PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

ブランシュ思い出作り

関連キャラクター:ブランシュ=エルフレーム=リアルト

雨上がりの飴模様
「わあ、とっても大きな虹ですよ!」
 傘の向こう、遥かを見遣ってブランシュは声を上げる。赤、橙、黄、緑、青、藍、紫。多くは7色で表されるそれが去り行く雲の間を彩り、空よりも深い瞳に映り込んでいた。
 ぱっとしない曇天も、音を押し流すほどの白雨だって、世界の全てが興味深い彼女にとっては楽しめるものだけれど。
「みんなみんな、笑顔なのがきっと一番なのですよ!」
 だからこそ、きゃあきゃあと燥ぐ声にも敏感だ。しっかり畳んだ傘を連れ立って歩き出せばその理由はすぐに知れる。たくさんの客を行列に誘うのは、パステルカラーの看板に跳ねる店名と——
「レインボーコットン、お待たせいたしました」
 ——淡く7色に染まった、夏空に似合う入道雲のような大きな大きな綿飴だった。
 ブランシュの瞳がそれはもうキラキラと瞬いたのは言うまでもなく、あっという間に最後尾へと吸い込まれていく。きっと「バケツに詰めてお持ち帰りも出来ますよ」と勧められた時の方がよっぽど悩む時間が長かっただろう。
 ふわふわ甘い虹色の雲を頬張れば、泥濘む道も何のその。水溜まりには青空を背負った少女の笑顔が輝いていた。
執筆:氷雀

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