PandoraPartyProject

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学園奮闘記

 引き延ばされた『一年』がどれ程の永きに渡って続いたのかはもう分からない。
 何回、何十回――いや、或いはもっともっとかも知れない――終わらない学園生活を過ごしたのか、答えはまるで霧の中だ。
 首がもげそうなハンマー殴打健康診断、暗黒と原罪の呼び声に満ちた修学旅行、洒落にならない鉄帝一武道会に、冬季連続爆破祭り。学園には奇妙な程イベントが満ちていて、その全てが剣呑で、靄がかった記憶の中で踊るのはDEAD ENDばかり。あんなキャッチーでキュートなオープニングを作っておきながら生じた大いなる詐欺は、難度ナイトメアの爪痕。
 しかし、クリアは不可能ではない。
 これが『ゲーム』である限り――全ての罠をかわし、全ての危険を乗り越え。精神を加速し、技を磨き、強靭なる肉体を備えたならば、かの生徒会長の言った通り決して惰弱に負けはすまい。
 終わらない日々を過ごし、数限りない『死』を乗り越えた今、遂に自分は卒業式の日を迎えたのである。
「もうマヂ無理……泣きそ……」
「……センパイ、卒業しちゃうですか。ぐす、センパイ、もう明日からないない」
 ジャコビニや、お前が言うと別の意味に聞こえる――ユリーカが瞳を潤ませている。
「卒業しても俺達のジーニアス・ゲイムは終わらないぜ」
 マサシ(誰だよ)が気恥ずかしそうに言う。
 こいつ等含め一体何回ヤられたかは知れないが、それもこれまでだ。
 いい思い出にはならないが、感慨深く頷いてみる。些か暴力的だったとはいえ――彼等との学園生活はダメなばかりではなかった。いや、嘘概ねダメだったが、まぁいい感じの話にステルスしておこうかなって局面である。
「……あれ」
 そう言えば顔を出さない『蒼薔薇の君』の事を思い出した時、鞄の中に手紙が入っている事に気が付いた。

 ――伝説の木の下で待っています――

 ラスボス、キヤガッタ。
 とってつけたみてーにギャルゲー風にしやがって!
 端的に用件のみを告げる手紙。
 額からダラダラと零れ落ちる汗。息切れ、動悸。
 まさか卒業式のこの日に、いやまて。落ち着け、まだそうと決まった訳じゃない!


 →しゃあねえ、覚悟を決めて行く!

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