PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<ラケシスの紡ぎ糸>瞬剣のバルドゥシュファン

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●瞬剣のバルドゥシュファン
 ある日『侵略』が始まった。
 全剣王を名乗る者からの宣戦布告と同時に。
 ――「我こそが真なる鉄帝の王である。我はこの塔より惰弱なる現鉄帝を支配し、その部を布くものである。命惜しからん者は挑むがいい。この塔には最強が在る!」
 その言葉と同じくして、塔からは溢れんばかりの終焉獣や『不毀の軍勢』が出現。
 鉄帝国に対して攻撃を開始したのである。
 これは、そんな事件の一角、塔近くに存在するケシュメテサラ砦陥落の物語である。

「退け、兵よ退け! これ以上死を重ねるな!」
 砦の長たるトリンプは兵に撤退を命じると、自らこそがしんがりとなって剣を抜いた。
 闘技場でも相当な実力者として知られる彼の、オーガの如きとうたわれたその剣を。
 そんな彼の前に現れたのは、同じく剣を手にした全身鎧の戦士だった。
「我こそは全剣王が配下、バルドゥシュファン。この砦の長とお見受けする」
「……いかにも」
 バルドゥシュファンは剣を構え、大してトリンプもまた剣を構えた。
 動いたのは――同時。
 剣と剣が激突し火花を散らす。
 一撃は凌いだ! そうトリンプが確信したその瞬間である。相手の剣がまるで生きているかのように高速で動き、トリンプの腕を切り落としたのだった。
「ぐ――あああああ!?」
 あまりにも素早い動き。そして攻撃の威力。トリンプは血の吹き上がる腕を抑えつつも、なんとかその場に立ち塞がろうとする。
「腕を落とされても兵が逃げる間を稼ぐか。よき男よな……だが、ここは戦場。惜しいが、死ね」
 次なる斬撃が、トリンプの命を絶った。

●滅びは塔を建てて
「――というのが、ケシュメテサラ砦陥落までの出来事だよ」
 そこまでの内容を話を得て、カルネは小さく意気をついた。
「最近、終焉(ラスト・ラスト)に隣接する各国家に終焉獣をはじめとした怪物たちが出現しているのは知っているよね。その中でも『不毀の軍勢』というものがあるんだ。
 『不毀の軍勢』は皆人型で構成されていて、何かしらに特化したパラメータを持っていることで知られているんだ。
 そんな『不毀の軍勢』が従っているという全剣王。その塔が、鉄帝近郊に突如現れた……鉄帝国は塔から溢れる終焉獣と『不毀の軍勢』による侵略を受け始めたんだ。
 今回の依頼はそんな鉄帝国からのものだよ。陥落してしまったケシュメテサラ砦の奪還。そして『瞬剣のバルドゥシュファン』の討伐だ」

 ケシュメテサラ砦は一般的な砦だが、その周囲には既に終焉獣が無数に配置されており、これらを突破しなければ砦にたどり着くことはできないだろう。
 終焉獣の戦闘力はさほど高くないとみられているが、強引に突破するにはそれなりの戦闘力が要求されるはずである。
 その先、ケシュメテサラ砦に陣取っているのが『瞬剣のバルドゥシュファン』とその部下たち。
 総じて全身鎧で構成された彼らは、何かしらに特化したステータスをしているという。
 その中でも特に強力なのが『瞬剣のバルドゥシュファン』だ。
 彼は高いEXAをもち、徐々に抵抗や攻撃力があがるという特性をもっているともいう。
 武力の高い鉄帝に侵略するだけあってバトルセンスもかなりのものだろう。
 油断すればこちらが落とされる。そういう相手だ。
「今回は僕も一緒に行くよ。バルドゥシュファンを倒して、砦を取り返そう!」

GMコメント

●シチュエーション
 ケシュメテサラ砦を奪還すべく、瞬剣のバルドゥシュファンとその部下たちを倒しましょう。

●前半戦
 砦周辺に陣取っている大量の終焉獣を倒さなければ砦へ攻撃することができません。
 範囲攻撃や誘導スキルを効果的に使い敵を一掃しましょう。
 油断しているとガリガリ削られてしまうので、適度に交代したり守ったりをする必要もあるかもしれません。

●後半戦
 瞬剣のバルドゥシュファンとその部下たちとの戦いです。
 『不毀の軍勢』と呼ばれる彼らはそれぞれに特化したパラメータを持っているといわれ、戦う際には一癖ある連中となっています。
 特にバルドゥシュファンは高いEXAを持っており、戦うにはかなりの注意が必要です。

●味方NPC
・カルネ
 オールレンジの攻撃に対応している他、そこそこに防御が高くたまに肉盾になってくれます。
 連鎖行動ももっているので、いざとなったら彼と一緒に動けるでしょう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <ラケシスの紡ぎ糸>瞬剣のバルドゥシュファン完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年10月31日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
ゼファー(p3p007625)
祝福の風
アルム・カンフローレル(p3p007874)
昴星
ラムダ・アイリス(p3p008609)
血風旋華
ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)
人間賛歌
ルブラット・メルクライン(p3p009557)
61分目の針
刻見 雲雀(p3p010272)
最果てに至る邪眼
レイン・レイン(p3p010586)
玉響

サポートNPC一覧(1人)

カルネ(p3n000010)
自由な冒険

リプレイ


「不毀の軍勢……最強を騙り、ラサを襲った勢力……」
 ぎゅっと拳を握る『芽生え』アルム・カンフローレル(p3p007874)に、カルネが横から話しかける。
「僕は『不毀の軍勢』と戦うのは初めてなんだ。前回はどうだったの? アルムは、何度か戦ったんだよね」
「うん。俺も何度か戦ったけど、手強かった。足止めしてくれた人は重傷を負って……。
 今回も、砦を守ってた鉄帝の兵たちが犠牲になってしまった。
 これ以上、好き勝手させるわけには行かないよ……!」
「獣じゃ無くて能ある人間ってところが厄介そうね」
 『猛き者の意志』ゼファー(p3p007625)が話に加わってくる。
「この間の相手は怪王種ばかりでしたけど……」
 頭を使われるというのはそれだけで戦力的に厄介だ。まず連携をとってくる。こちらの好きなように攻めさせてはくれないだろう。なぜなら、戦術とはつまり相手の嫌がることをするということなのだから。
「とは言え、やることは変わらないわ。突っ込んで行って、ぶっ飛ばしてやるのよ。此の国の流儀に則ってね」
「まあ、確かに……」
 『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)がゼファーの意見に頷いて応えた。
「ただ砦を落とされるのは結構マズいっスね。ほっといてそこに陣を敷かれたらと考えると、速攻で取り返すに限るな」
「そうねえ。獣が住み着くのとはワケが違いますし?」
「にしても終焉獣も不毀の軍勢もホント際限なく出てくるよな。
 でも全剣王をぶっ潰すのに焦った所でどうしようもねぇ、今はとりあえず目先の問題から片付けるっスか」
 まずは降りかかる火の粉を払う。
 それこそが戦うということで、つまりは生きるということなのかもしれない。

「一難去ってまた一難とはまさにこのことだね……全く。
 戦禍の爪痕を残されて困るのはそこに生きる人たちなんだ。
 まだまだ復興途中なのに無粋な邪魔ばかりしないで欲しいよ」
 『最果てに至る邪眼』刻見 雲雀(p3p010272)は鉄帝の現状を想い、ため息をついた。
 鉄帝を覆った動乱の激しさはその中に身を置いた者ならば誰でもわかる。
 『白のサクリファイス』ルブラット・メルクライン(p3p009557)もまた、そのひとりである。
「鉄帝での天義の件が一段落付いたところで……か。
 何時になれば、我々は落ち着いて復興に取り組めるのだろうな」
 『世界が平和になる日』を思い描く。それはもしかしたら、例の『滅び』とやらを退けた後なのかもしれない。
 だとすれば、この全剣王の騒ぎもまた、滅びの一環ということなのだろうか。

 一方で、『最強のダチ』ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)は怒りに震えていた。
「いいか。おれは鉄帝の騒動を切り抜けてきたんだ。
 バルドゥシュファンとやらよ、アンタにあの戦いで散っていった奴らほどの意志と闘志があるか?
 おれはガチで戦ってきた。味方も、敵も死にものぐるいだった」
 あの記憶を穢されてなるものか。勝ち取った平和を踏みにじられてなるものか。
 ああいいだろう。暴れてやろう。
 なにせ。
「馬鹿にされてるようで機嫌がわりぃのさ。今日のおれはな」
「まあ、その気持ち……わからないでもないよ」
 『咎人狩り』ラムダ・アイリス(p3p008609)が肩をすくめて同意を示す。
「ホント、不毀の軍勢……なかなかに活動的だね。鉄帝も今は先の戦いで疲弊しているだろうし……贔屓目に見ても対応しきれなかったってところかね?
 はてさて、ボクも鉄帝に傭兵として参加していた身……多少は愛着もあるからね……オイタには其れなりに報いは受けてもらうとしようか」
 これもお仕事。さあ始めよう。

 様々な感情に揺れる仲間たちの中で、『玉響』レイン・レイン(p3p010586)もまた、心の中に想いを抱えている。
「兵長……残念だったけど……
 守りきったもの……を、これ以上……危険にさせられないね……
 鉄帝に初めて来た時は、動乱で……僕は弱くて……匿って貰ってばかりだったけど……
 今は、少しは、守れるようになったから……」
 そう、今なら。今なら戦える。
 この平和を勝ち取った国を、残された人々の今を、守るために。


 砦に鉄帝軍が再度近づけなくなっている原因は、砦前に展開している終焉獣たちの存在も大きい。
 今やワールドクラスとなったローレット・イレギュラーズと異なり鉄帝の一般兵にとってみれば終焉獣はその雑兵レベルであっても死を覚悟する敵なのだ。
 逆に言えば、今のローレット・イレギュラーズにとってみれば雑兵レベルの終焉獣などは……。

「速攻、で行くよ」
 雲雀は自らが操る血を変化させると、刀の形をとって『禁術・大紅蓮蟻地獄』を発動させた。
 終焉獣たちの足元に突如として現れる血だまり。そこから溢れるのは極寒の冷気。
 ぱきぱきと凍り付いた身体に気付いた時には、既に雲雀と連携した三人が動き出していた。
「ありがとう……一気に、行こう」
 レインはさしていた桜色の傘をひらりと振ると、大量の海月型の水塊が空中に現れ、それらが凍り付いた終焉獣たちへと叩きつけられていく。
 回避能力に加え防御能力まで下げられた終焉獣に、更なる攻撃を加えるルブラット。
 ミゼリコルディアを握りしめると終焉獣たちの間を駆け抜け次々に斬り付けていく。
「この場に時間をかけているわけにもいくまい。勝手に密集してくれているおかげですぐに片付いてくれているが……」
「ああ、そろそろ危険を察して散り始める頃合いかな?」
 トドメとばかりに飛び込むアイリス。
 剣禅一如『千紫万紅』――つまりは数多の剣閃が煌めく軌跡を残して終焉獣たちへと放たれる。
「――『流星流転』死兆将来」
 ならばと雲雀は動きそのものを封じる術式を用いて終焉獣たちを攻撃した。
 運命の流転を受けて散ること自体に失敗する終焉獣たち。
 更なる攻撃のチャンスだ。
 自らの窮地を悟った終焉獣が魔術を行使して炎の槍を放ってくるが、そんなものが今更通用する段階ではない。
 レインは翳した傘でそれを防御。炎の槍を傘ひとつで受けきると、反撃のタイダルウェイヴを発動させた。今度は巨大な海月型水塊がキラキラと煌めいて終焉獣へと突進。
 水の爆発を起こし周辺一帯の終焉獣たちを派手に転倒させる。
 それでもなんとか足掻こうと炎の槍を乱射してくる終焉獣たちだが、アイリスはそれらの間をまるで未来でも見えているかのような極めて正確な回避によって次々にすり抜け、距離を詰めていく。
 魔導機刀『八葉蓮華』を再び抜刀。
 数多の剣閃が走り、またも終焉獣たちを切り裂いた。
 なんとか足を動かし魔法を発動させようとした終焉獣――の頭部にルブラットがメスをざくりと突き立てる。
 染み入る毒が終焉獣に血を吐かせ、そしてその場にぐたりと崩れ落ちさせる。

「いい連携だね。じゃあ、こっちはこっちでやろうか」
 左右に散ることで一網打尽にされることを逃れた終焉獣たち。
 カルネとアルムはそんな彼らを仕留めるべく動き出していた。
「カルネ君は敵に突っ込んで注意を引きつけてほしいんだ。もちろん、怪我したらすぐに回復するから安心してね」
「それは安心だね。いくらでも飛び込めそうだ」
 冗談交じりにそう言うと、カルネは銃を乱射しながら終焉獣の群れへと飛び込んでいった。
 反撃の魔法が次々に飛んでくるが、それをアルムはカウンターヒールによって治癒していく。
 カルネは盾にされなれているのかなかなか頑丈で、アルムの治癒で充分に持ちこたえることができるようだ。
「なら私は残った右翼を片付けようかしら?」
 ゼファーは槍をぐるりと回すと、炎の魔法を次々に放ってくる終焉獣の群れへと突進。
 直撃コースの一発を槍で振り払うと、敵中央で派手に暴れて見せた。
 注意がゼファーに集中し、一斉に飛びかかってくる終焉獣たち。その異様な牙がむき出しになった光景を前に、ゼファーは微笑を浮かべて槍を振るった。
 終焉獣が上下真っ二つに切り裂かれ、内容物が飛び散る。
 それでも次々と飛びかかる終焉獣を、ゼファーは持ち前の頑丈さでもって次々に振り払うのである。
「獣相手は楽でいいわ」
「なあに、この後すぐに楽じゃあなくなる」
 ヤツェクはそう呟いて飛び込んでくる。
 ツインネックギターに仕込まれたレーザーカタナを抜刀すると、一太刀で終焉獣を切り捨ててしまった。
 更には『力有る言葉』を放ち、終焉獣たちを纏めて攻撃する。
 ゼファーに【怒り】を付与されてしまった個体はともかく、それにつられて攻撃していただけの個体はヤツェクの登場にたじろぎを見せた。
 このまま後方へと逃れるべきか、ここで迎え撃つべきか迷ったのだ。
「行かせねえよ」
 これ以上の面倒は御免だとばかりに地を蹴るヤツェク。一瞬にして終焉獣たちの後ろをとると、いつの間にか納刀されていた刀から居合いの一閃を繰り出す。
「あとはこいつらを片付けるだけ――!」
 トンっ、と葵はサッカーボールを蹴り上げる。
 緑色の吹き荒ぶ疾風が描かれた灰色のサッカーボールだ。
 蹴りつけたその一撃で、サッカーボールはオーラを纏って終焉獣の群れへと飛んだ。
 カルネが引きつけていた左翼側の終焉獣たちに激突、バウンド、更に激突。それを繰り返し無数の終焉獣をノックダウンさせてしまったのだ。
 戻ってきたボールをトラップしてから足で押さえる葵。
「さすが葵、やるね」
 カルネがグッドサインを送ってきたので、葵も親指を立てて応えておいた。


 砦内部にて待ち構えていたのは瞬剣のバルドゥシュファンとその部下たち。部下の数こそ少ないものの、実力者の風格がそれぞれににじみ出ていた。
「終焉獣どもを突破したか。ひとかどの戦士と見受ける。ならば勝負に応じてやっても――」
 なにやら述べようとしているバルドゥシュファンめがけ、葵のフロストバンカーが襲いかかる。絶対零度の氷の杭を作り出し蹴り飛ばすという必殺の技だ。
「瞬剣も動きが鈍っちまえば、ただの剣士っスよね!」
「ぬう、無礼なやつ!」
 そこへ割り込んできたのは大きな盾を持った騎士風の男であった。
 氷の杭を盾で受けると、そのまま葵めがけてシールドバッシュを仕掛けてくる。
 たかが盾とて人を隠せるほど大きければもはや鈍器だ。直撃をくらえばただでは済まない。
 葵は後ろに飛ぶことで攻撃を回避すると、チッと舌打ちをした。
 そう、相手は連携をしてくる。こちらへの嫌がらせをしてくるのだ。ただ群れていた終焉獣とは動きがまるで違う。
「だったら、先に潰すまでっスよ」
「できるものならやってみるがいいさ!」
 一方で、もうひとりの部下。
「こら! バルドゥシュファン殿の側を離れるなってば! あいつはもう!」
 杖を握った同じく騎士風の男が顔を覆った鎧の下からため息をつく。
 対して、レインは畳んだ傘を剣のように突きつけた。
 保護結界を展開し、まずは砦を守る。
(イレギュラーズじゃない人にとっては……守ってくれる大事な所……だから……。
 間に合わなかった兵長も……兵の人も……ごめんね……。
 頑張るよ……)
 ふとみれば、バルドゥシュファンと最後まで戦ったであろうトリンプ兵長の遺体が脇に退けられている。身体に布を被せてあるのは、最後まで戦った者への敬意なのか。
 いずれにせよ、このままにはしておけない。
「いくよ……」
 レインは『ワールドエンド・ルナティック』の術式を発動。色鮮やかな海月の群れが敵兵めがけて飛んで行く。
 カルネはそれにあわせて相手の鎧めがけて銃撃を叩き込み始めた。
 一方で、ヤツェクは早速バルドゥシュファンへと狙いを付けていた。
「さっさとくたばれバルドゥシュファン。すぐにてめぇもてめぇのカシラも冥府に送ってやる」
 レーザーカタナの一閃が紅蓮の閃光となって飛び、バルドゥシュファンへと迫る。
 対するバルドゥシュファンはそれを剣で切り払い、腕に残る痺れに『むう』と唸る。
「こちらの動きを鈍らせる腹づもりか。だがそれはいずれ克服するぞ」
「今はできねえってことだろう?」
 『Chord Stardust』を放つヤツェク。更なる抵抗力の低下が痺れとなってバルドゥシュファンの身体に走る。
 そこへ飛び込むアイリス。
「まぁ特化した能力があったとしてもそれを使うことができなければ宝の持ち腐れ意味は無しと…何かしらの道を究めようとした求道者には酷な技だよねホント……さて、ボクも其れなりの剣客ではあると自負しているけれど…これもお仕事…悪く思わないでね?」
 繰り出す激しい連撃が、バルドゥシュファンの動きを封じにかかる。
 幾度もの攻撃を剣で受け止めていたバルドゥシュファンだが、攻撃が重なるにつれて封殺の確立が上がっていく。
 そこへ更に、雲雀が血の刀で斬りかかった。
「瞬剣の二つ名を持つんだって?俺も素早さと手数にはそれなりの自信があってね。どっちが上回っているか、是非手合わせ願えないかな」
「いずれも一騎当千の強者。よかろう……!」
 雲雀の術式の中に織り交ぜられた封印の術式。それが放たれた血の弾丸越しに染み込み、バルドゥシュファンはその動きを封じられる。
 一方的に封じられるバルドゥシュファン……かに見えたが、徐々にその手も通じなくなっていく。彼の抵抗力が増強されていったのだ。
「瞬剣を名乗るに相応しい其の剣捌き。私の糧と成す為に、存分と振るって貰いましょう!」
 そうなれば役に立つのは実際的な防御力。ゼファーが槍を繰り出しバルドゥシュファンの足を狙うと、バルドゥシュファンは跳躍によって回避。ゼファーの頭上を宙返りで飛び越えると身体を捻り背後をとった。が、スイングの反動をそのまま利用して反転したゼファーはバルドゥシュファンの繰り出す連続の剣を槍さばきで防御する。
 受けきれずダメージが徐々にかさんでいくが、そこはアルムの治癒がものをいう場面だ。
 重点的に送られた治癒の効果によってゼファーが削りきられることはそうそうなくなってきた。
 が、増強される攻撃力を前に連続攻撃を受けていればさすがのゼファーといえど危ない。
「全剣王、だっけ? 君たちは……何なんだ? 終焉獣とともに現れて、各地を襲ってさ。
 鉄帝の建国王って聞いたけど、自分たちで建てた国を滅ぼそうとでも?」
「さてな。問答に付き合ってやれるほど優しくはないつもりだ。だがこれだけは言えるだろう。全剣王様はすべてを破壊し尽くしてくださる!」
 契機があるとすれば、『それ』だった。
「隙、だな」
 ゼファーと気持ちよく撃ち合っていたバルドゥシュファンの背後にゆらりとルブラットが現れ、毒の染みこんだ刃を滑らせる。
「――貴方は戦い続け、血を流し続けた果てに、一体どんな世界を夢見ている?
 私にも、見たいと思ってしまった未来がある。護りたいと思った笑顔がある。
 この先には進ませない。一歩たりとも」
「な――」
 滑り込むようにして効果を示す毒に、バルドゥシュファンはごふっと血を吐く。
「我が抵抗を突破したというのか!?」
 そこからは、流れるようにだ。
 葵のシュートが今度こそバルドゥシュファンへと炸裂する。
「テメェらにやる砦はどこにもねぇ、返してもらうっスよ!」
「おれ達は皇帝――あの冠位野郎をぶっとばした。だったら、王様なんぞ赤子も同然だ」
 更にヤツェクの刀がバルドゥシュファンを切り裂く。
「手合わせを――とは言ったけど、正々堂々とは一言も言ってないよ?
 元々俺は汚い仕事を生業としていてね、信用したのが運の尽きということさ!」
 そこへ更に雲雀の刀が走り、バルドゥシュファンの動きがまたも封じられる。
「戦いの中で増強されたこの我を、圧倒するだと!?」
「もう一度言うよ。悪く思わないでね」
 アイリスの刀による斬撃までもが加わり、バルドゥシュファンは血を吹き上げて踊った。
 彼の部下たちは既に足され、レインが傘をビッと突きつける。同じく銃を突きつけるカルネ。
 放たれた魔術の弾丸が、鉛の弾丸が、バルドゥシュファンを貫いた。
「ぐ、おお……!」
「幕引きは派手に行きましょう」
 ゼファーの槍が、バルドゥシュファンを貫いた。
「見事……!」
 バルドゥシュファンは最後にそうとだけ呟いて、塵となって消えた。

 取り戻された砦には鉄帝の兵たちが戻り、防衛体制が再び組まれ始める。
 その一角には、レインの詰んできた花が手向けられていた。払った犠牲を、決して忘れぬためにと。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

PAGETOPPAGEBOTTOM