PandoraPartyProject

シナリオ詳細

落日の地平線に鐘は鳴る

完了

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●Glory Days
 聖教国ネメシス。混沌にて最も白く、最も黒を憎みし国。神に捧げる純白は最も汚れやすく、闇より垂らされし異端の一滴は決して赦してはならない。我々は人類の庇護者にして魔を誅滅せし断罪の聖剣。定命の器なれど不滅の正義と信仰の炎を胸に宿す神の刃なり!

「フィルチさん、おれ絶対にフィルチさんの右腕になって見せますから」
 おれは運が良いです。おれみたいな学のない青ガキが天義聖騎士団の候補生に選ばれるなんて。おまけにフィルチさんはその中でもエリート中のエリートで魔法剣士……魔なんて言葉つかっちゃ駄目ですね、パラディンですよね。パラディンで直々に弟子を取りたいとおれたちの村を訪ねて来た時に思ったんです。おれはフィルチさんみたいになりたいって。

 フィルチさん、おれにはルークとサリアって幼馴染がいるんです。ルークは頭が良くて、将来絶対フォン・ルーベルグで働くと思います。サリアも村一番に明るくて元気な女で、ありゃあ良い女房になると思いますよ。ええと、なんだったかな、おれはそんな二人に肩を並べる存在になりたかったんです。あいつら驚くだろうな、イモ育てるくらいしかできなかったおれが天義聖騎士団のパラディンに選ばれたなんて。

 フィルチさん、極秘の任務ってのはおれ頭悪いんでわからないんですけど村を出るの、思ったより急でしたね。すぐ戻って来れるといっても、ルークの野郎はともかくサリアには声をかけておきたかったな。いけねぇ、パラディンにスケベな心は不要ですよね。それにしてもフィルチさんの連れの人たちって陰気臭いなぁ。光の司祭ってより、ちょっと失礼だけどカルティストみたいだよ。黙っとくけどさ。

 フィルチさん、それじゃ洗礼の儀式とかいうの始めちゃってください。この魔法陣に立っとけば良いんですよね。気が早いんですけど、おれの武器は聖剣が良いなあ。憧れなんですよ、闇を斬り裂く希望の光とか言っちゃって。マントは獅子と剣のエンブレムで……フィルチさん聞いてます?まあ良いけど。俺の栄光の日々はここから始まるんだ。

●Executioner
「カロンちゃんよぉ。本日のお仕事はあの息苦しい国からね」
 カロン=エスキベルは本日も他人事である。息苦しいと聞いて思い浮かべる国を特異運命座標にアンケートでも行うとそれなりに偏るのではないだろうか。天義から届いた依頼書を退屈そうに読み上げる。

「依頼主はルーク・ヴィッカーズとサリア・エルウィン。聞いたこともないから天義の平民でしょうね。近々、村で結婚式をあげるのだけど近辺でオーガの目撃情報があって縁起が悪いので討伐して欲しいですって。オーガってのは簡単に言うと筋肉バカマッチョで醜い人型モンスターの事よ」
 カロンはシンプルな仕事内容に説明の不足がないか依頼書の表裏を確かめたり、透かしてみたりと冗談のような仕草を何度か行った後、話を続けた。
「あと別にローレットは人情とかで動いてるワケじゃないんだけど、依頼主の友人コーネリアス・スパークスが行方不明になっていて、オーガに襲われたのかも知れないって心配してるわ。これはろくな証拠もない話なので依頼としては届け出てないみたい。ともあれ、安心できる結婚式をあげたいそうよ」

 コーネリアスの捜索自体は正式に届けられた仕事内容でないのでやってる感を出しておけば問題ないだろう、とカロンは付け加え、説明で乾いた口を紅茶で潤した。

NMコメント

ねこくんです。よろしくお願いします。

●状況説明
イレギュラーズは邪悪な人食いオーガの住む洞窟にたどり着きました。
洞窟は広く明るく、ロケーションへの対策は特に要りません。天義に巣食う悪しきモンスターを誅滅して下さい。

●目標
【必須】人食いオーガの討伐
【任意】必須目標を妨げない行動

●敵
・人食いオーガ
2mほどの筋肉質な人型モンスターです。
強力なフィジカルを持っていますが、知性に乏しい単調な攻撃からほとんどの武芸者は強敵として認識していません。ですが一般人にとってその肉食性は恐怖の対象であり、忌むべき存在です。


●サンプルプレイング
オーガだって!僕たちの力なら楽勝だと思うけど、念には念を入れていくよ!
後衛の仲間の方に攻撃されないよう、マークを駆使して前進を阻止しながら攻撃するよ!

コーネリアスは本当に襲われたのかな?
オーガも骨までは食べないと思うし、洞窟を探してみようかな

  • 落日の地平線に鐘は鳴る完了
  • ハレルヤ!ハレルヤ!ハレルヤ!
  • NM名ねこくん
  • 種別カジュアル
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年08月15日 22時05分
  • 参加人数6/6人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(6人)

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
ペッカート・D・パッツィーア(p3p005201)
極夜
襞々 もつ(p3p007352)
ザクロ
フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)
挫けぬ笑顔
クアトロ・フォルマッジ(p3p009684)
葡萄の沼の探求者
玄野 壱和(p3p010806)
ねこ

リプレイ

●カーペットさん
 村外れにある洞窟は子供の遊び場としても大人の肝試しとしても使えない規模であり、また村の外れという距離感も正しいとは言い難い所謂不人気なスポットである。好奇心旺盛な子供ですら寄り付かなくなり、いずれ完全に忘れ去られてしまう事となるだろう。しかしながら今日に至ってはイレギュラーズの足跡が刻まれる。
 『極夜』ペッカート・D・パッツィーア(p3p005201)は依頼の届いた村で足を使った調査を行っていたが、広場に座っていた老夫婦にカーペットだのペリカンだのと呼び間違えられた挙げ句、子供たちによって瞬く間にその名が広まった事に憤慨していた。かくしてカーペットさんはコーネリアスの家を訪れる事になったのだが、そこでの収穫は騎士に憧れる少年の描いたスケッチと、想像力に任せた天義聖騎士団での計画が書き連なる恥ずかしい走り書きが残されている程度であった。
 『挫けぬ笑顔』フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)もペッカートと行動を共にし、コーネリアスの家に逃げ込んだペッカートの代わりに村人への聞き込みを行っていた。有力な情報は得られなかったが、時期的にどうしてもオーガと関連付けて考えてしまう自分たちのネガティブな感情を恥じているようでもあった。関わりの少ない者であっても同じ村の人間であるからには無事を願っているのだろう。
「ふう、村の陰謀とかそういうのはないみたいだね。ペッカートさんそれは?」
「寿司。食うか?」

●グルメさん
「大自然の 掟とは 捕食者と被食者の 知恵くらべ。きょうまで その戦いを 生き抜いてきた 経験はここでも きっと 役だちますの。そう… あいてが 食いしん坊ならば!」
『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)が被食者の意地を見せている。彼女を喰らえる敵など早々いないのだが、その被食者は満身なき心構えによって生き抜いてきた。人食いという表現を食いしん坊と捉えるその言い回しはいくらかイレギュラーズの緊張をほぐした。
 食いしん坊は何もオーガだけではない。即ち、『同一奇譚』襞々 もつ(p3p007352)と『惑わす怪猫』玄野 壱和(p3p010806)の双璧である。口を開けばおにく、何かを語ればニクと人食いオーガの食という部分だけに反応して飛び込んできたようなコンビの混沌たるフードトークは『葡萄の沼の探求者』クアトロ・フォルマッジ(p3p009684)の頭を大いに抱えさせた。クアトロにしてもピザの調理には自信があり、今回もその腕を振るう事となったがこの二人は食に対する想いが何か違う。そんな直感があった。
「オーガのおにくって美味しいでしょうか」
「人型だからナ。内部構造も分かりやすいし調理も楽だゼ♪」
 フォルトゥナリアは場合によってはノリアを守る必要があるかもしれないと思ったが、流石にイレギュラーズの共食いはないだろうと黙っておいた。無論、ノリアもその底なしな食欲の視線を感じ取っていた。

●オーガさん
 食に関する話がアナゴのシーフードピザにまで発展する頃、難なくオーガは見つかった。洞窟の奥地でお約束のように佇むその姿を見たペッカートはインターネッツのコンピュータ・RPGみたいだなと思い出し笑いをこぼす。玄野ともつの興奮は最高潮に達し捕食者に囲まれるノリア、アナゴピザの難題に苦しむクアトロと異様な風景のもとフォルトゥナリアは戦いに備えた。
「喰うっつー事は喰われる覚悟があるって事だよナァ!?」
「はいですの! 食われるには良い日ですの!」
 絶妙に噛み合っていないチームはまずノリアがオーガに飛び出していく事によって戦闘態勢へと入った。小汚い洞窟の中でぴちぴちのゼラチンが跳ね回るのだからオーガはその異質さに後ずさりしたが、すぐに殴りかかった。最も耐久力に優れているものが先陣を切る理想的な展開であり、もつやクアトロもそのフロントラインの恩恵を最大限に利用していた。
「でも、自分から塩まで振ることはないんじゃないかしら……」
「何を言っているんですか!? ホイップクリームと塩は甘みと塩っぱさが織りなすハーモニーのカーニバルです!ええ!ゲテモノに思えるかもしれませんがそれは人類の思い込みであり私にかかれば塩クリー」
 塩クリーのあたりでペッカートは会話を遮断する事にした。頭がおかしくなる。ペッカートは次々と闇の魔術を駆使してオーガを弱らせていく。単純に考えればオーガはコーネリアスを食ったわけで、コーネリアスを食ったオーガを食うイレギュラーズという構図は何か人道的な面からも、情報収集といった面からも乗り気にはなれなかった。

(あれはやっぱり、コーネリアスさんの服なのかな……?)
 フォルトゥナリアは塩アナゴの頑強な肌に一応の治癒魔術を飛ばしながらオーガを観察する。薄汚れた布地が付着しているが、村人の服は意匠を凝らしたものではなく確信は持てなかった。最悪の結末を想像してしまうが今はあれこれと考えている場合ではないかもしれない。ペッカートと目が合ったが彼も何かしら考えを組み立てているのだろう。互いに想像の域を越えない推測は頭の片隅へと追いやり、ノリア、もつ、玄野の連合軍の方へと視線を切った。
「あー、知性に乏しいって話は本当らしいナ。動きが単調。実力の差もわからなイ。……頭が高けぇんだヨ。身の程を知レ。劣等種風情ガ。」
 自ら攻撃を受けるノリアは別として、オーガの拳は空を切るばかりであった。同じような攻防が続いた後、玄野は身構える事も面倒になり鉤爪を展開する。治癒を行うまでもない相手に僅かながらも本気になっていた事に苛立った。残虐な傷を残す爪の線が次々とオーガに刻まれる。
「おにく! 実に固そうなおにくですが私はもう我慢できません!」
 オーガという肉を切り分ける鉤爪に興奮したのか、もつが理性を放棄して飛び込む。ノリアを先頭にある程度規則正しいピラミッド陣形を維持していたイレギュラーズはここで混沌を極めた。このまま押し切れれば話も早いのだがまぐれ当たりで殴り飛ばされては敵わない。クアトロは特に慎重な立ち位置をキープして毒の魔石をオーガに撃ち込んでいた。

「おさしみを 忘れてはいけませんの!」
迸る肉ブームにやきもちを焼いたのかは定かではないが、ノリアの跳ねっぷりも最高潮に達しようとしていた。オーガにしても凶悪なねこに肉フィリアを相手にしているのだからノリアばかりに構ってもいられない。親に無視される駄々っ子のような状態になっている。
 ペッカートはこの後の調査の為にも食欲旺盛な二人を制止する為にも前衛を位置取り、渾身の力でオーガを打ちのめした。
「君達は本当にあの見るからに不味そうな肉を食べる気なのか? 魂は悲劇味で美味そうだけどよ、ちょっとだけ待っといてくれよ。クアトロもフォルトゥナリアも調査してぇみたいだし」
 倒れたオーガに玄野ともつは飛びかかるが、ペッカートに返答するだけの呼吸を残すくらいには攻撃の手は緩いものであった。
「オレは食えれば何でも良いゼ♪ 解体するのも忙しいからさっさとして欲しいけどナ」
「ううう先に前菜を頂いておきます!お魚もいい感じに塩味が効いてきてるでしょう!」
 絶対ろくな返事をかえさないと踏んでいたペッカートは適当な相槌を打った。もつがベーコンだかクリームだかよくわからないものでよくわからない攻撃を繰り出し、よくわからないうちにオーガは息絶えた。クアトロの仕込み続けた毒が主な死因だったようにも思える。

●コーネリアスさん
 早くしろよナと玄野はもつとノリアを連れて散歩を始めた。ぎりぎり対話できる相手だったとフォルトゥナリアは胸をなでおろし、今回の真面目枠3人はオーガの検死を始める。ノリアが洞窟の奥であの二人に食われないか少しだけ不謹慎な妄想が走ってしまったが。
 ペッカートが嫌々ながらオーガの額に触れ、クアトロとフォルトゥナリアは左右の手を握り、些細な反応でも見逃さないよう霊魂との交信を試みた。浮かび上がる断片的な記憶を各々が照らし合わせ、内容を精査する。地道な作業であったが下調べを行っていた甲斐もあり、想像しうる最も陰惨なストーリーに、パズルのピースがはまっていった。
「これは……。コーネリアスさんに関する事実は可能な限り伏せておいた方が良さそうよね……」
「食われたって事にしとくのか?俺はこの布切れだけでも形見として回収するべきだと思ったが」
「結婚式もあるみたいだからね。日を置いて村長さんにお願いするのが、気持ち的にも良いかもしれない」
 真実は時として人を傷つける。カルト集団の実験台にされたコーネリアスの話題など、前を向いて進もうとする村に持ち込むものではないのかもしれない。しかし完全に隠蔽するとしても同様の事件が起きた場合に良心の呵責に苦しむ事になるだろう。対策を講じる意味でも、村長にだけは話しておかなければ。
「損な役回りだけど、それが村長ってものよね」

 玄野たちがしびれを切らして戻ってきた。フォルトゥナリアはどうしたものか言葉に悩み、玄野もまた話の進展を感じ取っていたがそれをどうするかは些細な事であった。ペッカートとしてはこれから始まるランチタイムは受け入れ難いものであったが、ここでオーガの肉を腐らせてしまうのも何の供養にもならないだろうと無理やり納得し、食いしん坊たちの栄養になる方がまだ救いがあるとそこで考えることをやめた。どうせ何を言ってもこいつらは食うのだ。
「いーと あ みーと!!」

「ところでお前ら、全く別の話になるが「果実魚」って知ってるカ?ノリアが知ってるかどうかは知らねぇガ、最近"海洋"の方で研究が進められている代物なんだがナ。なんでも養殖魚の餌に果実を混ぜると身が果実の風味になるって話なんだそうダ。話を戻すが、コイツ今まで何喰って生きてタ?オレ考えたんだけどサ。■を食ってたモンスターの肉は■肉に近いって言えるんじゃねーかナー」
 玄野が頬を肉塊で汚しながら語り始める。クアトロは得体の知れない肉の味や性質についてはノーコメントを貫いたが、何を食べてこのオーガが生きてきたのかは興味深いものであった。微量に残るコーネリアスの意識のもと本当に人を食べていたのだろうか?オーガの攻撃は力強いものであったが、これほど簡単に手玉に取れるものだろうか。コーネリアスはすんでの所で踏み止まり、空腹に飢えながら化け物へと変貌する自身を律していたのかもしれない。霊魂はもはや何も語らないが、クアトロはそう思いたかった。
「本当におバカさん。我慢できたぶん、来世ではピザをたくさん食べなさい?」
「おさかなも 食べなきゃ だめですの」
 ノリアはもつからお裾分けされるオーガ肉を必死に食い止めながらコーネリアスを憐れむ。フードファイター連合軍に属する形となっていたが彼女は彼女で常識的な思考を持ち、この場の空気と依頼の事件性から本質を見抜いていた。
「オレも骨までは食わねえから何かに使うなら好きにしていいゼ」
 玄野は玄野なりに気を回したが、もつの提案する骨を出汁にしたオーガスープについてはペッカートとフォルトゥナリアが却下した。玄野はオーガスープに興味と未練が残るようであったが分が悪いので静観し、目先の肉に飛びつく事とした。
「骨を埋めるとは! ここを余すことなく利用するのがグルメというものですよ! きええ」

●新婚さん
 のどかな農村に幸せの鐘が鳴り響く。式典の作法など身に付いていない農民たちの、自己流で大らかな祭は夕暮れまで続き地面をエールビールで濡らし、ピザや寿司、ホイップクリームと持ち込まれた品々は村一番のご馳走として喜ばれた。ぷるぷるのアナゴも熱狂的な村人に担ぎ上げられ、窮地に瀕したが空中を泳ぎ脱出する事となった。カーペット君も子供たちに熱烈な歓迎を受け、簡素な遊びに付き合わされる事となる。
 ルーク・ヴィッカーズとサリア・エルウィンの両名は結ばれる。式の場に仲の良かった青年の姿はないが、ルークとサリアはそこに触れる事はなかった。鐘が鳴り続ける。新郎と新婦を祝う鐘音はあの洞窟にまで届くだろうか。村人の声が届かない場所で聴こえるそれは出席する事が叶わなかったコーネリアスへの弔い、鎮魂の音のようにフォルトゥナリアは感じた。

 鐘が、鳴り続ける。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

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