PandoraPartyProject

シナリオ詳細

電波塔をジャックせよ。或いは、我らは“ボイジャー”…。

完了

参加者 : 7 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●電波塔を占拠せよ
 再現性東京の外れには電波塔が立っている。
 鉄さび塗れの電波塔で、高さはほんの4、50メートル。遥か昔には小さなラジオ局があり、ごく狭い範囲に向けてラジオを放送していたらしい。
 とはいえ、時代の流れは残酷だ。
 ラジオの視聴者は減り、ラジオ局は潰れてしまった。そうして後には、誰も使わない、誰も知らない、ただ錆び付いただけの電波塔だけが残った。

「ところがぎっちょん、電波を飛ばす機能は生きてるみたいなのよね」
 ほら、とラジオを片手に掲げてエントマ・ヴィーヴィー(p3n000255)がそう言った。アンテナをまっすぐ立てたラジオを右へ、左へと揺らせば「ぴー……がが……がが……ぴー……がが、ぴー……がー……」と、なるほど確かにアンテナが電波を拾う音がした。
 ただ、電波を垂れ流しているだけだ。
 そこには誰の意思も、何の音も、介在しない。
「誰の意思も介在しないんなら、介在させちゃえばいいんだよ」
 つまり、電波塔に忍び込んで、勝手にラジオ番組を放送しようというわけだ。
 俗に言う電波ジャックである。
 犯罪だ。
 犯罪だが、エントマは何しろ練達の出身であるため、好奇心には素直な方なのである。最悪、自分や誰かが死ななきゃいいや、で思考を行動に移せる性質の人間なのだ。
 変な方向に思い切りがいいとも言う。
「まぁ、ゲリラ番組をやろうってわけさ。内容はライブ感で決めるとして……突入組と、警戒組とに分かれる必要はあるのかな?」
 電波塔に忍び込んで、壊れているだろう放送設備を整備して、電波に乗せてラジオを流す。告知は無い。
 ラジオ塔の周辺には、珍走団と呼ばれる若い連中がよく屯しているらしいが、まぁどうにかなるだろう。
 時々、警察が巡回に来るらしいのだが、それもどうにかすればいい。
 そうして、幾つもの障害を乗り越えてラジオを放送したとして。
 ともすると、誰にも知られずに一夜のラジオ番組は終わるかも知れない。
 それなら、それで別にいいのだ。
「ラジオの放送は深夜0時。さぁ、行こうぜ諸君。我らはボイジャー。誰も知らない、どこか遠くから、誰かに音を運ぶ者なり……ってね」

GMコメント

●ミッション
電波塔をジャックしろ

●電波塔
練達、再現性東京の外れにある錆び付いた電波塔。
設備は階段と発電設備、それから最上階にあるオフィスと放送室だけ。
使われなくなって久しい電波塔ではあるが、今なお、電波を飛ばし続けているらしい。
※放送設備は破損している可能性がある。
※階段などは老朽化している可能性がある。

●珍走団と警察官
電波塔の近くを集会場所としている20人ほどの若い連中。
バイクや原付のエンジンを唸らせ、若さに任せて騒いでいる。
時々、珍走団を取り締まるために警察官たちがやって来る。
電波塔をジャックするにあたって、目下の障害が彼らである。


動機
 当シナリオにおけるキャラクターの動機や意気込みを、以下のうち近いものからお選び下さい。

【1】エントマに誘われた
「楽しいことしよーよ」。エントマに誘われ、電波塔を訪れました。

【2】電波塔の噂を聞いた
あなたは電波塔に関する「ある噂」を聞いて、現地に足を運んだようです。

【3】電波を受信した
電波を受信して、電波塔を訪れました。世間ではそれを直感や虫の知らせと呼びます。


我らはボイジャー
ラジオ放送にあたって、担う役割です。

【1】放送担当
放送の準備を手伝ったり、ラジオ・パーソナリティの役を担ったりします。

【2】設備担当
放送設備や各種コンソールの整備、操作などを主に担当します。

【3】警備担当
電波塔への突入や、珍走団および警察の相手を主に担当します。

  • 電波塔をジャックせよ。或いは、我らは“ボイジャー”…。完了
  • GM名病み月
  • 種別 通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年09月11日 22時10分
  • 参加人数7/7人
  • 相談0日
  • 参加費100RC

参加者 : 7 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(7人)

赤羽・大地(p3p004151)
彼岸と此岸の魔術師
冬越 弾正(p3p007105)
終音
モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Pantera Nera
ジョーイ・ガ・ジョイ(p3p008783)
無銘クズ
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
クアトロ・フォルマッジ(p3p009684)
葡萄の沼の探求者
シャーラッシュ=ホー(p3p009832)
納骨堂の神

リプレイ

●電波塔に登ろう
 声をかけられなかったのだ。
 8人。
 暗い夜道をまっすぐに進んで、電波塔へと歩いて行った男女が8人。年齢も様々、1人などは頭にヘルメットなど被っていた。
 電波塔の周辺を集会場所として利用している若者たち……世間では、珍走団だとか半グレだとか呼ばれる類の連中だ……の、足がすくんで声を掛けられなかったのである。
「な、なんだあれ? どういう集まりだ?」
「電波塔の方に向かって行ったぞ? 役所の人間……って風でも無かったよな?」
「肝試しに来た学生連中でも無さそうだし。どこかの会社の奴って風でも無かったぞ?」
 8人の姿が見えなくなってから暫く、次々と若者たちが疑問の声をあげる。だが、誰も明確な答えを出せない。
 ただ、奇妙なものを見た、という気分で、何とも言えない微妙な表情を浮かべ、互いに顔を見合わせることしかできなかった。

「なんかさぁ……増えてない?」
 電波塔、最上階。放送室へと向かう途中の怪談で、エントマは「ところで」と前置きをしたうえでそう呟いた。
「はぁ。電波を受信しましたので」
「✧⁠◝⁠(⁠⁰⁠▿⁠⁰⁠)⁠◜⁠✧」
「おおおお同じくシビシビしてててて!」
「エントマだって、電波を拾ってここに来たんだろ? 同じじゃないか」
 電波を受信して電波塔にやって来た。そう宣うのは『納骨堂の神』シャーラッシュ=ホー(p3p009832)に『無銘クズ』ジョーイ・ガ・ジョイ(p3p008783)、『黒響族ヘッド』冬越 弾正(p3p007105)そして『彼岸と此岸の魔術師』赤羽・大地(p3p004151)の4人である。
「いやぁ、そうだけどさぁ」
 エントマは“ラジオ”で飛んでる電波を拾っただけで、自前の脳やら耳やらで電波を拾って来た連中とは、全くまるっと話が違うことは明白。
 そう言えば、何人かは日頃から“怪しい気配を感じた”だの“何かに呼ばれた”だのと言って、現場で顔を合わせているが。そう思えば、なるほど今回の「電波を受信した」という理解に及ばぬ超常の動機も、平常運転の範疇だろうか。
「まぁ、今さらだ。それより、急いだ方がよくないか? この分だと放送機材が無事かどうかも怪しいが」
 エントマの肩に手を置いて、『Pantera Nera』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)が壁を指さす。壁についている何かの機械は、すっかり錆に覆われていた。
 放送室も似たような有様だとすれば、修理にどれほどの手間と時間が必要になるかも分からない。
「っと、そうだった。意思の介在しないつまんねー電波に、意思を介在させるんだった」
「思ってたんだが、意思を介在させれば良……くはなくないか?」
 これからエントマが行おうとしていることは、無人の電波塔を乗っ取ってのゲリラ放送。つまりは電波ジャックである。
『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)は疑問の声を挟んだが、とはいえ止めるつもりもなかった。
 なぜなら楽しそうだからだ。
 誰も知らない電波を使って、ラジオ番組を放送する。その放送は、誰の耳にも届かないかもしれない。ただ、イズマたちの声が電波に乗って、誰も知らないどこかへ飛んでいくだけかもしれない。
 それなら、それでいいと思えた。
 要するに、今夜これから起こる出来事は、これから流す放送は、エントマのお遊びなのだから。
「それじゃあ、誰にも異論はないということで。急いで上に上りましょう。ピザが冷めてしまうから」
 抱えているピザの箱を掲げながら『葡萄の沼の探求者』クアトロ・フォルマッジ(p3p009684)はふわりと笑う。
 ピザはある。コーラもある。
 無いのは、計画性だけだ。

●我らはボイジャー
 人の作った施設や設備は、人が使わなくなった途端、急速に荒廃をはじめるものだ。
 積もった埃の層を指で削りながら、クアトロは重たい小さな溜め息を零す。
「ピザを置くスペースも無いわ」
 埃だらけというシチュエーションは仕方ない。だが、テーブルが埃塗れなのはいただけない。部屋の隅に視線を向けて、掃除用具を手に取った。掃除用具の掃除から開始する必要がある程度には、雑巾も箒もすっかり汚れているけれど。
「ピザ以前の問題として……器材の方も修理がいるな」
 現在時刻は22時を少し過ぎた頃である。放送開始の予定は0時。時間的な猶予はあまり多くない。
 さっそくとばかりにモカはドライバーとペンチ、それから電圧計などの詰め込まれた鞄を床に投げ出し、放送機材の修理に取り掛かるのだった。

「CDの方はどれもダメになってそうだな」
 壁の棚には、びっしりとCDケースが詰め込まれていた。そのほとんどは、すっかり劣化してしまっていて、もはや音を記録するガジェットとしての役割を失っている。
 少しだけ残念そうな顔をして、イズマは手に取ったCDケースを棚に戻した。ジャケットは横断歩道を渡る4人の男の色褪せた写真。
 過去に誰かが聞き込んだのか、可視カードは皺だらけだ。
「でも電波に乗せて音を届けるなんて凄いな、楽しそうだ」
 ここに並ぶ何百……ともすると千を超えるCDは、実際にかつて電波に乗って放送されたものである。それを思えば、なるほどここはある種の遺跡であろう。
 古いか、新しいか。
 石の遺跡と、鉄塔の違いはたったそれだけ。
「おや? レコードの方は無事なのでは?」
 ホーが手に取り、イズマの方に差し出したレコード。多少、黴は生えているが拭えばたぶん音を流せる。再生機械の方が無事かは別問題だが。
「紙幣を追って泳ぐ赤ん坊とは……事件の気配がしますね」
「きっと資本主義の社会を皮肉ったものですな。生まれた時から死んだ後まで、人の一生にはとにかく金がかかるのだと言うアレですぞ」
 ジョーイのヘルメットには「( ̄^ ̄゜)」が浮かぶ。
 世を儚んでいるのだろう。
「いつの時代にも、悩みの種は尽きないでありますな」

 ぴー……がが……がが……ぴー……がが、ぴー……がー……。
 ぴががが……がが、ぴー……がが、ぴー……がー……。
「おおお音が押し寄せて来てシビシビするるる!」
 放送機材がノイズ混じりの大音声を発すると共に、弾正は白目を剥いてひっくり返った。どうやら脳髄に電波の直撃を喰らったらしい。
「っ……すまない。平気か?」
 慌ててボリュームを絞り、モカが不安そうな声をあげる。
 弾正は頭を振りながら身を起こすと、調子を確かめるように耳の辺りを何度か叩いた。壊れた機械は叩けば直る。同じように、調子の悪くなった耳とか脳も、叩けば治る。
「……音の精霊種は電波酔いが激しいんだ」
 何度か耳の調子を確かめ、弾正は笑う。
「だが、こんなテンションぶち上がる電波をそっとしておくのは勿体ない!」
 器材の方は、どうにか修理できそうだ。

 放送まで残り40分。
 機材の修理はあらかた終わり、BGMの選定も進んでいる。番組を放送するにあたって足りないものは多いけれど、後は勇気で補えばいいと、昔の偉い人も言っていた。
 というわけで、エントマと大地は、ピザを食べつつ放送の打ち合わせ中である。
「素人集団が本当に自由にやっちゃあグダグダになるゼ? 最低限のレールは敷いてやりナ」
「……え? なんて?」
 エントマは、白い箱に着いたレバーをガチャガチャと動かすのに夢中であった。大地の話を聞いていないのだ。
 なお、そのレバーの付いた白い箱は“カフ・ボックス”という。マイクのOn/Offを操作するための機械だ。
「壊れてるね。マイク、駄目かも?」
「マイクなら弾正が持って来てるゼ」
「じゃあ、いいか」
「いや、よくないって。“本”も無いんじゃ、グダグダになるって話をしている」
「“本”なら大地さんの専門じゃんね。任すよ」
 適材適所というものがある。
 餅は餅屋に、本のことは司書に任せるのがいいに決まっているのだ。遥か太古の昔から、人類はそう言う役割分担を実施することで繁栄して来た。
 今回もそれだ。歴史に倣おう。
「俺、図書館司書であって放送作家とかじゃないんだけど……」
 大地はそもそも専門外だが。
 その言葉は黙殺されたが。
「何のために人の目は閉じられるように出来ているのか。手が2本あるのか」
 代わりに、ホーが口を挟んだ。
「それは、都合の悪いことを見ないで済むように、そして両方の耳を手で塞げるようにでしょう。つまり、人とは“見ないし、聞かない”ことを前提として設計された生物なのです」
 Q.E.Dと言わんばかりのいい顔をしている。
 そんな気がする。
「いらん機能を備えやがっテ」
 
 最初に異変に気が付いたのは、2人の警察官だった。
 名を片津という再現性東京でも有名なおまわりさんだ。
「おい? 何か聴こえてるぞ? ラジオのチューニングを合わせてみろ」
 片津の常人離れした聴力で無ければ聞き取れなかったであろうほどに幽かなノイズ。“ボイジャー”もといエントマたちだって、そもそも誰かに届くことを想定していないラジオ番組。それに片津は気が付いた。

『8月24日未明。IT企業の元社長がオフィスビルより投身自殺。9月2日正午ごろ、園児の列に軽自動車が衝突。9月4日朝6時、きさら縺・の劇場跡地に潜伏していた連続殺人犯が錯乱した状態で発見……』
 
 淡々とした男の声だ。抑揚は無い、まるで機械のような声音。特徴らしい特徴も無い声で、右から左の耳へと抜けて、数秒後にはともすると忘れてしまいそうになる。
「先輩、これ……」
「あぁ、外川も気づいたか? ……ここ最近で起きた事件ばかりだな。おい、どこの局がこんなものを放送している?」

『本日未明、きさら縺・にて狸の群れが狸踊りを踊り狂うと言う事件が発生しました。では、皆さん。本日も良い1日を』
 
 プツン。
 音声が途切れて、それっきり無音の時間が訪れた。
 だが、それもほんの10数秒ほど。
『ハローハロー。こちら“ボイジャー”。光も届かない遠い宇宙の果てに向かって、世界の“音”を送る者なり!』
『本日最初のナンバーはこちら!』
 次に聞こえて来たのは、女性と、くぐもった男性の声であった。
 男性の声の方には、まるでボイスチェンジャーでも噛ませたような、奇妙な音の揺らぎが混じる。
『ι(`ロ´)ノ レッツ・ミュージックですぞ!』
 再現性東京のどこか。
 光の差さない暗い部屋で、衛福 久子は“ボイジャー”のラジオを聞いていた。適当にラジオのチャンネルを動かしていたら、突然に事件や事故のニュースが流れ始めたのだ。
 何の放送事故かと思ったが、次にはパーソナリティが登場し、あっという間に曲へと移る。
 音源は古いレコードか。「助けて!」と連呼する耳馴染みのある英語の歌詞。ミキサーで曲を弄っているのだろう。
 音源が古いにしては、音はクリアで聞きやすい。それでいて、わざとノイズを少し残しているのが分かる。音楽か、或いは“音”そのものに関する知識がある者の仕業だ。
「なんなの……これ?」
 疑問は尽きない。けれど、不思議とチャンネルを変える気にはなれなかった。

 キューシートを片手に、大地は何度も時計と機材とを交互に見やる。
 放送開始から既に20分。
 今のところ、機材に異常は起きていないし、放送時間も予定通りだ。
「イズマ。次のBGMは用意できているか?」
「問題無いよ。夜中だし落ち着いた音楽がいいよね」
「よし。では、次はクアトロだ」
 イズマが曲をフェードアウトさせる。
 と、同時に大地が合図を出して、クアトロがマイクのスイッチを入れた。

「……なんだ、こりゃぁ?」
 咥えた煙草から灰が零れた。
 紫煙を肺に吸い込むことさえ忘れた彼女……夜鳴夜子が、喰いつくようにラジオへ顔を寄せている。
 ノイズに混じって聞こえて来るのは女の声だ。
『ボウルに強力粉と塩を入れてさっと混ぜて。そう、いい調子よ。次にドーナツ状に中央に穴を作って、そこへドライイースト、ぬるま湯を入れるの。イーストのダマがないよう……』
『ι(`ロ´)ノ♪ ι(`ロ´)ノ♪』
 不気味なニュースに、古い音楽、そして今度はピザの作り方。
 途中に挟まる、妙に陽気な合いの手はなんだ。
 日中に比べて、深夜のラジオ番組は自由な雰囲気のものが多い。スポンサーがつかないおかげで、何の配慮や気兼ねが必要ないから。
 だが、それはそれとして、これはなんぼなんでも自由過ぎやしないか。
「っていうか、知ってる奴の声だったが」
 何やってんだ? なんて疑問に答えをくれる者はいない。

『さて……我ら“ボイジャー”の旅もそろそろ終わりだね』
 しっとりとした女性の声だ。
『この音が誰かに届いたのか、届かなかったのかは……まぁ、どうでもいいか』
 ふぅ、と零した小さな溜め息をマイクが拾う。
 それから、一拍の間を置いて“ボイジャー”のゲリラ放送は終点へと向かった。
『お相手は私、《Stella Bianca》と《Nine of Swords》でお送りしました』
『最後まで全開で駆け抜けるぞ! 者共! 俺の話を聞けぇぇぇ!』
『こら! 台本に無いことを言うんじゃない!』

「総長! なに聞いてんです? 疾走りにいかないんっすか?」
 舎弟に声をかけられて、飛馬はラジオをポケットにしまう。
 電源はまだ切っていない。
 どこの局が流しているのかも分からない奇妙なラジオ番組だった。けれど、なんとなく最後まで聞いてしまった。
 これから仲間と“疾走”りに行くのに、ついついラジオに聞き入ってしまった。
 けれど、それももう終わる。
 漏れ聞こえて来る曲に背中を押されるように、彼は愛車に跨った。
 改造に改造を施した自慢のバイクだ。
 エンジンが唸る。
「じゃあ行くか。“飛馬羅矢愚連隊”、出発(でっぱつ)だ!」
 
●ラジオの時間
 ラジオ放送を終えて、余っていたピザを食べ終えて、一行は電波塔を後にした。
 暫く前に、電波塔の前に屯していた若い連中は、既にどこかに消えている。
 そこにはただ、静寂だけがあった。
 少しだけ夏の名残りを残した、秋の夜闇と静寂があった。
「やぁ、楽しかった」
 エントマは満足そうな顔をしている。
 なんとなく集まって、なんとなくラジオ番組をやって、後には何も残らない。
 そんな“何の意味もない”ような一夜であった。
 気づけば、ホーやクアトロはどこかに姿を消している。元々、ラジオを放送するためだけに集まったメンツなので、ラジオが終われば帰っていくのは当然だ。
 きっと、このまま。
 のんびりと歩いているうちに、1人、2人と帰路について自然と解散するのだろう。
 ラジオの余韻に浸りながら、満足いくまでのんびり歩くのも悪くない。
 なんて。
 そんなことを考えていたエントマの肩を誰かが叩いた。
「ん? なにかな?」
「あれ。何か来ますぞ?」
 ジョーイが指を向けた先には、夜闇を切り裂く赤い光が1つ、2つ。
 徐々にこちらに近づいて来る。
「(°Д°)!!」
 そして、ジョーイは光の正体に気が付いた。
 パトカーのランプだ。
 電波塔をジャックして、勝手にラジオ番組を流したのがバレたのかもしれない。
「やばっ! 解散! みんな、解散です! 家に帰るまでがラジオです!」
 かくして。
 蜘蛛の子を散らすみたいに、エントマたちは急いで帰路につくのであった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様です。
というわけで、突発・ラジオの時間でした。

私、地球が滅ぶんなら適当なラジオ局をジャックして、適当な曲とか流しながら滅亡の時を迎えたいんですよ。

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