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幕間

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本を探して

関連キャラクター:マリエッタ・エーレイン

小さな植物図鑑
 雑多なものを眺めているとき、不意に目に留まるものというのは何かしら興味を引くものであることが多い。
 小物にちょっとした家具、アクセサリーやドライフラワーなどなどと様々に積み上げられた手狭なお店でマリエッタが見つけたのは、本棚に入った小さな本。だいぶ古い本のようで背表紙は日に焼けてしまっている。
 手に取ってよく見ると裏表紙に値札が付いている。売り物のようだが長い間そこにあったようで何度も値下げされた形跡があった。
 表紙にはタイトルは何もない。首をかしげながらもマリエッタは中身を読み始める。

 それは手書きの植物図鑑のようだった。図鑑というには少々薄すぎるとは思うが、ページの左側に植物の絵、右側に名前や生息地域、育て方、使い方など詳細に書かれている。
 いくらか抜粋しよう。

 全体が青く中心が黄色い丸い花に百合のような葉っぱを持った植物の絵がある。
 名前は『ブルーメモリ』と書かれており、海中に群れて生えているそう。花を咲かせると同時に発光する性質があり、このタイミングで採った花には優れた薬効を持つという。
 また葉をよく乾かしたうえで粉末にして飲むことで水中での呼吸を容易にする効果もあるそうだ。
 ただし精霊の涙が溶け込んだ純粋な水でしか育てることができない、と書かれている。

 赤くチューリップに似た花と楓に似た葉を持つ植物が描かれている。ただし茎を除いたほぼ全ての部分は赤とオレンジと黄色が使われまるで炎のようだ。
 名前はどうやら『フェアリーランプ』というようで、実際に燃えているらしい。触れるときには火竜の革で作った手袋をしていないとやけどをするため注意と書かれている。
 先天性の魔力欠乏症の症状によく効き、特効薬になるが入手が大変難しく高価なのが欠点。霊力の高い森の中で稀に育ち、見つけることが難しいのである。希少さや発の難度からフェアリーの名が与えられたと書かれている。
 人工的に育てる方法はまだ見つかっておらず、研究中と書いてあり、その横に『必ず見つけてみせる』と乱れた文字が添えられていた。

 ここまで読んでマリエッタはいったん本を閉じた。知らない植物に聞いたこともない症状や用語。きっとこれはどこかの世界の旅人が持ち込んだものなのだろう。
 どうしてここにあるのか、何を思ってこれを書いたのか、本は答えてくれることはない。
 ただできるのはこの手書きの、世界に一冊しかないであろう本の作者に思いを巡らせることだけ。
 そうしてマリエッタはこの小さな本を買うためにレジへと向かったのだった。
執筆:心音マリ

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