シナリオ詳細
ラスティレッド
オープニング
●混沌ふしぎ発見
覇竜領域。人類未踏の秘境はイレギュラーズによって開拓されたが、それでも神秘のヴェールは未だ健在である。亜竜種との縁によってローレットの活動範囲も大きなものとなり、それは新たな問題事と依頼が迷い込む新たな冒険の幕開けを告げていた。
亜竜集落フリアノンという亜竜種の里がある。竜骨の道から繋がっている集落であり、初めて亜竜種と接触した記念すべき地である。本依頼はその地より飛ばされ、強力なモンスターが生息する地ともあればイレギュラーズたちは各々が鍛えし腕を振るう事となるだろう。
●赤に染まる
フリアノンを出れば亜竜種が山菜を育てている高台が存在する。少し道をそれただけで死の危険性が付きまとう過酷な地だが、そこに住まう者たちは知恵を振り絞って生きていくしかない。森でキノコや鹿狩りに勤しもうものならばサイクロプスやケルベロスといった、およそ割に合わない魔獣によって狩られる側へと転落するのだ。
「しかし今回はよく育ったな、収穫は嬉しいものだがこうも多いと帰りが遅くなっちまう」
亜竜種が数名ほど高台で作業を行っていた。日常的な光景であるが覇竜領域において確約された日常は存在せず、ワイバーンの気まぐれで焦土地帯となるのだから戦士のみならず生産者にとっても毎日が命がけであった。
「暗くなって出てくれるのがオバケなら良いけどな。少なくとも一息で灰にはならねえだろ」
「全くだ」
冗談でも言っていなければやってられないような日々を過ごし、今日も取り越し苦労だったと酒を飲み干す事で一日を終えるつもりであったが嫌な予感は的中するものである。
亜竜種の一人が短い悲鳴をあげ、悪態をついた。ちょうど冗談を言い合っていた時で、度の過ぎた悪ふざけがよぎったがそれはすぐに吹き飛んだ。何かに囲まれている。
「ちくしょう、このクソガキ! 俺の足をぶった斬ろうとしやがった!!」
●ローレット
「やあ、デザストルからの依頼だよ。難儀な話だね」
『黒猫の』ショウ(p3n000005) は集まったイレギュラーズへ内容を告げる。フリアノン周辺とはいえ危険過ぎる地域の情報をよく拾ってくるものだと感心するが、ショウから得た情報をもとに仕事へ取り組む事となるのは自分たちな訳で、覇竜領域ともあれば気が重くなる者が出てもおかしくはない。しかしながら、強大な敵を求める者にとってはこれほど適した地域もないだろう。
「あそこからの討伐依頼となれば亜竜や巨大なモンスターを想像すると思うけどね、それとは違うものが相手だよ」
ショウは深手を負った亜竜種たちの証言をもとに今回の敵を推測したようだ。
「討伐対象はレッドキャップ。そうだね、凶暴なゴブリンって言えば伝わりやすいんだけど……この言い方で相手を過小評価してしまったらオレの責任も問われるから今のはナシでいこう」
ショウの言い回しが中二病じみたものなのか、真剣さを帯びたものなのか判別しかねる部分はあったが情報を整理すると後者が正しいものである。
覇竜領域に似合わぬ矮小な敵、しかしそれは間違いなく覇竜領域に住まう脅威なのだ。
- ラスティレッド完了
- GM名星乃らいと
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2023年08月31日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●リベンジャー
「同胞たる亜竜種を狙う以上は放置出来ぬである」
手枷を付けた亜竜種の男はこの場に似つかわしくない風貌をしている。『ノットプリズン』炎 練倒(p3p010353)はローレットのギルドメンバーに捕縛された悪党の構図、その主役を担うかのようなファッションであったが他の面々の反応を見るにその役には選ばれていないようだった。即ち、誤解を招きやすい横縞に自ら袖を通しているのである。
練倒の奇抜な服装はさておき、『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)に『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)は山菜の保護を行う事とした。いつレッドキャップが襲って来るか分からない状況であるため簡素なカバーをかける程度に留まったが、結界を張る事によって見た目以上の手厚い保護となる。現地近辺まで形式上の案内を務めた亜竜種からは無理をしなくて良いと言われていたが、時間があればやるに越した事はないだろう。
「よし、こっちは準備万端だ。妖精郷で見たあいつらと同じ種類で、山菜を狙っているかは分からないが憂いは断てたな」
「まあ、やること自体は変わらんさ」
高台には不意打ちに絶好の機となる夕暮れが訪れているにも関わらず普段通りの静けさがあり、覇竜の平和を守ると意気込んだ『相賀の弟子』ユーフォニー(p3p010323)に緊張が続いている。
「まだボクのソナーにも掛かってないね。取り敢えずそれ、飲んでて良いよ」
音による索敵を続ける『新たな可能性』レイテ・コロン(p3p011010)がユーフォニーが飲むタイミングを失っていたポーションを指差す。ドラネコの使役に集中していたのもあったが、ユーフォニーにとって覇竜は初の依頼で赴いた思い出深い場所である為、多少の心の乱れがあったかもしれない。
「ありがとうございますレイテさん。それでは少し失礼しますね」
ユーフォニーはレイテに照れくさそうな笑みを返すと、神秘の液体がもたらす複雑な味わいを享受した。たぶんキウイ味。
「召喚前に聞いた伝承通りなら質の悪い妖精だわね」
「ある意味ヤりやすいけどねー 遠慮なく殺りにいけるもん アハッ」
『玻璃の瞳』美咲・マクスウェル(p3p005192)は伝承や他のイレギュラーズの情報は話半分程度に捉えるつもりであり、その脅威に対して助言を期待していた訳でもない会話であったが『瑠璃の刃』ヒィロ=エヒト(p3p002503)からはおそよ想像通りの有り難いアドバイスが返ってくる事となった。覇竜をホームにするフィジカルの強い敵を過小評価はせずとも、身内の戦闘狂を相手にする事になる敵方には同情する。尤も、美咲本人の情など何一つ期待できるものではないのだが。
「習性からして出血は狙ってくるとして、武器は不衛生だろうから毒にも注意しよっか」
「えーっ! 後で絶対すぐにオフロ入ろうっと! いや、絶対避けきっちゃおう」
「成否を問わず入っていいわよ」
ヒィロから発せられる元気な騒音はレイテの音による索敵を大いに乱したが、練倒からブランシュまで各々が目を見張っているのでそれほど問題にはならないという信頼感があった。むしろ、これくらいのテンションの方がイレギュラーズらしいのではないか。悲壮なムードよりよっぽど良いやとレイテは微笑んだ。
(それにしてもヒィロさんは元気だなあ……)
『死神の足音』ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)は子犬と共に張り込んでいる。ユーフォニーの使い魔であるリーちゃんは親しみやすい名前であったが、救世主と名付けられたその存在は複雑な思いを抱える知性が表情に現れていた。
「血の匂いがするな……行くぞ救世主。奴らにとっての死神の足音を聞かせてやる刻が来た」
これはいけない。ブランシュはもはや死(タナトス)であり生ける者の扉(デスドア)を叩く絶対にして不可避の存在なのだ、少なくとも自分だけはそう理解ってあげなければ。程よいリラックスムードがイレギュラーズに漂う中、救世主だけは決意に満ちていた。
●キリングタイム
レッドキャップはイレギュラーズの監視を掻い潜る事は出来なかったが、あちら側としても妖精の持つ不思議な力でこちらの布陣をある程度把握しているようで若干の膠着状態が続いていた。練倒が赤く輝き闘志を剥き出しにしたが、遠方の動きは少ない。一度興奮させればすぐにぶつかる事になると踏んだレイテは浅めの飛行で偵察を行いレッドキャップの領空を刺激する事にした。
領空権の侵害を咎めるように斧が無数に投げつけられる事となるが、強化装甲服を身に纏っていたレイテは若干の傷を負う程度で見事に火蓋を切る事に成功した。先制攻撃を受けたような形に見えるも、この後に続くイレギュラーズの猛攻をして利を築けば後の先を取ったと言えるのではないか。
「これより救済を執行する。救世主!」
救世主は何か打ち合わせがあったのかほぼ確実に知らない記憶を辿る必要があった。結局ブランシュは一人でよくわからない事を口走ってよくわからないポーズも取っていたが、呼ばれた自分が特に何をするわけでもなく突っ立っていた事は見逃された。救済執行が何かは子犬にはわからない。
「応ッ!!」
救世主は困惑する。あまり認めたくはないが救世主とは自分の事であり、まずブランシュは練倒を指してはいないだろう。スゥーパァーインテリジェンスドラゴニア(以下S.I.D)の視点からするとこの亜竜の里を護る事は自分の使命である。故に救世主と呼ばれてもおかしくない、むしろ応えてやらねばならないという悲劇的なすれ違いが凍狼の脳を苦しめた。救世主の苦悩は置いておくも、レイテを仕留めきれず憤慨するや否やS.I.Dが飛び込んで来たのだから引き付けという戦術は絶大な成果をあげる事となった。ドラネコのファンファーレまで鳴り響き、戦場は突然に騒がしくなる。
「アハハッ! 斧投げ大会は失敗に終わっちゃったけどまだチャンスがあるよ! 早く拾って次に切り替えよう?」
投げた斧を拾いに走るレッドキャップは揶揄するヒィロに強い怒りを覚えた。並の獲物なら最初の投擲だけで戦意を消失するものだ。逃げ惑う獲物の悲鳴を楽しみにしている彼らにとって歓声を返される事は不快極まりない反応である。光るヒィロに光る練倒、どちらも狙ってくださいと言わんばかりの熱烈なアピールを黙らせてやらねば。
レッドキャップは斧の回収を急ぐ事にしたが突如として3匹ほどが転倒した。レイテに攻撃リソースを注ぎ込みすぎた失敗は明らかだが、ここまで展開が早いとは思ってもいないようであった。気配を消していた美咲から放たれた鉛は容赦なくレッドキャップの脇腹や肩、頭へと突き刺さった。頭を撃たれている個体が悲痛な叫び声をあげるが、頭をぶち抜いた本人はタフだなとそれ以外は何の感慨もないようだった。
「数で攻めてくるタイプで頭も悪そう。早く終わらせたいね」
「全く持ってその通りだ」
美咲の掃射を何とかくぐり抜けたレッドキャップは苦労虚しく元の位置へ吹き飛ばされる。回り込んでいたイズマから衝撃波をはっきりとした形で直撃させられたのだ。ルートを変えようにも既に美咲の姿は其処には無く、何処から飛んでくるか分からない銃弾は身構えようのない恐ろしさがある。道を封鎖された数匹は他のレッドキャップに事態の収拾をつけるべく怒声をあげる事しかできなかった。凶悪なアンブッシュは確実にレッドキャップのチームワークに亀裂を生じさせた。
「光り物が主戦場。闇に紛れる退路の選定は予想通りだったわ」
「ねーっ、美咲さーん! 光り物ってボクのことーっ?」
「ガーハッハッハ、レッドキャップ共! そのちんけな斧で吾輩の鱗を砕けると思うなである! 陳腐! 脆弱! 非力である!!」
インテリジェンス担当の練倒は絶望的なほどに硬い。固いを超えて硬い、硬を超えて鋼である。比較的近くに落ちた斧を拾い上げたレッドキャップは得体の知れないイレギュラーズを相手にする事は後回しで、ハンティング経験のある亜竜種を狙ったようだがこれも尽く悪手を選択した結果となる。切断を諦め、細やかな傷をつけて弱らせる作戦に出たようだが自称覇竜一の知識人から導き出される解決法は気合による修復である。馬鹿げた装甲の馬鹿げた脳筋っぷり、フィジカルモンスターにウンザリするが、一度激突してしまえば意地で戦うほかない状況であった。
「方角たぶん11時! 距離わかりません! 課長!」
ユーフォニーに付き添う謎の今井さんなる物体が砲弾を放つ。騒がしい練倒付近を誰もが主戦場として認識していたので、孤立したレッドキャップにこれほど執拗な追撃が飛んでくるとは予想していなかったようだ。着弾地点に立っていた小人は今井さんの爆撃によって跡形もなく吹き飛んでしまった。今井さんが何処からカルバリン砲を仕入れてきたのかは課長の地位だけが知る秘密のようで、ユーフォニーが食い下がるもそれが教えられる事はなかった。いつの間にか知らないものが増えている。
「こいつ達の斧はなかなかアナログな感じだね。ちょっと妖精の神秘をメカデザインに組み込めないか、インスピレーションに期待してたんだけどな! 今度はボクの番だよ、S・P・A・D・D! 白兵戦モードだ!」
お返しとばかりにレイテが高周波ブレードで斬り刻む。最初の一振りだけで充分にお返しはできたはずだが、レイテの斬撃は止まることがない。一見して凶暴で粗野な猛攻だが、計算され尽くした太刀筋が効率的なラインを描いている。例えこの場に救世主や死(タナトス)に選ばれし神(デス)がいたとしてもしなやかに、精確に曲線は迂回するだろう。一匹のレッドキャップがバラバラになった所でブレードは排熱動作に入った。
「切れ味は異常なし、だけど初速からトップスピードに乗るまで違和感があったなあ。S・P・A・D・Dの再調整が必要そうだ」
涼しい顔で仲間を解体したレイテを見て、生き残った片割れは一目散に逃げようとした。自分たちが普段してきた事をやり返されたショックは大きい、美咲の銃弾にぶち抜かれようがヒィロに笑われようがこいつを相手にするよりは余程良い。山菜だの亜竜種だの放っておいて、退いても良いくらいだ、このままでは間違いなく死ぬ。
「恐れるな。お前の死が来ただけだ」
咄嗟に声のする方を向けばブランシュがなにやら月を見上げている。宙に浮く4本のナイフは月の光を反射すると共に、不気味に切っ先をレッドキャップに向けている。ここで引き返せばまたレイテの相手をしなければならないが、このかっこつけ野郎なら倒せるのではないかという淡い希望が生まれた。
「命ある者は必ず滅する……それを理解っていながら対面すると怯える。一つ話をしてやろう、このナイフに纏わる悲しい話だ。エルの終末……それは4つの」
「キィイイイーーーーーーーーーーーッ!!」
「セイッ!! ハアアアアァァッ!!」
ブランシュは思わず飛び蹴りで粉砕してしまった。話が長くなると踏んだレッドキャップは発作的にかっこつけ野郎に飛びかかってしまい、ブランシュも今日一番のデシベル量を記録してしまう。ブランシュは悲しげな表情で動かなくなったレッドキャップを見つめた。救世主としてはそれが死(タナトス)の何かではなく話を続けれなかった事の悲しみである事を悟っていた。
「静寂、それは俺には二度と許されぬ安息」
獲物を失ったエルの終末は何一つ語らず、其処にただ浮かんでいた。
「帽子を赤く染めるより、思考を赤く染めるべきなんだよね。今みたいに――敵をいーーっぱい殺したいって思うような時は、さ! アハハッ」
練倒が斧を真正面から受け止める相手であれば、こちらは斧がかすりもしない相手である。斬り込もうとこちらが斧を握り込んだ瞬間にはもう飛び退き、着地点を狙えば奇妙な体勢で寝転がると同時に斧を押しのける。ヒィロと肉薄したレッドキャップは目線すら合わせてもらえずに対処された。
「うわあ、美咲さんが言ってた通り本当にきったない斧だなあ。ちゃんと研いでる?」
「それが吾輩の鱗に触れている事実は受け入れ難いのである! 不快である!」
退路を断ち切った美咲は相方の様子を見に戻ったが、相変わらずの光景が広がっていた。動きこそ激しいものの、まだヒィロは眠っているようなものだ。あれにすら当てられないのであればレッドキャップはヒィロを傷つけるより寿命が尽きる方が早いだろう。しかしながら一生をかけて付き合ってあげる義理もないので美咲は早足で近づき、何のひねりもなく首を飛ばす形でヒィロと小人のダンスを切り上げた。
「美咲さん、準備運動で終わっちゃいそうだよ」
「準備運動ってもう少し体をほぐすものだけど」
その点について、ヒィロは自身を巻き込んだ攻撃作戦も許可を出していたそうだが、そのような場面が早々訪れる事はなくヒィロを狙った所で当たるものはそう多くないだろう。この調子だと飛んできた方が喜びそうだ、一発私が実現してやろうかとも頭をよぎったがやめておいた。必要のない事を行って妙な癖でもついたら矯正が大変だ。
ヒィロがこれほど避け続けるのは察しが良いからでもある。この回避力を支える察知センスが自分に向けられる前にさっさと仕事を終えよう。
「ボク思ったんだけどさ」
「思わなくていいわ」
「はーい」
ドラネコのファンファーレもフィナーレに向かおうとしている半ば、イズマは伝承の事を思い出していた。残虐な一面が強く残っているが、弱点の存在する魔物も少なくない。それが体験に基づく物なのか吟遊詩人の脚色か定かではないが、レッドキャップは十字架や聖なる言葉に弱いと言う。
十字架については手をクロスさせた所で死(タナトス)のようにカッコいいポーズで場を凍らすだけだろう。実物であろうとも効力は怪しいものだ。容易な対処法さえあれば亜竜の里が襲われる事もないと考えていた。
しかしこの程度の対策で危機を逃れられるのであれば早々に試しているかなとイズマは結論づけた。そして、これだけニャアニャアにゃんにゃんと形容しがたい音が鳴り響く環境で聖歌を奏でるのは無理があるだろう。
ユーフォニーとドラネコ音楽隊が少し心配そうにこちらを見ている。一流の音楽家が難しい顔をしているので気になるのだろう。聞き分けの良さそうな猫たちにそれをお願いする事もできたが、演奏はそのまま続けさせた。音楽とは音を楽しむものだ、水を差してはいけない。
暇なパートなのかわからないがドラネコの一匹がイズマに申し訳無さそうに食べかけの魚を差し出してきた。申し訳無いが食べないぞ。
「いや、大丈夫だ。続けてくれ。それと、低音の方が弱いから配置を少し変えると良いかもな、そうそう……」
「あ、あの……イズマさん。うちの子たちがご迷惑をおかけしてます?」
「陰気臭い戦場を賑やかしてくれてるよ」
思わず親身になってしまった指導を誤魔化すようにユーフォニーへと微笑んだ。
「そろそろ吾輩の一撃にて幕引きである。其処に直れい!」
練倒から陽気なムードが消し飛んだ。自慢の装甲でレッドキャップの斬打を受け止める事は苦ではなく、ヒィロと共に楽しむ程であったがここにきて真剣なムードに一変する。ヒィロとしてもシリアス仕草を察知したようでそそくさと距離を取った。
覇竜一の知識人だのインテリムキムキドンドコドンだの良くわからない事を口走る男であるが、同じ亜竜の仲間が暮らす里が脅かされる事は許せないものがあったのだろう。一際強い怒声は最後のレッドキャップの一匹を声だけで束縛し、練倒がゆっくりと構える骨竜斧を前に金縛りにあっているようにも見える。
こうして落ち着いて見るとなかなかに刺激の強い光景だが、それを止める者は誰一人としていない。
「地獄で悔いるのである!貴様が殺めた同胞に詫び続けよ!」
力強く振り下ろされた骨竜斧は頭蓋を割り、胸から股を破壊しながら邪悪を真っ二つに斬り開いた。
(ねぇねぇ、ブランシュ君。亡くなった亜竜種さんっていたっけ?)
(死神にそれを聞くとは愚問だな。亜竜種もかような地で生きる者、生半可な悪には屈さん)
練倒につられて感傷に浸るユーフォニーを正気に戻すか、レイテは少し悩んだがそのうち気付いて同じような疑問が浮かぶだろう。そうしたら自分が答えてやろうと思った。
「妖精なんだからもうちょっと変な技とか使えば良かったのにね」
「それでもヒィロには当たらないでしょ。その技で逃げられでもしたら面倒な事になってるわよ」
「それは美咲さんが処理するんだよね? さっきみたいに。アハッ」
本当に、全く察しが良い。何匹か死んだふりをして難を逃れようとしていたが念入りに十等分ほどにしておいた。処理は亜竜種たちに任せよう、そこまでは仕事に含まれていないのだから。
イレギュラーズの何名かは山菜を育てている箇所に対策を施したが、誰もがレッドキャップの脅威は0になった事を確信しており、それは事実となる。夕暮れから夜にかけて猫の鳴き声や斬撃音が響いていたので亜竜種たちにとっては何が繰り広げられているのか想像もできなかっただろうが、一般人からは想像もできない方法で依頼を成功させた事もまた確かなものである。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
ご参加ありがとうございました!
レッドは四天王の中でも最弱……つぎはこのイエロー様が相手をしてやろう!
GMコメント
●目標
レッドキャップの討伐
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
●ロケーション
現場に到着する頃は夕暮れです。
敵の目撃情報からこの時間帯に張り込む事となります。
●敵
レッドキャップ
赤い帽子を被った残忍な小人です。非常に素早く、斧による斬撃で流血沙汰を好みます。
弱った相手を集中攻撃したり斧の投擲で仕留める狡猾で残忍な生き物です。
命からがら逃げ出した亜竜種からは数を聞き出す事ができませんでした。
赤い帽子は被害者の血で染まっている伝承があります。
亜竜種の血を流さないよう完全に死滅させてください。
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