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シナリオ詳細

もえろ! 放火魔天国!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●悪霊の村
 このさきに『悪霊の村』がある。
 その町には誰も住んでいない。住民だったものはみな亡霊たちに喰われ、生ける屍となっているのだ。
 間違って立ち入ったなら、彼らの意味不明なうめき声やいびつな生活風景を見ることになるだろう。
 だが立ち入ったが最後、戻ることはできない。君もまた亡霊たちに魂を喰われ、生ける屍となるのだ。
 解決する方法はただひとつ――。

「この聖なるガソリンで村ごと燃やしちゃえばいいのデス☆」
 十字が刻まれた赤いガソリンタンクを掲げて絶好の笑顔を浮かべるシスターカンディード。
 ここまでのホラーめいた空気はどこへやら、シスターは聖なるガソリンで作った聖なる松明や聖なる火炎瓶。聖なる導火線に聖なる小型火炎放射器を机に並べて目にキラキラの星を浮かべた。
「聖なるガソリンは特殊な悪霊を浄化する力があるのデス☆
 これによって燃やし尽くされた悪霊は天に召されるのデス☆
 勿論家も草木も残らず燃やすことで隠れた隙間も徹底除き――祝福できるのデス☆」
 一瞬除菌っていいかけたなこいつという視線をフルにスルーして、シスターは松明を掲げてぶおんぶおん振り回した。
「さあいくのデス☆ 悪霊にとらわれた悲しき亡者たちを聖な――オラァ☆☆☆」
 なにかを我慢できなくなったシスターが、松明を投げ始めた。
 おやめなさいとその辺の人たちに羽交い締めにされ、シスターは連れて行かれた。

●聖なるガソリンで祝福の放火を
 この案件はプリンシパリティー教会からローレットへ依頼された『除霊儀式』である。
 悪霊の村と呼ばれる寂れた村へ行き、悪霊たちを倒し聖なるガソリンで燃やし尽くすというものだ。
 悪霊の村は幻想から南にいった小島にあり、普通は誰も訪れないような場所だ。
 島には古い木造家屋が点在し、一部の家屋は半壊すらしている。
 しかし住民らしき人影があり、その人影はなにやら意味不明な言葉を喋りながら生活らしき動作を延々と繰り返しているという話だ。
 彼らはこの島に蔓延する悪霊に魂を喰われてしまった人々。つまり抜け殻のリビングデッドなのだ。
 島にやってくる者を見つければ農具などを用いて襲いかかってくるが、倒しても殺しきることはできない。なぜなら既に死んでいるからだ。
 開放する手段は、そう!
 大量に持ち込んだ聖なるガソリンで燃やして燃やして燃やし尽くすことなのだ。
「ンアァ! わ、わたくしも! わたくしも行きたかっ――あとはよろしくお願いデェス☆」
 人々に引きずられていきながら、シスターが大きく手を振った。

GMコメント

【オーダー!】
 悪霊の村を聖なるガソリンで燃やし尽くす。

 端的に言うととにかくガソリンをばらまいたり火炎瓶を投げたりして家という家を民という民を燃やしまくります。
 それを邪魔するというか生きてる奴皆殺しの勢いでリビングデッドが襲いかかってくると思うので、リビングデッド住民たちを倒す作業と燃やす作業をそれぞれ分けて行なうとよいでしょう。
 住民がほんとは生きてるとかそういうことはないので、安心して火炎瓶を投げまくってください。

【リビングデッドと悪霊】
 島には大量のリビングデッドと悪霊がいます。
 リビングデッドは一般住民が魂の抜け殻と化した存在ですが、この世界ニートでもそこそこ強かったりするので油断は禁物です。なめてかかると冗談抜きでヤられます。
 また、悪霊もたまにその辺を飛んでおり、ペナルティ高度を移動とかしてるといきなり襲いかかられたりしますのでご注意ください。
 これらの敵は基本的に死にません。戦闘不能にすれば少しの間動かなくなりますが、そのうちなんやかんや修復されて動き始めるので『ある程度倒したら即逃げ』が一番安定します。

【聖なるガソリン】
 島へは船でいくのですが、その船にヤバいくらい積んであります。ゆえに火気厳禁。
 基本は赤いガソリンタンクに入っているので、これを担いで運んでは撒いてを繰り返すことになるでしょう。
 それらの作業を簡略化する道具として、火炎瓶、松明、小型火炎放射器(片手で1メートルくらいばーってやるやつ)がそこそこ沢山用意されています。
 村ごと焼いていけば悪霊も浄化されて島もすっかり綺麗になると思いますので、がんがんヤっていきましょう。

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • もえろ! 放火魔天国!完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年10月28日 21時50分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

リノ・ガルシア(p3p000675)
宵歩
レナ・フォルトゥス(p3p001242)
森羅万象爆裂魔人
九重 竜胆(p3p002735)
青花の寄辺
コリーヌ=P=カーペンター(p3p003445)
美音部 絵里(p3p004291)
たーのしー
天之空・ミーナ(p3p005003)
貴女達の為に
アニー・ルアン(p3p006196)
鳳凰
鞍馬天狗(p3p006226)
第二十四代目天狗棟梁

リプレイ

●悪霊の村
 ごとごとと不安な音をたてて小型船が進む。
 手すりに寄りかかるようにして、コリーヌ=P=カーペンター(p3p003445)は潮臭い風に髪を押さえていた。
 いや、臭いというならガソリン臭い。眼前には放火くらいにしか使いようが無いような大量のガソリンが赤い灯油タンクに詰めてピラミッド積みにしてあった。
 これを使いまさに村ひとつ放火してこいという話である。
「いやー、これは中々に派手な依頼だねぇ」
 まあ村というだけあって結構な広さがあるはずだ。ぼろ屋数軒であれば集落とか呼ぶもんだと……コリーヌは凄まじく雑な地図を見ながら思った。
「ところでこれ、誰が書いたの?」
「我である」
 『第二十四代目天狗棟梁』鞍馬天狗(p3p006226)が腕組みをして言った。
「うん……まあ、夜だしね。島の輪郭くらいしかわかんないよねえ」
 地球の、それも21世紀のジャパンとかに住んでると地図なんてあって当たり前に思えるが、こんな島を測量しようって人も土地情報の資料を残そうって人もいないし衛星写真なってもっと無いので、地図なんてものは当然ながら無かった。伊能忠敬って偉かったんだなあ、という話である。
 丁寧に数台並んだ火炎放射器を眺め、この場で煙草でも吸おうものなら死ぬな……という顔をする『一刀繚乱』九重 竜胆(p3p002735)。
「けれどあのシスター、頭のおかし――コホン、かわった人だったわね。
 まあ言い方はアレだけど、正当な理由も依頼された立場もあるし、遠慮無く派手にやっちゃいましょうか」
 派手にやり過ぎて自分たちが燃えないように気をつけなくちゃ、と振り返る。
 『トリッパー』美音部 絵里(p3p004291)はそういうところをあえてスルーして考えているようで。
「ひゃっはー、邪悪は浄化だー! なのです」
 と火炎瓶をかかげてはしゃいでいた。
「それにしても、この島大丈夫なのです? アンデッドと悪霊だらけで、村ごと燃やさないとダメって……」
「全て焼き払いなさい、か」
 うーむと唸る鞍馬天狗。
 『森羅万象爆裂魔人』レナ・フォルトゥス(p3p001242)がこきりと首をならした。
「いつこうなったかは分からないそうですわね? まあ、理由はあるんでしょうけれど……一気に燃やし尽くして、再び命の輝く島に戻したいところですわね」
「生存者がいないのは気が楽……いえ、私にとってはどちらも変わりはない、か。とにかく、引き受けたからには徹底的に燃やすわよ」
 『鳳凰』アニー・ルアン(p3p006196)が静かに言った。
 どうやら今回のメンバーには炎にまつわる者も少なからずいるようで、依頼内容にぴったりあっているようにも思えた。
 手すりの上に腰掛けて足をぶらぶらとやる『闇市芸人(他称)』天之空・ミーナ(p3p005003)。
「しっかし悪霊の村ねえ……『立場柄』、私も無視できない話……なのかね」
 世界を離れ役目とも離れたとはいえ、関わりがないと言ったら嘘になる。
 聖なる炎で浄化するのですとキラキラした目でハイになっていたシスターと、燃えさかる島の光景を想像する。
 もしかしたら、これも大事なことなのかも知れない……。
 手すりに身を乗り出すようにして海風に横髪をなびかせる『宵歩』リノ・ガルシア(p3p000675)。
「ガソリンの臭いって苦手ぇ。あのシスター島に放逐した方がよっぽど早かったんじゃない? なんて……早くお仕事終わらせちゃいましょ」

●船を待つ
 島の風景が見える。
 炎のおちた灯台と、闇に沈んだかのような小さい船着き場。
 小型船からのライトでかろうじて見えた木製の桟橋は傾いていて、その上にもごもごと動く物体が見えていた。
 身を乗り出して目をこらし、それがはじめてリビングデッドの群れだと分かった。
「おいおい……」
 流石に(しかし僅かに)顔をしかめるミーナ。
 リビングデッドの数は、あまりに多かった。
 指の数よりは少なかろうと思っていた者も少なからずいたが、そんな規模では断じてない。
 ぼろぼろに腐った土か肉だか分からなくなった死体が無理矢理に動き、こちらに手を伸ばしている。
 海上には無数の悪霊が旋回飛行し、一部は船めがけてミサイルのように飛来してきていた。
 それを血液で作り出したクナイで打ち落として、ミーナは全員へと振り返る。
「まずはこいつらを突破しないとマズいぞ」
 腕組みをして、片眉を下げるよにして唸るリノ。
「殲滅しきれる数……かしらねえ。暫くして復活するって話が本当なら、こっちのスタミナがつきるのが先じゃない?」
「だったら、先手必勝ですわ」
 レナは船の手すりに飛び乗ると、桟橋に身を乗り出して今にも落ちそうになっているリビングデッドたちめがけてダイブした。
 指先をふって激しい爆発を起こすレナ。彼女を中心とした周囲一帯が吹き飛び、もろくなった桟橋もろともリビングデッドが海に沈んでいく。
 パッと一瞬だけ明るくなる岸。船は岸に乗り上げる形で強制的にとまり、リノは火炎瓶片手に飛び降りた。
 船に挽きつぶされたらしい死体をよそに、火炎瓶を投擲。
「それにしてもまたなんでこんな島で悪霊が湧いたのかしらねぇ、定番といえば定番だけど」
 相対的に生まれた船の影へ回り込み素早く闇に紛れると、そのまま斥候のために動き始めた。
 進めば進むほど、状況の深刻さがハッキリとしてきた。
 村のリビングデッドは凄まじい数存在していた。
 レナの攻撃で察したが個体ごとの戦闘力は低く、動いているのが不思議なくらいに肉体はもろい。悪霊たちも飛行能力があることをのぞけばたいした戦闘力はなさそうだ。
 恐ろしいのはスタミナ切れになってから取り囲まれることである。いかな雑魚とはいえ人骨で殴られ続ければ誰だっていずれ死ぬ。死体の腐り具合からなめくじにたかられる様を想像してリノは身震いした。
 『リビングデッドはこっち側から来ている』
 そのシグナルをハンドサインで送ろうとしたが、ふと手を止めた。
 そういえば闇に紛れてこっそり移動している最中だった。敵はもちろん味方にもサインは送れない。何か光るものでも……いっそ火炎瓶でも投げてみるかと思ったが、そうなれば自分の居場所がリングデッドたちにバレて大変なことになる。まずは一旦皆に合流しようと決めた。

 リノが戻ってくるまでの間。
 竜胆はサイバーゴーグルを着用。
 レンズをピンと指ではじくと、不自然なダッシュで迫ってくるリビングデッドたちへと身構えた。
 踏み込み、鞘を握り、身を低く。
 相手のリーチは短い腕。
 こちらのリーチは刀の切っ先。
 竜胆の振り込んだ刀の先端がリビングデッドのすねを切断し、滑り込むように踏み込んでもう一体の腰をななめに切断。
 一刀のもとに転倒したリビングデッドたちはばたばたともがきながら腕の力だけで竜胆に迫ってくる。
「さすがに気持ち悪いわねっ」
 素早く飛び退いて。しがみつきを回避する。
 数十メートル高度を旋回飛行する悪霊がこちらに狙いをつけて降下をはじめる。
 そうはさせるかと気で作ったエアクナイを投擲して悪霊を粉砕。
 仲間に手を振って合図する。
「こっちは任せて。今のうちに爆破しちゃっていいわ!」
「それじゃお言葉にあまえてー!」
 コリーヌはガソリンを満たした樽を船の上から蹴り落とした。
 板によって作られた斜面を転がっていく樽。
 間にいたリビングデッドを軽くひきつつ進んでいった樽の周りに、鞍馬天狗がガソリンをまき散らしていく。
 鞍馬天狗は高度扱いにならないギリギリを飛行するつもりだった。この世界でいう高度飛行について詳しくは戦闘マニュアルの『飛行戦闘は有効か?』の項目を参照してもらいたい。
 詳細を省いて要点だけ引用すると『レンジ0・至近に属する三メートル未満の範囲での飛行はペナルティを受けません』とある。つまり悪霊はもとよりリビングデッドの攻撃範囲内である。
 鞍馬天狗は集まってきたリビングデッドから逃げるように引き返してきた。
 アニーが『鳳凰の匠』という能力を使って周囲の雑草を燃やし始めた。
 (燃焼時間を長くしたい意図があったが燃料なしで長時間大きな炎を出し続けるのは、火加減を見極めるのとはまた別の能力になるので)火炎放射器とガソリンを使って炎の壁を作っていく。
 対して、悪霊は空中を飛行し、リビングデッドは炎などお構いなしに走って突っ込んできた。体中に炎を纏ったまま組み付いてくる。
「あぶねえ、ここは任せろ!」
 簡易飛行によって跳躍したミーナが割り込むように着地し、戦鬼暴風陣の構えをとる。
「皆ちょっと離れてろよ。一気に行くぜ!」
 強いエネルギーを刀に宿したかとおもうと、周囲のリビングデッドをまとめて粉砕した。
 ミキサーにかけたかのようにぐしゃっと破壊されたリビングデッド。直後、それを埋めるほどの量のリビングデッドが飛びかかってくる。
 ミーナが『放火を続けろ』のサインを出す。
 戦闘自体はややキツかったが、倒してからゆっくり火をつけて回るなんて余裕はなさそうだ。
 なぜなら、船で挽きつぶしたはずのリビングデッドがなぜかぶくぶくと修復されこちらに駆け寄ってくるのが見えたからである。
「わかった! 派手に……燃えろっ!」
 導火線に火をつけて耳を塞ぐコリーヌ。
 転がった先の樽に火がつき、大爆発を起こして民家を吹き飛ばした。
「ぴっちぴっち、ちゃっぷちゃっぷ、らんらんらーん」
 迫り来るリビングデッドが斜めに切断される。
 絵里が歌いながら血蛭を使ってリビングデッドや悪霊たちを迎撃していた。
「たっくさん燃えるんだよー。ふふーん」
 あたりは充分火の海だ。
 アニー、レナ、コリーヌ、鞍馬天狗たちのはたらきによってずいぶんと明るくなった。闇に紛れるのももう無理だろうとリノも戻ってきた。
「死んでるから、もう死なない。私のお友達と一緒なのです」
 絵里はさらなる血蛭でリビングデッドを切り裂いて、皆を振り返った。
 ずいぶん前に切り裂いたリビングデッドが、逆再生映像のように肉体を修復させ、絵里を見やる。
 このままではきりがない。戦闘スキルを省エネモード(衝術)に切り替え、絵里はその場を離れるよう仲間たちに呼びかけた。

●燃える村
 竜胆は走る。
 雑草生え放題の道ならぬ道をひた走り、緩慢にふりかえるリビングデッドの集団に刀一閃。
 全員をまとめて切り裂くと、崩れた死体を飛び越えて更に走る。
「急いで。追いつかれる!」
 リビングデッドたちはごく短い距離を走ることはできても、長い距離を走り続けられるほど頑丈ではなかった。
 そのため一生懸命走れば逃げ切ることができる。
 けれどどういうわけだろうか。
 リビングデッドたちはこちらの位置をわかっているかのように集まってきて、村に火を放っているうちに追いついてくるのだ。
 それが空を飛んでいる悪霊たちに知られているからだとは、ついさっき気がついた。
 ミーナがガソリンを積んだロボ砂駆と馬車を走らせ、追いついてくるリビングデッドへと振り返る。
「しつこい連中だなっ」
 地面を踏みつけ死骸盾を使用。
 すると、地面から這い出るようにスケルトンが現われた。
「……んっ?」
 一瞬、なんか不自然だなと思ったが、深く考えている時間はない。
 迫るリビングデッドにむけて再びの戦鬼暴風陣を叩き込む。
「こいつらガソリンぶっかけて燃やしたはずなのに、なんで元気に走り回ってんだ……?」
 そう思う一方、よく観察していると復活しない個体があることが分かってくる。
「燃える炎って綺麗ですねー。スッキリするのです。ここで死んじゃったみんなも私のお友達になってくれるかなあ? ふふふー。どーんっ」
 絵里が燃え上がる教会にリビングデッドの神父を突き飛ばしてやると、四肢がくだけてばらばらになったまま炎に包まれて動かなくなった。どころか、そのまま燃え尽きて灰すら残らなかった。
「……あれ? じゅーしーに焼けると思ったのですけど」
 他にも、炎に放り込んだり倒してから焼却した死体はあった。燃え尽きるまでけっこうな時間がかかり待ってらんないので放置していたが、それにしたってここまでハッキリ灰になったのは初めてである。
「どういうことでしょー?」
「そうか、こいつら……」
 ミーナは歯噛みした。
 気付いてしまった。
 村を燃やせば燃やすほど、復活するリビングデッドが減っていくのだ。
 彼らを無理矢理修復させていたのは、この村そのものだったのだ。

 レナ、アニー、鞍馬天狗が村に火をつけて回る。
 が、それも限界が近くなってきた。
 持ち歩くには少々難しくなってきた。
 こんなことなら船でぐるーっと回れば良かったのでは……と思ったが今更である。
「この島をすべて燃やしておかないと、復活するってことよね」
「とにかく、アンデッドも含めて、全て灰に変えるべきである」
 鞍馬天狗はガソリンタンクを放り投げてオーラキャノンを乱射しはじめる。
 リビングデッドにとって道路に火をつける作戦が足止めにならないことにもう気づいているアニーも、マジックフラワーで応戦を開始。
 レナもそれに加わって魔弾を連射していく。
 しかしじきにスタミナはきれて行き、リビングデッドや悪霊に囲まれ始める。
 鞍馬天狗たちは倒しきることをやめ、一点突破で逃げることを決めた。

 それから暫くして。
「この先に船をとめてあるわ、とにかく走って」
「馬車持ってきておいて正解だったぜ、くそっ!」
 リノはミーナの操る馬車の前方に位置取りをして、立ち塞がろうとするリビングデッドをナイフによって切り裂いた。
 首、手首の順に切り落とし、腕の付け根を持って放り投げるように飛ばす。
 ミーナは囲まれたレナたちを助け出すために戦鬼暴風陣を使いすぎスタミナ切れを起こしていた。彼女の馬車にはぐったりとした鞍馬天狗やアニーが休んでいる。
 絵里が馬車に飛びついて入り込もうとしてきたリビングデッドを衝術で殴り飛ばす。
「船って、たしか乗り上げちゃってましたよね?」
「船は私がなんとかするから、今は生き残ることを優先!」
 コリーヌがドローン爆弾を操作して眼前の馬小屋を爆破。
 がれきを踏み越えて馬車が駆け抜けていく。
 炎をはらうように走る馬車の中で、コリーヌは炎に埋もれるようにして乗り上げる船を見つけた。
「あれだ。皆乗り込んで!」
「一応聞くけど、どうやって?」
 鞍馬天狗たちを担ぎ上げた竜胆がげっそりした顔で振り返った。
「……なんとかして!」
「だと思った」
 船が出せず取り囲まれればもはや死ぬしか無い。
 ミーナが風纏いの刻印を使って船に乗り込み、ロープを投下。リノがそれを馬車に縛り付け、ロボ砂駆を蹴っ飛ばして『死にたくなかったらかけあがれ!』と馬車を引っ張らせた。
 傾いた船の側面を絵里や竜胆たちの助けを借りながら駆け上がっていく馬車。
 船の上から顔を出す竜胆。
「コリーヌ!」
「村を焼き尽くすのは失敗したけど、その分の燃料はこれだけ余ってる」
 船の斜面を駆け上がる際馬車から放り出した燃料を、船と乗り上げた地面の間に棒をがしがしやって埋め込んだ。
 船からたれさがったロープをよじ登りながら、ドローンを操作して燃料に引火。
 大爆発を起こしたタンク類は船を押しだし、海へざぶんと戻した。
 ロープにぶら下がりながら、遠のく島を振り返るコリーヌ。
 いまだ炎のあがる村を、無数の悪霊が飛び回っていた。
 島から出てくることは、ない。
「きっと、あそこに縛られてるんだろうね」
 煙に紛れて空を舞う悪霊たちは、なぜだか少し悲しく見えた。

成否

失敗

MVP

なし

状態異常

アニー・ルアン(p3p006196)[重傷]
鳳凰
鞍馬天狗(p3p006226)[重傷]
第二十四代目天狗棟梁

あとがき

 依頼にぴったりな参加者様や素敵なロールプレイが沢山あつまったのに大変心苦しいのですが、総合的に判定した結果、こちらのシナリオは失敗判定となってしまいました。
 有効なプレイング密度(≠文字数)の不足や、状況に対して有効ではない行動選択があり、それらのフォローにあてられるプレイングもあったのですがカバーしきるにはいまひとつ不足しておりまして、どうしても成功ラインに届かず、誠に残念ながら途中で撤退することになってしまったようです。
 とはいえ、楽しく火を放ったり死生観が独特な方の振る舞いがあったり、日の付け方に工夫を凝らしたりと、皆様の魅力も大変素晴らしいものでしたので、ぜひまたシナリオに遊びにいらしてくださいませ。心よりお待ちしております。

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