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シナリオ詳細

<悠久残夢>終焉を屠る希望

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●迫る終焉
 滅びの気配がプーレルジールに迫っていた──。

 勇者アイオンは、魔王イルドゼギアと彼の終焉の勢力に立ち向かう使命を負い、サハイェル城へと到達する。それと共に、新たな事実が判明した。城の地下に存在する扉は混沌世界への入口であり、その向こうは無尽蔵の滅びが広がる『終焉』の地であった。
 『迷宮の果て』から至るのが本来の正規の入り口たる『表口』ならば、その扉は『裏口』とも言うべき場所。
 かの扉を破壊せねば無尽蔵の滅びがプーレルジールに蔓延り、いつかは滅びで覆い尽くされるだろう。だが、その問題はプーレルジールだけに留まらない。
 混沌世界は万象の上に座す上位世界だ。下位の世界を飲み喰らう程に強い――つまり混沌世界に限りなく近いプーレルジールはいつか混沌世界に呑み込まれるのだ。それがプーレルジールの避けられぬ滅びの一つ。その時にもしも『滅びのアーク』が可能な限り凝縮されていたら?
 ――夥しい滅びの結晶が、混沌世界を内側から侵食していく。
 それこそが終焉に属する者達の狙い。混沌世界を支えるシステムそのものを攻撃せんとする計画。
 プーレルジールの行く末は混沌世界にも確実な影響をもたらすだろう。
 抗えるのは希望の可能性を持つイレギュラーズのみ。プーレルジールの未来は、イレギュラーズに託された──。

●サハイェル城
 サハイェル砂漠内に存在するサハイェル城──禍々しくほの暗い空気を漂わせる魔王の城。この城の攻略作戦の成否が世界の命運を分けることになる。のしかかる重責が、城の空気を一層重苦しく感じさせるようだった。しかし、そればかりではなく、城壁の向こうには魔王の配下である敵群の気配を強く感じた。
 あなたたちイレギュラーズ一同は、城の外周の様子を隈なく探ることで、城壁を突破できそうな箇所を見つけ出そうとした。堅牢な城を見上げる度に焦燥感を募らせながらも、ひとりひとりが冷静に城の造りを探る。そんな中、黒ずんだ城壁の向こうに続くであろう扉を見つけた。
 木製のその扉は特段おかしなところはないが、誰もが突然その場に現れたという認識だった。ひょっとすると砂山に埋もれて気づくことができなかったというのも考えられたが、イレギュラーズは慎重に扉の前まで接近する。
 ──何か意図がある。敵の罠の恐れを感じなくもないが、あえて扉の破壊を試みた。扉は破壊され、城壁の一部諸共崩れ落ちる。それ以上の変化は現れないように見えた。しかし、次にイレギュラーズは周囲の城壁の間から、黒い物体が染み出してくる光景を目にする。
 ドロドロとした粘着質、黒いスライム状の物体──『終焉獣』がイレギュラーズの前に立ち塞がる。
 人のような輪郭を帯びる3体の終焉獣は、破壊された扉の前に陣取り、イレギュラーズを寄せ付けない構えを見せた。
 マネキンのように目鼻のない頭、黒々とした上半身を漆黒の外套(がいとう)で覆う姿は死神を連想させたが、特にその下半身が不気味さを増長させていた。終焉獣の下半身は、タコのような足、複数の触手が生え揃うものだった。
 終焉獣らと対峙し、臨戦態勢となるイレギュラーズ。その視界には、イレギュラーズが空けた城壁の穴が魔法陣によって塞がれる瞬間が映る。
 城壁の穴にはめ込まれるように現れた魔法陣は、目の前の終焉獣によるものだった。その証拠を示すように、終焉獣らはぶつぶつと呪文のようなものを一斉に唱え始めていた。
 終焉獣を倒した方がいいことは確かだろう。そして、更なる危機がイレギュラーズに迫る。
 呪文を唱え続ける終焉獣に呼応するかのように、何体もの終焉獣が地面からわき出るように現れた。それらすべての終焉獣の姿は同一で、何ひとつ判別がつかない。
 この状況がどちらに吉をもたらすのか、凶をもたらすのか──。ひとりひとりが鋭い眼光を向けるイレギュラーズは、終焉が覆される未来だけを見据えていた。

GMコメント

●シナリオ導入
 無防備な状態の侵入経路を見つけたあなたたち。何らかの罠なのではないかと推測しつつも、扉の破壊に成功する。しかし、即座に終焉獣の群れが現れ、侵入口は魔法陣によって封鎖された。
 イレギュラーズを迎え撃とうとする不気味な姿の終焉獣たち。例えどんな難敵であろうとも、退ける以外の選択肢はない――。


●サハイェル城攻略度
 フィールドが『サハイェル城』のシナリオにおいては城内の攻略度が全体成功度に寄与します。
 シナリオが『成功』時にこの攻略度が上昇し、全体勝利となり、プーレルジールにおける『滅びのアーク』が減少します。

●『死せる星のエイドス』について
 謎の少女ステラがもたらした可能性(パンドラ)を利用して『奇跡を代行する』事の出来る謎の機構です。パンドラを代償とした奇跡、つまりは【PPP】を起こす可能性を上昇させるアイテムです。これがない場合、プーレルジールでのPPP判定は非常に難しいものになります。


●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●成功条件
 幻影の本体である3体の終焉獣を倒し、城壁を突破すること。


●戦闘場所について
 砂漠にそびえるサハイェル城、正門側のほぼ裏手。
 砂地だが、足場が悪いなどの条件はない。

●終焉獣について
 扉破壊後に最初に現れた3体が本体であり、計15体の幻影と共に立ち塞がる。総計18体。
 終焉獣の幻影自身は攻撃を行わず、主に本体をかばう行動を取る。攻撃を受けた場合、自爆する形で対象にダメージを与える。その際、受けたダメージの40%を確定ダメージとして相手に与える。(『棘』の上位互換的スキル能力)
 一撃で倒される幻影だが、終焉獣は1ターンを費やして新たな幻影を復活させることができる。1度に復活させられる幻影は最大で5体まで。
 幻影を操る3体の終焉獣は、触手の一部を金属のように硬化させて攻撃することもできる(物近単【出血】)。黒い粘着質の物質を飛ばす(物中扇【暗闇】)、漆黒の熱線を放つ(神遠貫【泥沼】【重圧】)などして、イレギュラーズを退けようとする。
 常にぼそぼそとささやかれる呪文が聞こえてくる状態だが、近距離まで近寄らない限り、並み程度の聴覚で本体を探り当てるのは難しい。


 個性豊かなイレギュラーズの皆さんの参加をお待ちしています。

  • <悠久残夢>終焉を屠る希望完了
  • GM名夏雨
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年12月04日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

リースリット・エウリア・F=フィッツバルディ(p3p001984)
紅炎の勇者
カイン・レジスト(p3p008357)
数多異世界の冒険者
天目 錬(p3p008364)
陰陽鍛冶師
フリークライ(p3p008595)
水月花の墓守
祝音・猫乃見・来探(p3p009413)
祈光のシュネー
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
紅花 牡丹(p3p010983)
ガイアネモネ
芍灼(p3p011289)
忍者人形

リプレイ

 終焉獣のものに違いない低くくぐもった耳障りな声は、呪文を唱え続ける。重なり合う不気味な声によって、陰鬱な空気が周囲に広がり満ちていく。その異様な姿と行動から、背筋に走る悪寒を感じた者もいただろう。
 終焉獣の行動にも惑わされることなく、『ガイアネモネ』紅花 牡丹(p3p010983)は先手を取るために火蓋を切る。即座に先陣を切った牡丹の速さは、終焉獣に身構える隙を与えなかった。
 牡丹の片翼は銀河のような煌めき、燃え盛る炎のような奔流を宿していた。思わず見入るような激しい煌めきに視界を覆われると同時に、終焉獣は一挙に目の前へと迫った牡丹に圧倒される。まるでミサイルが被弾したかのような衝撃が、周囲の砂地を吹き飛ばした。複数の終焉獣がその衝撃に巻き込まれる。
 直撃した終焉獣――終焉獣A以外は幻影であり、終焉獣Aが生み出した分身であった。衝撃によって歪んだ幻影の像は漆黒の影と化し、波動そのものとなって牡丹に押し寄せた。牡丹を押し返すほどの力を爆発的に生じさせた幻影たちは、その直後に霧散する。
「オレは無敵だ!」
 牡丹は終焉獣らを威圧するように言い放った。その間にも、『忍者人形』芍灼(p3p011289)も終焉獣Aの下へ接近する。
「本体、そちらにいるでござるな!」
 敵の気配からあらゆる情報を感知することに長けた芍灼は、終焉獣の行動の多くを理解した。
 大量の砂の波が終焉獣Aの姿を覆った瞬間、剣を構えた芍灼は終焉獣Aを斬りつけようと踏み込んだ。その太刀筋によって払い落とされた砂の向こうには、芍灼の剣を受け止める終焉獣Aの姿があった。下半身から生え揃う多くの触手を硬化させ、終焉獣Aはそれらを盾のように掲げていた。
 2人の猛攻によって終焉獣Aの詠唱は止まっていたが、芍灼の姿を認識した終焉獣Aは詠唱を再開する。詠唱と共に確かな殺気が向けられたことで、芍灼は瞬時に終焉獣Aから距離を取った。
 一瞬の間に攻撃をつなげるイレギュラーズによって、終焉獣らは総攻撃に晒される。『数多異世界の冒険者』カイン・レジスト(p3p008357)も攻め手を担う1人であり、多くの幻影を一掃しようと能力を発揮する。
 ――幻影か。限りがあるかは分からないけど、長期戦は不利だ。一気に仕留めよう!
 狙いを定めたカインは自らの術式を発動させた。カインの全身を覆った神々しい光は、周囲にその瞬きを発散させることで力を発揮する。聖なる輝きによって照らされた終焉獣の幻影は、やはり揺らめく漆黒の影へと変化した。光の中に消失するかのようにも見えたが、複数の影は滑るように宙を移動し、一斉にカインへと向かった。漆黒の波動となって押し寄せた影を物ともせず、カインはその場に踏みとどまる。術式をまとうカインは、追撃に備えて終焉獣らを見据えた。
「痛いのは、我慢する……みゃー!」
 自身を奮い立たせる『祈光のシュネー』祝音・猫乃見・来探(p3p009413)は、黒い霧のような魔力を周囲に噴出させる。それらは瞬時に黒泥へと変化し、幻影を狙って四方へ放たれた。泥を浴びた幻影は祝音の攻撃に反応し、漆黒の波動となって祝音へと襲い来る。
 祝音は仰け反りそうになる衝撃にも耐え、大きく揺らいだ視界の中に終焉獣Aの変化を捉えた。終焉獣Aから放たれる何らかのプレッシャーにより、その周囲の砂がさざめくのが見て取れた。その瞬間、終焉獣Aの口元から熱線が放たれる。漆黒の熱線はまっすぐに祝音へと向かった。祝音がわずかな差で身をそらすと、終焉獣Aは触手をバネのように利用し、恐ろしい速さで祝音との距離を詰めた。
 触手を振りかざす終焉獣Aを目の前にして、祝音は防御態勢に入る。しかし、祝音の前に割り込む巨躯の影――『水月花の墓守』フリークライ(p3p008595)が終焉獣Aの前に立ち塞がった。終焉獣Aは、勢いのままに硬化させた触手でフリークライを打ち据えた。
 鋼鉄と化した触手からの強打を、フリークライは全力で受け止める。しかし、その鋼の巨人の体は微動だにせず、終焉獣Aを見下ろした。
 終焉獣Aは反撃を警戒し、すばやくフリークライの前から飛び退いていく。
 フリークライは、常に落ち着いた物腰で皆を鼓舞する。
「大丈夫。フリック イル。ミンナ負ケナイ」
 そうつぶやいたフリークライは、静かに自身の力を発揮する。フリークライが発現させた治癒の力は、光輪となって祝音の下に降り注いだ。
 すでに8体の幻影が消失し、『紅炎の勇者』リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)は幻影と思われる終焉獣の姿を観察する。
 ――外見では全く区別がつかない。とはいえ、本体と幻影では挙動に違いがあるのは明らか。
 リースリットは冷静に終焉獣の特徴を分析していた。
 攻撃を加えてきた個体、間違いなく本体である終焉獣Aの動きを目で追いながら、リースリットは更に本体をあぶり出す方法について考えを巡らせる。
 ――それ以外で本体の位置の特定は……呪文を唱えている個体を判別するか、或いは敵の布陣を俯瞰して多数に守られるように位置している個体を狙うか。
 一挙に攻めかかった牡丹らの動きに合わせて、リースリットも終焉獣Aの下へ攻め上がる。細剣を構えたリースリットの一撃は神速へと達し、終焉獣Aの体を刺し貫いた。勢いよく突き倒された終焉獣Aは、砂地の上に全身を投げ出し、そのまま起き上がることはなかった。
 残る終焉獣らに向き直りながら、気迫に満ちたリースリットは言い放つ。
「――幻影をなぎ倒し、一気呵成に仕留めましょう」
 その直後、リースリットの視界にはある光景が飛び込んできた。前触れもなく発生した津波が、終焉獣らを次々と飲み込んでいく瞬間を目の当たりにする。
 水の力を操る『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)は、地上から大量の水を沸き上がらせた。その水を自在に操ることで、巨大な津波を終焉獣らの下に向かわせる。
 幻影、本体の終焉獣諸共津波に巻き込んだイズマに対し、幻影から瞬時に発生した波動が影響を及ぼす。避けようのない衝撃を受け止めつつも、イズマは引いていく水の中から立ち上がる終焉獣Bに狙いを定める。
 倒されなければどうということはない――イズマを含めた終焉獣らに攻めかかる面々は、幻影の特性にも動じることはない。この場を押し通るための強い覚悟が窺えた。
 激しい戦闘の合間に呪文は度々途切れ、確実に1体目の本体は葬られた。それでもなお、新たな幻影がわき出るように姿を現す。しかし、その数は10体にとどまっていた。
 攻撃をした者に影響を及ぼす幻影は厄介ではあるが、『陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364)は攻勢を強める者らの後ろ盾となって力を奮う。
 術符の扱いに長けた錬は、対象の治癒の力を引き出す術を展開していく。身体の消耗を打ち消していく錬は、補充された幻影を一掃しようとする者らを後押しする。
 ──幻術、分身……何にせよ塞ぎに来たって事は、扉自体は真に通れるのかね。
 光り輝く魔法陣の紋様によって塞がれている城壁を一瞥し、錬は心中でつぶやいた。いずれにせよ、ここを突破することに集中しようと、錬は共に戦う仲間のために術を展開することに注力する。
 幻影を一掃しようとするイレギュラーズを押さえつけるように、終焉獣は攻撃を繰り出していく。
 終焉獣Bは、タコのような触腕で砂地を滑るように移動する。終焉獣Bの守りを固めるように、周囲には幻影らしき複数の個体が付き従う。
 終焉獣Bはイレギュラーズとの距離を詰めながら、黒いヘドロのような粘着性の物体を浴びせようとした。扇状に放たれる黒い塊にも動じず、飛ぶように迫る牡丹は、終焉獣Bの攻撃を跳ね返す勢いを見せた。終焉獣Bを守る幻影は透かさず牡丹の前に滑り込み、牡丹の勢いを打ち消す。
 終焉獣Bの注意が牡丹に向けられている隙を狙い、芍灼は守りを固める他の幻影の排除に乗り出す。一気に対象を仕留めようと、芍灼は流れるような動きから巧みな剣さばきを見せつける。
 斬りかかる芍灼の動きにまともに反応することもできず、幻影の4体は霧散するようにかき消えた。それと同時に、爆発的に生じた波動が芍灼へ容赦なく襲い来る。膝をつくことなく耐え抜いた芍灼は、戦地には似つかわしくない清らかな歌声の存在に気づいた。
 祝音は、張り詰めた空気すらも浄化するような歌声を響かせる。祝音の歌声は、祝福をもたらすかのようにみなぎる活力を引き出していく。
 本体の内の1体、終焉獣Bを守る幻影を討ち果たしたことで、リースリットは続けざまに攻めかかる。終焉獣Bを間合いに捉えたリースリットは、突き出した細剣で相手を貫こうとした。
 終焉獣Bはリースリットの動きに即座に反応し、硬化させた触手で細剣を弾き返す。思わずを剣を取り落としかねない反動だったが、リースリットの技量が上回る。わずかな間に剣を構え直したリースリットは、終焉獣Bとの一騎打ちを繰り広げる。
 正面からかち合う終焉獣Bは、絶え間なく細剣を突き当てるリースリットに粘り強く対抗する。リースリットの細剣は急所には至らないものの、終焉獣Bが振り向ける触手の表面は幾重にも削られていく。やがて、終焉獣Bは意表を突くように触手を大きく振り回した。はね退けられる形で後退したリースリットは、わずかに態勢を崩す。しかし、同時に終焉獣Bにも隙が生じた。その隙を狙うように、カインは膨大な魔力を終焉獣Bに向けて放った。
 たちまち激しい閃光に包まれた終焉獣Bは、砲撃と化したカインの魔力を受けて吹き飛ばされる。激しく砂地を転がった終焉獣Bに対し、カインは更に攻撃を仕掛けようとした。しかし、カインの動きを阻むように目の前を熱線が過る。攻撃を加えたであろう終焉獣B以外の本体を警戒し、カインは終焉獣らの姿を見渡した。
 ゆらりと起き上がる終焉獣Bを援護するように、終焉獣Cは繰り返し熱線を発射し、イレギュラーズの勢いを削ごうとする。だが、その行動は本体である事実を晒してしまうことにもつながる。
 術符の力を展開しつつ、錬は終焉獣の幻術の看破を試みる。終焉獣らが攻撃を集中させたタイミングからして、今こそ幻影を全滅させるチャンスだと錬は確信した。
 呪符の力を引き出す錬は、その場に魔鏡を出現させる。あらゆる呪力を秘めた魔鏡は、その力を黒い閃光に込めて終焉獣らに照射する。
「幻影が復活しない内に、畳みかけるぞ!」
 錬のその一言を受けて、牡丹も幻影と思われる終焉獣に向かっていく。
「オレたち相手に、命取りだな! 待たせ過ぎなんだよ!」
 幻影から生じる波動にもひるむ姿を見せず、牡丹は果敢に攻撃を放った。
 多くの幻影を消滅させてきた牡丹の体力は、確実に削られた。その牡丹を支えようと、フリークライは癒しの力を存分に発揮する。
 天使のような輪郭を帯びた光が、宙に浮かび上がるように現れる。フリークライの力は幻想的な光となって発現し、光の天使は牡丹の頭上にキスを落とすように舞い降りた。その瞬間、牡丹はみなぎる活力と共に、心地よい幸福感に包まれていく。
 攻撃に晒され続けた幻影は、本体を囲むようにしていた状態から消え去った。その直後、確実に本体である終焉獣Cを見極めたイズマは、あるものを投げつけた。蛍光色のボールが終焉獣Cの肩先に当たり、ぶつかった衝撃によって中の塗料が弾け飛ぶ。
「もう紛れられないな?」
 蛍光塗料にまみれた終焉獣Cの上半身を眺め、イズマは口角を上げてつぶやいた。
 再び即座に幻影が現れるが、その中でも塗料のついた終焉獣Cはよく目立った。
 新たに幻影を補充して臨む終焉獣らは、全力の抵抗を繰り返す。終焉獣Bはすでに深手を負っているはずだと、飛び出す熱線を警戒しながら誰もが考えた。幻影によって守りを固め、時間を稼ぐ終焉獣Bだが、一挙に幻影を討ち払うイレギュラーズの勢いは止まらなかった。
 苛烈に攻めかかる牡丹や芍灼、カインらは幻影の対処を巧みに担う。それだけ体力の消耗も著しいものとなったが、攻め手の3人を支える力が絶やされることはなかった。後援に徹する錬、フリークライ、祝音たち3人の働きもあり、終焉獣Bを追い詰めるのと同時に戦線を維持することができた。
 残された幻影の立ち位置からして、すでに終焉獣Bを守る幻影が消滅していることは明らかであった。好機の瞬間に躍り出た輝きは、細剣を構えたイズマから生じる。イズマが力強く剣を突き出したのと同時に、流星のごとくほとばしる魔力が放たれる。終焉獣Bがそれを受け止めた瞬間、激しく火花を散らして終焉獣Bを苛んだ。
 くすぶる終焉獣Bの体は大きく傾いたが、うごめく触腕が体を支えた。その時、すでにリースリットは至近距離に終焉獣Bを捉えていた。リースリットはその一撃で確実にとどめを刺そうと、風の精霊の力を極限まで集束させる。
 驚異的な速さで放たれたリースリットの一突きは、終焉獣Bの喉元を貫いた。終焉獣Bの身体はそのまま突き倒され、砂漠に力なく横たわるばかりとなった。
 最後の1体になっても、終焉獣Cは迷うことなく攻撃を続ける。漆黒の熱線を掻い潜り、イレギュラーズは瞬く間に幻影を一掃する。イズマが放ったカラーボールの目印もあり、終焉獣C以外の幻影を狙うことは容易であった。じりじりと詰め寄るイレギュラーズに対し、完全に孤立した終焉獣Cは狂ったように黒いヘドロ状の物体を放ち続ける。イレギュラーズの視界を奪うように顔目掛けて飛ばされるヘドロに、苦戦を強いられる。しかし、それは束の間のことだった――。
 ヘドロから仲間を守ろうと、フリークライは身を挺して射線上に進み出る。自ずと終焉獣Cの注意はフリークライに向かった。フリークライの動きと合わせるように、芍灼はフリークライの巨体の影から飛び出していく。
 終焉獣に向けて剣を振り抜いた芍灼に、皆の視線が一斉に注がれた。プーレルジールを救う未来、絶望を希望に変える望みを託され、芍灼は剣の柄を強く握り込んだ。
 ――それがし達も、ここで立ち止まるわけにはいかない身。
「押し通るでござるよ!」
 その一言と共に、芍灼の一太刀が終焉獣へと達した。芍灼の剣は、終焉獣が掲げた触腕に浅くめりこんだ。硬化した触腕は断ち切れるものではなく、芍灼は触腕によって押し返される。しかし、衝撃をうまくいなした芍灼は、流れるような動作で終焉獣の側面に回り込んだ。
 芍灼の機敏な反応に対し、終焉獣は遅れを取る。右手の平を突き出した芍灼の一撃は、終焉獣の身体に膨大なエネルギーを送り込んだ。耐え切ることのできないエネルギーの奔流を打ち込まれ、終焉獣の身体は大きく仰け反り吹き飛んだ。終焉獣は砂地に叩きつけられて横たわり、その状態から動くことはなくなった。

「油断は禁物だ。危険がないか注意して進もう」
 真剣な眼差しで、カインは魔法陣が消え去った城壁周辺を率先して確かめる。そんなカインだが、終焉獣との戦いで少なからず消耗し、どこか気怠げな様子も窺わせた。
 表情に疲労が見え隠れするのはカインだけではなかった。すり減った皆の気力を取り戻そうと、祝音は歌の力を発揮する。
 祝音の歌声に耳を澄ますと、歌に混じって程遠くない戦場の気配が聞き取れた。城の攻略に臨む多くのイレギュラーズが、敵群を引きつけているに違いない。城壁の突破は果たしたが、喜ぶのはまだ先だ──。
 イレギュラーズ一同はそびえ立つ城を見上げ、一層強い決意を抱いて城内に臨んだ。

成否

成功

MVP

リースリット・エウリア・F=フィッツバルディ(p3p001984)
紅炎の勇者

状態異常

なし

あとがき

ご参加ありがとうございました。

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