PandoraPartyProject
穏やかなる青空の下で
――滅海竜リヴァイアサンは眠りについたらしい。
それが、フェデリアでの戦いでの結果である。
コン=モスカの娘は『自身の使命を思い出し』そしてその身一つで狂濤を受け止めた。
蚕蛾の娘は魔種の張り巡らせた『鏡面世界』を肩代わりすることを選び、姿を消した。
誰が為、そして、我が為と。嫉妬の権能を抑えるが為に、二人の男がその身を挺した。
海洋・鉄帝軍の被害も決して少なくはなかったが、竜種と言う圧倒的存在――神とも称される理不尽――を退けたという英雄譚は海洋王国、そしてゼシュテル鉄帝国を大いに騒がせるだろう。
そして、海洋王国は王国の民達の関心と期待が一心に向けられるまだ見ぬ新天地(ネオ・フロンティア)を目指し航海の道を選ぶのだ。
――それはネオ・フロンティア海洋王国の片隅であった。寂れた小さな墓標が並んでいる見晴らしの良い丘があった。
その場所に向けて『鏡の魔種』ミロワールは駆ける。
フェデリアでの一戦での傷は決して癒えぬ儘、彼女は直ぐにこの場所に連れていってほしいとイレギュラーズへと懇願した。
……誰が見ても彼女はもう永くはない。
死兆が取り払われようとも、先の戦いでの傷は深く、その魔種はもう永くは生きられないだろう。
そして、魔種であるが為に生かしてもおけぬというのが実情だろうか。
彼女が駆け上がったその丘のほど近い場所には花畑があった。潮風に揺れる、誰が植えたのかも名も知れぬ花たち。
美しく咲き誇る花々を眺めるイレギュラーズへとミロワールは言う。
「此処に、シルキィがいるの。
わたしが、此処に来たいと願ったから。鏡面世界は彼女を、この場所に送ったんだわ。
鏡面世界を、肩代わりしてくれた時、わたしの為に死んでしまうと思った。
けれど……奇跡は、悪い事ばかりではなかったのね」
ミロワールは泣いた。奇跡は奪い去るだけではなく、何かを叶えてくれると、誰もが願っていた。
その美しい花に蚕蛾の少女は埋もれていた。丸く背を丸めて、まるで陽だまりのように転寝を繰り返す少女。
花に埋もれる様にして眠っていた『la mano di Dio』シルキィ(p3p008115)にミロワールはゆっくりと声を掛けた。
「――おはよう」
それから――約束を果たしに行こう?
――もしも、わたしが生きていたら、一緒にこの海を出よう。
もしも、わたしが死んでいたら……キミは生きて、この海を出て。
この海の外で、ビスコちゃんに綺麗な花を一輪買って、弔ってあげて。
……約束だよ、シャルロットちゃん――
みんなが、竜を越えてくれた。
だから、一緒にあの絶望の海を出られたわ、シルキィ。
※想いは星に。物語は永遠に。戦いは終結しました――
行方不明だったシルキィ(p3p008115)が発見されました――