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シナリオ詳細

<泡渦カタラータ>千手の呪い

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


●これまでのあらすじ
 幻想楽団『シルク・ド・マントゥール』の大討伐を行い、中心人物の討伐を果したギルド・ローレット。
 しかし、その討伐を逃げ延びた魔種が拠点を海洋に移し首都リッツパーク近海に大渦を発生させているという事が判明していた。
 これまで、調査・対応依頼を行ってきたイレギュラーズの成果により練達の研究者『佐伯・操』に渦への調査データと渦へ乗り込むための装置の使用許可を得ることができた。
 放置していれば、渦周辺に見られる魔種の動きが活発化していく。
 ローレットとも懇意にしている海洋の女王イザベラと貴族代表のソルベ・ジェラート・コンテュール卿は大渦への対処を直々に依頼してきた。
 このまま放置して居れば『原罪の呼び声』の影響を受け海洋自身が脅かされる。
 渦の中は未だ謎が多い。しかし、この儘、海上へと姿を現す魔種の討伐を行っているだけではラチが開かない。
 練達特製装置を使用して、大渦の中へと乗り込み、渦を発生させてる原因と内部の調査を行ってきて欲しい!

●今はもう朽ちたその町
「その渦の底なんだけどね、どうやら古代都市があるそうなんだ。そこにサーカスより逃げ延びた『チェネレントラ』と死体漁りを行っている『ヴィマル』という魔種が巣食っているらしい」
『黒猫の』ショウ(p3n000005)はそう言った。
「といっても相手は水中、生身じゃたどりつくことすら難しい。だから、渦の中でも自由に息をする事が出来る装置を練達に依頼したんだ。それがこの『海中戦闘用スーツ・ナウス』だ。水中でも気兼ねなく戦ってきて欲しい」
 ごとりと机へ置かれたスーツ。海種ほどではないにしろ、水中で思うがままに動けそうだ。
「君たちには水没都市へ先行して、後続の調査隊の露払いをしてもらう。
 具体的にはコープスを3体倒してほしい。
 ゾンビが絡み合って5メートルほどの芋虫状になった魔物がコープスだ。これが3体いる。彼らは生きている人間を見つけると自分たちの仲間にしようとあらゆる方法で取り込もうとしてくるから注意してくれ。
 戦い方としては、泥臭いが範囲攻撃で削ぎ落としていくしかないだろうね。これといった弱点がない上に、相手はゾンビの塊だ。とにかくタフで、一匹一匹が動いているものだから攻撃回数も多い。すこしばかりめんどくさい相手だけれど、倒せない相手じゃない」
 ましてや君たちならね。と、ショウはウインクした。

GMコメント

コープス
 ゾンビどうしがわちゃわちゃからみあってできた団子虫みたいな敵です。
 団子虫と違うのは非常に好戦的だということです。
 HP、防御技術が高いですが回避は低いです。
 特筆すべきはEXA値の高さ。複数回攻撃を覚悟してください。

押しつぶし
 自らの重量を利用し、押しつぶそうとする 物近単 毒付与

取り込み
 死体の手が次々と伸び、触れた者を抱擁して身動きできなくさせようとする 物近扇 乱れ付与

射出
 自分たちの体の一部を弾丸のように射出する 物遠貫 麻痺付与

ようこそこんばんは、みどりです。
ゾンビたちは古代の住人であるやもしれません。
それと対峙するあなたは何を想うのでしょうか。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • <泡渦カタラータ>千手の呪い完了
  • GM名赤白みどり
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年10月23日 21時55分
  • 参加人数10/10人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)
共にあれ
善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)
レジーナ・カームバンクル
イシュトカ=オリフィチエ(p3p001275)
世界の広さを識る者
祈祷 琴音(p3p001363)
特異運命座標
ボルカノ=マルゴット(p3p001688)
ぽやぽや竜人
ヒィロ=エヒト(p3p002503)
咲く笑顔
クローネ・グラウヴォルケ(p3p002573)
幻灯グレイ
ルチアーノ・グレコ(p3p004260)
Calm Bringer
アニーヤ・マルコフスカヤ(p3p006056)
鋼鉄の村娘
サイモン レクター(p3p006329)
吸血鬼を狩る吸血鬼

リプレイ


 海の底の都というものは、静かで神秘的なところだと思っていた。
 しかし実際には大渦の轟音が鳴り響き、かきまわされた塩水がゆらゆらと視界を揺らし、海藻が建物の輪郭をぼやけさせる。暗く冷たいその場所は、死の都と呼んでも構わない気がした。
 海種である『大いなる者』デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)でさえも、水の流れがなんとなく居心地悪い。
「そろそろ交戦区域じゃのう」
 彼女はハンドサインで『止まれ』と形作り、案内していた皆の足を止めた。ここから先は何が起こるかわからない。ゆえにお互いの意思疎通がすみやかかつ正確に行われるよう、『レジーナ・カームバンクル』善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)のハイテレパスを頼りにする予定だ。この深い海の底では会話をしようにも一苦労だ。念話を鍵にするとは見事な采配だった。デイジーはそっと手を組み合わせ、レジーナへ伝えた。
(……ますか、聞こえ……ます…か。今日の……晩…ご飯は…ス…テーキとか……が良い……のじゃー)
 すぐにレジーナから反応がくる。クリアで明確な音声が頭蓋に伝わった。
「それ、みんなに伝えること?」
「む、遊んでいるわけではないぞ。出発前にちゃんと出来るか練習なのじゃ」
「ならいいけど」
 ハイテレパスによる交信は順調なようだ。以下の会話はすべてハイテレパスで通信されたものである。
 誰もいない長屋が続くなか、ぽつんと取り残されたような井戸が物悲しさを醸し出していた。どれも在りし日には人が集まり、喧騒に包まれていたのだろう。
「ゾンビの塊がそのまま強大なアンデッドになるなんてゾッとしないわね。それにしても海中か……。今回は装備があるとは言え、海底に沈められた記憶が疼くわね……」
 そうレジーナは独り言をいいながら、名も知らない小魚をクラフトした。小魚を先行させ、左の目で感覚を共有し、二重の視界を器用に使い分けながら彼女は進む。
「水の中でも自由に動ける装備なんてのがあるのか、流石ローレットだな。水中にはいるのも初体験だぜ……流水ってレベルじゃねー戦場で戦うハメになるとは人生わからんもんよのう」
『吸血鬼を狩る吸血鬼』サイモン レクター(p3p006329)はそう言って何度もうなずいた。
「その海の底にゾンビの塊が……。本当に人生何があるかわかりませんね」
『鋼鉄の村娘』アニーヤ・マルコフスカヤ(p3p006056)がためいきをつく。そんな彼女を励ますようにサイモンは言った。
「さて、それじゃゾンビ退治頑張るとすっかね、群体相手は面倒だが地道に削ればなんとかなるだろう。ま、気楽にいこうぜ!」
「だよね! こんなハイテク装備用意してもらったんだもん。絶対期待に応えなくちゃ! 敵強そうだけど力を合わせて頑張ろ!」
『夢見る狐子』ヒィロ=エヒト(p3p002503)が飛び上がらんばかりの勢いで気合を入れる。
 それを見ていた『メルティビター』ルチアーノ・グレコ(p3p004260)はマスクの下でふふりと笑った。
「これは凄いものだね。水圧も緩和されてまるで感じない。常備したいくらいだよ。それにしてもゾンビと海の掛け合わせって、なかなか素敵なホラーだね。僕達も彼らの一員にならないよう、まずはきっちり討伐しないとね」
「そうじゃそうじゃ」
 同意したデイジーがくるりと輪を描く。その時、レジーナがぴたりと止まった。
「対象を発見。1体。約50m先の広場」
 皆の間に緊張が走る。見ればたしかに正面の広場へデカブツがごろりと転がっている。芋虫だの団子虫だの言われていたが、こうして深海の底で見ればなんとなくナマコに見えなくもない。
「あれがコープスかぁ。はぁ、きもい魔物ねぇ。死体の有効利用なのかもしれないけれど、趣味悪いわぁ。さっさと倒して地上で一杯やりたいわぁ。残りの2体はぁ?」
 『とにかく酒が飲みたい』祈祷 琴音(p3p001363)が間延びした声で聞いてくる。
「影が多くてわからない。近くにいるとは思うけれど……あ」
 レジーナは見た。それは長屋の壁を崩し、死体を喰らってさらに膨れ上がっていた。何千もの手が水をかき、その倍の目がぎょろりと動いた。あるゾンビは悲嘆の声を上げ、あるゾンビは憎悪にくれ、それぞれがバラバラに、思うがままに動いた結果の混沌の塊。コープス。
「うぎゃーー! 怖い!ここまでくるまでいろいろ頑張ったけど! 芋虫状にゾンビが絡み合った怪物とか! 怖いに決まってるのであるが!! ホンモノを見ると輪をかけて怖いである!! やだー! でもこんなの放置しておけないであるし……! がんばる!」
『ぽやぽや竜人』ボルカノ=マルゴット(p3p001688)が2~3歩あとずさる。しかしそこはアイドルの矜持か。涙目ながらも再び前へ踏み出す。
「助け合うことも解り合うこともなく単に絡まりもつれ合い、癒えることのない渇望を抱えて誰一人も満たされない……。こんなものを産み出す神や法則があったなら、悪趣味にも程がある」
『世界の広さを識る者』イシュトカ=オリフィチエ(p3p001275)が顔をしかめた。彼は正確にコープスの本質を見抜いていた。デイジーが戦闘の予感に高揚しくるくると回る。彼女の周りには小さな波がダンスしていた。
「おお、出たのう。ゾンビのダンゴムシ、これがウォーカーどもの噂に聞くムカデ人間と言うやつなのかの
む、違う? まあよい。これが古代の住人と言うのであれば、静かな眠りを邪魔されて激オコじゃろうからの
ゆっくり眠りにつけるようさっさと倒してしまうのじゃ」
「対象は3、みんな。攻撃準備を。今ならまだ気づかれていない」
 レジーナの言葉に全員が武器をとる。
『傷だらけのコンダクター』クローネ・グラウヴォルケ(p3p002573)は長い長い溜息をこぼした。
「……下手な噂になる前に死んだ者はさっさと眠るべきッスよ……あれか、渦の底じゃ騒がしくて眠れもしないかね……」
 光る鱗粉が彼女の両手へ集積し、巨大な戦斧に変わる。近接用魔術兵装、フォトンブレイクだ。
「……あぁ、恨んでくれるな、こっちは一応アンタらを助けるつもりで来てんッスから……。……尤も、聖人サマじゃあないんで優しくなんて出来ませんがね」
 タン。
 彼女が海底を踏み、走り出す。
 それを機会にイレギュラーズたちは一斉に動き出した。


「しくじるなよヒィロ!」
「わかってるよサイモン!」
 それぞれ得意の距離で足を止め、進んでいく前衛たちを鼓舞する。
 ひきつけ役へ名乗り出たヒィロがコープスと対峙する。
「うわぁ……こうなってしまうと哀れな気もするね。だけど、ここから先は一歩も通さない! ボクが相手だよ!」
 不可視の網がコープスになげかけられ、幾百もの意識を怒りに染めていく。3体の内、1体がヒィロへむかって突進した。
「あだだだだあだだだだだ」
 たぶん通常攻撃なのだろう千手ビンタを受けて見る間に体力が減っていく。だが我慢のしどころ。なんとかやりすごすヒィロ。
 琴音が前へ出て酒瓶を取り出した。相手はヒィロにとりついたのを含めて3体。すべてレンジの中に入っている。
「イッツ・ショータイムよぉ!」
 と、酒瓶の蓋を開けた琴音。そのまま動かなくなる。もしかして、とイシュトカは呟いた。
「飲めないんじゃないかい?」
 琴音がびくりと動く。
『海中戦闘用スーツ・ナウス』は全身を覆う仕様だ。そして琴音のスキルは、怒涛飲酒、自身が酒を飲む姿を晒して相手へ怒りを付与する。だがスーツに阻まれて酒を飲むことができない、つまりスキルを発動させることができない。仮にマスクをはずしても海水がだばだば入り込んでくる。飲みたい、だが飲めない。
 どうするつもりかと仲間が見守るなか。凍りついたように立っていた琴音が急に振り返って指さした。
「ボルカノ君、君に決めた!」
「や、やー! たしかに囮役として控えていたけれど、怖いであるー!」
「大丈夫、私もサポートするから!」
「うう、やらなければならないであるか……」
 ボルカノはオーラソードを抜き、コープスへ挑発するように突きつけた。
「や、やーいやーい絡み合わないとただのゾンビの達のくせに絡まってるせいで気が大きくなってー!」
 挑発だかなんだかよくわからないことになっているぞ。声がプルプル震えている。がんばれボルカノ! と違う意味でみんなの心がひとつになる。
 怒り心頭に達したコープスが一体、ボルカノへ向かっていく。
「わ、わあああああ。こっちくんな! 来ちゃダメである!」
 いくら竜鱗光で包まれていようと5mものデカブツが迫ってくるのは普通に怖い。しかもその相手は自分なのだ。水をかき、思ったよりもすばやく移動してきたコープスが壁にぶつかったようにぴたりと止まる。ボルカノのマークだ。後退以外の動きを封じられたコープスが悪あがきをする。
 そこへヒィロが割こんできた。二頭のコープスが重なるようにひらりと身をひねる。スーツの下の体には無数の手形がついていた。
「まったくやってくれちゃってさ、でもこれで少しはお返しができるかな?」
 ヒィロが不敵に目を光らせる。ひきつけ役が足止めをしたところで、範囲攻撃で焼き切る。それがイレギュラーズたちの作戦。ストレートだがスマートな戦法だ。
 レジーナがひたりと二体のコープスへ指先を突きつける。
「総員攻撃!」
 クローネが反応して戦斧を高くかかげた。
「……纏めて腐らして崩すのが手っ取り早い……」
 二体のコープスを包むように土気色のガスがあふれだしていく。ヴェノムクラウドの猛毒ガスだ。味方を巻き込まないように調整されたそれはゾンビたちだけを包み込み、その表面を傷つけていく。火傷のようなあとが次々と。中には表皮が溶けてズルムケになった者までいる。
「GO! SADボマー! GO!」
 おもちゃの自動車が走っていき、爆発が起きた。水草が薙ぎ払われ、衝撃波が水をかき乱す。コープスの一角、焦げたゾンビがぼとぼととこぼれた。もう動かないところを見ると必殺が効いたのだろう。ともすればすぐに蘇るゾンビにとって脅威といえる攻撃だった。
「こいつはいいぜ。どんどんぶちこんでやるから覚悟しろ!」
 サイモンが魔力を凝集させ、次のボマーを召喚する。
「ヒィロ、大丈夫? 治せるうちに治しておくわ」
 レジーナはヒィロへ向かって手をかざした。ヒールオーダーの塔が現れ、ヒィロの傷が癒えていく。塔はヒィロを癒やし終わるとごぼごぼと土の中へ消えていった。
「ありがとーレジーナさん! ボク、がんばるよー!」
 ヒィロが片手をあげてレジーナへ応える。そんなヒィロへ影が迫る。幾本もの腕が伸び、彼女をつかもうとする。その腕のひとつが弾けた。手首から先がなくなり、どろりとにごった血があたりへひろがっていく。
「死角はありません」
 デザートイーグルのスコープをのぞきながら、アニーヤはそう言った。自分の気をためるアニーヤ。デザートイーグルへ注ぎ込むアニーヤ。放たれる弾丸。弾けるゾンビの手。見守る子ロリババア。フリーオフェンスで自らを強化した彼女に敵はいない。しかし。
 ドシュ!
 水中でもわかるほどの音をたてて何かが飛んできた。かろうじて身をかわしたアニーヤは、それがゾンビの目玉だと気づいた。きときととあたりを見回す目玉を踏みつけると、ぶちりといやな感触がした。
「今のが当たったらと思うと、恐ろしいですね……」
 水中でも音が聞こえてきたということは、相当な速度だ。スーツに穴が空いたらとおもうとぞっとした。水面は遥か彼方にあり、水圧はかなりのものだ。スーツを失えば、海種以外は行動を封じられかねない。短期決戦に賭けるしかない。
「そのためにも僕の役目は、ひたすら攻撃すること! いくよ、制圧攻撃!」
 ルチアーノが腕を振り下ろすと、彼の上空がどんよりと濁り、そこからゆっくりと偉容が姿を表した。異世界から召喚された爆撃機が、ルチアーノの号令にあわせて猛威を振るう。その進路一面が攻撃範囲となる爆撃機は、二体のコープスへ爆弾の衝撃波を雨あられと降らした。コープスが弾け飛び、ごっそりと削られる。
「Grrrrrrrrrraaaaaaaaaa!」
 まさに身をちぎるような痛みがコープスを襲っているのか、それとも単に攻撃されて怒っているのか。それはコープスにしかわからない。だがすさまじいダメージを与えたのは確かだ。
 イシュトカは祝福のささやきをルチアーノへ施し、広場の方を見て顔をしかめた。
「まずいな。残りの一体が、こちらへ向かっている……」
 前衛だけで抑えきれればいいが、最悪の場合、自分が前に出て動きを抑えるか……。
 と、身構えているとちょうど3体が重なる頃合いで、3体目が動けなくなった。不可視の壁にぶつかったように同じ場所で足踏みを続けている。
「まぁ足止め役しまーすって言いだしたんだしぃ。このくらいはねぇん」
 琴音のブロックだ。
「とにかく敵を一箇所にまとめちゃえばこっちのものよぅ、みんな派手にやっちゃって!」
「くっふふー♪ ようやく妾の出番なのじゃ。水の中は妾が一番上手く動けるのじゃー。ディスペアー・ブルー!」
 デイジーがとりいだしたるはクラーク家の秘宝、絶望の青の彼方より流れ着いたとも、異なる世界より飛来したとも囁かれる非常に有り難い壺、大壺蛸天。彼女がそのうえに腰を掛けると、壺から湧くように音楽が聞こえだした。それに合わせて足取り軽く踊りながら彼女は歌う。いつもはにこやかな童でしかない彼女が、ぞっとするような色香を秘めたセイレーンへと変わる。
 ――ずず、ず、ずぞぞぞぞ!
 コープス表面のゾンビが引き剥がされていく。彼女の歌声がそのまま超音波となったかのように。その下からまたわらわらと現れるゾンビの群れ。しかしそれすら引き剥がして歌は続く。コープスは大風に吹かれた木のように全身を波打たせ、自分の尻尾を追いかける犬のように回転した。それはヒィロ、ボルカノ、琴音の3人がブロックしているからだ。コープスたちは前に進もうとするも思い通りに動けない。あがいた結果の大回転だった。
 デイジーの歌はまだ続いている。
 3体のコープスのうち、1体がとつぜんほどけた。海水に溶けたどす黒い血の痕。ほどけたゾンビはつっぷしたまま動かない。観察に徹していたイシュトカがおや、とまばたきをする。そしてレジーナへ顔を向けた。
「どうやらコープスは三分の二のゾンビを倒されると、体が維持できず崩壊してしまうようだね」
「そのようね。みんな! 作戦変更! 範囲攻撃ができるものはそのまま続けて。単体攻撃をする人は左側のコープスを狙ってちょうだい!」
 レジーナが戦況を見極め、指示を下す。ほどなくして、最後の一体のコープスも、ろくな反撃ができないまま海へ溶けていったのだった。


「さて、これで後は調査隊の結果待ちってとこか? フリータイムにしていいなら、軽くこの街まわってみていいか? なに、ほかに敵がいないか偵察かねての古代都市観光ってのもわるかねぇだろ?」
 そうサイモンがいい出した。
「え、えー? まわりぜんぶお化け屋敷みたいで怖いのである。早く太陽の下に戻りたいである」
「私も海の中は窮屈です……。スーツが不快なわけではありませんが、いろいろと水上とは勝手が違って。まあ、作戦がうまくいったのはすなおにうれしいですが」
「なんだよ、ノリ悪いな。まあ消耗してるやつもいるし、おとなしく帰るか」
 サイモンががりがりと頭をかく。その隣では琴音が地団駄踏んでいた。
「あーそれにしてもスーツのせいでお酒が飲めないのは皮肉だったわぁ。私達を守るためのスーツなのに! 飲むべきところで飲まなかったからのどが渇いて仕方ないわぁ。帰ったら飲んで飲んで飲みまくるわよぉ」
「ほどほどに、ね?」
 召喚士た冒涜的な魔物を膝の上で遊ばせながら苦笑するレジーナ。
 それにしてもとイシュトカはゾンビの山を見つめ、元凶の魔種に思いを巡らせた。
「死者に呼び声を届ける魔種、か。死後の世界に極楽浄土など期待しないが、誰にとってもこんな末路は悲惨すぎる。その魔種と戦わなければならない理由が充分に実感できたよ」
 クローネとルチアーノは死者から何かしら魔種の手がかりがないか探っていた。いたのだが……。
「どう?」
 そう問われてクローネは首を振った。そして死体の山を見上げる。
「特に手がかりらしいものはないッスね……そして、申し訳ないがこれだけの数をもう一回埋葬すんのは無理ッスよ……。上手く崩れたらいいんスけど……。悪いな、神に見放された身じゃあ手向けも出来やしないもんで……」
 それを聞いたルチアーノが動かなくなったゾンビの山の前で瞑目する。
「古代の住人か。こんな所に囚われて、今まで苦しかったのかもしれないね。せめて安らかに眠れるようクローネさんの分まで祈っておくよ」
 ルチアーノの心遣いにふっと寂しげな笑顔で返したクローネだった。
「このゾンビ、古代の人達の成れの果てなのかな? 死んじゃった後も死ねなかったなんて、可哀想だね。これからは安らかに眠ってほしいね……」
 ヒィロも祈りの列に加わる。デイジーも思うところがあるのかゾンビの山の上をくるくるまわり、瞳を閉じた。
「安らかに眠れ、古代の者よ」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

おつかれさまでした。
今回は皆様の作戦勝ちです。
コープスのスキルを無効化する名乗り口上と位置取り、お見事でした。
またのご利用をお待ちしています。

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