変なところってどこ？　このへん？
　ほら、ここだって。骨のあるとこ。触ってみてよ。

むっ、なんか普通に触ってきたなぁ……。もうちょっと照れるかと思ってた。
まぁ、そんだけ触れれば大丈夫だよね？　ちゃんと開けてよ、たみこ。

ん、おかえり。
心配はしてなかったよ。たみこなら、ちゃんと帰ってくてくれるって信じてたから。
……ごめん、うそだ。心配はしてた。人間は、そんなに丈夫じゃないからな。
でも……なんだろうな。心配の気持ちもあったし、たみこは約束を破る奴じゃないって信じてる気持ちもあったんだ。
あ、もちろん、死んじゃった皆が、約束破りって言いたいわけじゃなくて。
なんか、こう……上手く言えないな……。
こんな風に考えるようになったのは、ぜったいにたみこのせいだからな。
責任とれよ。これから、ずっとそばでさ。

　なんかさ。実感わかないっていうか。
　たみこって、結構家に入り浸ってたから。結婚、って考えると、不思議な感じするよ。

　……でも、それでいいのかもね。結婚だから、って舞い上がって変になっても駄目だもんな。
　いつも通り、変わらず。関係性が変わっても、やることも思いも変わらないなら、多分、幸せにできてるってことなんだと思う。

　……いや、これ、未だ本番の前だから、変な感じなんだけど。
　幸せにするよ。約束する。
　竜にとって契約は特別だかんな。たみことも、特別な契約を。

　みんな、結婚式楽しんでくれるといいな。
　当日が楽しみだ。

　うん。愛している、はとっておこうか。

　好きだよ、たみこ。
　これまでも。これからも。ずっとね。

　ふふ。
　あ、そうだ。あんまり夜更かしすんなよな。
　寒いから、ちゃんと温かくして寝なよ。
　風邪ひいて当日ヘロヘロ、なんてだめだかんな。

　……寒かったら、そばであっためてあげるからさ。

　おやすみ、たみこ。
　良い夢を。

　……式まで、あと五日くらいかな。
　なんかわくわくするような、気恥ずかしいような……変な感じがするよね。

　ところで……遅くなっちゃったけど、チョコレート。
　特別なものじゃないけど、貰っといてよ。
　……そう言えば、たみこ、今年くれなかったな……。

　ふふ、冗談だよ。一緒に食べようか。

　ん……なんか不安にさせちゃったかな。僕も変な感じ、みたいなこと言っちゃったから……。
　たみこが不安に思うなら、ちゃんと取り除いてあげたい。
　たみこが、僕の手を取ってくれたこと、間違いじゃなかったってさ。そう思ってもらいたいから。
　……好きな子に、幸せになってもらいたい、なんて思うのは、多分竜も人間も同じだよな。

　てなわけで、また一日、たっちゃったけど。
　可能な限り、不安は取り除いて見せるよ。
　式の日に、心からのたみこの笑顔、見たいからね。

　チョコレート、失敗してたんだ。珍しいな。
　ま、おかげで一緒にチョコレート食べられるから、たまにはいいんじゃないかな？
　今日も温かくして寝なよ。たみこ。

　僕が知ってるたみこは、この世界に来たたみこだ。
　勇敢で、おっちょこちょいで、たまに重くて、やさしくて。
　あたたかくて、とっても可愛らしい、僕の恋人だ。
　……たみこが元の世界でどうだったか、なんて、僕は知らない。
　でも、それがなければ、今のたみこは生まれなかったんだと思う。
　だから、過去の事は傷じゃなくて。つらくても苦しくても、たみこを構成する一つだ。
　僕の大好きな、たみこの、一つなんだから。

　……たみこが過去のことを悩むのを、僕は止められない。
　でも、もし不安なら、そんなものは焼き払うくらいに、僕はきみに「大丈夫」って言い続けるよ。
　……大体、非人間的、って言うなら、僕だってそうだ。なんなら、ぶっちゃけ君たちの事を殺そうくらいには思ってたからね。

　一緒に背負う、なんて甘っちょろいことは言えない。現実的でもないからね。
　でも、不安なら、僕はずっと、たみこの手を握り続けるよ。
　こんなに温かくて、素敵な手だ。振り払うなんて、できないよ。
　それに、たみこはきっと、自分の力で乗り越えられる。たみこが自分を信じられないなら、僕を信じて。
　君を愛する、僕のことを。

　ほら、あーんして。
　チョコ食べたら、今日は一緒に寝よっか。
　もう不安にならないくらいに、僕を感じて。寝るといいよ。

　ん。おやすみ、たみこ。
　僕が一番星になるなら、たみこはずっと、僕のための空でいてよね。