PandoraPartyProject
穏やかなりし夢の都
終焉(ラスト・ラスト)の地で厳かに語られる闇の煌めきを余所に――ラサは湧いていた。
今日も今日とて灼熱の砂漠は冬らしかぬ温暖な気候だ。
首都ネフェルストには太陽の零れ日がこれでもかと降り注いでいて。
「やったっすね――! 大烏盗賊団への攻勢作戦は成功したっすよ!
散々裏で暴れてた連中っすけど、こうなっちまったら今までも一緒とはいかないっす!」
腕を広げてその輝きを受け止めるはフィオナ・イル・パレストだ。
彼女の気が高揚しているはいつもの事であるが……今日は何より、先日の大烏盗賊団の捜索と攻撃が成功した事の報告書を読んでより一層に昂っていたのだ。兄のファレンも一枚以上噛んでいたかの作戦は何より、イレギュラーズ達の支援も相まって成功へと導かれる。
色宝。ファルグメント遺跡で発見されている『願いを叶える』とされる秘宝を求めし一連の騒ぎに暗躍せし大烏盗賊団――彼らの秘密拠点が次々と割り出され掃討されているのだ。
如何に広大な砂漠に潜もうとも、決して無限の渇きが広がっている訳でなければ必ず探し出せる。
そしていざや見つける事が出来れば。事、正面作戦となれば……ラサ商会の方が優勢だ。
「いやーこれでちっとは連中も大人しくなりそうっすね!」
「本当に大助かりっす! パサジール・ルメスの友人達も感謝してるっす……
なにせあたし達は連中に狙われてたっすから……」
と、フィオナに次いで言葉を紡ぐのは――混沌世界各地を巡るキャラバン『パサジール・ルメス』が一人、リヴィエール・ルメスであった。
パサジール・ルメスは所謂かな移動民族であり何処の国家にも属さぬ流離人(さすらいびと)達と言えるが……されどそのルーツには昨今話題となっている『色宝』との関連が噂されていたのだ。
――嘗てパサジール・ルメスは『ファルベライズ』と呼ばれる地域に住み、精霊たちと心を通わせる精霊使いの一族であった。
自然溶け合うように空と海のそれぞれの因子を持つものが多い多種族部族である彼らは砂漠に住う光彩の精霊ファルベリヒトと共に過ごしていた。
ファルベリヒトは非常に力が強く、その一帯の守神を兼ねていたそうだ。ある日、恐ろしい伝承の魔物が現れた際に、民を守るべく戦った光彩の力は粉々に砕けてしまった。
砕けた光彩の力は『小さな奇跡』を与える色宝(ファルグメント)に変化した。
その悪用を恐れ、パサジールルメスの民は遺跡ごと封印したのだった――そして、彼等は旅に出た。
ファルベリヒトの位置を悟られぬように――光彩の精霊が静かに眠れるように。
「あー大変だったっすね……それ自体は事実っつっても、突然噂が広がり始めたんすよね。多分それも大烏盗賊団達の仕業っすよ! あいつら色宝に関わる事には目がないっすからね!」
フィオナは腕を組みうんうんと物知り顔風に頷いて。
――大烏盗賊団は首領を中心として色宝を血眼になって探している。『願いを叶える』とされる魅力と、そんな色宝の所持は自らの勢力の誇示にもなり――大烏盗賊団を膨らませていたのだ。
パサジール・ルメスが狙われたのにもそう言った経緯が恐らく絡んでいるのであろう。
善良なキャラバンなど彼らにとっては食い物同然と……
全く、あまりにも身勝手で思わずフィオナちゃんも激おこな話である。ぷんぷん。
「でもでもイレギュラーズのみッなさんのおかげで連中は弱体化してるっすからね。全部倒した訳じゃないっすし、まだ油断は出来ないっすけどパサジール・ルメスへの干渉も減ると思うっす! あ。アメちゃんいるすか?」
「おっとありがとうございますっす! あたしももう少し盗賊団の事は探るっす。情報屋としても彼らの事は見逃せないっすし……それに頭目が馬鹿でなければ、倒される前になんらかの動きをみせるかもしれないっすし……」
フィオナから棒付きキャンディを貰って口に含み――リヴィエールは語る。
大烏盗賊団は弱っている、それは確かだ。
しかし直接争う形ではないとはいえ――色宝の回収方針を打ち出しているラサ商会の行動に反目している彼らが『追い詰められる』可能性を今まで考えなかったとは思えない。或いはそれほどの阿呆であれば、このまま終わって助かる所だが……
何かあるとすればその動きはきっと近いだろう。
盗賊団の動向は注意しておかねばならぬと――摂取した糖分を脳へと届けて。
「うんうん! ところでフィオナちゃん達、めっちゃ口調が被るっすね!」
「あっ、それあたしも思ったっす! なんだか気が合うっすね!」
しかし今はこの平穏を甘受しよう。
イレギュラーズ。彼らの救いによって齎された――この一時を。
*領地でRAIDイベント『色宝争奪戦』が終了しました!
この結果により『ファルベライズシナリオ』に影響が生じる場合があります!