PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

混沌一周一人めし

関連キャラクター:志屍 志

急に気温があがると
 ──暑い。
 混沌に来て何年立ったか。故郷と比べれば、気温差や季節感というものは恐ろしく楽に順応出来ると思っていた。
 そう、思っていた。
「嘘でしょ、なんで急に…………」
 朝に雨が降ったかと思ったらじめじめと湿って蒸し暑くなってしまった。
 しかもこの日はレザーチュニックにスキニーパンツを着ていた。
 このままでは蒸らしと空腹で倒れてしまう。
 瑠璃は気合いを入れ直し、目に入った飲食店へ突撃していく。

 その店は旅人の店だった。
 様々なルーツを持つ旅人が憩えるよう、彼等に話とレシピを聞いて忠実に再現した料理の数々を出す。
 写真入りのメニュー表には瑠璃の故郷でも見たようなものから、全く知らない料理があった。
 外の暑さを忘れて写真の料理達に目移りしてしまう。
「どれもこれも美味しそうですが、暑いのでこれで……!」
 悩みに悩んで選んだ一品はフォーを冷麺風にアレンジしたものだった。
 瑠璃の知るフォーは鶏肉とスパイスなどのふんだんに入れた温かい料理だが、ここはそれとは別に冷麺風に仕上げた物もあったのだ。
「いただきます。……んん、美味しい。手が止まらない」
 ダシを取った優しい風味を残しつつ、香味野菜と鶏肉の旨味が溢れる。
 そこへ生の唐辛子を刻んだふりかけが一層、食欲を引き立てる。
 美しいハーモニーに夢中になって食べ進めて、気付けば器は空だった。
 美味しいかった、そう言おうとしてアイスジャスミンティーを飲んだ瞬間。
 瑠璃はフォーをまとめながらもスッキリ爽快感に完敗したのだった。
「お、美味しかった……! 食後のジャスミンティーを含めて何もかも美味しかったです!!」


執筆:桜蝶 京嵐

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