PandoraPartyProject

シナリオ詳細

aetherite light

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「どなたかレナードを! レナードを助けてくださいませんか!?」
 雪も積もり始めた鉄帝の酒場に飛び込み、声をあげた女性がいた。
 見たところ二十代半ばといった年頃の女性で、身なりは一般的な庶民といった様子である。
 突然のことに酒場の者たちも困惑の様子を見せるが、幸いなことにここはただの酒場ではない。ローレット・イレギュラーズたちの通うことで有名な酒場なのだ。
 よって、これをイレギュラーズへの依頼だと察した酒場のマスターがカウンターから声をかけてくる。大柄でスキンヘッドの、見るからに屈強そうなマスターである。
「お嬢ちゃん、まずは落ち着きな。そこに座って、こいつを飲むんだ」
 マスターが女性を座らせ、素早く用意したホットミルクを差し出す。一度だけ度数の強い酒に手が伸びたが引っ込めて、だ。
「……すみません、慌ててしまって」
 ホットミルクでやっと一息ついたという様子の女性は、改まってマスターに声をかけた。
「私はアリアといって、ここから東の村に住んでいる者です。私にはレナードという婚約者がいるのですが……彼が森の鉱山から戻らなくなってしまったのです」
「森の鉱山? ハエナン鉱山か。あそこは長いこと使われてねえが……なぜそんな場所に?」
 マスターがうすい顎髭を撫でながら問いかけると、アリアと名乗った女性はうつむいて頬を赤らめた。
「それが……私との婚約指輪を作るために、特別な宝石を手に入れようと鉱山に入ったようなんです。レナードは商人でしたから、そういった情報のルートがあったのでしょう」
「鉱山に入ったことは確かなんだな?」
「はい。他の方々に聞いて回ったのですが、彼は鉱山へ向かい中に入ったということまでは分かっているんです。ですが……」
「まあ、森からして安全ではないからな」
 ハエナン鉱山がある森には現在モンスターが出没している。イレギュラーズからすれば大した脅威にもならない雑魚モンスターだが、庶民からすれば充分過ぎる脅威だ。
「わかった。イレギュラーズを集めてみよう。あんたは村に戻って吉報を待っててくれ」
「はい……どうか、宜しくお願いします」


「――ということなんだが」
 マスターは酒場に通うイレギュラーズの何人かを集め、アリアの話した内容をかいつまんで説明していた。
「そのハエナン鉱山、調べてみたらちと厄介なことになっててな。
 エーテライト鉱石っつう魔法の鉱石が坑道内から出土してる。こいつは魔法の力を持っていて、暴走すると近づく人間や動物をモンスターに変えちまう性質があるらしい。
 そのレナードという奴は、モンスターに襲われたかあるいはモンスターに変えられたか……いずれにせよ無事な状態ではないだろうな」
 エーテライト鉱石による事件は過去にも起きており、その対処法もまた確立しているらしい。
 マスターは顎髭を撫でながら厳しい表情で言った。
「モンスターにされた人間は【不殺】攻撃で倒すことで行動不能にできる。その上でエーテライト鉱石を核にしたボスとなるモンスターを倒す事で、モンスター化した連中を元に戻すことが可能になるそうだ」
 この作戦を行うには坑道内へと入っていく必要があるため、灯りを持ち込んだり坑道で迷わないようにするなどの工夫が必要になるだろう。そして当然ながら、モンスターと戦う手段も。
「俺の見立てだが、おそらくレナードは生きている。が、モンスターに変えられている可能性が大だ。レナードを生きて助け出すには、さっき言った方法をとってやってくれ。
 勿論、それが叶わなくても報酬は出すつもりだ。エーテライト鉱石が暴走してる状態ってだけで危ねえ。それを止めてくれるだけでも充分な働きだからな」
 マスターは前金となるコイン袋をテーブルに置くと、神妙な顔で頷いた。
「ただ……己の婚約指輪のために命を張った男は、できれば助けてやってほしい。ハッピーエンドっつーのは、いつでも気持ちのいいもんだからな」

GMコメント

・成功条件:ボスモンスターの撃破
・オプション:レナードの救出

●シチュエーション
 ハエナン鉱山を探索し、ボスとなるエーテライトモンスターを撃破しましょう。
 その間にレナードを発見したら保護しましょう。

●エネミー
・エーテライトモンスター
 鉱山夫や動物が魔法の暴走によって変化してしまったモンスターです。
 体中を細かい結晶のようなもので覆っており、狂暴化しています。
 水晶の爪での攻撃を行うほか、水晶を弾丸のように飛ばす攻撃を行う個体もいます。

 鉱山夫やレナードが元となったエーテライトモンスターを発見した場合は、【不殺】攻撃で倒す事で後に救出することが可能になります。
※人相書きなどでレナードの顔や特徴は分かっているものとします。

・エーテライトキメラ
 このダンジョンにおけるボスモンスターです。
 複数の動物が融合したような姿をしており、通常のエーテライトモンスターに比べ格段に強力です。
 力を合わせて撃破しましょう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • aetherite light完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年12月29日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)
終わらない途
オリーブ・ローレル(p3p004352)
鋼鉄の冒険者
ェクセレリァス・アルケラシス・ヴィルフェリゥム(p3p005156)
天翔鉱龍
ソア(p3p007025)
愛しき雷陣
ヴァイオレット・ホロウウォーカー(p3p007470)
咲き誇る菫、友に抱かれ
ニル(p3p009185)
願い紡ぎ
柊木 涼花(p3p010038)
絆音、戦場揺らす
レイン・レイン(p3p010586)
玉響

リプレイ

●ハッピーエンドは好き?
 これは鉱山でおきた魔法鉱石の暴走事件であると同時に、レナードという男にまつわる愛の物語である。
「ハッピーエンドも悪かねぇ、悪くはないがもうちょい欲張りてぇよなぁ?」
 坑道へ続く道をあるきながら、『蛇喰らい』バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)はそんな風に呟いた。
 話しに寄れば、ハエナン鉱山での暴走事故に巻き込まれたのはレナードという商人の男だけではなく、鉱山夫たちもまた巻き込まれているという。
 彼らも纏めて助けてこそだ、と。
「しかしまあ人をモンスターに変えちまうとは七面倒な鉱石だな」
「エーテライト鉱石の暴走ねぇ……どういう条件で起きるのかわからないけどたしかに危険だ」
 自分も魔法鉱石で構成されているだけあって興味が動く『龍神天翔』ェクセレリァス・アルケラシス・ヴィルフェリゥム(p3p005156)。
「あと、ハッピーエンドがいいってのは私も全面的に同意。ろくでもない結末にはもううんざりしてるんでね」
 どいつもこいつも、と言いかけて手を振る。
「何か言いましたか?」
 『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)が振り返り尋ねてくるが、ェクセレリァスは独り言だから気にしないでと小さく返した。
「任せてよ、ボクも絶対にハッピーエンドがいい!」
 ね! と両手を挙げてみせる『無尽虎爪』ソア(p3p007025)。
 一方の『黄昏の影』ヴァイオレット・ホロウウォーカー(p3p007470)はしずしずと皆について歩いている様子だった。
(……皆様が助けたいというのであれば……ワタクシはそれに応じます……。
 他に、何を想えば良いのか……わからない……)
 そんな彼女の様子に疑問をもちはしたものの、深くは触れずに話を続ける『おいしいを一緒に』ニル(p3p009185)。
「エーテライト鉱石……ニルは……紅血晶もそうでしたけど、かなしいことをする石が、いやなのです」
 そう言って自らのコアを服の上からおさえる。
「それに、すきなひとがいなくなるのは、ぽっかり穴があくみたい。
 だからニルは、レナード様がアリア様のところにちゃんと帰れるように、がんばります」
「そうですね」
 『灯したい、火を』柊木 涼花(p3p010038)はぐっと拳を握った。
「指輪を作るために鉱山へ……うん、絶対に助けないとですね!
 そのまま帰らぬ人に――とか、助けられても日常生活に支障が――とか
 そんなバッドエンド、物語だけで充分です
 ハッピーエンドの手助けのために、音楽以外にも色々勉強してきましたから
 それを今使わずにいつ使うっていうんですか、なんて
 ともあれ、今できることを精一杯やらせていただきます!」
 同意を求め振り返ると、『玉響』レイン・レイン(p3p010586)がこくんと頷いた。
「ハッピーエンドは……僕も好き……」
 きっとみんな好きだろう。だから、叶えてあげようじゃないか。
 レインは間接的な依頼主でもある酒場のマスターのツテを頼って坑道の地図を手に入れていた。それを広げ、坑道の入り口にて立ち止まる。
「それじゃあ、みんな……行くよ」
 傘を桜色にぼんやりと輝かせながら、レインは坑道へと入っていくのだった。


 坑道の中は薄暗い。既に人の手が入っていないのだから当然だ。
 そんな中をぼんやりと進む光が一つ。レインの傘だ。
 彼女はこの光で坑道を見、他の大半のメンバーは暗視能力によって坑道を見通していた。
 この中で生きているということは、おそらくエーテライトモンスターも暗視能力を持っているのだろう。
 環境に即したスキルセットをしてきて正解だったと言える。
「ん……向こうから、近づいてくる」
 元々は静かな坑道だったのだろうが、エーテライトモンスターのあげる足音は無遠慮で、そして坑道の中でよく響く。
 向こうから姿を現したのはどちらも人型のエーテライトモンスターだ。
 両手を鋭い鉤爪状にしたエーテライトモンスターがレインめがけて襲いかかってくる。
 レインは傘でそれを防御すると、至近距離から『神気閃光』を発射。傘の光に聖なる力が宿り、照らされたエーテライトモンスターたちが苦しそうにもがき始める。
 今のところは回復の必要がないと判断した涼花も同じく『神気閃光』を発動。
 ギターをかき鳴らし奏でる音楽が力となり、五線譜の如き光の筋がエーテライトモンスターたちへと巻き付いていく。
 もがく彼らはついにばたばたと倒れ、坑道の壁へと寄りかかるように崩れ落ちた。
「人助けセンサーに反応がありませんでした。きっと意識が奪われているんでしょう」
 あとですぐに助け出せるようにと道の端に寝かすと、涼花は鉱山夫たちの顔色を確認した。何日もモンスター化していた影響で顔色はだいぶ悪い。早いところ核を破壊し救出しなくては、と拳を強く握りしめた。

 小動物がモンスター化したものは少数で、殆どが鉱山夫たちがモンスター化したものであった。
「レナード様、アリア様が待っていますよ。早く、おうちに帰りましょう」
 そんな中で見つけたのが、かのレナードである。
「ア、アアア――」
 うめき声をあげ、結晶で鉤爪化した腕を振るってくるレナードのエーテライトモンスター。
 ニルはその攻撃をワンドで受けると、『ちいさなねがい』を込めて至近距離で魔力を爆発させた。
「宝石はすてきですけど、レナード様がそばにいるほうが、きっとアリア様は笑えるのです」
「普通に死んでいても全然おかしくなかったんだから。商人さんが護衛もつけずこんなことしたらダメ。あとでお説教だからね!」
 爆発によって派手によろけたレナードにソアは組み付き、絞め技をかけて意識を奪う。厳密にはレナードの空に付着し意識を奪っていたエーテライト鉱石を破壊したのである。
 そんなソアめがけ、鉱山夫のエーテライトモンスターが手にしていたツルハシをふるって攻撃してくる。
 レナードを傷つけないように一緒になってごろんと転がると、ソアは素早く起き上がってエーテライトモンスターの手に蹴りを入れた。
 つるはしが吹き飛び坑道の壁に激突。そのまま相手の首を掴んで壁に押し当て、意識を奪った。バチッと手のひらから走る紫電がどうやらミソであるらしい。
 そこへ更に数体のエーテライトモンスターが出現。
 キリが無いとみてか、ヴァイオレットが『名乗り口上』を発動。
「時間を稼ぎます。その間に……」
 ヴァイオレットへ群がりツルハシや鉤爪による攻撃を仕掛けるエーテライトモンスターたち。
 しかしヴァイオレットはそれを軽々と回避し、舞うようにエーテライトモンスターたちの間をすり抜けていく。
 ふわりと身体を浮きあがらせるェクセレリァス。
 『神滅弓・ワールドスレイヤーⅢ』つまりは弓の形をしたビーム砲を構え、弓を放つ動作を行う。
 念を乗せた魔導素粒子ェクセリオンを放射することでエーテライトモンスターを弱体化した次の瞬間、素早く不殺の魔術『ヴァイス&ヴァーチュ』を選択。
「憑依してる結晶を狙って撃てば――」
 ばしゅんと放たれたビームは不思議な軌道を描いてエーテライトモンスターの背にある結晶を破壊。するとそれまで激しく動き回っていたエーテライトモンスターががくりと崩れ落ち、地面に倒れうごかなくなった。
「なるほど、そのようにすればいいのですね」
 オリーブは暗がりの中を走り、残ったエーテライトモンスターたちめがけ『掃射撃』を開始。
 クロスボウを用いた矢はすべてが見事にエーテライトモンスターの結晶部分だけを破壊していく。
 ヴァイオレットの術中をギリギリ逃れたエーテライトモンスターがオリーブめがけ突進してくるが、なんということはない。
 素早く剣に持ち替えたオリーブは突っ込んでくるエーテライトモンスターの攻撃を紙一重で回避すると、背にある結晶を剣で破壊。
 崩れ落ち動かなくなったのを確認してバクルドに視線を向けた。
 暗視能力でその動きの一部始終を見ていたバクルドは頷き、『SRB』を発射。つまりは暴徒鎮圧用の特殊ゴム弾である。
 着弾と同時に強い衝撃を放ちバラバラに砕けるそれは、エーテライトモンスターを見事に鎮圧する。
「ちとばかしそこらで寝てな、お前さんらが起きる頃にゃ拾ってやるさ」
 その調子でゴム弾を次々に発射。残っていたエーテライトモンスターをすべて鎮圧すると、ふうと息をついて額を拭った。
 後ろのほうに倒れているレナードに顔を向け、ピッと二本指を立ててやる。
「お前さんを待ってるやつがいるんでな、とっとと目を覚まして帰るぞ」

●エーテライトキメラ
 坑道の奥、掘り広げられたエリアにそれはいた。
「エーテライトキメラ、か」
 バクルドが苦々しい表情でライフルを構える。
「動物をごちゃ混ぜにして推奨みたいなもんをくっつけてるのを見ると気味が悪いな、単純な宝石なら良いかもしれなんだが表出してるのがエーテライトならタダの透明の邪魔くさい石ころにしか見えんな」
 複数の動物が融合したような姿をしたエーテライトキメラはそのままバクルドへ突進。
 バクルドはライフルによる射撃を数発ぶち込んだあと、素早く剣を抜いて近接戦闘に切り替えた。
「喰いでもなけりゃ害にしかならん、とっとと屠殺されてくんな!」
 エーテライトキメラの爪が走り、バクルドの肩口を切り裂く。と同時にバクルドの剣がエーテライトキメラの足を切裂いた。
 ここは回復のしどころだと察した涼花が治癒の力のこもった演奏を開始。
 坑道内に元気の出てくるような音楽が響く。
 そんな音楽が力をもってか、バクルドの肩口にばっくりと開いた傷が急速に塞がり、治癒されていく。
 エーテライトキメラはその治癒の力に対抗するようにゴオオと吠え、周囲に結晶による吹雪めいたものを引き起こした。
 咄嗟に剣で防御するオリーブ。鎧をガンガンと叩く結晶。隙間から入った結晶がオリーブの身体を激しく痛めつけるが、それに対抗するように涼花の音楽が彼の身体から痛みを取り去ってくれる。
 これならなんとか対抗できそうだ。
 オリーブはロングソードを握りしめエーテライトキメラへと斬りかかった。
 エーテライトキメラの鉤爪と幾度も剣がぶつかり、激しい火花が散る。
 それでも勝ったのはオリーブの剣のほうだった。
 エーテライトキメラの鉤爪を破壊し、そのまま相手の肉体を切り裂く。
 追撃を逃れるために大きく飛び退くオリーブ。
 代わりに攻撃を担当したのはェクセレリァスだった。
 浮遊状態を維持したまま『デミウェーブガン・閃輝』を発動。
 異界の兵器「波動砲」の模倣品。眼前に球状力場を形成し魔力を収束、 力場を開放して金色のビームを放ち直線範囲を掃射するそれはェクセレリァスの『ドラゴンブレス』だ。
「おなじ魔法鉱石の身体でも、堅さが段違いだね。けど……」
 削りきれる。
 そう確信したェクセレリァスは『デミウェーブガン・閃輝』を連射。すべてのエネルギーを吐き出すつもりで撃ちまくった。
 そこへ更なる攻撃を仕掛けたのがヴァイオレット。気配を消して背後へと回り込み、自らの影を蠢かせ無数の槍を生成する。
 それらがすべてエーテライトキメラへと突き刺さったかと思うと、自らもまた短剣をエーテライトキメラへと突き立てる。
 かなりのダメージをたたき出したはずだが、どうやら吹き飛ばすには至らない。それだけの強敵ということだろうが……だからといって退く理由にはならなかった。
 更なる攻撃を続けるヴァイオレットに乗じて、ソアが爪による斬撃を繰り出す。
「ごちゃごちゃ混ざりすぎだよ、ボクがすっきりさせてあげる」
 吠えるようにそう叫ぶと、自らの肉体に雷撃を纏い凄まじい衝撃を伴って爪の斬撃を解き放つ。
 無論ただの斬撃ではない。エーテライトキメラはその斬撃によって派手に身体を損壊させ、反撃とばかりに巨大な尾でソアを殴りつける。
 吹き飛ばされたソアは坑道の壁に激突する――も、素早く空中で身を翻して壁を蹴り、再びエーテライトキメラへ接近。激しい縦回転と共に爪の斬撃を叩き込む。
(この子も……元は普通の動物だったのかな……。
 この宝石……何で出来てるんだろ……)
 レインはふとそんな疑問をエーテライトキメラに抱いた。
 こちらをギラリとにらみ付け、襲いかかろうと走っているエーテライトキメラ。
 手加減が出来る相手では、どうやらない。
「撃破依頼だから……助けられないの、ごめんね……」
 エーテライトキメラの再生した鉤爪がレインに突き刺さるも、それを自らにかけた治癒の魔法によって修復。
 反発して飛び退いたレインは傘を翳して次なる攻撃を防御した。
 傘の表面に広がった魔術結界がエーテライトキメラの更なる攻撃をがしがしと防ぐ。
 それだけの時間があれば、充分だ。
「ボスを倒したら、この「かなしい」は終わりますか?」
 ニルは『ミラベル・ワンド』に込めた莫大な魔力をエーテライトキメラめがけて叩き込む。
 反撃に鉤爪が繰り出されニルの肩をえぐったが、更なるニルの反撃がエーテライトキメラの頭を粉砕した。
 それはどうやらエーテライトキメラの核であったらしく、エーテライトキメラはバラバラに崩れてその場に崩壊していった。

●ハッピーエンド
「あれ……ここは……?」
 行動の外に連れ出され、馬車に積み込まれていく鉱山夫たち。
 その最後になったレナードは、意識を取り戻してゆっくりと身体を起こした。
 どうぞと差し出されるニルのおにぎりを受け取り、呆然とするレナード。
「助かってよかったです。あなたの婚約者が心配していましたよ」
「アリアが!?」
 反射的に声を上げ、しかし自分がなにをしてしまったのかを察してレナードは顔を青くする。
「今は、休んで……」
 レインが起き上がろうとするレナードの肩をそっと押さえた。
 ヴァイオレットはその様子を遠巻きに眺め、黙っている。
(ワタクシは……この光景を前に何を思えば良いのでしょうか……今の自分では、もう何も……)
 オリーブはといえば鉱山夫を運び込む作業を手伝っている。
 レナードはがくりと肩を落とした。
「すみません。アリアに婚約指輪を作りたくて……けれど、この鉱山がこんなことになっていたとは知りませんでした」
「まあ、仕方ないでしょう。魔法鉱石の暴走など予想できません」
 作業途中のオリーブがそうフォローしてくれるが、レナードは苦笑で返す。
「そう言ってくれると気持ちが軽いのですが……」
「あ、起きた!? 約束通りお説教タイムだよ!」
 運び込みを行っていたソアがたかたかと駆け寄ってくる。
 その様子を、ェクセレリァスは『仕方ないな』という顔で眺めていた。
「とにかく、これで一件落着……でいいのか?」
「ああ、そういうことった。さて、帰って宴にでもするかね」
 バクルドが笑って返した。
 なぜなら、そう。皆が望んだハッピーエンドなのだ。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

PAGETOPPAGEBOTTOM