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シナリオ詳細

<クロトの災禍>摘まねばならぬ厄災

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●凶星光るとき、星界獣きたれり
「『星界獣』が観測された」
 紅掛空色の髪色を持つ女性が、そう言った。
「ふむ」
「それも多数。いずれも幼体のようだ」
 金の鱗と尾を持つ亜竜種が顎を撫で、彩雲の睫毛を伏せる。
「頼めるだろうか、天籟殿」
「解った。ひとまず見て来よう」
 ――ここは、覇竜観測所。琉珂が接触したことから亜竜種側からも連絡をするようになったそこへ、「足を運んでもらって済まない」と告げられてから瑛・天籟(p3n000247)はラナ・グロッシュラーとそんな会話をしていた。
 覇竜領域は兎角生物が強い。観測所で何かを観測したとしても、解決は覇竜の者かイレギュラーズへと頼まねばならない。
「またそのうち、酒の一杯でもやろう」
 見目は幼いが里の中でも大年寄の亜竜種はそう言って、ラナへと別れを告げた。

 ――――
 ――

 それから数日。
「天籟さんが帰ってきていないって、ホント?」
「そうなんです。ちょっと出かけてくると言ったきり……みたいで」
 珍しいお酒を入手したから天籟にあげよう。そう思ってペイトへと向かう途中でのフリアノンで、アーリア・スピリッツ(p3p004400)は奏・詩華から聞いた話に目を瞬かせた。ちびっこ老師の天籟は、ペイトの里長の護衛を務める身。理由なく里を長時間空けたりはしない。
「観測所へ行って一度戻ってきて、それからまた出かけたみたいなんです」
「ペイトの人たちは探しに出ているの?」
 ペイトの民は武闘派だ。そして天籟は武術師範も担う身。数日くらいは心配しないらしい。
 でも。
「……心配です」
 詩華がそう言って胸の前で手を組むのだ。
 お姉さんとしては可愛い女の子の憂い顔を晴らしてあげるしかない、でしょ?
 それに、折角のお酒を持って行っても酒盛りができないだなんて!
「お姉さんに任せて」
 アーリアはにっこりと微笑み、準備は万全にと仲間を集い旅立った。

●ぬああああああああああああ!
 ドシーン!
「えーーーい、しつこーい!」
 バシャーン!
 わらわらわらわらと中型犬くらいの大きさのサソリが襲いかかってくるのを、粉砕して粉砕して粉砕して粉砕して……も、切りがない。
「まだおるのか……年寄りを労――ぎゃああああわしの尾があああああ」
 また新たに一匹を撃破して顎に伝う汗を拭おうとしたところで、天籟はびょんっと飛び上がった。元々浮いてはいるが。
「最低じゃ! 最悪じゃ! ぬしらどういう教育を受け取るんじゃ!? 年寄りの毛を毟るなど、非道にすぎるぞ!」
 叫びながらも尻尾でべチーンっとしてから、大事な尻尾を抱える。ふっさふさの毛が見るも無惨に毟られいて、天籟は泣きたくなった。
「なんじゃああああああ! でっかくなったが? わし、聞いとらんのじゃが!?」
 が。泣いている暇もない。天籟の尻尾の毛を美味そうにもぐもぐしたサソリ――星界獣(せいかいじゅう)の体が膨らんだ。ラナは『幼体』と言っていた。つまりこれは――成長。
「誰じゃ、人を呼ぶまでもないとか言った奴! ……って、わしか! わははははは、はは……」
 誰か運良く通りがかってくれんかの~~~~~~!

GMコメント

 ごきげんよう、壱花です。
 覇竜に現れた星界獣を倒しましょう。

●目的
 星界獣を倒す
 天籟を連れ帰る

●シナリオについて
 わしの名前は瑛・天籟。見目は小さいが、これでも腕っぷしはあるんじゃぞ。
 覇竜観測所のラナからの情報で様子を見に行ったわし。ほーん、10匹くらいなら人を呼んでまた来るよりも倒して帰った方が早いの。……なーんて思ったのがいけなかったんじゃ。まああれじゃ。彼奴等、わらわらと次から次へと現れたんじゃ。
 ええ!? リフレッシュ休暇と言う名の子守を済ませたら、覇竜観測所で呼び出されてその後はピンチ!? わしってばとんだ働き者では!? 尻尾の毛は齧られるし……とほほ。
 っと、どうやらそんなことも言っとれんようじゃ。成体になりおった! ああっ、ろーれっとの者か!? よいところに! おおい、わしを助けてくれ~~~!

 詩華から話を聞いたアーリアさんが捜索のための人員を募り、探しに出てくれました。
 観測所のラナから「ヘスペリデスへ向かった」との情報が入るため、皆さんはヘスペリデスへと向かいます。そして探索を進め――何か北の方めっちゃうるさいですね……あっ、居た!
 居なくなっている間ひたすら逃げ回ったり倒している天籟は疲れきっています。うるさいけど疲れています。成体まで相手にすることは出来ないので助けてあげましょう。

●フィールド『ヘスペリデス(北部)』
 冠位魔種ベルゼー・グラトニオスが造り上げた最果ての地。竜種と人間の共存を目指した黄昏の領域です。花園は少しずつの復旧を見せています。
 強いモンスターは山岳地帯であるヴァンジャンス岩山&デポトワール渓谷に居るようですが、北部地帯には出てきていないようです。

●『星界獣』
 無差別にエネルギーを喰らう飢えた獣です。喰らったエネルギーによってその外見を大きく変化させる性質をもつため、今回はサソリのような見た目をしています。
 星界獣最大の好物は希望の力なので、イレギュラーズを見つけると優先的に狙ってきます。そして天籟は力のあるイレギュラーズです。とても美味しそうに見えています。
 基本的な攻撃手段は麻痺毒の針とガブッと噛みつき。行動阻害系や不運系や出血等のBSがあるようです。

・幼体…9匹
 体力は8000くらい。天籟が一撃で粉砕出来るので確実に1Tで1体は減らせます。
 ただし、エネルギーを吸収すると成体になります。特に天籟が齧られないように気をつけた方が良いかもしれません。守ってくれる人がいるのなら、大半を天籟に任せてしまっても大丈夫です。

・成体…1匹(初期の数)
 天籟の尻尾をガブッとして成体になりました。体は倍以上になり、赤茶からピカピカ金色へ。
 幼体時よりも体力・防御力・抵抗・攻撃力が増えています。
 また、成体となってもエネルギーを食らってより強くなろうとします。皆さんをガブガブする度に、その特性を取り込んでいきます。できるだけガブガブされない内に倒しましょう!

●瑛・天籟(p3n000247)
 ペイト里長の護衛等もするちびっこ老師。面倒見が良いです。
 徒手空拳(+尻尾)で戦います。強力な範囲攻撃も出来るようですが、とても疲れるのと、全員を巻き込んでしまうので使いません。
 特に指示が無ければ眼前の幼体をえいやーしていきます。傷が少ない敵を狙って! 等の指示はプレイングでお願いします。が、リーチが短……届く敵と届かない敵がいるかもしれません。
 リーチが短……前衛です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●EXプレイング
 開放してあります。文字数が欲しい時に活用ください。
(今回、関係者さんの同行を希望されても描写されません)

 それでは、イレギュラーズの皆様、宜しくお願い致します。

  • <クロトの災禍>摘まねばならぬ厄災完了
  • GM名壱花
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年10月10日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)
優穏の聲
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
ニル(p3p009185)
願い紡ぎ
祝音・猫乃見・来探(p3p009413)
優しい白子猫
ユーフォニー(p3p010323)
竜域の娘
炎 練倒(p3p010353)
ノットプリズン
メイ・カヴァッツァ(p3p010703)
ひだまりのまもりびと

サポートNPC一覧(1人)

瑛・天籟(p3n000247)
綵雲児

リプレイ


 覇竜観測所を飛び出すように掛け出てから、亜竜たちとの無駄な戦闘を避けてヘスペリデスへ至る。先の戦いで崩壊を迎えんとしていたその美しい花園は今は痛々しい大きな爪痕が残されて。
 けれども土壌が豊かなのだろう。芽吹き出した生命がそこかしこに緑を見せていて、『元』の状態を知っている『優穏の聲』ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)は僅かに瞳を細めた。件の星界獣とやらが暴れれば、復興しはじめているこの花園の緑は再度喪われることとなろう。小さな生命たちの頑張りを踏み躙らせる訳にはいかない。
「リーちゃん、お願いしますね」
『相賀の弟子』ユーフォニー(p3p010323)がドラネコを喚び出し、『おいしいで満たされて』ニル(p3p009185)もファミリアーを喚び出した。先行させて居なくなった瑛・天籟(p3n000247)を捜索する訳なのだが――
「天籟さぁーん、いたら返事してちょうだ――」

「……ぬああああああああああああ!」

「――あ、あっちね」
「みたいだね」
 人助けセンサーが反応するよりも遠く――どれだけ大声なのかと少し驚きながらも、『祈光のシュネー』祝音・猫乃見・来探(p3p009413)が『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)へと頷き返す。
「あわわ、大きなお声なのですね。元気な方なのです!」
「ガーハッハッハ、元気そうで何よりであるな!」
『ひだまりのまもりびと』メイ(p3p010703)が目と口を丸くして、『ノットプリズン』炎 練倒(p3p010353)は呵呵と笑った。
「ほんとぉ。詩華ちゃんが数日居ないって心配してたけど、元気そうねぇ」
 だからペイトの人たちは心配していないのかしら? アーリアが頬に手を当てて愛すべき困ったさんを見つけたような表情で小さく笑う。老師のあの小さい体から、どこからそんなに元気が溢れているのだろう。秘伝のお酒だったら教えてもらおうかしら、なんて。
「今行くっスよ!」
 こちらの声があちらへ聞こえているかは定かではないが『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)が一声吠えて、イレギュラーズたちは緑の芽生え始めた花園を駆け抜けた。

 風が運ぶ音だけでも天籟が何処に居るかは解るが、それでも状況をいち早く察するためにユーフォニーとニルはドラネコとファミリアーを先行させる。……因みに、ユーフォニーは超聴力の使用をやめた。天籟の声がうるさくて耳が痛かったからだ。
「せいっ! 切りがないのう! ええい、誰か来とくれ!」
「見えました。複数の敵に囲まれています」
 中型犬くらいの大きさのサソリめいた生き物の中央で、天籟がぴょこぴょこ動いている。あれが中型犬ならば戯れているように見えなくもないが、天籟は素手でサソリめいた生物の腹を粉砕しているし、サソリの尾や鋭い牙は彼を食らわんと狙いを定めていた。
 ドラネコのリーちゃん越しの超視力で天籟の姿を捉えたユーフォニーが仲間たちへ状況を説明し、同時に距離を計りながら自身へのバフを掛けるか否かを考えた。
「老師はやはり敵と相対していたか」
「ニルはこの場所を、荒らしたくはありません」
「そうだな」
 ゲオルグとニルとが保護結界とオルド・クロニクルを展開させる。天籟の周辺の大地は既に戦闘に巻き込まれてしまっているが、これ以上の被害を食い止めるために。
「えとえと。助けに来たですよー! もう大丈夫なのです!」
「瑛さん、大丈夫!? って、結構元気そうだね!」
 天籟が長年鍛え上げられた亜竜種だったから良いものの、そうでなかったらゾッとする。普通の亜竜種は此処へ一人では来ないだろうからそんな事態には陥らないが……誰かが此処で止めずにヘスペリデスを出て、ピュニシオンの森を越え、そうしていずこかの集落へとたどり着いていたら……。
「間に合ったようで良かったであるな!」
「変な話、天籟が騒がしい奴で助かったっスね」
 ポツリと葵が零す。と、「誰じゃぁ今わしを騒がしいと言った者はぁ!」と天籟が早速吠えた為、しらーっと知らんぷりをきめこんだ。オレじゃないっス。
「ぬしらぁ! 手を貸してくれるのは良いが気をつけるんじゃぞ! こいつ等は成長するからの! がぶりとされんように気をつけるんじゃ!」
 尻尾を丸めるように抱えてぴょんぴょん跳ねて、この中の誰よりも素早い天籟がサソリ――星界獣を穿った。
「うーんリーチがみじか、じゃなくてかわいらしいし強いわ、天籟さん!」
「リ……? そうじゃろそうじゃろ! でもわし、もう疲れてしもうて……」
「……アイツの尻尾がハゲちまう前に全部片付けるか」
 自身を強化した葵の《ジャミル・タクティール》が星界獣へと放たれる。
「出来るだけ多くを巻き込みたいのですが、難しいですね……!」
 識別のない《彩波揺籃の万華鏡》は天籟や彼を庇うべく動き出している仲間たちを巻き込んでしまう。貫通の《課長アタック》にも識別はないため、仲間たちに当たらない場所への自身の移動と、端っこの数体しか狙えないとユーフォニーは頭を悩ませた。
「ユーフォニーは傷ついた幼体へ火力を叩き込んでほしい」
「わかりました。《カレイドグロウ》で止めをさしていきます!」
「神滅の魔剣よ、敵を切り刻め! みゃー!」
 範囲攻撃が得意なイレギュラーズは一気に大勢を巻き込み体力を削り、単体攻撃が得意なイレギュラーズは傷ついた単体を狙えば良い。そう言って展開させるゲオルグの《ジャミル・タクティール》、ニルとアーリアの《ケイオスタイド》に巻き込まれれば幼体の体力は半分程となり、そこへユーフォニーと祝音が止めを刺した。
「ガーハッハッハ、デカイだけの派手なサソリが! 相手してやるので掛かってこいである」
 反応が一等低いために遅くなってしまったが、練倒の《名乗り口上》。
「っと、小さいものも来てしまったであるか!」
 識別のできない《名乗り口上》であれば、幼体も含まれて当然。
 練倒は成体と幼体に囲まれる事となり、それは同時に纏めて削りたい仲間たちの範囲からも数体の幼体が外れることとなった。
「む!」
 早速ガブリと幼体に噛みつかれる。だが。
「……成体にはならないようであるな」
「得られるエネルギー量の差っスかね」
 練倒へと幼体が数体移動してしまったから動いた葵が、傷ついていた幼体に終始点を打った。
(老師はこの中では一番力のあるイレギュラーズだから一噛みだったが――)
 ゲオルグはいつだって冷静に戦闘を見ている。天籟が噛まれるよりはゲオルグたちが噛まれた方が良いだろうと庇える位置へと身を潜り込ませ済みだ。
「天籟さんってばとっても美味しいのねぇ」
「ひえ、恐ろしいことを言わんでくれ! わしの可愛い尻尾が可哀想なことになっとるんじゃぞ!?」
 ゲオルグと同じことを考えて星界獣幼体の間に分け入っていたアーリアは、彼の尻尾を見た。無惨に毟られた尻尾の毛に効くのは……育毛剤だろうか? ふわふわ尻尾の恋人持ちの彼女は「後からケアをしてあげるわね」と魅力的に微笑んだ。
「星界獣の『おいしい』は天籟様やニルたち……」
 星界獣という存在は希望の力を糧としているらしい。希望という輝かしい力が『おいしい』と言うのは、ニルにもなんとなくわかる。それはキラキラと心を満たし、人々の瞳を輝かせるものだから。
 けれど。
「ニルたちは『おいしい』になるわけにはいかないのですよ」
 傷ついた幼体へと杖を構えて《フルルーンブラスター》。一等威力の高い一撃に「良い一撃じゃの!」と天籟が反応する。あとはそれが拳から放てれば良いんだけどの~と宣う彼は、疲れていても脳筋だった。
 イレギュラーズたちの活躍により、幼体は次々と数を減らし――そうして天籟の周囲の脅威は取り払われた。
「はああ、すまんの。助かったわい」
 じゃが、と天籟は練倒の側に残る幼体と成体とへ、視線を向ける。
 練倒が沢山ガブガブされてしまったからか、成体の防御技術がかなり向上したのだろう。金色に少し赤の混ざった鱗は硬そうに輝いている。
「ひとりで頑張って、えらいのです! メイがお怪我とか治すから、少しじっとしていてくださいですよ」
「天籟さんはここまで頑張ったもの、休憩してて頂戴な!」
 やっと星界獣に囲まれなくなった天籟へメイがしっかりと治癒を施す一方で、アーリアはポンと『ワンカップねこ関』を投げてよこす。大丈夫じゃと口にするものの浮かぶ気力もないのか地に足をつけて立つ天籟はメイよりも小さく、可愛らしい猫が描かれたガラス瓶(メイには酒と思っていない)を手に持つ姿はいたいけだ。
「そうです、休んでいてくださいですよ。後はメイたちが頑張るのです!」
 アーリアもメイも、すぐに成体へと向き直る。
「天籟様、お弁当です」
 戦闘後に渡そうと思っていたが皆が天籟を休ませる意向ならばと、ニルがサッと駆け寄って『餡かけ唐揚げ弁当』を手渡した。
「何日もお家へ帰られていない天籟様がお腹が空いているかもって思って」
「おおおおお! すまんのニル坊。助かる……!」
 此処まで走ったりしたせいでぐちゃぐちゃになっているかもとニルは案じるが、天籟はきっと気にしない。疲れ切っている大きな原因は空腹であった。もうAPが底を尽く寸前の天籟はニルから弁当をありがたく受け取り、イレギュラーズたちの後ろで座り込んだ。
「其奴は頼んだぞ~! おっ、餡は米に掛けても唐揚げに掛けても良いのか。悩むの~~」
 頼れる背中が幾つもあるからこそ、存分に休息と観戦に回れる。弁当箱を開ける呑気な声にその信頼を感じ取った葵は小さく笑って、絶対零度の氷の杭を成体へと鋭く蹴り飛ばした。
 如何に防御技術を高めようと、ダメージの軽減は最大7割までである。故に回避以外では攻撃を無効化することは叶わない。
 だが。吸われるエネルギー量もそれによって緩和しているのかもしれない。沢山練倒は噛まれたが、成体の成長は緩やかであったようだ。
「メイが噛まれたら何色になるのでしょう……」
 練倒は赤いし、天籟は金色。それなら自分は? と練倒を癒やしながらメイは思いながらも練倒へと癒やしの福音を授けた。
 その間にも祝音が最後の幼体を撃ち抜く。
「残りは一体、ですね!」
 やはり《彩波揺籃の万華鏡》では仲間を巻き込んでしまうため《カレイドグロウ》で攻撃したユーフォニー。
「早くキスしたい? 駄目よ」
 苛烈な恋の毒のような一撃は、恋に落ちた囚われ人のように。
 せっかちに噛み付いては駄目とアーリアが笑うと、ニルもぎゅうと杖を握りしめた。
「ひとをかじったりなんかしたらだめなのです!」
 おいしそうって思っても、ひとは駄目。全力魔力を叩き込めば、ニルの重たい一撃には練倒を齧って硬さを増した成体もよろめいた。
 後の回復はメイにまかせても大丈夫だろうと判じたゲオルグは己を強化し、そして攻撃に転じる。
「この地をこれ以上荒らさせるわけにはいかん」
 この大地は、ある優しい魔種が人と竜との架け橋にと願った場所だ。たくさんの人と竜との出会いがあり、戦禍の爪痕を残しながらも復興せんと生命が芽吹き始めている場所だ。ゲオルグの知る竜も、此処へ訪れる。――きっと彼女は水を操り、生命が芽吹く手伝いを行っている。
「……お姉さん、お酒呑みたくなってきちゃったわぁ」
 後方で気ままに飲み食いして休憩している天籟が酒に唸るから、アーリアも呑みたくなる。早く倒して皆でお疲れ様会をしましょうよと誘えば、仲間たちから「賛成!」の声が重なって。
「覇竜には美味しいものがたくさんあるので……あっ、でも観測所は普通の食事ですよね」
「ニルはふつうの『おいしい』をいただきたいです」
「僕も美味しいものを食べたいな」
 攻撃をしながらも、何が食べたい? なんて会話が弾む。やっぱり食べるのならちゃんと美味しく調理されたものが食べたいね、と。
 この世は弱肉強食で、他の生命の犠牲の上に成り立っている。人が家畜を食べるように、星界獣とて人を喰らいたいのかもしれない。けれど、座して死を待つ者などいない。抗える力がその手にあるのなら、全力で人は立ち向かうことだろう。
「貴様に食わせるものなんて何もない……消えろ! みゃー!」
「これで終わりっスよ!」
 祝音が神滅の魔剣で切り刻み、最期は死神の嘲笑を纏う死球とも言うべきサッカーボールが星界獣成体の止めを刺した。

「天晴じゃ! みな良うやった。えらいぞえらいぞ~!」
「天籟様、元気になりましたか?」
「うむ、腹がくちた故、わしも元気じゃ!」
 弁当が美味しかったこと、そして差し入れへの感謝を告げる天籟へ、ニルはよかったですと眉を下げた。
「無理せず休んどけ、オレはもう少し周囲を警戒してくるっス」
 元気なところを見せようと腕を振り回す姿に苦笑し、葵は期間のための回復行動を行う仲間たちの側から離れていった。
「怖くなかったですか?」
「嬢ちゃんこそ怖くなかったかの?」
「……?」
「……?」
 メイと天籟の間で、『?』が交わされる。なんだろう、この何処か食い違ってしまっている感じは。
「天籟さんが良ければ……ドラネコ配達便、しましょうか?」
「配達?」
「はい。お疲れでしょうし、背負って」
「そうねぇ、それがいいかもしれないわ」
 配達先は観測所。そして観測所についたらラナさんとお疲れ様の宴会よぉー!
 明るく笑うアーリアへ、天籟も名案じゃ! と笑い、けれども借りる背中はゲオルグの背とした。
「年頃の娘に借りるよりはええじゃろ。すまんのう……しかし良い筋肉じゃの~」
(老師は筋肉が好きなのだろうか)
 ふかふかじゃ~と『ジーク』を頬に押し当てたりと天籟はゲオルグの背で騒がしいが、葵が「大丈夫そうだ」と合流するとイレギュラーズたちは帰路に着く。歩む花園がこれから先、元の姿に戻れると良いと、ゲオルグとニルは芽吹き出した生命が無事であることを確認しながら歩を進めた。
(……混沌世界の星空に、星界獣を生み出す何かがある?)
 みんな元気で大丈夫そうな様子に胸を撫で降ろした祝音は、今は青い空を見上げた。
(僕等は星空にも行けるのかな……?)
 星界獣のこともまだ何もわからないけれど。
 その先に広がるであろう、星穹へと思いを馳せたのだった。

成否

成功

MVP

ニル(p3p009185)
願い紡ぎ

状態異常

なし

あとがき

「うーん、わしは暫くサソリは食いたくないのぅ」と天籟が言っていました。
パリパリした食感が美味しいらしいです。

お疲れ様でした、イレギュラーズ!

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