんに指事を出し、それを受けた今井さんは大量の書類を紙飛行機型に折り曲げるとヴァルジャンリーダーへと次々に発射した。
 そこからは怒濤の集中攻撃。
 彩陽たちの攻撃が一斉にヴァルジャンリーダーへと集中し、ついにヴァルジャンリーダーは気絶したのだった。


 ヴァルジャンたちを倒したが……それで終わりではない。ことの本命。つまりは原因を取り除かなければならない。
 巣の中心へ行くと、予想通りというべきか怒りの精霊が蠢いているのが見えた。
 かろうじて人型はしているものの、全身から怒りの表情をした頭が生えては消えを繰り返しぼこぼこと変形を続けている。見るからに暴走しているのがわかった。
「オオオオオ――オオオオオオ――!」
 もはや言葉も忘れたとばかりに叫びをあげる精霊。
 ユーフォニーはそんな精霊へと話しかける。
「初めまして、ユーフォニーです。
 こっちはドラネコさんのリーちゃん。
 あなたのお名前はなんですか?
 どうしてそんなに怒っているんです?
 腹が立つこと、悲しいこと、気に食わないことがありました?
 吐き出すと少し楽になるかもです」
 そこまで話してみたが、頭からぴょこんと飛び出した花がムシャアといって曲がった。どうやら話しは通じないようだ。
 ……が、しかし。
「オオオオオ――オオオオオオ――!」
 怒りの叫びが声なき声としてユーフォニーや牡丹たちには感じられた。
「どうやら感情が暴走してしまっているらしい。一度倒せば元に戻るかもしれない、とよ!」
 牡丹はそれなら話しは早いとばかりに精霊へととびかかる。
「おら、サンドバックになってやる!
 気が済むまで殴って来な!
 すっきりしやがれ、この野郎!
 暴走っつうことは精霊もしんどいだろうしな!」
 これ幸いとばかりに精霊は無数の腕を生やして牡丹へと殴りかかる。
「一度倒せばいいってことなら、手加減はいらんよな」
 彩陽はこれまで手加減してきた分を解放するように『鮮血乙女』の力を込めた矢を放つ。
 二連撃で放たれた矢が精霊へと命中し、怒りの表情がいくつか消し飛んでいく。
「聞いたことがある。精霊は一度倒せば自然に還り、元通りになれることがあるって。今回はそのパターンかな」
 アイリスは魔導機刀『八葉蓮華』を鞘に収めると、怒れる精霊めがけて突進。
 次々に吐き出される怒りの波動をものともせずに至近距離まで詰めると、魔力収斂圧縮加速機構によって抜刀された刀を振り抜いた。
 強烈な斬撃が精霊を一度真っ二つに切り裂く。
 それによって怒りの表情がいくつか消え、その代わりにぼこぼこと精霊の形が修復されていく。
「こういうときは荒療治、だね!」
 別方向から距離を詰めにかかっていたソア。
 そちらにも怒りの波動がぶつけられ一度は吹き飛ばされたものの、すぐに体勢を立て直してソアは怒れる精霊めがけ爪を繰り出した。
 斬撃、からの高速連続斬撃。
 精霊の表面から怒りの表情がみるみる消えていく。
「その調子っス!」
 葵はサッカーボールをシュートすると、続けて氷の杭を生み出してシュート。
 精霊が凍り付き、その動きが目に見えて鈍った。
 エクスマリアは念のためにと周囲を観察。怒れる精霊に対して干渉している存在がないか確かめると、こくりと頷いた。
「話しは確かなようだ。このまま行くぞ」
 『天を踏む駿馬』を走らせて接近。怒りの波動を魔術障壁でなんとか受け流すと、今度はこちらの番だとばかりに『アイゼン・シュテルン』の魔術を形成。
「全員離れろ、叩き込むぞ」
 強烈な魔術が精霊を中心に爆発。
 その直後、汰磨羈が地を駆け精霊へと飛びかかった。
「最後だ――絶禍・白陽剣」
 妖刀『愛染童子餓慈郎』による斬撃と、その直後に起こる大爆発。
 怒れる精霊は一度吹き飛び。そして正常なる存在へと変化していったのだった。


「感謝する……異邦の者たちよ……」
 精霊はかろうじて保っていた人型をゆらゆらとさせながら、感謝の気持ちを伝えてくる。
「あのヴァルジャンたちにも悪いことをしてしまった。殺されてしまってはいないだろうか」
「ああ、大丈夫だ。連中は生かしたままだよ」
 牡丹がそう言うと、精霊は驚いたような表情を浮かべる。
「おお……なんと……。それは、ありがたい。ここは彼らの巣。居心地の良い場所だったのだ。これからも、守っていってほしいものだ……」
 精霊はそう述べると、空気に溶けるように消えていった。
 やがて意識を取り戻したらしいヴァルジャンたちが巣へともどってくる。
 いつまでも巣にいては邪魔になるだろうと、イレギュラーズたちは撤収することにしたのだった。
 おそらくこれからもずっと、ヴァルジャンと精霊は仲良く共存していくことだろう。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

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