PandoraPartyProject

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望月の欠けたることもなしと思えば

望月の欠けたることもなしと思えば

 八咫姫はうきうきと心弾ませ紅を引いていた。好きな男(ひと)には可愛いと思ってほしいものだ。
 機嫌はすこぶるよい。先日の戦果は上々だった。
 首を突っ込んできた神使ら全員を拉致するという策は失敗に終わったが、それでも、一番欲しかった、たった一つは手に入った。巫女姫は――同じような執着を持つ者だからだろうか――八咫姫に、想い人ヴォルペ(p3p007135)の処遇を好きに任せてくれたのだった。
「ただいま、俺の瑠璃」
「ヴォルペ!」
 優しく八咫姫を抱き寄せるヴォルペ。この世に想い人がこちらを好いてくれているという幸せよりも良いものがあるだろうか。
 蕩けるような幸せに身を任せながら、ふと思った。
(おひいさまの恋も叶うとええなあ)
 他人の幸せを願ったのは何年ぶりだろう。ううん、きっと叶うと思う。
 多分、私たちの人生は。言ってしまえばひどいものだったけれど、これからの祝福された道のためにあった。呪いをかけ、いくつもの死を踏みつけてきたけれど、そう。きっとそのために死んだ有象無象だって、このことを祝福してくれている……。
 これから、きっと帳尻は合って、何もかもうまくいくようになるだろう。
「……」
 八咫姫は不意に不安になって、ぎゅう、とヴォルペの裾を握った。
「どうしたのかな?」
「私……怖いんやわ。貴方はずっと、優しい人だから」
 ――こんなに近くにいる貴方が、どこかへ行ってしまいそうで怖い。
「大丈夫、『最期』まで付き合うよ」
「そうやね。ずーっと一緒や。馬鹿やなあ……。貴方は私を選んでくれはったのに。ううん、疑ってるわけやないの。でも考えてまうの。もしもあのとき、一人だったら、私のところに来てくれたやろうか」
「違うよ」
「……え?」
「俺が進んでここに来たのは、イレギュラーズを救うためじゃないよ」
 わかるよね、という意味を持たせて、貴公子が微笑めば、八咫姫は頬を染める。
 ああ、絶望的なまでに”違う”。ヴォルペの言葉は本心から出たものに違いない。
 仲間を救うためだなんて、そんな浅はかな理由じゃない。ヴォルペは、それほどまでにイレギュラーズというものを甘く見積もってはいない。
 特異点でもある主人公たちに心から期待しているのは、もっともっと『別』のこと。
「それじゃあ、ちょっと顔を見せてこようかな。心配しているだろうしね」
「……貴方が消えてしまうのではないかと、怖い」
 あの星々(イレギュラーズ)を、檻がとらえたかに思えた時。それでも尚、こちらを向く矢が純正肉腫であるカラスを貫いたとき、八咫姫は思わず恐怖していた。
 あれほどまでに、強いのか、と……。
「そのカラスは……まだ万全ではないんじゃないかな? 力のために、どういう犠牲を捧げているのかはおにーさんには分からないけれど、また寿命を削ることになるよ」
「ううん。ううん。貴方に死んでほしくない。……やから、一緒に行こう?」
「……君が望むなら」
 カラスとともに、ヴォルペと八咫姫は闇夜に消えていく。その言葉にきっと嘘はない。……きっと真実もないけれど。――恋は盲目とは、よく言ったものだ。

 そして――その晩に一人の少女が何者かに拷問を受け、酷く痛めつけられた姿で発見された。後宮に住まう少女は「口を割れと脅された」と涙ながらに語る。天香・花子――花衝羽根媛は居合を得手とした黒髪の女に拷問されたのだという。
 歪な月は笑っている。様々な陰謀渦巻くこの京の行く先を、未だ、誰も知らぬが儘――



*カムイグラでの戦いが終結を迎えました――
ヴォルペ(p3p007135)さんが宮内卿・八咫姫との交渉を終え彼女と共にイレギュラーズの前に姿を現しました。

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