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双生の巫女
双生の巫女
祭りの準備が進んでいる。
カムイグラ。『神ヶ浜』と呼ばれる名地にて開かれる祭事――隔たれていた海が開かれ外からの来訪者も訪れる今年は、例年とは異なる雰囲気を漂わせていた。最近では海洋王国なる国家からの接触も増えており……海向こうからやってくる船の往来も多い。
此岸ノ辺もまた同様だ。
空中神殿が認識し、特異運命座標にとって転移場の拠点として活用しうるようになった今……船ではないが、人の往来は各段に増えていたのだ。今日もまた訪れる者がいる、きっと明日もそうだろう。
「――もうすぐ祭りが開かれる。つづり、お前も偶には外へ出たらどうだ?」
その場にて。鬼人種の青年――晴明は此岸ノ辺の巫女たるつづりへと言の葉を。
彼女は空中神殿におけるざんげの様な立ち位置であり、今までであればバグ召喚により訪れた者達の対応を常に行っていた。しかし今やご覧の様にカムイグラは開かれた地となり――ここへ訪れる者達はカムイグラの存在を知っている。
そして彼女はざんげと似た立場の少女ではあるが、ざんげと同一ではない。
一定の地に縛られる事はないのだ。その気になれば外へ行く事も可能で。
「……でも。私は、巫女だから」
それでも、どこかつづりは言い淀む。
外へと言った晴明から視線を外し。
その胸中にあるのは使命感か義務感か、それとも――
「そそぎの事か」
「……」
「あの子の事は気にするな。いずれ必ず……帰って来る」
妹の事か、と晴明は指摘して。
当代の此岸ノ辺の巫女は『双子』であった。しかしそれは『忌むべき事』であり、この地に溜まるけがれを浄化する事叶わぬ要因であったとも言われている。神隠し事件――所謂かなバグ召喚が多発したのも巫女たちが『双子』であったからと言われ。
そしてつづりの妹、そそぎはいつしか姿を消した。
今はどこにいるのか。霞帝も気にかけ、晴明も以前から探してはいるのだが――やがて帝が眠りに付き、巫女姫の台頭が始まれば余裕は無くなった。
彼女は未だに帰ってこない。
だけど帰ってくるとするのなら、巫女がいるべきこの地だから。
「……セイメイ。やっぱり私はここに居る」
「……そうか。それなら、そうすると良い」
つづりは待つのだ。
そそぎがいつか、帰って来るその時まで。
「暫くした後、海向こうの王国から特使が至るらしい。ソルベ殿という名だったか……こちらでは遮那殿と――たしか、卑踏殿だったか。が、出迎える予定だ。天香や巫女姫は京の中。少なくともその場では何も起きないと思うが……最近は怨霊や妖怪の出現が激しい。注意だけはしておいてくれ」
曲がりなりにも祭事の提案を受け入れたのだ。
巫女姫の動向は読めないが――向こうの王国に手を出す様な真似はしまい。
むしろ懸念すべきは祭事の折。各所に配っているという『お守り』とやらが気になる所で。
「『楽しい』だけで、事が済めば良いのだが」
「……うん、そうだね」
今年は違う。何もかもが。
カムイグラに新たに吹いた風は一体この国に何を齎すか。
どうか安寧の道へ進めば良いと、信じながら。
祭りの準備が――進んでいた。
※カムイグラ:新種族『ゼノポルタ』が追加されました!
※カムイグラ:期間限定クエスト『神威神楽・妖討滅』が開始されています! 7/15終了予定です!
※カムイグラ:カムイグラで夏祭りが行われるようです!
※妖精郷:ストーリー関連クエスト『迷宮踏破ヘイムダル・リオン』が開始されています!