PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

混沌一周一人めし

関連キャラクター:志屍 志

【怪談喫茶ニレンカムイ】瑠璃の喫茶店訪問記
 練達の一区画に作られた場所、希望ヶ浜。
 地球から召喚され、変化を受け入れられなかった旅人(ウォーカー)達による聖域。
 そんな場所に存在する問題。
 つまり夜妖。
 希望ヶ浜という社会の陰に隠れ人を傷つけ、そして命すら奪う事もある存在。
 人々の生活を、命を守る為にローレットも陰ながら活躍している。
 夕暮れ時。
 その夜妖退治の仕事帰りに志屍 瑠璃は一人、町家が立ち並ぶ通りを歩いていた。
 歴史を感じさせる町並みで夕陽に照らし出されたこの風景は綺麗だ。
 俗な言い方をすれば『映える』、と言ったところか。
 そういえばこの建物達はいつ造られたのだろう。
 希望ヶ浜自体そんなに歴史は長くない筈なのだが。まあ、練達の技術ならどうにでもなるか。
 とりあえずお腹も空いた。どこかで食べたいところだ。
「ん?」
 ふと横を見れば一つの看板が目に留まる。
 怪談喫茶ニレンカムイ。
(怪談……喫茶?)
 喫茶店で怪談とはいったい。
 興味も相まって中に入る。
 内装はレトロにまとまり、アンティークな家具が揃えられている。
 その店内も窓から差し込む夕日によって更に趣ある場となっている。
「あ、いらっしゃい!今日は何をご注文ですか?!」
 店員であろう、女の子の元気いっぱいな声が店内に響き席に案内される。
「翠、ちょっと声が大きいよ」
 双子だろうか、別の女の子が歩み寄ってて来た。
「だってぇ、元気な方がいいじゃん!」
「こら!ケンカしないの2人とも」
「「はあい」」
 カウンターの方から声が響く。
 そっちへ見やるとここの店長であろう、女性がいた。
「ごめんなさいね、騒々しくて」
「いえ」
 メニューを手渡され、中身を見る。美味しそうなものばかりだが。
「おばけセット?」
「それはココアとホットサンドのセットだよ」
 チョコとマシュマロを挟んだスモア風ホットサンド、らしい。
「ならそれで」
「結月さん、おばけセットで!」
 改めて店内を見渡すが、そういえば。
「あの、スイさんでしだっけ?怪談って?」
 ああ、それはね。
「このお店、怪談モノの本を集めてるんだ!」
 もう一人の女の子が本棚から一冊の本を持ってきた。
「こういうのだよ」
 タイトルからして怪談のそれだとわかる。
 なるほど、ニッチというか人を選びそうな店ではある。
 が、店内自体は怪談らしさはない為に案外平気なのかもしれない。
 本にさえ触れなければ。
「お待たせしました」
 おばけセットが出来たらしい。
 チョコとココアの匂いが瑠璃の鼻孔をくすぐる食欲をそそる。
 ビターなチョコの苦みがマシュマロの甘さを引き立てている。
 そして熱いココア。最近冷えてきた事もあるのだろうか、なんだかホッとする。
 落ち着く。案外いいお店を見つけたかもしれない。
 そういえば本を手渡されていた。試しに数ページめくってみる。
 その顔に少し緊張が走る。
「お姉さん、どうしたの……?」
 スイと呼ばれた子が瑠璃の顔を覗き込む。
「よ、る……?」
 それは過去に瑠璃が対応した夜妖に関った顛末にそっくりなのだ。
「夜妖を知ってるの?」
「え、えっと……はい」
 戸惑う瑠璃。無理もなかろう、希望ヶ浜の住人は夜妖の存在を否定している。
 聞けば。
 怪談喫茶ニレンカムイは喫茶店をやりつつ夜妖の情報を集め、イレギュラーズに提供している。
 普段依頼を出す時はカフェ・ローレットにこの店に来るように情報を回してもらっているとか。
 そんなニレンカムイの店員からそれぞれ自己紹介があった。
 店長兼姉妹の保護者、結月。
 店員の天真爛漫な姉、翠とこまっしゃくれた妹の蓮。
「縁がありましたらニレンカムイをこれからも宜しくお願いしますね」
 ただ食事に来ただけなのに困ったな、と頬をかきつつ帰路に就く瑠璃であった。
 そういえばなぜあの3人が情報屋などやっているのだろうか。
執筆:アルク

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