PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

本を探して

関連キャラクター:マリエッタ・エーレイン

ループ
 バベルのような本棚の隅の隅、オマエが認識していないところで一冊、増えていたのか。タイトルすらも蚯蚓じみていた『それ』をするりと撫でてみる、本の虫としては兎も角、こんなにも魅力的な感触は他にないだろう。葡萄をもぎ取るふうにしてずるりと抜きだす。作者はインク壺をぶち撒けたとでも謂うのか、装丁までも潰れている。
 オマエは直感で『禁書』の類なのだと理解した。人間が読んではいけない代物なのだと、本能で咀嚼していた。それでも尚、捲りたいと謂う『この頭』は松果体までも純粋なのだろう。どくん、と、跳ねた心臓を押さえ込んで一頁目、するりと流れ込んだ内容は悉く悪辣でしかなかった――ぐぅ、如何してなのか、腹が減ってたまらない。
 芬と漂い始めた蜜は一種の体液なのだろう、一文字一文字が生命への冒涜らしく、じくじくとセルを砕いていく。崩された現実と称される足場、オマエは沈む感覚に囚われていた。マリエッタです、お手伝いすることはありますか? 同じ台詞を繰り返してしまう主人公、イレギュラーの楽しさを壊したのか、蜿蜒と、永遠と――。
 腐れたテーブルを囲んでの食事会なのだ、そんな物語性を登場人物どもは受け入れていた。大皿にのせられた慈愛の塊、水泡を想わせる疑似体験の血涙……。
 ぞわりとした正気に戻され、魔女の釜を覗き込んだ。

 これは出来そこないの『Null』だ、ナシのパイ。
執筆:にゃあら

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