ふふ、ムラデン・スイテングウ、なんてのもいいかもね。
　たみこは、そのほうが嬉しいのかな。
　結婚って、どっちかの姓を名乗るのなら、そっちの方が自然なのかもな。
　どう？　水天宮・ムラデン。僕は嫌じゃないよ。
　……むしろいいかもね。

　そうそう！　昨日は、練達で言う所のホワイトデーって奴だったね。
　結婚して初めてのイベントになるのかな？　というわけで、ストイシャに作り方教わってさ、クッキー作ってみたんだ。
　……今度は、爪で大雑把に切ったりはしてないからね。うん。ちゃんと作ってるから。
　食べてくれると、嬉しい、かな。

　うん、最初に聞いたときは、正直驚いたんだけどさ！
　ちゃんと、どうして選んだか教えてもらって、納得したよ。

　……そういえば、僕はちゃんとしたファミリーネームがなかったんだよな。あ、ちなみに『ザビアボロス』はファミリーネームではないからな？　念のため。
　……そう考えると。僕とストイシャ、おひいさまは、確かに家族だったけど。

　僕だけの家族って言うのは、キミが初めてか。ふふ、確かに、暖かい気持ちだ。

　なんかキミは、僕のはじめてを何でも持って行っちゃうな。キミならまぁ、いいんだけど。
　キミにとっても、なにか。この名前が特別なものになったんなら、すごくうれしい。

　僕の方？　僕はたみこの全部が、特別だよ。言ってあった気もするけどね。

　クッキー、見た目、良かっただろ？　なんか昔、雑って言われたからな……ムサシとかに……。
　それに、ちょっとはキレイに、かっこつけたいんだよ。なんか、前以上に。
　どうせなら、もっと好きになってもらいたいからね。

　……僕の料理をだぞ？　ふふ。

　たみこ、指輪ありがと！　ちょっと作業の邪魔だったから外して、うっかりしてたみたいだ……。
　……いや、その。大切に思ってないとか、そういうんじゃないからね。ほんと、作業に集中してた。

　なんか言い訳すると、本当にそうみたいに思われちゃいそうだな……でも、ごめんな。それで、ありがと。
　……指輪つけてもらうの、式の時以来の二度めかな。何度やっても、なんだか気恥ずかしいね。

なんだよ、たみこのほっぺつんつーん、とかしてほしい？

……相変わらず柔らかいな。好きだよ。温かくて。
……お饅頭食べたくなってきたな。なんか。

他意はないよ？　他意は。
べつに？　たみこのほっぺたが、温かくて柔らかいな～、ってだけだからね。

……まぁ、さみしかったら付き合うよ。それこそ、世界が終わるまでね。

　僕のはマシュマロかよ。まぁ、お饅頭とマシュマロでいいコンビかもね。
　……もうちょっと突っついていい？　ふふ。なんか、こういうのもいいなって。

　軽食くらいなら作るよ。緑茶でも入れようか。
　たみこは割と夜型っぽいけど……まぁ、無理しないでくれるならそれでいいかな。

　確かに、世界が終わる、なんて物騒だったなぁ。そういうのはもう終わったわけだからね。
　ふふ、いつまでも付き合ってあげるよ――旦那様、って言われたら……奥さん、っていうのかな？
　いいや、たみこ、で。そう呼ぶのが一番好きだ。

たみこはそんな、頑丈じゃないでしょ。
……っていうと、なんか、違うんだけど。
女の子なんだからさ。心配なんだよ。
それに、ぼくのお嫁さんに、熊で疲れた顔はさせたくないからね。

それから……誕生日の、おいわいのことば。ありがと。
ぼくはほら、ドラゴンだし？　ついつい忘れがちなんだけど。
でも、今までは、おひいさまや、ストイシャに祝ってもらえたりしてて。
いまは、たみこにお祝いしてもらえて。
それがなんか、一番うれしいかな。やっぱり。

……せっかくだから、お返ししておかないと、かな。
目、閉じてくれる？
ん……ほら、キス、みたいな。そういう。
……要らないならいいけど。

ん……。
……好きだよ、たみこ。

それと。お誕生日、おめでとう。
特別なプレゼントは用意できなかったけど……今日は、ずっと一緒に居ようか。