よう、マスター。久しぶり……つっても店には来てたんだが、カウンターでこうして飲むのは久しぶりだな。
どうよ、元気してたか？
……ふぅん、へぇ〜〜。
ぜんっぜんわかんね。

ぶふーっ！最後の最後に笑わせないでくださいよ！
では、お休みなさーい！いい仕事あったら回してくださいね！

頼むよ？ホントにね？

はいよ、おつかれさん。
そんじゃ、またの盗みの仕事ででも！

えひひ、当然心得ておりますとも。
この話は相棒ゆえの特権ということにしておきましょう。

ええ、そうしましょうそうしましょう。
お疲れ様でした。帰り道にはお互い気を付けましょーうね。
ひひひ！

へっ。俺もスッキリしたよ。
どういたしまして。誘ってくれてありがとうよ。……あ、言いふらすなよ？コルボについてのこと。

……そんじゃ、そろそろお開きにするかい？いい感じの時刻だしよ。
お前の言うとおり、パーッと使ったら派手に盗まなきゃいけねえからなあ！色々備えねえと

ひー……スッキリしました。
いよいよ言いたいことも私は言いきっちゃった感じですね。いや、本当急なお誘いに乗ってくれてありがとうございました。(ふかぶか)

ひーっひっひっひ！
否定はしませんよ！

いやぁ、キドーさんに言われると自信もつくというものです。
お返事返す余裕もありませんでしたが、助けられましたよ。ほんとほんと。ほんとほんと！

ひっひっひ。えひっひっひ。一度お財布すっからかんにして――また盗めばよいだけの事。
ぱーっといきましょ、ぱーっと！

ケッ。
俺はいつでもいい男だろうがよぉ！

お前は確かに盗賊風情だが、かなり上等な方さ。相棒の俺が言うんだから間違いねえ。
手紙……あぁ、手紙ね。あんなんでも役に立ったなら良かったよ。

へっへっへ。本番も楽しみにしとけよぉ。
立派に財布やるからよぉ……。暫くもやし生活かねこりゃ

いやぁーーーーなんというか…………非常に……非常に味わい深いお顔でした。
ちょっといい男でしたよ。ほんとほんと。

なんであんなにこんな盗賊風情を……慰めようと思ったらすでに立派だった。みたいなことは言われましたかね。
時間と置手紙と……そうだ、あの時キドーさんもお手紙くれましたね。
ああいうので何とか立ち上がっただけなんですよ。えひひ。

ええ、頼りにさせてもらいます――いやー、プレ祝勝会は大成功ですね！

あぁ、勝てて良かった。乗り越えられて……
そっ、そんな顔ってどんな顔だよ！

ははぁ、敬意を？
あんま話した事はねえけどカタそうだもんなー。でも、そんなんでも姉妹ってのは似るもんなんだなぁ……。
俺にはきょうだいとか居ねえからよく分からんが。

ん、そうだな。何もかも元通り……なんて行くわきゃねェからな。
なんかあったら言えよ。

あぁーあー、私や三賊の人たちを差し置いてそんな顔しちゃーってー。
私も妬けちゃうなー。えっひっひ。……ひと先ず何よりですよ。私たちと一緒に戦ってくれて、そして勝った。よかったよかった。

あ。会いました？顔以外はもう本当に正反対ッて感じで！
それでも、やっぱり姉妹なんだーって思わせてくれますね。ひひひ……なんだか必要以上に敬意を払われたりして恐縮しちゃったりしますが。

どうにか、どうにかです。

いや俺ぁ心配しちゃってさあ！あれっきりお前がどうにかなっちまったらどうしようかと！
良かったよ。ホントに。うまくやってるみたいで。

ふん。……マスター、もう一杯
そうかね？そんなの……あぁ、もしかしたら……あった、かもな。ローレットはそういう所あるもんな。

クレマァダってえとモスカの司祭長か。双子の……
あぁ、依頼で一緒になったよ。たまげる程そっくりだったなあ。当然だが、顔以外は姉とは違うな。
……そうか、仲良くやってるのか。

うぅーん？キドーさんほど激しい事は特になかったですよ。
そう、ですね……あの件以降、まるまるひと月ほど落ち込んでましたけど、カタラァナさんの置手紙が見つかりまして。
「妹をよろしく」と。

妹さんのクレマァダさんという方にはもうお会いしました？
あの人と仲良くなれた――というあたりで、もう私はいつものペースで出来そうな仕事を選んでは、上手くいったりちょっとうまくいかなかったりの繰り返しです。

今みたいなキドーさん、初めて見ました。
最初に嫉妬って言ってましたもんね。言ってしまえば、その嫉妬こそ憧れのあかしでしたか。
……惜しいですね、キドーさんにそこまで言わせるのであれば……デモニアでさえなければ別の道もあったのかもと考えてしまいます。

えっ私？私ですか？そうですね……。

……

（ぐいとグラスの残りを飲み干して）
あぁー、なんだよ！俺のことばっか話してんじゃん！
次！次エマの番な！
どうよ、あれ。お前の方はさ、絶望の青以降！

……。

（グラスを持ったままエマににじり寄り、声を潜めて）
憧れてたのかもしれねェ。盗賊として、あの野郎に。
あんなお頭がいたらいいなって。

えひひ、これは失礼……ほう？

ほうほう……内容を聞く限り、うれしくなるようなことは書いてなさそうですけれど。
何故うれしくなったか、聞いてみても……？

ええいクソ！笑えるよなあ！
笑っとけ！まだ笑えるからさ！

そんでよ、そっからがまさかの展開よ。
あの野郎から手紙が届いたんだわ。それがまたムカつく内容で、マヌケ面だの何だのとバカにしてきやがって。今の俺じゃあ、団に引き入れる気にもならねェだのと好き勝手……。
……なのにさ、届いた時ちょっと嬉しかったんだわ俺。ムカつくことに。

――なるほどなるほど！
えっひっひ、いやわかりますよ！私も基本的にソリストですからね！

いわば野盗のような……数と暴力による略奪とでもいったところでしょうか。
それで先を越されでもしたんです？えひひ……！

――――……

まあ、その、なんだよ。
確執やら因縁やらと言えばカッコも付くが、要するに最初は俺の妬み嫉みって言うかぁ……。
だってムカつくじゃん！？どうにも気分が盛り上がらず燻ってたトコによ、同じ盗賊なのに、大軍率いて欲しいモン掴もうと好き勝手気儘に振る舞う野郎が現れたらさあ。

この乾杯もなんだか久々な気がしますね！あーっ！沁みます！体と心に！
えひっひっひ。そういえばキドーさんのおごりでしたね。なーにたーべよっかなー。
どーうしよーっかなー。

むむ……浅からぬ何かを感じますね。

ガハハハ！カンパーイッ！！やっぱり勝利の美酒はうめェよなぁー！
おうよ、本番の祝勝会も楽しみにしとけよぉ？

……あー、アイツ……コルボとはその……あー……

っとそうでしたそうでした！またちゃんとした場所でやるみたいですけど！
とりあえずは、キドーさんの勝利を祝してーっ！

それにしても一体あのデモニアと何があったんです？俺は盗賊団団長……(がくっ）とかなんとかいってましたけど。

えへひひ……でしょう？

そうですね……色々ありました。考えてみれば、あれだけ色々あればお互い忙しくなるのも自然というものですね。

ああ、あの変装な。こないだ一緒に仕事した時にやってたなあ。ありゃ大したモンだった。

まあ、な。絶望の青からこっち、次から次へ……。
ま！こないだので気持ち的にはだいぶ片付いた。お陰さんでな。
……そーいや、祝勝会でもってんで待ち合わせてたんだな。あん時、助けてくれてホントにありがとうよ。

お互い忙しくやってたみたいですね。
私の方はまぁ、そこそこ好きにやらせてもらってましたよ。最近はこそこそ逃げ隠れすることに加えて変装芸に磨きをかけてました。ひひひ……。

キドーさんは――色々あったみたきですね。

そうかい、そりゃあ良かった。……マスター、焼酎。お湯割りで。
確かになあ。俺ぁあんま顔出さないようになってたし。
調子どうだい？え？

あー来た来た！来たとこでーすよ！
いやーなんというか……久しぶりですね、ひひっ。

……おっ、来てたか。
よう、待ったか？

やー、まだちょっと寒いですね。
店主、店主。フェザータッチと……あっいやそれだけでいいです。いいですって。
口が開かなくなっちゃうでしょう！

(ちょこん)

さて、と。
8時頃には戻ってこよう。