シナリオ詳細
その吸血鬼に身の潔白を!
オープニング
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ラサの強い日差しの下、フードを被ったその男性はゴーグルを着用し、背の大きな翼が目を引く。
容姿が独特なこともあって、街を歩くだけでも、人々から奇異の目を向けられる。
ひそひそと聞こえてくるのは、悪い噂。
(いやねえ、また来てる……)
(あの『プル血鬼』、またやらかしたってよ……)
それが耳に入るたび、その旅人男性……ジュムア・アズライールは身を縮こまらせる。
とはいえ、彼もラサで活動する商人だ。
気を取り直してジュムアは商売の話をすべく行きつけの店を回るのだが……。
「いい加減にしやがれ! 二度と来んな!!」
ここにきて、出禁と言わんばかりの対応をされ、ジュムアの目からほろりと涙が零れる。
「うわあぁぁぁぁ!!」
自分が一体何をしたのか。
吸血鬼である彼はこの世界に飛ばされても真面目に商売に精を出していた。
始めは全然うまくいかず、大損することもしばしば。
なんとか商売が軌道に乗ってきた矢先に、月の王国の一件が影を落とす。
吸血鬼を名乗る者達が幻想種らをさらい、合わせて紅血晶なる物騒な宝石をばら撒いた。
挙句、月の王国を名乗り、ラサの乗っ取りを公言したことで、吸血鬼の印象は急降下。
その煽りを、ジュムアも受けてしまった結果、現在に至る。
一般客はもちろんのこと、懇意にしていた商売先からも邪剣に扱われる始末。
このままでは、商売上がったり……どころではない。
商売人には各地を渡り歩く行商人もおり、混沌中に居場所すらなくなる可能性も……。
「もう、どうにもならないよ……」
頭を抱えたジュムアは一路、ローレットへと向かう。
自らの身の潔白の為に。
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幻想、ローレット。
飛び込むようにして、カウンターに泣きついてきたジュムア。
彼が幻想へとやってきていることを知り、冬越 弾正 (p3p007105)も駆けつけていて。
「一体どうしたんだ」
「実はね……」
ジュムアは半泣きになりながら、自身を取り巻く状況を吐露する。
吸血鬼に厳しいラサの民。
先の事件を考えれば仕方のないことではあるが、それにしても無関係なジュムアにとってはとんだとばっちり。
「風評被害も甚だしいな」
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)も傍で聞いていて、ジュムアに同情を寄せる。
さすがに可哀想と感じた2人は、ジュムアを助けるべく動くことに。
しばらく、彼らがラサ関連の依頼をチェックしていると、ネフェルストにおいて小さな依頼が頻出していることに気づいて。
「血を舐める人影……?」
「こっちは蚊を使って酔った人の血を集める何者か……」
いくつかの事件が何れも吸血鬼を連想させる事件であり、これがジュムアに向いているヘイトを高めているのではないかと弾正、アーマデルは推察する。
これは、依頼の解決も兼ね、ジュムアの無罪を証明したいところ。
ではどうにもならぬ状況でも、様々な事件を解決して支持も高いイレギュラーズであれば……。
「うぅ、弾正くん、アーマデルくん、皆、頼んだよぉおお!!」
藁にもすがる気持ちで、ジュムアは2人とこの依頼を受けてくれたイレギュラーズに無実の証明を願うのである。
●
ラサ、ネフェルストへと到着したイレギュラーズ。
一行もジュムアも連れてきてはいたが、先述の通りかなり目立つ。
ジュムアを連れていくか、あるいは依頼主に見張らせるかなど、を考えながらも、メンバーは事件について情報収集を進める。
大まかに事件は4種。
先に話題として挙がっていた、血を舐める人影と、蚊を操る何者か。
加えて、人の血を吸う鼠を操る男。さらに、噛みついてくる獣人。
複数怒っている事件は直接とは言えずとも吸血鬼を思わせ、現状すぐに連想するジュムアへと結びつけてしまうものと思われる。
「まずは情報収集しないとな」
「事件の数も多い。手分けして解決に当たろうか」
アーマデル、弾正は同行するメンバー達と協力し、ジョムアの身の潔白の為に行動を始めるのだった。
- その吸血鬼に身の潔白を!完了
- 哀れな吸血鬼に救いの手を
- GM名なちゅい
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2023年10月05日 22時20分
- 参加人数8/8人
- 相談8日
- 参加費150RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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「うわあああああん!!」
「しゃんとしねぇ吸血鬼だな」
ローレット本部で泣きっぱなしの吸血鬼ジュムアに、『駆ける黒影』ルナ・ファ・ディール(p3p009526)は悪態づく。
おそらく、人々から冷ややかな視線に精神をすり減らしていたのだろう。
「あわわ……ジュムアさん大変だねえ」
「混沌の性質上、吸血鬼も色々種類があるはずだものね……気の毒に」
何とか、『星月を掬うひと』フラーゴラ・トラモント(p3p008825)は彼を宥めようとする。
同じく、ジュムアに同情する『葡萄の沼の探求者』クアトロ・フォルマッジ(p3p009684)はよければ、商人ギルドサヨナキドリへの紹介状を書こうかと誘い掛けていた。
「にしても、都合の悪い事は他所から来たよくわからないもののせいにする……どこでもままある事だ」
「ラサの人たちの気持ちもわからなくもないよ」
そこで、『灰想繰切』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)が人々の常と語れば、フラーゴラも理解を示す。
『灼けつく太陽』ラダ・ジグリ(p3p000271)もまた同意を示して。
「でもだからこそ、これ以上拗れる前に何とかしなければね。互いの為にも」
このままではジュムアにも、ラサの為にもならぬとラダは持論を語る。
「まぁ、『吸血鬼』ってだけで色眼鏡で見られんのはしゃーねぇ半分、うざってぇわな」
暇を持て余すルナも酒代分は働くと告げると、他メンバーが活気づいて。
「このままではジュムア殿も商人さん達も可哀そうだ。必ず皆の心の平和を取り戻そう!」
「よーしそういう摩擦が起きないように、事件解決に向けてワタシもお手伝いしちゃう」
ジュムアの知人、『黒響族ヘッド』冬越 弾正(p3p007105)が決起の声を上げれば、フラーゴラも問題解決に強い意欲を見せた。
幻想出立前、一行はジュムアには身の潔白を証明する為、ローレット本部に留まってもらうことに。
フラーゴラ発案で、幻想滞在中のラサの商人をローレットに呼んで目撃者を置く。ローレット関係者では自作自演を疑われかねないからだ。
「恐らく気が気ではないだろうが……ラサで商売が続けられるように全力を尽くす。待っていてくれ」
『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)がそう諭すが、言葉通りジュムアの顔には不安だと書いている。
商人が入れ替わり用事を済ます間、ジュムアの向く視線は冷ややか。
「ジュムア殿をよく見てほしい……そういう事が出来る御仁には見えないだろう?」
「まあ、あんたらが言うなら……」
そこで、彼の無罪を信じるとフォローを入れるアーマデルの背後に後光が差すのを商人達は目にし、信用することにしたようだ。
それでも不安がるジュムアを独り残すのは心細いだろうと、弾正はギフト「無響和音の楔」をジュムアや商人達へと刺す。
これなら、ジュムアが責められるなど不利益なことがあれば、弾正が直接フォローを入れることができる。
「皆、頼んだよぉおお!!」
「ああ、必ず」
不安そうなジュムアの無罪を証明したいとエーレンは誓い、『新たな可能性』レイテ・コロン(p3p011010)もそれに同意していた。
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ラサ、ネフェルストに到着した一行は情報収集から始める。
簡単に得た情報の中では、吸血鬼の仕業と疑われる事件は大きく4件。
それらを解決する為、メンバーは2人4組に分かれる。
CASE:1、蚊の如きモンスター。
こちらは、ラダとルナがタッグを組んで当たる。
「そもそも、裏に誰かしらがいたとして、目的がなにかって言うな。ただ魔物が迷い混んでたっつーならぶっころしてしまいだがよ」
そう考えるルナも情報収集に動くのだが、何せラダにとっては地元。
コネクションも太く、商人らから吸血鬼に対する不満や愚痴を聞くこともできるはず。
「我々は皆、懸命に日々を生きているだけなのだからな」
酒場同士の縄張り争い、病気流行による高い薬の需要の高まりなど、障害絡みの話はラダが拾うだろうとルナは踏む。
何なら被害者を特定して時刻、犯人情報なども得ることもたやすいだろう。
(なら、俺ァ……)
何かしらの私怨、使役虫を養うのに襲わせていたなど、そうした方面の線でルナは調べることにしていた。
とある酒場へと入ったラダ、ルナはしばらくは聞き耳を立て、情報を集めていた。
やはり、蚊が血を集めているという事、それらが何かかしら組織的な行動をとっていることから、吸血鬼ジュムアに疑いが寄せられているようである。
「なに、仕向けた者がなければそれでいいんだ」
ラダは人の仕業ではなさそうかと考える。
組織的に行動こそしていたが、酔った人に集まるのは蚊の本能。
ならば、統率するのもまた蚊のモンスターである可能性が高い。
「仮に蚊とすりゃ、人を襲えないときゃ家畜がいるとこなりにいそうだがな」
家畜がいるということは、蚊が増えるにしてもいい水瓶なりもあるわけだとルナはそう言いつつ、酒を煽る。
「あまり飲みすぎるなよ。今年の新酒が出回る前に体壊しちゃ勿体ない」
そろそろ、果実が実る時期。
それらで作った新酒が流通し始める頃だとルナは思い返しながら。
「獲物物色してるとすりゃ、その辺歩いてるだけじゃかからねぇだろ。ま、めったなことじゃ酔わねぇよ」
ルナは豪快な飲みっぷりではあったが、ほぼシラフな様子だ。
ほろ酔い状態になりながらも、2人は事件発生時刻、現場が多く集まる通りへと向かう。
戦いに備えて2人とも人型状態で裏道を歩く。
信頼し合う間柄とあって、途中ルナはふらふらと単独行動も行う。
(ラダも簡単にやられる玉じゃねぇからな)
そのラダはサイバーゴーグルを着用、感覚を研ぎ澄まして索敵する。
どうやら、蚊の群れは彼女に狙いを定めたようだ。
ブゥゥゥゥ……ン。
複数の羽音の接近に気づき、ラダは調子を高めて向かい来る羽虫群へと大型ライフル「KRONOS-I」に銃口を向けて。
「切り込む……」
幾度も引き金を引き、ラダは素早く動く蚊へ弾丸を浴びせかける。
名乗りを上げるラダへと蚊の群れは一直線に近寄ろうとするが、さながら砂漠の砂嵐を思わせる制圧力に、蚊どもはなすすべなく地へ墜ちていく。
なおも、奇襲を仕掛けようとする蚊ども。
近場の人々へと襲い掛かろうとするが、そちらは空中から駆けつけたルナが許さない。
「逃がさねぇ」
機動力に勝るルナは蚊どもを通りに留めるべく一気に距離を詰め、名乗りを上げる。
群がる蚊はルナの血を吸おうとするが、ルナは涼しい顔。
「血? 悪ィな。ルーンシールド張ってんだわ」
相手の吸血など意にも介することなく、ルナもまたスコープ付きの「銘無しの古銃」を発砲する。
放たれた弾丸は両サイドの建物や地面を少し削りつつも跳ね、思わぬ方向から蚊を撃ち落とす。
思った以上に子供を群れを減らされたからなのか、少し大型の蚊が後方から飛来してくるのを、2人は察して。
「主がいるのかと思いきや、群れの長がいたとはな」
モンスターと化した蚊なら、それだけの力を持つという事か。
多少特殊な能力を持っていても、相手は蚊。ラダとルナの射撃能力があれば駆除はさほど難しくない。
2人が幾度か弾丸を叩き込めば、長もまた他の蚊と同様に墜ちていく。
統率を失った蚊は蜘蛛の子を散らすように逃げようとするが、2人はさらに名乗りを上げ、1匹たりとも逃がすことなく駆除してみせたのだった。
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CASE:2、水瓶を襲うネズミ達。
この一件はフラーゴラとクアトロの女性ペアで臨む。
「こういうのは、1H5Wを解き明かせば事件解決するってアトさんが言ってた……!」
「そうね、この事件、どういう意図で起こされてるのかしら?」
フラーゴラの意見に同意したクアトロは何か共通したトラブルが被害者に起こっており、それが犯人像に結び付くかもしれないと考える。
その為、2人はネズミに襲撃された被害者宅を巡る。
そこで、ファミリアーのねずみを使い、糞などを発見して行動範囲を割り出したフラーゴラはネズミに家をかじらせて穴を開けていたのを発見する。
どうやら、被害者宅は通り近くに水瓶を保管する家がほとんど。
「さてどんなことを考えているかな?」
当たりをつけていた家でうまく敵ネズミと遭遇したフラーゴラは動物疎通を試みる。
すると、空腹を訴えるネズミが多いことにフラーゴラは気づく。
チウチウ……!!
もう我慢できないと齧り付こうとしてくるネズミ達。
フラーゴラは閃光を走らせてそれらを次々に倒していく。
危険を察知して外へと駆けだすネズミはクアトロが追う。
精霊の助力を得たクアトロはネズミを追跡し、それらに指示を出す何者かを捜索する。
一部は襲い掛かってきたが、クアトロは冷静に闇の月で照らしてそれらを倒す。
「くっ!」
劣勢を察して逃げる人影を、フラーゴラ、クアトロは一緒に追う。
クアトロが先に掌握魔術を組み上げてそいつを足止めすると、フラーゴラがミニペリオンの群れを召喚して動きを止める。
「聞きたいこといっぱいあるんだから!」
「ね、素直に話してくだされば悪いようにはしないわ?」
「待て、悪かった!」
躓いて倒れたそいつは、フラーゴラ、クアトロの呼びかけに観念したようだ。
仮に、しぶとく抵抗した場合のことも想定していたフラーゴラ、クアトロであったが、意外に早く大人しくなったのに拍子抜けすらしていたようだ。
「アナタは誰? 狙いは何? 動機は? 方法は? そしてジュムアさん関係ないよね? さあ答えて!」
「私たち、ジュムアさんの身の潔白を晴らしたいだけだもの。このネズミ達、どこでお友達になったの? あなたは吸血鬼なのかしら? どうしてこんな事件を起こしたの?」
矢継ぎ早に問うフラーゴラが再びミニペリオンの群れを差し向けようとし、クアトロがさらに問うと、男は悲鳴を上げて語りだす。
話によれば、小さな容器を持たせた複数のネズミを使い、盗み出した水を売りさばいて生活の糧にしていたとのこと。
話題となっている吸血鬼は完全に利用しようと考えたようで、水と合わせてネズミに人々を襲わせて敢えて血を吸わせていたとか。
「このネズミ達、どこでお友達になったの?」
「良かれと思って、ネズミを手なずけたら、増えすぎてしまって……」
クアトロの問いに、ネズミ使いは土下座して情けない声を上げる。
とはいえ、ジュムアの利用していたのは悪質極まりなく、さらに尋問するも続ける。
「ねずみのような動物がうろつくってことはお掃除が行き届いてないかも? 一斉大掃除といくよお……!」
フラーゴラはクアトロを誘って区画の大掃除を始めるのだった。
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CASE:3、薄着女性を切り裂く男。
「俺はアーマデルとペアだな」
そう言う弾正と共に、男性ペアを組むアーマデルは商人に聞き込みを行う。
「切り裂き魔の過去の出没時間帯や範囲はある程度絞り込めているか?」
幻想にいた商人はもちろん、先ほどはラダに続く形で商人に聞き込みを進めていた。
現場は人通りの多い場所から一つ、二つ隣の路地が多い。
被害者は女性とあって、特異運命座標の女性達に怖い思いをして欲しくはないと考えた弾正は……。
「ここはあえて、俺が女装をして囮捜査をしよう!」
変装して女装した弾正はその魅力を高め、魔法少女をテーマにそれらしい装いと振る舞いで囮となる。
「薄着の女性ばかりが刃物で……切られるのは着衣ではなく……?」
ガッツリ着込めば、9割ほど解決するのではと考えたアーマデル。
隠れている割合が高い程ちらりが眩しく輝くのに、と。
「……だいたいわかった……俺はマスコット枠でいく」
アーマデルは魔法少女に相応しいマスコットに。
「あんたも俺と契約して、魔法少女にならないか?」
真顔でマスコット感を強調するも、目立つ後光はいざというときの為に今は控えるアーマデルだ。
さて、事件現場が集まる通りで2人は犯人を待つ。
「こういう事件の犯人を捜しているのだが、覚えは無いか?」
録画準備を整える弾正の脇でアーマデルは霊魂疎通し、地元民の霊に犯人の特徴を聞く。
(女性の柔肌を切り裂くのに快楽を感じる異常者……?)
そんな戦慄するような情報を耳にしながら、酒蔵の聖女には偵察を。
また、アーマデルは闇の帳の中に身を隠し、弾正の少し後ろを行く。
少しして、闇の中で素早く接近してくる犯人は弾正目掛け、刃を煌めかせる。
暗がりの中だが、暗視で視界を確保していたそれを察した弾正は「いと罪深き邪神の鎖」で刃を弾き、奇襲を防ぐ。
「!!」
目標は無論、生け捕り。
姿を現すアーマデルが後光を輝かせつつ、英霊の声を直接犯人へと聞かせれば、弾正も無我の境地に入って仕掛ける。
「アーマデルとだんじょーちゃん★の連携力、今こそ刮目してみるべし!」
刃を振り回す犯人の技もなかなかだが、熟練の息に達するイレギュラーズには及ばない。
アーマデルが悪夢を見せつけた直後、弾正が両腕で相手を裂く。
スターライトエンブレムが煌めき、犯人は致命傷を避けて地面に崩れ落ちた。
「キミはどうしてこんな事を? もしかして、独りぼっちで寂しくて?」
弾正が問うように、単独犯であるのは霊達の証言もあって間違いない。
ただ、その理由は常軌を逸していた。
「女のぉ、柔肌を切る感覚がたまんねぇんだ……ひ、ひひ……」
そして、その血を舐めとることで、肌を切ったという感覚をより楽しめるのだとか。
一片たりとも理解のできぬ主張を繰り返す犯人を弾正が録画する中、アーマデルが昏倒させてその場から連行するのだった。
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そして、CASE:4、噛みつく獣種男。
「まずは聞き込みで出現しやすそうな場所の絞り込みかな」
レイテがエーレンと組み、調査を始める。
これまでの事件で最も出現範囲が広い相手であり、絞り込みも厳しい状況だったが、その中で比較的事件が集中する場所に当たりをつけて巡回する事に。
飛行するレイテが監視する下で、囮となるエーレンはお使いの振りをするなど長時間うろうろしていても不自然にならぬようカモフラージュする。
グルルルル……。
月夜に小さく聞こえてくる唸り声。
エコーロケーションで察知したレイテの合図の直後、エーレンを獲物と認識した犯人が建物の上から飛び掛かってくる。
「かかったな」
首元へと噛みついてきたのは細身の狼男。
フードや衣服で耳や尻尾は隠されていたが、見え隠れする毛並みまでは隠れない。
ただ、舌舐めずりして血を舐めとるのが見えて。
「この味、たまんねえ…………っ!?」
明らかに血を目的としている男はなおも食らいつこうとしたが、おそらくは獣の直観でエーレンの強さを察し、飛び退いた。
「鳴神抜刀流、霧江詠蓮だ。ただの獣人が俺から逃げきれると思うなよ!」
しかし、エーレンは跳躍、アクロバットを駆使して素早く追いすがり、鉄の脚で犯人を逃さない。
「エ、エーレンさんが通常のイレギュラーズの3倍のスピードでパルクールしながら、標的に接近していってる!!??」
頭上から、その様子を把握していたレイテも驚きを隠せない。
時折、エーレンは刀で切りかかり、狼男の体をあちらこちら裂いていく。
「な、何なんだこいつは!」
どんなに全力で逃げても追いつかれるなど、犯人にとっては絶望しかないだろうと、レイテはむしろ同情すら感じていた様子。
「えっと、気を取り直して」
ともあれ、ラサの民に凶行を働く相手だ。
同情こそすれ、放置するわけにはいかない。
「大人しく捕まってもらうよ」
「畜生!」
レイテも名乗りを上げて抑え込もうとすれば、覚悟を決めた狼男も鋭い爪を伸ばして応戦してくる。
(まあ、逃げられないって思うよね)
レイテも自身を中心に聖域を展開し、狼男の足止めを続ける。
2人をやり過ごそうとする狼男だが、その間も大きく口を開けて牙を突き立ててくる。
その味を狼男が噛みしめる間に、エーレンがそいつの脚を裂いて態勢を大きく崩せば、レイテが慈悲の一撃で戦闘不能へと陥らせた。
エーレンは自警団へと突き出すべく即座に捕縛セットで縛り付ける。
「あ、その前に、なぜ連続で血を吸っていたのか、聞いておかないとな」
興味本位でエーレンがそいつに尋ねると。
「うめえんだよ、お前達の血は……肉は……もうたまらねぇ……」
獣の本性を得た狼男は、沸き立つ自らの血を抑えられず、人々を襲っていたようだ。
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全ての事件を片付けたイレギュラーズ一行は朝を待ち、資料をまとめたクアトロと一緒にレイテが事件の犯人を全て、朝市を回っていた警邏へと突き出す。
「晒しものにするのは嫌だけど……」
これも、無実立証の噂が早く広がるようにとレイテが考えてのこと。
少しずつ、事件の全容が商人の間にも広がっていく。
(ジュムアは商人達のことを考え、事件解決をもって身の証を立てようとした)
商人達にもジュムアの気持ちを汲んでもらればと、ラダは願うのである。
後日、ラサへと戻ったジュムアはラサの商人を始め、ネフェルストの民らから陳謝の言葉を貰って満足気に笑っていたという。
「弾正くぅぅん、やっと商売ができるようになったよぉぉぉ!!」
ある日、ラサで働く彼に会った弾正は、感激のあまり泣きながら飛びつかれたという。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPは地元民のメンバーをうまくサポートし、事件解決に当たった貴方へ。
今回はリクエスト、並びにご参加ありがとうございました!
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
こちらは、冬越 弾正 (p3p007105)さんのリクエストシナリオです。リクエストありがとうございます。
OP導入はややシリアスにも見えますが、可哀想な吸血鬼男性を助けるややコメディシナリオです。
月の王国での事件は記憶に新しいですが、その煽りを大きく受けてしまった悲しき吸血鬼を救ってあげてくださいませ。
●概要
ローレットに身の潔白を証明すべくジュムアさんの依頼もあり、ネフェルスト郊外で起きている怪事件の解決に臨みます。
商人も多く行き来するこの地の騒動を解決に導けば、ジュムアさんもラサの商人を通して人々に受け入れられるようになることでしょう。
●事件
いずれもネフェルスト郊外の一地域にて、夜に起こっています。
散発的、場合によっては同時に発生しており、ジュムアさんによるものとは言い難い状況ばかりなのですが……。
現地民は口を揃えてジュムアさんが疑わしいと、全ての事件が彼によるものと疑いの目を向けているようです。
以下、事件の概要。
プレイヤー情報を含む為、事情聴取はしっかりと行うのが望ましいでしょう。
プレイングには解決方法まで記述を願います。
複数の事件を手掛けると描写部分が薄くなる可能性が高いです。
お勧めは2人4組で各事件に全力で当たること。
複数の事件に当たりたい場合でも、一つをメインに、サブを1つ程度がいいでしょう。
〇CASE:1
群がる大きな蚊のようなモンスターが飲み屋帰りの人々を襲撃する事件がり、多少血を吸われているとの情報が。
ジュムアさんが操っているのではと容疑がかかってますが、被害者は事件当時酔っていた者も多く、よく覚えていないとのこと。
〇CASE:2
家屋に設置された水瓶を襲う事件が発生しています。
ネズミのような小動物が数体で行動しており、駆除しようとすれば噛みついてくるそうです。
血を吸うそぶりも見せること。そして、こちらは雇い主らしき人影が近くにいることが分かっています。
〇CASE:3
夜、暗がりの中を歩く、比較的薄着の女性ばかりが刃物で切り裂かれる事件が起こっています。
刃についた血をぺろりと舐める姿が印象的ですが、薄暗い中襲ってくる為、犯人は断定されてません。
男性らしいですが、翼は生えていないそうです。
〇CASE;4
老若男女問わず、突然噛みついてくる人影がおり、やはり噛みつき痕から血を吸うようです。
この味、たまんねえという男の言葉が印象的ですが、獣じみた動きで跳躍していくことから、獣種ではないかと見られています。
●NPC:ジュムア・アズライール
20代男性、旅人の吸血鬼。仇名は『プル血鬼』。
先の月の王国事件とは無関係……のはずですが、吸血鬼ということが災いし、周囲に悪い人だと誤解されているようです。
1人で弁明するも納得してもらえず、ローレットへと依頼しています。
敢えて事件発生時に関係者に見張ってもらうことで潔白を証明することもできますし、どれかの事件に同行して彼が解決したことにして人々の心証を良くする手もあります。
戦闘能力はさほど高くはありませんが、手持ちの薬品を使って仲間を強化したり、敵を足止めしたり出来ます。
吸血鬼の力も多少は使えますが、状況もあって避けるべきでしょう。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
それでは、よろしくお願いいたします。
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