PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

ユリーカさん目撃録

関連キャラクター:囲 飛呂

ユリーカ・ユリカの監視。或いは、監視者2人…。
●ユリーカ・ユリカの視察
 ところは幻想。とある洋館。
 高い壁に、厳重に封鎖された鉄の門、門の前には明らかにカタギに見えない2人の門番がいる。
 街の隅にある建物だが、住人たちはどうにも洋館を避けて通っているようだ。
 人身売買と違法薬物の製造・販売。洋館の主である貴族には、それらの疑惑がかけられている。
 洋館から数十メートルほど離れた位置の植え込みの影に、潜む小さな人影が1つ。
 青い髪に華奢な手足、背中には小さな白い羽。
 双眼鏡を目に付けて、かれこれ数時間ほどもユリーカ・ユリカは洋館の様子を見張っていた。
 貴族が悪事に加担している証拠を掴むためである。
 元より長期戦は覚悟の上だ。ユリーカの隣には、袋に入ったアンパンと牛乳が詰め込まれていた。

「何をしてるんだ? 俺が声をかけてもいいのか?」
 洋館の監視を続けるユリーカ。
 そんな彼女を、遠く離れた位置から監視する者がいた。
 囲 飛呂だ。
 彼がユリーカを見つけたのは偶然だった。或いは、必然であったと言えるかもしれない。
 ローレットの前で待機すること数時間。こそこそと出かけていくユリーカを見て、こっそりと後を付けたのだ。元々の目的は、挨拶を交わし、ほんの少しの日常的な会話を楽しむことだった。
 けれど、飛呂は声をかける直前で臆してしまったのである。
 そのままズルズルと声をかけるタイミングを見逃し続け、今に至るというわけだ。幸いにして、飛呂の尾行はユリーカにバレていないようだ。
 けれど、しかし……。
「なんだ? 貴族の屋敷から誰か出て来た? 出かけるような素振りだが……あいつ、ユリーカさんの方を気にしていないか?」
 ユリーカの監視は、件の貴族にバレてしまったようである。
 黒い服を着た男が2人。迂回しながらユリーカの方に近づいていく。だが、ユリーカは彼らの接近に気が付いていないようだ。
 監視がバレるとどうなる?
 捕らえられることは確実だ。最悪の場合は、殺されてしまうかもしれない。
 背筋に悪寒が、頬に冷や汗が伝う。
「マズった……仕事じゃないから、今日は銃を持ってきていない」
 だからと言って、ユリーカの危機を見過ごせるだろうか。
 答えは否だ。
 中腰に構えた飛呂は地面を蹴って駆け出した。
 脇目も振らず、まっすぐに。
 道路を駆け抜け、花壇と水路を跳び越えて、あっという間に飛呂はユリーカの元へと迫った。
「!? 飛呂さん!」
「見つかってる! 逃げよう!」
 飛呂はユリーカの手を掴み、元来た道を引き返す。
 背後で男の怒鳴り声が聞こえた。そんなものに耳を貸している暇はない。
(すべすべしていて柔らかい。あぁ、俺は今日、死ぬかもしれない)
 飛呂の意識は、繋いだ彼女の手の感触に囚われていた。
執筆:病み月

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