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シナリオ詳細

<ラケシスの紡ぎ糸>暴食の愛という遺志

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 近い将来、世界は滅亡する。
 外れることがないざんげの神託によって、無辜なる混沌の消滅は確定づけられてしまった。
 この世界から、あるいは外の世界から呼び寄せられてイレギュラーズとなった者全て、等しくその滅びからは逃れられない。
 それでも、滅びを蓄積させる魔種による凶行をイレギュラーズは幾度も退けてきた。
 冠位魔種(オールドセブン)も残るは2人と『原初の魔種』に。
 未来を変える為、イレギュラーズは戦い続けなければならない。

 混沌の滅亡が近い。
 ――ラサに現れる変容する終焉獣。
 ――終焉獣に憤るとみられる大樹ファルカウ。
 ――鉄帝に出現した奇妙な塔。
 滅びの予兆は混沌中に出現する終焉獣だけではなく、特定地域に特定の異変が起こっている。
「覇竜にも、人型の星界獣が出現してるね」
「でも、それだけじゃないよ」
 『シェインの相方』カレル・タルヴィティエ(p3n000306)、『カレルの相方』シェイン・ラーティカイネン(p3n000307)がイレギュラーズへと話す。
 それは、滅気竜と呼ばれる存在。
 覇竜に生息する亜竜が滅びのアークに触れて変化したモノだ。
「もはや、亜竜というレベルの強さではないって話」
「話によれば、かなりの脅威だと……」
 カレル、シェインも人伝でその竜については耳にしていたのだろう。
 ヘスペリデスからさらに北、ヴァンジャンス岩山に現れたという滅気竜について、その力を実際に確認するのと同時に、討伐を願いたいと2人は言う。
「おそらく、うちらでは太刀打ちできない相手」
「皆なら、きっと力を合わせて倒せるってわたくし達は信じているよ」
 なお、2人はさらに北、デポトワール渓谷の調査を進めるそうだ。
 一緒に戦わないのかという疑問もイレギュラーズから上がってくるが、彼女達は首を横に振る。
「とても頼もしい協力者がいるんだよ」
「めったにない機会だから、交友を深めてほしいな」
 準備をしっかりと整えてからヴァンジャンス岩山へと向かってほしいと2人は告げ、手を繋いで危険な場所へと調査に向かうのだった。


 花畑が広がるヘスペリデスより北へと向かうと、荒廃した土地が広がる山肌へと出る。
 非常に荒れたその地は、ただでさえ危険な覇竜にあって、一層危険な空気を漂わせ、ひりつくような雰囲気を漂わす。
 人によっては、ラサの砂漠地帯の方がまだ自然を感じると主張する人がいるかもしれない。
 それだけ、退廃的な印象を抱かせる場所だ。
 そんな場所で、イレギュラーズを待ち構えていたのは、一人の女性。
「フリアノンの娘らが言っていたイレギュラーズだな」
 一部のメンバーには、その女性に見覚えがあった。
 人の姿をとってはいたが、彼女は竜種、将星種『レグルス』アルディ。
 その見た目は非常に麗しく、グラマラスに整っていた姿は男女問わず見惚れてしまう程だ。
 銘々が挨拶を交わせば、アルディも覚えがある者もいたようで、軽く会話を挟んだのちに本題へと入る。
「滅気竜の事は聞き及んでいよう」
 皆一様に頷くのを視認し、アルディは自身の後方を見るよう促す。
 行く手を塞ぐように飛び回る翼を生やした蛇の群れ。
 2つの首を持つウイングヒュドラに、蛇の胴体に直接翼を生やすワイアームと、一見すれば、覇竜広域に生息する翼蛇の群れに見える。
 だが、いずれも滅びのアークによってその身を侵されてすさまじい力を得た存在とのこと。
 加えて、周囲の岩壁に密着していた星界獣の姿も……。
「私が幾体か引き受ける。貴様らは残りをやってみせよ」
 尊大な態度は変わらずだが、それでも彼女達にも少なからず変化はあったらしい。
「……ベルゼーの事はすまなかった」
 アルディもまだ気持ちの整理はついていない部分はあるのだろうが、彼が築き上げようとした地を今は護ることにしたらしい。
 そんな竜種の気持ちも汲みつつ、イレギュラーズもまたベルゼーの遺志を継ぐ為、そして、滅びに立ち向かう為、滅気竜と星界獣へと立ち向かうのである。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 <ラケシスの紡ぎ糸>のシナリオをお届けします。
 花畑を護るイレギュラーズに触発されてかはわかりませんが、竜種もベルゼーの愛した地を、自分達の居場所を護る為に戦うことにしたようです。
 彼らと協力して外敵の撃破を願います。

●概要
 ヴァンジャンス岩山に屯す滅気竜及び星界獣を掃討します。
 堅い岩盤の道は若干の高低差がある一方、所々岩壁が障害になります。
 岩壁の高さは10mないくらいなので、飛行する分には問題になりません。

 イレギュラーズに合わせ、竜種アルディも共闘を申し出てくれます。
 アルディは下記のウイングヒュドラを2体引き受けてくれます。
 OPのやり取りの後、本来の姿へと戻ってから交戦を始めます。
 基本指示は難しいですが、こうしたいと願い出れば応じてくれるかもしれません。

●敵
 出現するのは以下の通り、今回人型星界獣の姿はないようです。

〇滅気竜
 覇竜に生息する亜竜が滅びのアークに触れて変化した存在です。

・ウイングヒュドラ(略称:双頭翼蛇)×3体
 2つの頭と翼を持つ全長4mほどの蛇。
 毒の牙での噛みつき、連続噛みつき、回し蹴り、麻痺睨みなど主に体躯を活かした攻撃を仕掛けてきます。

・ワイアーム(略称:翼蛇)×3体
 全長2m弱。翼を持ち、脚を持たない蛇。
 ワームと呼称されることもあります。
 低空から噛みつき、尻尾叩きつけ、尻尾締め付けなど、素早い動きで攻め立ててきます。

〇星界獣×3体
 幼体であるようです。全長60~80センチ。
 フジツボのような見た目で、岩を動き回り、瞳で見つめてきたり、収束砲を放つことも。
 直接エネルギーを吸い取ることもあり、希望のエネルギーが好物とあって、率先してイレギュラーズを攻撃してくるようです。

●NPC
〇竜種・将星種『レグルス』:アルディ
 人型は麗しい女性の姿ですが、本来は全長7m複数の頭を持つ竜種。
 高い治癒力を持ち、全身から発する様々な種類の毒が恐ろしい竜です。
 いくつかの頭を使った連続食らいつき、複数のブレスを使いこなします。

〇亜竜種少女ペア
 カレル・タルヴィティエ(p3n000306)、シェイン・ラーティカイネン(p3n000307)両名はさらに北の調査に向かった為、不参戦です。
 どうやら、里おじさまに世話になった過去を語り、イレギュラーズとの共闘するよう話をつけたようです。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 それでは、よろしくお願いします。

  • <ラケシスの紡ぎ糸>暴食の愛という遺志完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2023年11月28日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器
ソア(p3p007025)
無尽虎爪
ラムダ・アイリス(p3p008609)
血風旋華
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
金熊 両儀(p3p009992)
藍玉の希望
柊木 涼花(p3p010038)
絆音、戦場揺らす
ユーフォニー(p3p010323)
竜域の娘
火野・彩陽(p3p010663)
晶竜封殺

リプレイ


 覇竜、ヴァンジャンス岩山。
 見通しや足場の悪さもあり、荒れ果てた岩肌をイレギュラーズ全員が飛行を使いつつ先へ進む。
 自身の力で飛ぶ者もいれば、『血風旋華』ラムダ・アイリス(p3p008609)は黄可変式魔導装甲「黄龍」に飛行能力を使ったり、『奏でる言の葉』柊木 涼花(p3p010038)のように偽翼を使って空中を行く。
 また、『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)などはワイバーンに騎乗して仲間達と足並みを揃える。
「こがぁな壁で鬼ば止められよると思っちょったか!」
 見通しの悪い岩場は、『特異運命座標』金熊 両儀(p3p009992)が大太刀を振り上げて。
「小手先無用。力一つ、此れ鬼の流儀なり!」
 繰り出す対城技「鋼覇斬城閃」で岩壁を力技で破壊する。
 彼は幾度か繰り出し、瓦礫が邪魔にならぬよう砕いていた。
 岩の階段を創るよう両儀は意識し、戦いでも動きやすくなるよう意識していたようだ。
 加えて、メンバーは索敵もしていて。
 『晶竜封殺』火野・彩陽(p3p010663)は飛行して岩壁を乗り越えつつ、周囲を広域俯瞰する。
 ラムダも敵探知能力を働かせ、研ぎ澄ました五感をセンサー代わりとし、不意の攻撃に備える。
 そこで、一行はこの場でメンバーを待っていた竜種女性と出会う。
「フリアノンの娘らが言っていたイレギュラーズだな」
 麗しい美女といった見た目をした将星種『レグルス』アルディ。
 その協力に、『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)は素直に感謝する。
「アルディさん、今日はよろしくお願いします!」
 交友を深めようとする『相賀の弟子』ユーフォニー(p3p010323)は、尊大な態度をとり続けるアルディがベルゼーの事で謝罪したことに手を振って。
「謝らないでください」
 ユーフォニーはこうして竜種と一緒に戦えること、大好きで大切な場所とそこに住む大切な人々を一緒に守れるのが嬉しいと返す。
「ベルゼーさんが目指した人と竜の共存をこれから進めていければ、それで十分嬉しいよ」
 同じく喜ぶイズマだが、そんな想いすら踏み潰しに来る終焉に表情を陰らせて。
「ならば、黙って見てるわけにはいかない、戦って守るんだ」
 ベルゼーの一件に関しては、彩陽も互いにまだ癒えてないと思う。
 こうして竜種の手を取ることはできたし、この機縁を逃したくはない。
「アルディはん。ほな、よろしゅうお願いします」
 挨拶する彩陽は、こういうところも世界を滅亡させたくない理由になると考える。
 ……そこで、彩陽は何かを察知する。
 ラムダもまた前方に現れた敵意の気づいていたようだ。
「折角の交流に……水を差さないでほしいものだね」
 ヨゾラは一つ嘆息し、仲間達へと敵の襲来を知らせる。
 まず、最近現れた星界獣。
 今回の相手はフジツボのような見た目をしている個体が3体だ。
 そして、頭の数の違いこそあれ、覇竜一般に生息する亜竜といった翼蛇の群れ。
 ただ、滅びのアークの触れたそれらは滅気竜と呼ばれる存在へと変異したそれらは、並々ならぬ力を有する新たな脅威だ。
「こんな怪物が亜竜種の里やラサに流れたらみんな大変よね」
 『無尽虎爪』ソア(p3p007025)の意見に異論は出ない。
「…………」
 その時、アルディが本当の姿……竜へと変貌する。
 麗しい女性の姿から一変し、毒々しい複数の頭を持つ竜に。
 メンバーの数倍の体躯がある竜だ。加えて、竜種の矜持を持つ彼女のこと。
 ユーフォニーは自由に動いていただこうと仲間に提案していた。
「がははは! 竜と蛇退治とはこれまた面白い依頼じゃのう!」
 それでも共闘に変わりはなく、両儀は豪快に笑う。
 本当は竜と手合わせしたかったと彼は本音も漏らしつつも、間近で竜の戦いぶりを見られるだけでも良い並びになると大いに喜んでいた。
「竜種が味方に付てくれるとは僥倖だね。お仕事も捗るってものだよ……」
 笑顔を浮かべるラムダの横で、この共闘はカレルとシェインのおかげだとヨゾラが呟き、何事もないようにとその身を案じる。
「さて、ボク等も征くとしようか彼女等の想いや意思に応える為にもね」
「僕等側で残る敵をしっかり倒しておきたいし頑張るよ!」
 決起の声を上げるラムダ、ヨゾラ。
「よーし、やってみせますよ!」
 ユーフォニーも嬉しそうに敵へと向かう。
「ずっと、ずっと、明日を、希望を、心に灯すために歌ってきた。だから――」
 その後ろで、涼花がパンドラ収集器でもある楽器を手にして。
「今日も、歌を、演奏を、音楽を、戦場に届けます!」
 涼花がかき鳴らす曲……イオニアスデイブレイクが響く前方で、メンバー達は敵対勢力とぶつかり始めていた。


 交戦に先立って、メンバーは手早く準備を整える。
 まず、両儀が先ほど同様にある程度戦い安いように岩壁を破壊し、イズマがその後で保護結界を展開することで破壊の拡大を防ぐ。
 その間に、アルディがすでに滅気竜へと仕掛けていて。
「「おおおおおぉぉ!!」」
 複数の首で吠えるアルディは空から襲い来る双頭翼蛇2体を纏めて相手取り、噛みつきかかっている。
 その様子がさながら怪獣大決戦のように想えたラムダは、アルディの力に流石だと舌を巻く。
「アレは……下手に近づくと巻き込まれるんじゃないかな?」
 やはり、彼女は隙に暴れてもらった方がいいと判断したラムダは、こちらの対処にと向き直り、プロトコル・ハデスによって一時的な力を得ていて。
「ボクは、んーっ……決めた!」
 低空を飛ぶソアは竜種と同じ敵……フリーとなっている残り1体の双頭翼蛇を相手取る。
 その理由はずばり一番狩りごたえがありそうだからだ。

 皆、それぞれ対するべき相手へと近づき、交戦を始める。
 いち早く接敵した彩陽はすでに突撃戦術をとっており、周囲で飛ぶ翼蛇どもに堕天の輝きを浴びせかけた。
 彩陽の光に照らされた敵は能力を封じられ、動きを鈍らせる。
「敵の力を削げば味方の力が通りやすうなるしね」
 実際に、他メンバー達が続いて仕掛けていた。
 ルーンシールドを展開していたイズマもまたプロトコル・ハデスを使う。
「相手になるよ」
 前線に立ったイズマは名乗りを上げ、打楽器を鳴り響かせる。
 直後、何か詠唱していたユーフォニーがイズマへと集まる敵、特に星界獣を優先して捉える。
(あまり高く飛びたくはないですが)
 ユーフォニーは地面近くを飛ぶよう意識しつつ、多彩な光を放つ。
 壁に張り付く星界獣も強烈な光に灼かれて苦しむが、さながらレーザーの如き光を放出してくる。
「……面倒そうなのも居るみたいだし、派手に征くとしようか」
 己の限界を超えた力を発揮していたラムダがそこで続く。
 この場の滅気竜にせよ、星界獣にせよ、斬滅あるのみ。
「……本気で征くよ」
 多くの敵を捕捉し、無我の境地に至ったラムダが発したのは数度の剣閃。
 瞬く間に切り裂かれる眼前の敵達だが、致命傷を避けているのは流石というべきか。
 それらへと攻撃に当たって、ヨゾラも詠唱をしていて。
「呑み込め、泥よ……この場の星界の獣を全て飲み干せ……!」
 渦巻く根源たる力が泥となり、敵陣へと浴びせかけていく。
 現状、敵に大きな変化はないが、ヨゾラは何が起こるか分からないと注意は怠らない。
 両儀はソアと共に双頭翼蛇へと向かう形となる。
「さぁて、景気良く、退治していくぜよ!」
 意気揚々と暴れ出す両儀は正面から大太刀を模した木刀「悉殲」で滅気竜をねじ伏せようとする。
 距離が足りなかったのか、初手、彼は逃がさじの殺人剣でその体に切り込んだ。
 敵も両儀へと迫ろうとするが、そいつをソアが追う。
 ここはソアも本能を解放し、考えるよりも速く呪術を撃ち込む。
 シャアアアアアア!!
 纏めて噛みついてくる敵は2人に襲い掛かる。
 多少の傷などは上等の両儀。
 ソアも飛行に当たってのデメリットを考え、命中こそ自己強化で補っていたが、回避はほとんど考えておらず攻撃は甘んじて受け止める。
(アルディさんは1人で2体もやるんだから、それよりは先に倒したい)
 竜に張り合うなど慢心かもしれない。
 それでも、それくらい強気でいかねば世界は救えないとソアは強い気概を持って立ち向かう。
 そんなソア達や、他の敵と対する仲間の状態をチェックしつつ、涼花は最も消耗する敵を探る。
(戦いの基本は数、物量っていうのは本当に馬鹿にならないですから)
 少しでも戦況が有利になるように。
 涼花は精神力を演奏に籠め、比較的倒しやすいと判断した星界獣へと直接音の弾丸をぶつけていく。
(守られるばかりでは戦場に立つ意味がないですからね)
 火力でも貢献できるようにと、涼花は皆が万全に戦える序盤だけでもと攻撃に出るのだった。


 アルディは流石竜種というべきか。
 明らかに強化された滅気竜を2体同時に相手しても一歩も引く様子はない。
 それでも、すぐに倒せぬ手合いに、彼女も滅気竜という存在の脅威を直に感じていたようだ。
 イレギュラーズ側も比較的優勢に戦況を運ぶ。
 彩陽が展開した気糸に絡まれた翼蛇や星界獣。
 翼蛇をメインに彩陽は捕えていたが、幾度か仲間の攻撃を受けていた星界獣の1体に限界が近づいていたようで。
 ヨゾラもできる限り多くを捉え……アルディの戦域は外していたが、それらの敵へと星空の泥を浴びせかける。
 岩壁に張り付いていたその星界獣は地面へと落ち、動かなくなる。
 なお、その範囲内には両儀の姿がある。
 仲間を識別して範囲攻撃を繰り出すメンバーも多いが、両儀は敢えて仲間に巻き込まれることもあった。
「そら、儂ぁ、傷が付くほど燃えるタイプだからぜよ! がははは!」
 嬉々として、彼は双頭翼蛇の回し蹴りを受けてすらいた。
 ソアが攻撃直後の敵に対し、終焉を刻み込まんとした。
 運命を決定づけるように鋭い爪を、ソアはその体へと刻み込む。
 シャアアアアアア!!
 だが、滅びのアークに触れたそいつは亜竜ならざる体力を持ち合わせているようで、けたたましい雄叫びを上げて堪えていた。
 
 前線のイズマは存在感を示し、多くの敵を引き付けていた。
 彼は仲間達が攻撃しやすいよう、比較的見通しの良い場所へと誘導しており、噛みつきや凝視をその身で受け止め、しっかり反撃を叩き込みつつ耐え続ける。
 その間に、ユーフォニーの放つ光が周囲の敵共々包み込んだ星界獣1体から煙が上がり、そのまま動かなくなる。
 現状、滅気竜はこちらに合わせて低空で交戦を仕掛けてきている。
 ユーフォニーもおかげで多数を巻き込んで攻撃出来ていた。
 残る1体の星界獣が思いの他しぶとい。
 加えて、放置すれば収束砲によってこちらが的になりかねない。
「撃ち落とされるとまずいからね……!」
 ヨゾラは飛行こそするが、岩壁を飛び越えるだけと割り切って基本は岩の上で交戦する。
 岩の上を動き回る星界獣は思ったより速い。
 そいつを追う形で、ヨゾラは空中の翼蛇と合わせて星空の泥を浴びせかけるが、するりと逃れていたようだ。
 ヨゾラからのアイコンタクトを受け、ラムダが星界獣を追う。
 岩壁を飛び越えたラムダは敵探知してそいつへと剣閃の数で攻め立てる。
 逆に不意を突いて相手が収束砲を撃ってくる可能性もある為、ラムダもその挙動には注意を怠らない。
 双頭翼蛇を相手していた両儀がそこでうまく星界獣も捕捉して。
「──そこじゃ」
 大喝によって動きを止めた星界獣に、涼花が一旦攻撃に出る。
 涼花の演奏によって発する精神力の弾丸を叩きつけられた星界獣は見事に潰れてしまった。


 ようやく星界獣が倒れたと安堵するヨゾラだが、その間に味方の負傷は大きくなってきていて。
「誰も倒れさせないよ……!」
 星の祝歌、星空の頌歌を高らかに歌い上げるヨゾラ。
 その歌はアルディにも聞こえており、少なからず彼女を活気づけていたようだ。
 メインで回復に動く涼花もまた、ここからは全力で仲間を支えようと、聖体頌歌を響かせていた。
 残る敵はいずれも滅気竜となっていたが、星界獣の攻撃にかなり巻き込まれていたこともあって全身の傷はかなり深くなっている。
 翼蛇は苦しみつつも素早く尻尾を叩きつけ、あるいはこちらの体を締め付けようとしてくる。
 それらを仕留めようと、彩陽が再度堕天の輝きを浴びせかければ、ついに翼蛇の1体が力尽きて落ちていく。
 残る2体も翼を羽ばたかせて抵抗を続けるが、鳴き声は弱々しい。
 ラムダは颯爽と迫り、鋭い剣閃を繰り出して1体の首を跳ね飛ばす。
 ここまで全力で滅気竜を抑えていたイズマも、ここぞと双頭翼蛇と纏めて組み上げた呪術で捕える。
 抵抗する力もなくなった翼蛇は弱々しく鳴いて落ちていったが、双頭翼蛇はなおも健在。
 クアアアアアアア!
 禍々しき力を解き放ち、抑えるイズマを一気に追い込まんとする。
 ただ、追い込まれてきている滅気竜の発揮する力は恐ろしい。
 シャアアアアア、オアアアアアアアア!!
 万全の態勢で抑えていたはずのイズマ。
 双頭翼蛇の麻痺睨みの衝撃に耐えた直後、連続して噛みつかれてその身を噛み切られそうになる彼はパンドラの力で対抗して。
「まだまだ広がる世界を強制終了などさせるものか」
 滅びのアークの力を垣間見るイズマは息つきながらも逃れ、戦意を一層強めていた。
 その間にも、双頭翼蛇は他の敵との交戦で疲労したメンバーへ襲い掛かる。
 痛みに悶え、けたたましく鳴く滅気竜はその身を変貌させた滅びを己の技に載せて解き放つ。
 接近されぬよう距離をとっていた彩陽。
 それでも、敵はあっという間に彩陽へと迫り、尋常でない力で遠心力の伴った尻尾を叩きつけてくる。
 逃げきれないと判断した彩陽もまた運命に頼って意識を強く保ち、光撃を直接叩き込んで思考力を奪う。
「滅気竜だろうと星界獣だろうと……この一撃でぶちのめす!」
 ヨゾラもまた星の破撃で強く殴りつけるが、すぐ我に戻った双頭翼蛇が毒の牙で彼を噛み砕こうとする。
 牙の鋭さ、強毒、そして強い顎。
 いずれも元の個体とは比較にはならず、ヨゾラもまた零れるパンドラをつかみ取って交戦を続けていた。
 ソアがそのタイミングで攻め込むが、アルディは丁度2体目の双頭翼蛇に複数の頭を食らいついて始末したところだった。
 流石と舌を巻くソアも、ここぞと竜撃の一手を叩き込む。
 すぐに毒の牙が襲い掛かるが、なんとか耐えたソアは絶気昂で修復してさらに攻勢に出る。
 地上へと降りてくるしぶとい双頭翼蛇を迎え撃つユーフォニーは、覚悟を宿す色を宿してそいつを照らす。
 光に目を背けようとした滅気竜。
 涼花はその間に、前線へと再度出るイズマに天より光輪を降らす。
 傷を塞いでもらったイズマは渾身の魔力を振り絞る。
「もっと生きて色々な存在に出会いたい。素敵な事をしたい。……だからどこまでも往生際悪く、抗ってやるさ!」
 創造した魔剣が双頭翼蛇を切り裂く。
 頭一つを切り飛ばすが、なおもそいつは残る一つの頭で睨みつけ、尻尾を振り回す。
「すまんが借りる!」
 こちらの様子を見に近づいてきていたアルディの背を踏み台とした両儀が奇襲をかける。
「…………!」
 アルディも多少不満気だったが、それはさておき。
 魔術と格闘の合わせ技で激しく攻め立てる。
 加えて、両儀は全身に負った傷を力へと転じ、その威力を高める。
 激しく抵抗していた双頭翼蛇だったが、ようやく翼の羽ばたきが止まり岩場へと落下していったのだった。

 一通り、現れた敵した後で、イズマが人型をとったアルディの元へと向かう。
「アルディさんは凄いな。一緒に戦ってくれてありがとう」
 礼を告げた彼はもしまたここが危機に陥ったなら、また守りに来ると約束する。
「どうぞよろしく」
「ああ」
 アルディはイズマを一瞥だけして、小さく返事を返すのだった。


 その後、イレギュラーズは周囲に敵がいないかと確認しつつ、アルディへと代わる代わる声をかけに向かう。
「アルディも……本当に、ありがとう」
「ああ」
 仲間達の手当ての合間に礼を告げに来たヨゾラへ、やはりアルディは小さく返事するのみ。
 ヨゾラはそこで、シェインやカレルにも感謝の言葉を口にし、北に向かったという彼女らが荒事に巻き込まれていないことを願う。
 そこで、ユーフォニーもやってきて、挨拶しつつアルディに問う。
「アルディさんは星界獣や滅気竜のこと詳しいですか? ……それから、終焉領域のこと」
「いや……」
 そもそも、竜種は覇竜の地から出ることはない。
 他の竜種に効く方が詳しいだろうと彼女は返す。
「私、終焉に行きたいんです」
 滅びに立ち向かう為、星界獣をただ迎え撃っているだけではきっとだめなのだとユーフォニーは語る。
「……覇竜を、この世界を護りたいから」
「そうか」
 少なからず、アルディにも心境の変化があったからこそ、こうしてここに居るのだろう。
 こうして動き出したのもベルゼーの件があったからで、そうでなければ穏やかに暮らし続けていはずなのだ。
「良ければ、ベルゼーの思い出話など聞けたら嬉しい」
「そうだな……」
 言葉少なに、アルディが虚空を見上げて呟いたのは、森で黄金のリンゴを共に口にした話。
 希少なその果物が好きだというアルディに、ユーフォニーも頬を綻ばせる。
「そうなんですか!」
 アルディの事を知りたいと思っていたユーフォニーだ。
 普通のリンゴでも、手料理なら彼女は食べてくれるだろうか。
 それはさておき、ベルゼーは常に、自分達と亜竜種など他種族と交流を深められればと語っていたそうだ。
「聞けて良かった……ありがとう、アルディ」
「ああ」
 アルディはヨゾラの礼にも短く返事するのみで、やはりこちらへと顔を向けようとはしなかった。

成否

成功

MVP

金熊 両儀(p3p009992)
藍玉の希望

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPは厄介な双頭翼蛇を倒した貴方へ。
 今回はご参加、ありがとうございました。

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