PandoraPartyProject

シナリオ詳細

どらごんさまーばけいしょん

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「すぺしゃるなパーティーをするよ!」
 スティア・エイル・ヴァークライト (p3p001034)の宣言を耳にして珱・琉珂 (p3n000246)が「えいえいおー!」と拳を振り上げたのは――多分、きっと、大体、『大変なことが起こるとき』なのである。
「待ちなさい」
 肩を掴んだ秦・鈴花 (p3p010358)は「リュカは何をするつもり?」と迫る。琉珂がバスケットを抱えている時点で嫌な予感がしたのだ。
「さとちょー、それは何が入ってるの?」
 バスケットを指差したユウェル・ベルク (p3p010361)に琉珂は「えっとね、デザストルマイマイトカゲとか、それから、こっちは」と、一つずつ指で摘まみ上げる。
「スティアが! スペシャルをして! リュカがそんな物を持っていたら! 遣ることはひとつじゃないの!」
「そんなことないよ」
「そんな事あるわよ! 絶対に混ぜちゃダメ。わかった!? 『はい』は!?」
「はーい」
「分かってない!」
 姉のように言い聞かせる鈴花に琉珂はにんまりと笑っていた。ユウェルは「さとちょー、聞き流してる」と楽しげに笑う。
 そんな様子を遠巻きで見ていたスティアはほっと胸を撫で下ろしたのであった。

 ――覇竜領域での一件を経てから『父代わり』であった男を目の前で喪った琉珂はぎこちなく笑うようになった。
「私は里長だからね」「前を向かなくちゃならないから」とそう言って乗り越えようとする彼女は痛ましくも見えたものだ。
 だからこそ、一緒に夏を楽しもうと誘ったのである。
 勿論、琉珂だけではない。アウラスカルト (p3n000256)やクワルバルツ (p3n000327)も一緒に、という誘いである。
 スティアは「サクラちゃんが言ってたんだよ! 皆誘えると良いね、って!」とサクラ (p3p005004)の名を出した。琉珂は「サクラが言うならそうしましょう」と二つ返事でアウラスカルトやクワルバルツを探しに出掛けたのである。
「……何をすると言った?」
「ビーチバレー!」
「……何故」
 げんなりとしているクワルバルツと、此方もまた帽子を深く被って外方を向くアウラスカルトを琉珂が引き摺って遣ってきた。
「大丈夫よ、クワルさん。スティアさんが一杯ご飯をくれるわ。
 アウラちゃんも、しにゃこさんの顔面にボールを当てていって言って居たから許して」
「どうしてですか?」
 しにゃこ (p3p008456)が「どうしてそんなことを言うの」と言いたげに琉珂を見る。
 きょとんとした様子の琉珂にアウラスカルトはやや肩をがくりと落としてから「暑い」とぼやいた。
「日よけにパラソルは用意したから大丈夫だよ。飲み物も食材もある」
 ありすぎる、と言葉に含んだジェック・アーロン (p3p004755)に苦い笑みを浮かべた笹木 花丸 (p3p008689)は「まあ、元気に体を動かそうよ!」と微笑んだ。
「うんうん。思い切り夏を楽しみたいしね! 皆でビーチバレーをしよう!」
 ボールを受け取って構えるセララ (p3p000273)に琉珂は「しよう! しよう!」と燥ぎ回る。
「……燥ぎすぎではないか」
「……ああ」
 竜種二人は『赤子の頃から知っている娘』の明るさにやや違和感を覚えながらも頷いた。
 仕方ないのだ、と二人は知っている。
「やろう」と応えれば琉珂はとびきり嬉しそうに笑うのだ。
 それも、知っている。竜と人は、生きる『長さ』が違うのだ。
 クワルバルツも、アウラスカルトも小さく、直ぐにでも死んでしまいそうな『子供』の笑顔を覚えて居た。
「うふふ。やったあ。
 ねえ、今日は有り難う。小さな頃に、おじさまが二人を……それから、クレスとかザビーネとかをね、連れてきてくれたの。
 あの時は皆が竜種(ドラゴン)だとは思って居なかったけれど、まるで小さな時みたい」

 母がいってらっしゃいと背を押してくれた。
 走って、転んで、泣き出しそうになった琉珂の手を、『クレス』が引いてくれるのだ。
 ぐすぐすと泣きながら近寄れば困った様子の『ザビーネ』が花冠を被せてくれる。
 痛くないと言い聞かせてくれたザビーネに笑いかけた所を見てから『クワルさん』が困った顔をするのだ。
 どうして相手を為ねばならないと言いたげな彼女の向こう側で本を読んでいる『アウラちゃん』が見つかったという顔をする。
 そんな様子を『あの人』が笑うのだ。傷を手当てして抱き上げて、ご覧と花の名を教えてくれる。
 人間同士では、次期里長として知られる子供はどれ程に扱いづらかっただろう。
 人のしがらみなんてない竜たちは、対等に接してくれた。それが、どれ程に嬉しかったか。
(懐かしいな)
 小さな世界で生きてきた。
 ひとりぼっちだと泣いた夜も、分り合えないと怒った夜も、抱き締めて欲しいと甘えた夜だってあった。
 あたたかな世界で生きてきた。
 何時だって守られてばっかりだったと知ったのは、広い世界を見たときだっただろうか。
 一人で立つことも、歩くことも、怖かった。
 けれど――
(うん、大丈夫。あの時みたいに転んだって泣かないわ)
 今日は楽しむのだと決めたのだから。

 それに。
 あの人は、もういないのだから。

GMコメント

 最強のビーチバレーをすると聞きました!

●目的
 夏を満喫しよう

●場所
 プライベートビーチを借りました。シレンツィオ(だと思います)!
 少し歩けば売店などもあります。日よけのパラソルもありますが、やや離れた位置にBBQ用の小屋や休憩用コテージもあるようです。
 食材なども自由に利用できるため、お好みのものをご利用ください。すぺしゃるしても大丈夫です。
 地獄のビーチバレーのチーム分けはお任せします。ドラゴンズは琉珂が居るので多少手加減は屹度出来る筈です。屹度。
 これはあるかな?というものは大体何でもあります。
 皆さんでやりたいことを話し合って一日をめいっぱいに楽しみましょう!素敵な夏を楽しめますように!

●NPC
 ・珱・琉珂
 ご存じフリアノンの里長。何でも楽しめるハイテンションガールです。
 ビーチバレーは得意か苦手かと言えば、「ボールを顔面に当てれば勝てる気がする!」といった猪突猛進さがウリです。
 お料理をすると、何時も「覇竜領域を知って欲しいの!」と不思議な食材を持ち込んで料理が動きます。暴れ回ります。
 名前を付けた生物でも食に困れば食べる事の出来る強かさがある為、自身の作った動く料理にも名前を付けがちです。
 ベルゼーに対しては自身が思うことも色々ありますが今日は楽しむことに決めたようです。

 ・クワルバルツ
 ・アウラスカルト
 琉珂ちゃんが引っ張ってきました。
 二人ともベルゼーに対しては色々思うことはあるでしょうが、今は琉珂に引っ張られて遣ってきたためやや困惑しています。
 それでもこれまでの皆さんとの関わりで夏を楽しむ気概は持っているはずです!
 仲良くしてください! 多少手加減してくれるはずです! 多分! きっと! めいびー!
(担当SDに「海に行くぜ」と言って連れてきました。本当に琉珂ちゃんが引っ張ってきた構図です!)

 それでは素敵な夏を。宜しくお願いします。

  • どらごんさまーばけいしょん完了
  • GM名夏あかね
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2023年08月26日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

セララ(p3p000273)
魔法騎士
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女
ジェック・アーロン(p3p004755)
冠位狙撃者
サクラ(p3p005004)
聖奠聖騎士
しにゃこ(p3p008456)
可愛いもの好き
笹木 花丸(p3p008689)
堅牢彩華
秦・鈴花(p3p010358)
未来を背負う者
月瑠(p3p010361)
未来を背負う者

サポートNPC一覧(3人)

珱・琉珂(p3n000246)
里長
アウラスカルト(p3n000256)
金嶺竜
クワルバルツ(p3n000327)
薄明竜

リプレイ


 ――輝く夏がやってきた。

「水着で参上! セララマリンフォーム!」
『魔法騎士』セララ(p3p000273)が軽やかにビーチに登場した。その様子をデザストルマイマイトカゲの串焼き片手に見詰めていたのは『金嶺竜』アウラスカルト(p3n000256)だ。
 その隣には『薄明竜』クワルバルツ(p3n000327)も何故かデザストルマイマイトカゲの串焼きを手にしながら水着姿で佇んでいる。後方には何処から持ってきたのか小さなコンロでデザストルマイマイトカゲの姿焼きを作っている『亜竜姫』珱・琉珂(p3n000246)の姿があった。
(この夏はリュカの我が侭も笑って受け入れてあげたい。里長になって、あの子も屹度色々な苦難を乗り越えてきたはず――
 拝啓、そう思って居たあの時のアタシへ)
 目を伏せてから『未来を背負う者』秦・鈴花(p3p010358)は小さく息を吐いた。
「甘やかすな」
 自らの見通しの甘さを悔むように鈴花は頭を抱えた。
「だから! リュカ! デザストルマイマイトカゲとか天帝種とか諸々持ってくるんじゃないの!」
「え?」
 まだ焼かれていないデザストルマイマイトカゲを手にぱちくりと瞬く琉珂は「私が持ってきたの?」とクワルバルツとアウラスカルトに問い掛ける。
 二人はデザストルマイマイトカゲを見詰めてから『美味しいのに』『うまいのに』と言いたげに鈴花を見た。
「あと『うまいのにな』みたいな顔すんじゃないわよ約2名も! ちなみに聞くけど琉珂が調理してなくても二人は焼いて食べるわよね!?」
「いや……」
 其の儘いけますけど、という顔をした二人に対して鈴花は「せめて! せめて焼きなさいよ!」と叫んだ。仄かに鶏肉を焼くような良い匂いがするが、あれはデザストルマイマイトカゲだ。焼き鳥じゃない。デザストルマイマイトカゲなのだ。
「うーん、デザストルマイマイトカゲはいらないかなあ。
 美味しいって言ってるアウラさん達に食べさせてあげるのが一番だと思うよ、うんっ!
 ……折角ビーチに来たんだし楽しいお話をしよう、ねっ。ねっ!?」
「ねぇもう疲れたんだけど……あーと、花丸は現実を見なさい」
 現実から目を逸らしている『堅牢彩華』笹木 花丸(p3p008689)の頭を掴んだ鈴花。その傍では楽しげに『宝食姫』月瑠(p3p010361)が「さとちょー! おそろっち水着!」と微笑んでいる。
 その視線は串焼きを手にしているクワルバルツに向いていて――つい、無くした腕が本来在るであろうひらひらと揺れた袖をぎゅっと掴んだ。
「月瑠?」
「あ、ううん」
 ごめんねと手を離した月瑠に琉珂は「私もクワルさんの角掴んで良い?」とウキウキとした様子で問うている。甘やかすな(二度目の決意)。
 まじまじとその様子を眺めて居たアウラスカルトに勢い良く『可愛いもの好き』しにゃこ(p3p008456)が飛び付いた。
「おお~ん、水着アウラちゃん可愛いですねぇ! 写真撮っちゃいます! ほら、もっと笑顔で! ピースして!」
「いつも元気だな」
「そうですよ、はいはい、皆さん入って~!」
 しにゃこがaPhoneのカメラ機能で自撮りしようとしている様子をアウラスカルトはさも気にする様子も無く眺めて居た。
 まれによくやばい友は練達の技術にも精通しているのだ。水着が可愛いから何やら良く分からないことをされているという認識に至ったアウラスカルトに『聖奠聖騎士』サクラ(p3p005004)は「暑いねえ」と声を掛けた。
「アウラスカルトちゃんもクワルバルツちゃんも琉珂ちゃんも水着似合ってるね! かわいいー!
 ふふふ! 去年はアウラスカルトちゃんにビーチバレーで負けた(戦闘不能)けど今年こそ負けないよ!」
「そんなこともあったか」
 アウラスカルトがぱちくりと瞬けばデザストルマイマイトカゲの串焼きを『聖女頌歌』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)に差し出している琉珂が「ビーチバレーするのよね?」とぱっと振り返る。
「そうだよ! 夏といえばビーチバレー! 今日は珍しい人達もいるし、全力で楽しまないとね!」
 珍しい人、と言う言葉で冷静に考えた『冠位狙撃者』ジェック・アーロン(p3p004755)は果たしてこのメンバーは手加減というものを出来るのかと思い至ったが気にすることを止めた。
「夏だ! 海だ! ビーチバレーだーー!」
 どんどんぱふぱふ。
 少し間違えたら突然命を失われる竜種入りビーチバレー大会のはじまりなのである。


 ビーチバレーのチームは適宜入れ替えながら『遊ぶ』事に決定した。そう、これは遊びなのだ。琉珂がにこにこしながら捕まえてきたデザストルマイマイトカゲを籠に直している様子から視線を逸らして花丸はにんまりと微笑んだ。
「よーし、頑張ろう! ……ねえ、さっきアウラさんとクワルバルツさんが話してたビーチボールが破裂するって話って……」
「するだろう?」
「可能性はある」
 馬鹿力(どらごんぢから)を発揮しそうになる二人に「大丈夫だよね? ねっ?」と花丸は囁いた。屹度、それは怖い事なのだとアピールしておけば二人だって気をつけてくれる筈だ。
「まあ、危なそうだったらスティアさんシールドとか、しにゃこさんバリアーを使おうかな?」
「はああああ? いやいやいや、こんな美少女をバリアーに何て出来るわけないじゃないですがああああッッ!?!?!」
 しにゃこに向けて唐突にボールが『投げられた』。ヒュンッと音を立てたボールがしにゃこの顔面へと食込んでいく。
「あ、そっか! クワルバルツちゃん。ビーチバレーって言うのはね」
 スティアはチームを組みたいねと話しかけながら、ビーチバレーのルールを説明していた。琉珂は「竜種がルールを知ってるわけ無かったわ」と明るく笑うが「何てことをするんですかー!」と泣くしにゃこは悲しげに身を起こしたのであった。
「よーし! ボール破裂とか戦闘不能とか聞こえたけど大丈夫よねオラァッ! ……あっやだついボールが来たからついスキル使っちゃ――」
「ちょ、ちょっとどうして!? アウラスカルト、クワルバルツ、ボールにはそうっと触るんだよ、そうっとだよ。
 破裂させたらその時点で負けだからね! そこの亜竜娘たちもだよ、いい!?」
 慌てるジェックに鈴花が「ごめんごめん」と笑う。琉珂と月瑠が顔を見合わせてから、ジェックを見て意地悪な顔をした。
「へいへいへーーーい!! ビーチバレーで竜に勝とうだなんて3年くらい早いんだよ!
 チームはバラバラだけど幼馴染チームとかどらごんチームとかは組みたいね!
 もちろん他のせんぱいたちとも! シールドの使い方覚えなくっちゃ……ふっふっふ……」
 月瑠はそろそろとボールを手にしてから「いっくよー!」と叫んだ。ジェックは「分かってない!」と悲痛な声を上げる。
「さとちょートスおねがい! りんりんいっくよー! 空を飛べる亜竜種の特性を活かしたWあたーっく!」
「とりゃあああ! あっ……せ、セーフよジェック、壊れてないわ! ちょっと焦げた匂いがしてるけど!」
「ちょっと!」
 ジェックは『反射的』にアタックをした鈴花に「どうして」と呟いた。
「悪あがきしてるけど本当は分かってるよ、逃げられないって……やるしかないって……。
 避けてたって勝てないんだから当たって砕けるしかァッ、うそうそうそストップストップストップ当たったら死ぬでしょコレ!」
 勢い良く体を反らしたジェック。大地にめり込もうとするそれを受け止めたのはサクラ。
「頼りにしてるよ!」
 クワルバルツとスティア、サクラとジェック(途中参加のしにゃこ)のチームを相手にする亜竜三人娘とアウラスカルトとセララ。花丸は審判をしながら応援に徹していた。
「スティアちゃん!」
 アウラスカルトの攻撃は予め設置したグレートアトラクターで吸い込んでも良いとサクラは考える。
「トス!」
「来たよ! えいっ!」
「ギャッ」
「えへへ、ごめんね! 丁度良いところに居たから!」
 勢い良くスティアがしにゃこを踏み台にした。ジェックは「ええ……」と衝撃を感じながらシールドが破壊されていく様子を眺めて居る。
「しにゃこちゃんがみんなにだいぶ雑に扱われてるけど……壊れない程度にするんだよ?」
「壊れますから!」
 叫ぶしにゃこは勢い良くボールをアウラスカルトへとアタックした。咄嗟のことに反応しなかったアウラスカルトを見て勢い良く吹き出す。
「おや!? まさかまさか! あの偉大な竜が! 小娘一匹如きに負けちゃうんですかぁ!?」
「……」
「あっ……ごめんなさい! 謝る謝るから顔はやめて! 花丸バリアー! ああ! 逃げるな花丸バリアー! おのれ勇者セララ! うわあああー!」
 勢い良く大地に沈み込んでいくしにゃこを踏み台にしたサクラのアタックを受け止めて琉珂は「アウラさん、手伝って!」と叫んだ。
「いや待って避けられないんだけどちょっ琉珂なんで顔面狙っtブヘゥ──!?」
「相手の顔面へ―――シューーーーットッ!」
「ごらああああ、リュカアアアアアアア!」
 鈴花に首根っこを掴まれたが、琉珂は止まらずジェックの顔面へとボールを炸裂させたのであった。


 第二回戦では花丸は「やれやれ、スティアさんシールドになって貰うからね」と悪魔の囁きを発していた。
 アタッカーは他の皆任せてサポートに回った花丸はある意味で安全地帯に立っていた。そう、ボールは抑えておく。ボールは抑えるが危険であれば一歩下がった場所から見れるのが花丸ちゃん流なのだ。
「えー、ずるくないですか?」
「ずるくないよ」
 にんまり笑顔の花丸はスティアシールドの位置を確認しながらもトスを上げる。撃ち込む鈴花は目の前でアウラスカルトがボールを待っていることに気付いた。
「げ」
「アウラちゃん! 合体攻撃で行くよ。一緒に決めよう!」
 にんまりと微笑んだセララにアウラスカルトが「任せておけ」と頷く。高威力の攻撃が必要だからこその合体技だ。
 コンビネーションアタックの美しさに見惚れている場合ではないと鈴花は勢い良くサクラを掴んだ。
「くっあっちにはしにゃこバリアーが……じゃあやっぱりやるわよ!
 スティア&サクラシールド! あっちょっと、あ、いやクワルバルツ違うのよこれはアタックで、ヤバ――」
「うおー! スティアシールド!」
「えっ!? サクラちゃんシールド!!!」
 もだもだと動き回る二人を眺めて居た花丸は『巻込まれたくない』という気持ちでそっと一歩引いた。
「あ、花丸さんが下がった」
「足を引っ張り合ったりして纏めて被弾したりしたらそれはそれで仕方ないよね、ヨシ!」
「「「よくない!!!」」」
 これがまさに逆鱗に触れるってね、と囁くしにゃこの頭上を通り抜けていくアタックに月瑠がクワルバルツを掴んだが――「クワルバルツし――んぎゃっ!」
「何をしようとする」
 責め立てるクワルバルツは、月瑠の動きを察知して彼女を盾にした。物の見事に被弾し続けて戦闘不能(本当に!?)になった皆はビーチに転がって笑い合ったのであった。
「あ~~~疲れた……って、あのさ、あの……ところで琉珂さん、さっきからガタガタ動いてるそのバスケットは何かな?」
「えっ、スティアさんが沢山って言ってたでしょう」
 さっきも食べて居たデザストルマイマイトカゲか。花丸はそろそろと視線を逸らす。一匹取り出した琉珂を見てからジェックの唇が戦慄いた。
「でざす……トル……マイマイトカゲ?
 海老とか蟹とか蛸とか、そういうのと似たような感じ……なのかな。ちょっと想像以上に……デカすぎるし多すぎるけど」
「可愛いでしょう」
「い、いやあ……」
 此れを今から食べるらしい。今だけはガスマスクを付けて何も見なかったことにしたくなるジェック・アーロン(冠位狙撃者・旅人・21歳)。
「スティアさんがたんまり捕まえてきてって言ってたから張り切ったって?」
「ええ!」
「……そっかぁ」
「デザストルマイマイトカゲはうまい? ……美味しいらしいし、フルコース! って痛い痛い! 鈴花さん、首が痛いよー!」
 スティアさん!? ――と勢い良く花丸が振り向くよりも先に鈴花が「スティアァッ!」と首を豪速で揺るがせていた。
「さとちょーはりきってデザストルマイマイトカゲいっぱい捕まえてきたみたいだけど……大丈夫だよね?」
「さっき、味見して貰ったけど美味しいって言ってたわ! 肉厚!」
「そっかあ。わたしも嫌いじゃないけどそんなには要らないよすぺしゃるとか絶対いらないよ。そもそも殻食べるのわたしくらいだし。中身も美味しいけどきれーな殻もおいしーのですバリバリ」
「リュカァ! なんか変な煙出てる! ゆえ! 殻は後であげるから今は大人しくしてなさい!」
 勢い良く指差す鈴花に先程までクワルバルツ達が食べて居たデザストルマイマイトカゲの殻の部分をばりばりと囓りながら月瑠は笑う。
「うーん、仕方がないから普通のすぺしゃる(バーベキュー)にしておくね。花丸ちゃん、サクラちゃん、鈴花さんが責任を取るからヨシ!」
「どうして!?」
 花丸が叫んだ。サクラは「スティアちゃん! こら!」とその肩を掴む。デザストルマイマイトカゲを両手に持っている琉珂は「皆味見しましょうよ」と下拵えを始めた。
「デザストルマイマイトカゲ、美味しいの? ホントに?」
「ああ。目玉や脳味噌を好む者も居るらしい」
「……」
 アウラスカルトをまじまじと見てからセララは小さく息を吐いた。
「じゃあちょっとだけ。丸ごとは厳しいけど、尻尾の所なら食べやすいかも。良く焼いて、バーベキューの串に刺して……」
 準備をするセララにアウラスカルトは「美味だぞ」と頷いている。よく見ればクワルバルツも同意しているようだ。
「デザストルマイマイトカゲはうまいって言われても、このいかつい見た目を食べるのはしにゃ嫌なんですけど……」
「素材の味が一番だ。喰ってみろ」
 アウラスカルトが勢い良くしにゃこの口へと突っ込んだ。
「まっ、まって、無理ですってアウラちゃ――あああ、もしかしてさっきのこと怒ってモゴモゴちょっとした美少女ークで、むぐぇーー! ちょ!!」
「……良い味だぞ」
 勢い良く口の中へと突っ込まれていくデザストルマイマイトカゲ。しにゃこの命の危機を感じてから鈴花は「ちゃんと味付けするから貸しなさい!」と調理する為にデザストルマイマイトカゲを両手に握り込む。
「いつもはしにゃが押す側なのにパワーキャラ多すぎてしにゃが押される! ジェックさんも押されてますね…同じ一般美少女枠で親近感です」
「……え?」
「え?」
 ジェックが今何を云ったのと言いたげな顔をした。食べ物を粗末に出来ないジェックに気付いたのかサクラはゆっくりと立ち上がる。
 鈴花を真似て殻から引っこ抜いたスティアは「亜竜種だと歯が固いのかな? 殻も食べれるって不思議だよね」と呟く。
「人によるかも。私は尖った牙をしてるから一応食べれるけど月瑠ほどじゃないわ」
「へー……」
 ジェックの皿が空いたことに気付いて『ながら作業』で料理のおかわりを入れるスティアにジェックが「どうして……」と萎れた表情を見せた。
「もぐもぐ。美味しい……かも? これが覇竜の食事なんだね。異文化交流って感じ。覇竜はワイルド!
 味付けするとどんな風になるのかな? アウラちゃんも食べてみようよ!」
「ああ」
 頷いたアウラスカルトを見てからセララは楽しみだねと微笑んだ。
「りーんりーんおにくまだー? あとさとちょーがマイマイトカゲで何かしようとしてるよー
 クワルバルツおねーさんは取りづらいだろうし欲しいものとってあげるね! おにくとおにくとおにく!」
「肉ばかりだが」
 クワルバルツが呟けば月瑠は「ほら、見て見て、センパイが何かしてる」とマシュマロを焼いているセララを眺める。
 二人が物珍しそうに眺めて居ることに気付いてからセララは「じゃーん!」とマシュマロを掲げて見せた。
「バーベキューだしマシュマロを焼いてみたのだ! 甘くて美味しいよ! はい、アウラちゃん。あーんして、あーん」
「ああ……ん、甘い」
「だよね」
 ドーナツは焼けないからねと笑ったセララにアウラスカルトはこくりと頷いた。とろとろのマシュマロはサクラが「クラッカーとかに乗せる?」と差し出してくれる。
(ハッ……アウラちゃんの機嫌が直ってる?)
 ここぞと言わんばかりにしにゃこは「メロン持ってきました! ジュースもあります!」とご機嫌取りのおもてなしに徹していたのであった。
「ところでスティアちゃん……いつも沢山作って私達だけに食べさせるの、不公平だよね……?
 食べ物を残して粗末にするなんて聖職者の道に反するよね!!
 鈴花ちゃん、スティアちゃんを確保ーー! さぁ、美味しい美味しいデザストルマイマイトカゲをご賞味なさい!」
「アッ、ま待って! ちょっと――!?」
 慌てるスティアに「美味しいわよ」と勢い良く琉珂が飛び込んでくる。デザストルマイマイトカゲだろうがワイバーンだろうが何だって食べれてしまう里長。食材の乏しい覇竜領域ではそうした生物でも食することに抵抗がない者がちらほら居るのである。琉珂はその筆頭なのだろう。
「うーん、向こうでデザストルマイマイトカゲの乱が起きてるけどわたしたちはこっちでおにく食べてよー」
 クワルバルツはそそくさとデザストルマイマイトカゲを幾つか手繰り寄せてから「案外癖になる味だな」と呟いた。
 尚、鈴花が食べやすいように調理した『デザストルマイマイトカゲ』はながら作業であったスティアによってすぺしゃるにされてお持ち帰りが決定したのであった。
 鱈腹食べて、鱈腹遊んで、あとやることと言えば――
「ほら、こっちだよ!」
「そうそう。クワルバルツちゃんももっと寄って! 笑顔笑顔!」
 セララはアウラスカルトを、サクラはクワルバルツを引っ張ってくる。月瑠と鈴花の間には琉珂がいつもの通りに挟まっていた。
 aPhoneでしにゃこが撮影した写真では楽しげな夏の思い出が映し出されている。
「いやー良い青春の1ページです……死ぬほど疲れましたけど」
「楽しかったわね」
 琉珂はにんまりと微笑んでからしにゃこに撮り方を教えて欲しいと請うた。一枚だけ、少し離れた位置から撮影したそれをまじまじと見詰める。
「琉珂さん?」
「花丸さん。あのね、オジサマが見たかった景色だなって」
 竜と人が共存する――

 拝啓、オジサマへ。
 里を開いて、少しの時間。アナタが見たかった景色はこれからもっと、色鮮やかになる事でしょう。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れ様でした。はっぴーさまー!

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