PandoraPartyProject

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お花見ボイスリプレイⅢ

●豊穣郷に桜花あり
 「わぁ! 満開ね! なんて綺麗なのかしら。花びらが風に乗ってまるで桜の雨みたい! ふふっ」
 桜の散る中を、草鞋を履いたタイム (p3p007854)がスキップ交じりに歩いて行く。
 その後ろを、天香・遮那 (p3n000179)柊 吉野が歩いている。彼らの表情は、今日の陽気のようにどこか温かい。
「タイムは何時になくはしゃいでおるの。そんなに花が恋しいのか?」
「なぁに? わたしそんなにはしゃいでるように見える?」
「まあ、いつ転けるかと見ていてはらはらする程度にははしゃいでるな」
 吉野たちの言葉にムーっと片頬を膨らませながらくるりと反転するタイム。
「もー、いいじゃない。二人が一緒なら尚更よ。ほらほら、あっちも見に行きま――」
 が、慣れない草鞋だからだろうか。うっかりと脚をすべらせた。
「わああ!」
「おっと、大丈夫か? タイム」
 予想された転倒は、ない。風のように回り込んでいた遮那が、彼女の身体を受け止めていた。
「っぶな~……」
「言った傍から転けるでないぞ。其方が怪我でもしたら大変だからのう。何処か打ったりはしていないか?」
「んん、そんなに心配しなくたって遮那さんが支えてくれたから何ともないわ」
 腕の中。手を伸ばせば容易に触れられる距離で、タイムは次に言うべき言葉に詰まった。
「……あ、ありがと」
「うむ。大丈夫そうだの」
 優しく微笑む遮那の表情と、散りゆく桜と、その先の青空。時間が引き延ばされるような感覚は――どうやら一秒ともたなかったようだ。
「ほら、二人とも行くぞ。あっち見に行くんだろ。早く行かねぇと良い場所無くなるだろ」
 既にずっと先に行っていた吉野の呼びかけに、二人は苦笑し、歩き出す。


「わ~! 流石は高天京、立派な桜! それに料理も、お酒もいっぱい……けーちゃんもさ、今日は呑もう! 普段あっちこっちで頑張ってるんだからさ、こういうときくらいハメ外しなよ」
 多聞 百華が両腕を広げ、くるくると回るようにして歩いて行く。
 時折、宝石のような目がきらきらと光った。
 振り返った姿勢でぴたりと止まり、見つめられたことを察した八重 慧 (p3p008813)が頭をかいて苦笑と微笑の中間くらいの表情を浮かべた。
「酒は少しなら。 滅多に見られないんすから、主さんはもっと桜も愛でるべきだと思うっすけどね? 俺は以前見てはいましたが、ほんと、何度見ても立派な桜っすよ……でもまぁ、主さんも、楽しんでくれてるようで良かったっす」
 笑みが、もうひとつ深くなる。
 そばにいる人が楽しんでいる。それだけで、案外と人生は楽しくなるものなのかもしれない。
 ここカムイグラ会場では、王都で花見が開かれたと聞いた人々がならばこちらもとばかりに日を併せて花見を始めた場所である。例年行われているのか、集まる料理や酒もたんまりだ。
「ほらウォリアさん見てくださいっすよー! これがサクラってお花っすよ。
しっかしウォリアさんにとってカムイグラが大事な場所って聞いてはいましたけど……お、サクラに見惚れてたっすかね?動きが止まってたっすよ!」

 こういう機会は珍しいのか、リサ・ディーラング (p3p008016)がぱーっと走ってははしゃいでいる。一緒に誰かと来ているのだろうか、呼びかける声も親しげだ。
 隠岐奈 朝顔(p3p008750)はそんなリサとちょうどすれ違うような形で、そしてつられるような形で散る桜に手をかざした。
 フッと笑う天香・遮那 (p3n000179)
「今年も綺麗な桜が咲いたのう。
 ほら、向日葵これを見てみよ。立派に咲いておる。
 普段は執務に追われておるからのう、こうして其方と遊びに行けるのは嬉しいぞ」

「わぁ…!本当に綺麗な桜ですね!
 立派に咲いて、豊穣再生の象徴みたい
 私も遮那君と出かけられてとても嬉しいです」

「そういえば、私も随分と背が伸びたのだが、向日葵に追いつくにはまだまだ足りぬの。
もっと栄養を付けて其方を追い抜くぐらいにならねばな」
「遮那君、本当に背が高くなった…? みたいですし! 格好良くなりましたもんね
…いえ、私を超すのは嬉しいような…その、とても苦労するのでやめた方が良いような…」
 にこやかに語り合う。けれど遠く花の咲く空を見上げる遮那の目には、うっすらと曇りがかかりはじめていた。
「……桜が咲く姿を見ていると、戦場で散って行った者達を思い出す。
 自分の信念のもと、力強く戦い、命を賭けたのだ。
 きっと忠継も己の信念に従ったのだろうな。
 だが、私は……やはり生きていてほしかったと思うのは忠継の信念を傷つけるものかのう」
「…そんな事ありません…!
 忠継さんの信念は遮那君の方が知ってるとは思いますが
 自分の大切な人に生きて欲しいって思われる事が、傷つく理由になるはずがないじゃないですか!
 少なくとも私は凄く嬉しいです!」
 強く呼びかける朝顔の言葉に、遮那は立ち止まって振り返る。
「大丈夫です。
 私は居なくなったりしません。
 私は遮那君の最愛に成りたいんですから。
 遮那君が私を求めてくれるなら。
 ずっと側に居ます。
 君を守り続けます。
 それが私の信念です」
 朝顔の強いまなざしに、遮那は再び笑顔を取り戻したようだ。
「すまぬ。少し感傷的になってしまったな。
 ……向日葵は、死ぬでないぞ。
 皆で笑って歩んで行きたいからの」


「今宵はご指名戴きありがとうございます」
 カッとスポットライトが照らされた。
 時は午後の22時。夜の公園に照らし出されたのはブラックスーツにインテリな眼鏡をかけたひとりの男……いや、ひとりのホスト、鵜来巣 冥夜 (p3p008218)であった。
 流れ出すバックグランドミュージック『Shamanite』
「私がいれば桜さえもエキストラ。女性が化粧をする様に、男は自信で華やかに化けるのです。
 貴方の心を溢れんばかりの愛で満たすために、早速始めましょうか……シャンパンコール!!」

 ライトアップされた桜を前にテンションを爆上げする冥夜と出張ホストの皆様。
 ジュート=ラッキーバレット (p3p010359)巫馬・峰風 (p3p010411)はそんなライトに照らし出されていた。
 フフン、という顔で振り返る峰風。
「お花見。ふむ、知っておるぞ、「四月はお花見で酒が呑める」これじゃ!
花より団子、団子より酒であるな!
 あっ酒……酒が……。
 肴はお任せあれ……じゃーん、あーたーりーめー!
 ジュートも遠慮せずムシャるといいのである!」

 テッテレーて効果音と一緒にでてきたあたりめを、わーいとか言いながら三頭身になったジュートが掴む。
「わあ、あたりめだー。俺あたりめ大好きだぜー……って現実逃避してる場合じゃねぇ!
 今日こそうまちゃんの休肝日にしようと思ってたのに、酒が出せるギフトの知り合いと遭遇するとか……奇跡の無駄遣いにも程があんだろ!」

 あたりめむしゃりながら両手で顔を覆うジュートであった。
 その横では……。
「ばぁぶぅ~きゃっきゃっ!」
 天閖 紫紡 (p3p009821)が完全にできあがっていた。
 昼間っから飲みまくったせいで脳があかちゃんになっているらしい。
 シャツもいつのまにか「デスしおすし」に変わっていた。トロ寿司の上に天使の輪っかと羽根がついてる絵である。
「良い御身分で御座るな、紫紡」
 そんな紫紡の背後に気配。あるいは殺気。
 咲々宮 幻介 (p3p001387)だと気付いた紫紡が飛び起きた。
「……ハッ!い、いや、違うんですよ師匠?
 これはその何というか、たまたま!そう、たまたまなんです!
 だから修行は! 突発的な修行は止めましょうお願いそうしましょう~! 師匠~!」

「拙者、何度も口を酸っぱくして言った筈だな。
 酒は飲んでも呑まれるな。
 呑まれる者は修練が足らぬ、と。
 つまり、その状態はそういう事で御座るな。
 さぁ帰るぞ、帰ったらしこたましごいてやるからな」

「あ゛~~~~~~~~~~~!」
 襟首を掴んで連れて行かれる紫紡。
 そんな風景を綺麗にスルーして、エステル (p3p007981)が酒瓶を傾けていた。
「綺麗な花が咲いてますね。寒さの厳しいこの地域ですが、それでも春は来るものです……一献、どうですか?」
 その一方で、物部・ねねこ (p3p007217)がジュースの缶をかしゅっと開く。
「満開の桜の樹の下には綺麗な死体が埋まってる…ってのはよくある伝説なのですが…掘り返しちゃ駄目でしょうか?
 いや、私もそれが伝説とは承知の上ですが万が一もありますしね♪
 まぁそれを抜きにしても地面に桜の絨毯が出来てると懐かしさを感じますね。
 通学路の辺りがそうなってて綺麗だったんですよね〜。懐かしいですね……」

 懐かしみ、というのは誰にとっても大切なものである。不思議なことかもしれないが、桜というのはどこで見てもにたような咲き方をして、似たように散る。クローンなのだから当然といえば当然だが、だからこそ人生のセーブポイントのような役割をしているのかもしれない。
 そこへ、祝音・猫乃見・来探 (p3p009413)がやってきてスッとすわった。
「公園広場、メイン会場…賑やか、だね。
 隅っこに座って…お寿司や料理やジュース、ちょっともらって。
 猫さんも、いるかな…一緒に、隅っこでのんびりしよう?
 桜の花びら、綺麗だね…猫さんじゃれるの、可愛いな」

 そこへ白い猫がやってきて、来探の右手に頭をこすりつけている。
 ぱしゃり、という音がした。振り返ってみると、インスタントカメラでライトアップされた桜を撮影しているマリア・ピースクラフト (p3p009690)が立っていた。
 彼女はくすっと笑うと、カメラを顔の横で小さく振るようにして挨拶してくる。
「桜が咲く季節といえばお花見だけど、まさかこっちにも花見スポットがあるとは思わなかったなぁ。
 ……今度、簡単な衣装をコーデして着てみようかな?
 勿論、写真を撮るときは迷惑にはならないように。
 マナーは守らないとね」

 早速お料理お料理、と言いながらシートの方へと歩いて行くマリア。
 そこでは既に猪市 きゐこ (p3p010262)たちが盛り上がりまくっていた。
「花見と来ればお酒!歌にも唄にもそう記されてるし、花札だって桜に幕と菊に盃で花見で一杯!こいこいってね!
 つまり花を見ながらお酒を飲むのは正しい作法って訳よ~♪
って事で飲むわよ♪ いえーい♪ かんぱーい!」

「わあっ、お料理がたくさん…! ほ、本当に全部無料なんですよね? じゅる…
 って、お花見に来たんだから食べてばっかりじゃもったいないよね…よし、この一皿で我慢です。
 ……ああ、でもやっぱりもうちょっとだけ……!」

 ちょこんとした紙皿に盛り付けた料理を見下ろしプルプルしている茶寮 コロル (p3p010506)。そこへきゐこが『イェーイ!』と『ウェーイ!』の中間の声を出して絡んできた。
「折角なんだからもっと食べて飲んで! 五感で今を味合わなくっちゃあ。『今』が勿体ないわよー!」
「……で、ですよね!」
 大義名分を得たりとばかりに飲み物に手を付けるコロル。
 きゐことコロルはさっきの『イェーイ!』と『ウェーイ!』の中間の声を出しながら乾杯をかわすのだった。

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