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シナリオ詳細

<悪性ゲノム>巨鹿のエルク

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●とある牛飼いの悲劇
「……こりゃあ、ひでぇ」
 牧者ペーターは子飼いの牛……だったモノから目を逸して溜息をついた。あまりに酷い有様だったからだ。
 牛達の悲鳴が聞こえたからと倉庫に押し込めていた斧を持ち出して駆けつけてみたのだが、どうやら既に手遅れであったらしい。この辺りは肉食動物が殆ど生息していないから油断していたが、この様子だときっと野犬か狼かの仕業に違いない。
 最近は幻想のそこらじゅうで害獣の噂が立っていたから、これも事故なのだとペーターは自分に言い聞かせていた。
 あぁ、だけれども腹立たしい。野良犬どもは家畜一匹の損失がいくらだと思っているんだ。飼育に掛かる金だってタダじゃないんだぞ。
 そう心の中で愚痴を吐きつつも、せめて埋めてやらなければとスコップを取りに一度家へ帰ろうとした。

 ――がさり。

 近隣の茂みから何かの気配。「野犬か?」と不審がりながら、斧を構え茂みを掻き分ける。
 その先には、鹿が居た。草食動物の鹿だ。
 目の前で呑気に食事している鹿の後ろ姿に、しかし「なんだただ鹿か」とペーターは肩を落とす事は無い。
 むしろ逆だ。胸や背にカッと熱い怒りがこみ上げたかと思うと、何秒も経たない内に腹の底から凍てついた悪寒が上り、そのあまり手先が痺れて斧を落としてしまう。
 その鹿がペーターよりも遥かに巨体だった事なんてのは、あまり重要な事じゃない。――自分がそれを食うのがまるで当然だという様に、その鹿が生血の滴る新鮮な肉をぐちゃぐちゃと咀嚼していた事だ。
 ば、化け物! ペーターは腰を抜かしながら思わず大声で鹿を罵倒したが、それが彼の行末を決定づけてしまう。
 鹿はのっそりとした動作でペーターへ振り向く。彼の言い様に怒った素振りでもない。しかしその瞳は病気を患った家畜の様に胡乱でいて、口回りの毛色は獰猛な生物の証とばかりに血液で赤黒く染め上げられている。その表情を笑んだ様に気色悪く歪めると、ゆったりと落ち着いた動作で腰を抜かしたペーターへと近づいて来た。

 ……牧者ペーター“だったモノ”が見つかったのは、それから三時間後の事だ。

●いいえ、私は遠慮しておきます
「動物や昆虫による家畜や農作物の被害が急増してるって話は聞いてますが。草食動物が人を喰らう、ですか」
 月に一回の御馳走として注文していた鹿肉のステーキを目の前に、露骨に嫌そうな顔をする『若き情報屋』柳田 龍之介(p3n000020)。
 依頼の情報が纏められた書類を読んでみれば、家畜のみならず此処一週間で十数人もやられているらしい。それも、村が即席で雇った傭兵や対処に派遣された下級騎士も含めてだ。明らかに普通の野犬や狼よりも被害が大きい。
 突如現れたこの害獣にその地域を所有する領主も非常に難儀しており、経済面はもちろん人的被害も馬鹿にならない様だ。早急に対処して欲しいとの事である。
「然らば、我らがイレギュラーズさん達の出番というワケです! えーっと、対象はこの特徴からしておそらく一般的に生息している鹿の一種で……え? 体長十メートル? 平均の三倍以上はあるじゃないですか!」
 龍之介少年は書類に記載された情報を見て素っ頓狂な声をあげた。村人達にとっては大切な家畜や隣人らを殺された怨敵であるらしく、付いたあだ名が『巨鹿のエルク』。大層な名前であるが、事実としてその巨大さを活かした攻撃に何人もの傭兵や騎士がやられているというのだから笑えない。
 龍之介は咳払いして、警戒すべき要点をイレギュラーズに伝えながら彼個人の所感を漏らした。
「人間の味を覚えたヤツでもっとも恐ろしいところは、また人間のお肉を食べたがるって事です。その行為に罪悪感が無いともあれば尚更ね」
 だからこそソイツは殺さねばならぬだろう。少年は冷めた表情で言いのけたかと思うと、それを誤魔化す様におちゃらけた笑顔を浮かべ、手付かずのステーキをイレギュラーズに差し出した。
「……あ、ところでこのステーキ食べます? とっても美味しいですよ♪」

GMコメント

 稗田ケロ子です。お肉って美味しいですよね。
 以下、情報。
●情報精度。
 A。依頼人の情報は正確で、予想外の事はまず起こりません。

●成功条件:
『巨鹿のエルクの討伐』
 
●環境情報:
 森林放牧地帯。縄張りの位置情報は把握出来ているので、捜索には苦労しない。
 しかし遮蔽物が多いのでそれを使った不意打ちには注意されたし。隠密奇襲が上手く行けば、逆に不意打ちが出来るかもしれない。

●エネミーデータ:
巨鹿のエルク
 草食動物の鹿であるが、人間や家畜を好き好んで喰らっているという。
 元々小さくはない種類なのだが、この個体は異常に体躯が発達している。高耐久高火力。反応と特殊抵抗は低い。
 注意すべき点は至近距離で繰り出される攻撃力が凄まじく高い。耐久の低い者は一撃でやられる可能性が高いので要警戒。

ブチかます!:至単・高威力・【飛】
突進:近貫・中威力・【ブレイク】
礫を巻き上げる:中列・低威力・【暗闇】

  • <悪性ゲノム>巨鹿のエルク完了
  • GM名稗田 ケロ子
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年10月25日 21時30分
  • 参加人数8/8人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

サンディ・カルタ(p3p000438)
兄貴分
那木口・葵(p3p000514)
布合わせ
リノ・ガルシア(p3p000675)
宵歩
琴葉・結(p3p001166)
魔剣使い
マリア(p3p001199)
悪辣なる癒し手
刀根・白盾・灰(p3p001260)
煙草二十本男
ミニュイ・ラ・シュエット(p3p002537)
救いの翼
ジェック・アーロン(p3p004755)
鎮魂銃歌

リプレイ

●巨大草食動物バーサス
 本来なら今日は狩人達が鹿狩りを行う日であった。冬を目前にして丸々と肥えた鹿を仕留めて、村へ持ち帰る。そしてその肉を焼いて、採れたての山菜と一緒に頬張る。それがこの村の秋の醍醐味であった。
 しかして、御馳走を頬張るのは村人ではない。巨鹿のエルクとあだ名が付いたソレだ。ヒトの味を覚えた彼は、あの甘美な味が忘れられないといった様子で歪んだ口角から唾液を垂らしながら森の中を彷徨っていた。
 ――やっほー。
 森林に響く、ヒトの大声。血の滴る匂いもする。狩人が山彦を鳴らしているのだろうか。ともかくとして、腹を空かせたエルクはその巨体を揺らしながら、のそのそとそちらの方へと向かっていく。
 だが一定の距離を詰めた頃合い。エルクは耳を小刻みに動かしたかと思うと、歩みを止めた。その方向から複数人の気配を感じ取ったからだ。大勢で茂みを揺らす音もする。
 エルクはそれを警戒し適当な場所に潜もうとするが、また先程の方向から逃げ腰を煽るかの様に武具を打ち鳴らす音が響いた。
 再びエルクがその方へ注意を向けると、すぐにオールドワンとカオスシードの二人組が見えた。『BS<死の宣告>』刀根・白盾・灰(p3p001260)、『アニキ!』サンディ・カルタ(p3p000438) である。
 武具を打ち鳴らして誘き出そうとしている刀根であるが、情報通り視界を遮る物が多い場所であって巨鹿が何処に居るかまでは正確に把握出来ていない様子も伺える。エルクはそれに勘付き、奇襲を仕掛けようと後ろに回り込んでいく。……自分の縄張りで騒がしい真似をされているのが癪なのであろうか、その表情は心底不愉快そうだ。
 
「気をつけろよ、オレ達の後ろに回り込んで来たぜ」
 聞き耳を立てながら、刀根に小声でそう指示を投げるサンディ。刀根もそれに頷き、仲間との打ち合わせ通りにそれとなく位置を変える。
「感謝致します、サンディ殿。しかし、やはり一筋縄で行かない相手の様ですな……」
 此方も接近に勘付いたのだと巨鹿に気取られぬ様に、変わらぬ振る舞い続けながら小さく相槌を打つ刀根。内心では、草食動物らしからぬ相手の行動に気味の悪いものを感じていた。
「類似の事案では何か妙な痕跡が見つかったらしいし、繋がりが有るなら此方でも何かみつかりそう」
 刀根の表情がこわばっているのを見て、近くに控えていた仲間もなんとなしに似た案件を思い返す。『応報の翼』ミニュイ・ラ・シュエット(p3p002537)だ。先程の大声を出したのも、彼女である。
 奇妙な症状を発症した動物の情報も聞き及んでいるし、変異したと思しき蟻の魔物を何より彼女自身が相手にした事もある。気を使う動機には十分であったかもしれぬ。
「本来であれば、彼らの主食は植物でありますのにー……何があったのでしょうー……」
「何か変な物でも食べたのでしょうか、いや草食動物が肉食べてる時点で変ですけど」
 同じ様に訝しく思う『悪辣なる癒し手』マリア(p3p001199)と『布合わせ』那木口・葵(p3p000514) 。マリアとしては、情報を参考にわざわざ新鮮な動物の肉を持ってきた次第だ。それは此方の存在に気づかせるという意味合いでは一役買ったかもしれぬ。彼女達も刀根とサンディに合わせて、自身らも気づいていない様子を取り繕って相手を誘った。

 さて、後方へ近づきつつあるエルクからしてみれば、複数の獲物が隙を晒している状態に見えなくもなかった。仲間が捕捉しなければ、おそらくそうなっただろう。
 エルクにとってしてみればそれが誘いかどうか判断は付かぬが、そんな事よりも耳障りな音を鳴らし続けるあのオールドワンがうるさくて仕方が無い。
 食べる部分が多いか少ないかはどうでもいい。早く殺そう。そう思ったのか、頭を低くして刀根の背に向かって突撃しようと一歩、踏みしめたところである。
「おっきい鹿ねぇ、良いハンティングトロフィーになりそうだわ」
『イッヒヒヒ。こんだけデカイと首を狙うのも一苦労だな!! まずは脚とか関節を狙ったほうがイインジャナイカ?』
 何者らが気配を殺しながらエルクの背後から近づき、二人同時に攻撃を仕掛けた。
 エルクはその奇襲に反応する暇もなく、胴体や足目掛けてに刃を入れられてしまう。しかし、それでよろめく様子もなくけだるげに振り返った。そちらには二人の女が刃物を構えている。『宵歩』リノ・ガルシア(p3p000675) と『魔剣使い』琴葉・結(p3p001166) だ。両者とも特徴的な獲物で、特に結の方は使い手自身と身の丈が殆ど変わらぬほどの剣である。
 エルクは鋭利な刃物を全く意に介する様子でもなく、むしろ柔らかい肉が目の前にある事に長い舌を舐めずった。
『オォ、背後から斬り刻まれてそんな喜んだ顔するなんざ鹿のクセに良い趣味してやがるぜ! バック(雄鹿)だけに後ろから突かれるのがお好みってか?』
 エルクの反応に対して、結の持った長剣からケタケタと笑い声が響いた。意志を持つ剣の類か。リノもその様子に合わせてヒュウ、と軽い調子で口笛を鳴らす。
「見た目通り、タフみたいねぇ。これだけ大きければ良い敷物にできそう」
「……鹿ってもっと可愛らしい存在だと思ってたんだけど、ここまで大きくなると可愛さより怖さを感じてくるわね」
 二人(?)とは違って、結は討伐対象を目の前に身を固める。その大きさは事前に聞かされていたが、その情報が大袈裟な表現ではなく本当に大きめのワニか小さな鯨ほどの体長を有していたのだから可愛げもない。エルクはその動揺を察してか、白濁した目で、結とリノに対して黄ばんだ牙を見せつけてくるのである。
 奇襲を仕掛けた仲間に注意が向いてるのを見て、慌てて再び武具を打ち鳴らす刀根。
「貴殿の相手はこっちです! 鉄帝の武門を舐めるなよーっ!!」
 正直、刀根も結と同じ様に戦々恐々するものはあったが、自身の恐怖を掻き消す様に声を張り上げる。エルクは、その様子が気に食わなかったのであろうか。いきり立った様に鼻を鳴らして体を刀根に向けた。
 あ、やばい。死んだかもしれない。自分の背丈よりも五倍近く大きい怒り心頭な相手を目の前に、走馬灯として両親の顔が過る刀根。それを睨みつけているエルクの眼光。そんな両者の耳に甲高い音が届いたかと思うと、エルクの片目が突然爆ぜた。
「アー、ワンショットキルとは行かなかったカ。……マ、いっか。ちゃんと死んでネ」
 遠方に潜んでいた『ガスマスクガール』ジェック(p3p004755)。彼女がエルクの目を射抜いたのだ。凍結の魔弾が使われていた事も重なってエルクの視界は阻害され、サンディはそれを好機と見て仲間達に号令を掛ける。
「よし、今だ! “我に続け”!」
 その声に応じて、イレギュラーズらも相手を取り囲む様にして攻撃を繰り出し始める。先んじて動けたのは葵だ。彼女は布をバッと広げたかと思うと、それに式神を付与して鴉へと変化させて穿つ。仲間の援護もあってか、これが時宜を得た。嘴が潰れた目玉に突き刺さり、初めてその巨体を揺らす様にして怯む。
「ミニュイさん!」
 機を見ていたミニュイもその怯んだ隙を見逃さず、すかさず異能の炎を叩き込んだ。イレギュラーズの目論見通りといったところか。エルクはこの類の絡め手に弱く、またたく間にその業火に包まれてしまう。
「やっぱり、燃え易いみたい」
「おぉ、これならいけ――」
 刀根は仲間の猛攻に一瞬気を緩めかけた。しかしエルクの開ききった瞳からまだ怒りが萎えていない事に気づいてハッと盾を構え直そうとする。
 結果は――最悪であった。巨体で押しつぶす様なガムシャラな体当たりに、刀根は防御を弾かれ体ごと後方へ吹き飛ばされ、そのまま林木へ激突する。
「刀根さーん!!」
 後ろに控えてきたマリアは刀根が吹き飛ばされた事に驚きつつも、即座に回復の術式を展開した。癒やし手と自負出来るだけの回復魔法を使いこなせる彼女であるが。
「癒し手として、小さな矜持にかけて、誰一人欠けさせませんのー……!! 失ってたまるものですかー……!」
「ぐっ……マリア殿は回復感謝致します! ……ってて」
 呻きつつ負傷の具合を確認する刀根。盾を構えていた指が歪な方向に曲がっている。
「だいじょうぶですー……! たとえ、頭が潰されたとしても生かしてみせますのー……!」
 気の利いたジョークとみて、刀根は乾いた笑いを浮かべた。(マリアの言葉も、あながち冗談でもないのだが……まぁ、今は置いておこう)
 未だ、燃え盛りながら刀根に殺意の籠もった視線を向けるエルク。野生動物らしからぬこの立ち振る舞いは、分かりきっていた事だがやはり異常な域だ。もう一度追撃を食らわさんと、刀根を睨んでいる。
 刀根を含め、イレギュラーズはこの執念深さと併せ持った火力に厄介なものを感じざるを得なかった。

●status control(状態制御)
 刀根が吹き飛ばされ、エルクとの間合いを図りながら戦況を判断するサンディ。刀根はこの中でもかなり頑丈な部類であると彼も認識しているが、それでも至近で喰らえば二、三発がギリギリであろう。
 然るに、マリアが一定回復し切れるでもなければ事前の作戦通りにサンディが受け持つしかあるまい。――持ちこたえきれるだろうか。サンディはその巨体を目の前にざわついた不安が胸中を走った。
 しかし周囲で負傷している刀根と女性陣を横目に見てから、覚悟を決めた様に溜息を付く。
「今回のチームのレディも美人ぞろいだが、鹿に食われちゃ台無しだよな。ったく。……鹿野郎。今度はオレが相手だぜ!!」
 サンディは巨鹿の前に立ちはだかり、挑戦状とばかりに手元にあったカルタをエルクの鼻先を掠める様に投げつける。
 巨鹿は、立ちはだかる彼に対しても刀根と同じ様にその巨体をぶちかまそうと、足踏みを鳴らした。
「リノ! 葵! 左側だッ!!」
 サンディは自分に注意が向いたのを確かめてから、相手と距離を詰めているにリノらに指示を投げた。
 ジェックの攻撃で左目が潰されているゆえか、そちらに対する防御が手薄である。
「いいわね、“ダンス”を披露する絶好の機会だわ」
 リノは構えていた短剣を順手持ちに構えて踊る様な仕草で相手に近寄ったかと思うと、何の躊躇いもなくエルクの首元へとその刃を突き上げた。葵も続けざまに、左辺から呪術を打ち込んだ。
 不意に急所へ叩き込まれる攻撃に、歯噛みをする巨鹿のエルク。裂傷から爛れた赤い肉が見え隠れするが、それでも決してその勢いは衰える事はなくサンディの肉体へと体当たりを仕掛ける。
 サンディは盾を前面に構え、その体当たりを受け止めた。装甲越し重鈍な衝撃が響き、サンディの足腰が軋みを上げる。
『辛そうだな。いっそ交代しとくか?』
 結の魔剣ズィーガーが、冗談半分にサンディへ問いかけた。サンディは歪める様に笑みを浮かべる。
「グッ……レディを守るのが男ってモンだろ。遠慮しとくぜ!」
『くくっ、レディねぇ。オレは元より、コイツがレディと言えるかどうか――オォ?!』
 お喋りしないの。結はそう言いながら、リノと同じ方向から魔剣ズィーガーを叩きつける。
 そこでエルクは苦痛に悶えた奇声をあげ、首から血飛沫が上がった。
 仕留め切れるか? 狙いを定めていたミニュイとジェックは、巨鹿の頭蓋目掛けて礼剣と弾丸を叩き込もうとする。エルクは苦し紛れに頭を振るい、喉元に浅く傷跡を作る程度に躱した。
「……チィ」
 ジェックはそれに舌打ちをしながら、排莢を行う。ミニュイも、警戒する様に身構えた。
「まずい、次の攻撃が来る」
「サンディ殿!」
 刀根は立ち上がって彼と入れ替わろうともしたが、傍で回復を行なっていたマリアから不安そうな視線が注がれる。自身とサンディの怪我の具合を比べて、彼はぐっと堪えた。
「大丈夫、オレも結構丈夫なんだ」
 強がった風に言いながら、ニィっと口角を上げるサンディ。仲間達がトドメを刺そうとエルクへ武器を構えるが、先手を取ったのはエルクであった。
 エルクも震える様に白い息を吐き、サンディの足腰から血がにじみ出ているのを確認していた。マトモに当てれば倒し切れると踏んで、また再び、エルクはその巨体で踏みつける様にして、両足を上げた。
 丸太で殴りつけられる様な衝撃を受けて、サンディの体が昏倒する様に揺らぐ。……仕留められたか?
 地面に倒れ込む寸前、サンディはぐっと膝に力を込めて、体勢を立て直す。
「……言ったろ、オレも丈夫だってな! 好機、再び我に続け!」
 ――サンディはその攻撃を耐え切り、再び仲間達へ指示を出した。リノは、突き刺さっていた二本の短剣を逆手に握り締める。
「エスコートありがとう。それじゃあ、この踊りのエンディングと行きましょうか」
 リノはそう宣言すると下方へ引き裂く様に力を込め、見事エルクの頸動脈を両断せしめたのであった。

●検分
「なんとか生きてましたか……良かった……川の向こうに両親の顔が見えましたよ……いや二人とも生きてるんですけどもね!」
「まったく、死ぬかと思ったぜ……」
 そう喜び合う盾役二人。お互いにあの攻撃を受け切って生きた心地がしなかったという感想である。
 ……何故か傷を治しているマリアが楽しげに微笑んでる様に二人に思えたのはきっと気の所為だろう。
「ねぇ、毛皮剥いでいっても良いかしら? 随分立派だもの、ステキな敷物になりそうだわ」
「ヒヒ、無傷ならもっと高値が付いたンだろうがな」
 仕留め終わった巨鹿の死体を眺めながら、そんな事を言ってのけるリノ・ガルシアと魔剣ズィーガー。二人とも気質のせいか、随分と余裕そうである。ジェックも、似た様な様子で「ケガワって売れるカナー?」と呟いていた。
「角だの皮だの取る……取るんですか? ならついでに腹の中とか見てみましょうか」と、提案する葵。
「これほどの肉なら干して非常食にしたいところだが……」
「記念に角貰ってきましょうかな。夢に出そうですな……ハハハ……」
「あら、解体なら任せてちょうだい、ちょっと上手い方よ」
 仲間達が一様に興味を示しているのを見て、解体する事に乗り気なリノ。
「……鹿肉? いや、私は要らない。普通の鹿なら別だけど、これはイヤ」
 何処まで本気なのかと、ミニュイが訝しげにした。しかし彼女自身も調べる事には賛成的である。
「ウイルス的なのあったら流石にな。検査してくれる場所を探すか……」
 サンディがそういうと――何故だか、嬉々として傷を治療しているマリアに仲間達の視線が注がれた。
「~……♪ ……? 皆さん、どうしたんですかー……?」

 さて、皆で相談した結果。エルクの一部を持ち帰りまたその内いくらかを情報屋に調査の相談をしてみるという事で、リノが解体の務め、マリアを主導にして医療的な見地からこの場で何か分かる事はないかと検分を始める事とになった。感染症の類も考慮するとなれば、彼女が一番適切であろう。
「この部位はー……あぁ、話に聞いていた……。……どうか、安らかにー……」
 胃の内容物を調べ、なむなむと祈りを捧げるマリア。それが何なのかは、仲間達は敢えて問いたださなかった。
 積載量的に持ち帰れない部分を、マリアは火にくべていく。そうして、頭部も火にくべてようとしたところだ。
「あぁ、立派なハンティングトロフィーになるのに」
 リノが名残惜しそうに言葉にする。対して「むぅ」と思い悩むマリア。
「こうなったら傷も治せませんし……」
 首だけ剥製にしてしまう事がかわいそうなのか、傷が治せないから不服なのか。彼女の白い手はエルクの巨大な頭を慈しむ様に撫でてみせた。
 そうしてる内に、ふとマリアの手が首の中間点辺りで止まる。
「……?」
 違和感を感じたマリア。毛を弄り、地肌を確かめる様に手を動かす。見えてきたのは紫色の斑痕。
「打撲痕ですかな?」
 仲間はそう述べるが、マリアからしてみれば違った。注射痕だ。それも慢性的に打たれていた様子の。それを仲間達へ伝えると、ミニュイは一層怪訝そうにした。
「…………やはりキナ臭いね」
 益々、この件に関して疑心を強めるイレギュラーズ達であった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 おまたせしました。そして、依頼お疲れ様でした。稗田GMです。
 今回、敵味方問わず攻撃防御が荒れ気味でしたが、なんとかイレギュラーズの勝利と相成りました。……ファンブルは怖いって稗田、知ってるんだ……!

 ともかくとして、此度もイレギュラーズは何か見つけた様で。これについて稗田は多くは語りません。
 それでは、また機会がありましたら。

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