PandoraPartyProject
巫女の片割れ
巫女の片割れ
――海洋の船が訪れていた。
視線の先、カムイグラの港に到着する外界の船が見える。あれが噂の海洋王国の特使達か。
陸地には応対するべくの者達が。些か距離が離れているので風貌は見えないが……ナナオウギの誰ぞだろう。祭事を合同すべく、これからなんぞや難しい話し合いが行われるのか。新たな来訪者に湧く、騒がしい様子がここからでも見て取れる。ああ、全く――
不快だ。
ああ実に不愉快で、陰鬱。見てるだけでイライラする。
何が楽しいのだあんなに騒いで。遠巻きに、興味深そうにその様子を囃し立てながら見ている輩共にも虫唾が走る。
野次馬め――夏の祭りを前にして気分が高揚でもしているのか? 起きているのに夢見とは大層な事だ。
「……」
少女は――頭より角を生やした鬼人種の少女は常に不機嫌だった。
この国が信仰している『龍神』が封じられ、海向こうから多くの異邦の者達がやって来るとは聞いていた。今やこのカムイグラのあちらこちらで活躍する神使……特異運命座標達の存在は田舎であろうと耳に届いていて。そして今度は特異運命座標ではないが、あちらの国の者がやって来るとも話に聞いていた。
――だが失敗だった。
彼らを視界に収めた瞬間から嫌悪感が背筋を撫でる。来なければ良かったかもしれない。
何が光だ。何が風だ。
彼らが来ようが何も起こる筈がない。幾代も前から続いているこの国の在り方が変わるものか。餓鬼の理屈と夢を捏ねるなよ、御託をほざけば満足か? どれだけ『私達』が……ただ同じ日同じ時に生まれただけの『私達』が邪見に扱われたか――
鬼は鬼として虐げられ、ヤオロヨズの馬鹿共は馬鹿であり続けるのだ。
生まれた時から、そうだったのだから。
「――ふんッ」
少女は踵を返す。
頭痛がしてきた、このままでは体調が悪くなりそうだ。
後頭部を打ち付けるような感覚がどこまでも酷くなる。また――――に会う必要があるかもしれない。ああ、くそ、くそ。蛆が頭の中に湧くような感覚がどこまでも気持ちが悪い。
呪詛に怨念、憎悪に憤怒。
どれかであるようなどれでもある様な、妙な感覚は少女を今日だけに非ず。既に長く蝕んでいて。
「ああ、もう……!」
頭を振って歩いてゆく。林の中へと、人の道から逸れた、人気無き道の奥へと。
底知れぬ想いを秘めながら一人の少女は闊歩していたのだ。
頭に響く頭痛に耐えながら――眼を逸らす。『神』とやらが召喚した正しい理とやらの者達から、神使達から。
見れば何故か際限なく……苛立たしい雑念が沸き立つから。
ああそうだ。
皆■ね。
■ね■ね■ね。誰も彼も■んでしまえ。帝も、晴明も、度々訪れる神使共も。
みんな皆、黄泉津のけがれに呑まれればいいんだ。
少女は憎む。この世界を。
少女は蔑む。正しき世界を。
少女は怒る。自らと『姉』を虐げ続けた――この世界を。
※カムイグラ:新種族『ゼノポルタ』が追加されました!
※カムイグラ:期間限定クエスト『神威神楽・妖討滅』が開始されています! 7/15終了予定です!
※カムイグラ:カムイグラで夏祭りが行われるようです!
※妖精郷:ストーリー関連クエスト『迷宮踏破ヘイムダル・リオン』が開始されています!