PandoraPartyProject

幕間

ブランシュ思い出作り

関連キャラクター:ブランシュ=エルフレーム=リアルト

硝子の中の海
 キラキラと輝くものが好きだった。
 長い時間を眠り過ごしたあなたにとって、初めて見るものはきらきら輝いて見えるのだから。

 たまたまローレットの依頼で寄った海辺の街。それは本来の予定より早くに片付いてしまい、あなた方一行はせっかくだからと羽を伸ばすことにしたのだ。
 せっかく海に来たのだからと仲間達と砂浜を走り回り、名物だという海鮮料理に舌鼓を打つ。
 日が暮れる前にと時間を決めてあなた達は残りわずかな時間を自由行動に当てる。

 そして。
 あなたはとある露店の前で足を止めていた。
 観光客向けに売られている硝子瓶がキラキラと輝いてあなたの目を惹きつけている。
「どうだいお嬢ちゃん、手に持って見てもいいぜ」
「ありがとうですよ!」
 店主は笑ってあなたに商品をすすめた。
 コルクで栓をした、どこにでもある小さな硝子瓶だ。
 海を象った貝殻と青い砂、小さな貝殻が詰め込まれている。
「海だ」
 寄せては返す波打ち際に、歓声を上げる仲間達の声をあなたは思い浮かべた。
「旅行の記念にどうだい?」
 安くするよという店主の誘惑にあなたは財布に手を伸ばした。
執筆:いつき
ブランシュ、水着を選ぶ。
●ブランシュとライブノベル
 夏。それは身も心も開放的になる時期。
 具体的に言うと水着と海。
 というわけで水着を買おうかとブランシュは思いはしたが。
 したのだが、水着の事は良くわからない。
 誰か相談に乗ってほしい。
 ああ、そうだ。
 どうせならライブノベルへ行こう。
 混沌で売られているそれらと変わらないかもしれないが、それはそれ。
 ライブノベルという世界で買う事に意味があるのだ。
 多分。きっと。メイビー。

●幻想世界アーレイベルク
 という訳でやって来たのはライブノベル『幻想世界アーレイベルク』。
 ファンタジー世界でもあるその世界は年中常夏の都市も存在する。
 なぜこの世界に来たのかと言われれば。
 境界案内人ミヤコの出身世界なのだ。
 そして今いる常夏な都市は海も存在する為、年中水着も売られている。
 勿論その種類も豊富だ。
「ほえー、水着のお店がいっぱいあるのですよ」
 きょろきょろ周囲を見渡すブランシュ。
 その様は完全にお上りさんだが、ミヤコはそれを見て注意したりはしない。
ーーライブノベル自体は初めてかい?
「何度か来た事はあるのですよ!」
 くすり、と笑いながら問うミヤコに快活に答えるブランシュ。
ーーお、そうかい?ならその時の事も教えてくれよ。
「もちろんですよ!」
 にっこりと笑うミヤコ。
ーーさて、お店に着いたよ。
 中には様々な水着が陳列されている。
「た、たくさんあるのですよ……」
 ハワイアンなお店に入った二人。
 無数にある水着。目移りしてしまう。
 なるほど、水着と一口と言っても種類が多い。
 どれを選んでいいのかわからなくなりもしよう。
「あばばば、大人な水着があるですよ!」
 見やると大人、というかなんというか、セクシーな水着が並んでいる。
 ニヤア。
 それを見たミヤコ。笑顔がとても黒い。
ーーブランシュちゃんにはこれが似合うと思うよ!
 ミヤコが選んだのは
「あわわわ、ブランシュにはまだ早いですよ!」
 おめめをぐるぐるさせ、顔を真っ赤にさせるブランシュ。
ーーまあまあ、いいからいいから。試してみようよ。
 と、ぐいぐいとブランシュを水着ごと試着室に押し込むミヤコ。
 試着室から恥ずかしいですよ!とか。なんなのですよ!とか。
 色々と悲鳴が聞こえてくるが少しして。
 出てきたブランシュが着ていた水着はなんと。
 スリングショットだった。
 身を縮こませて必死に水着を隠そうとしているが。
 豊満な胸は自己主張が強い。
 見ている分にはたのしーー可愛いがこのままでは可哀そうだ。
ーーあははー、ごめんね。ほら、こっちの水着なら大丈夫だろ?
 ミヤコが用意した水着を素早く取り、試着室に籠る。
 しばらくしてようやく出てきたブランシュ。
 その姿はとても可愛らしいものだった。
 その後。ブランシュを必死に宥めるミヤコの姿があったという。

ブランシュ様への水着の提案
タンキニ水着
白を基調とした水着で
黒のラインが入ったもの
ロゴには
A Shining World
の文字入り
執筆:アルク
春風に揺れる儘
 今日は春らしい穏やかな日だ。散歩に出向きたくなる天気だからか、広場の定期市はさまざまな人で賑わっている。たまたま観光に訪れていたブランシュも、この市場を満喫する一人であった。
 たっぷりメープルがかかったプレッツェル、その最後の一口を食べ切って。ふとブランシュは立ち止まった。
「あの、これは何ですか?」
 彼女の食い入るような視線の先には、カラフルな球体が浮遊していた。
「風船だよ。もしや風船を見るのは初めてかい?」
 ブランシュは初めて見るふしぎな物体を、好奇心に満ちた目で眺める。
 シンプルな球形だけでなく、動物を真似たものまで。ぎゅうぎゅう詰めでちょっぴり窮屈そうに、けれどのんきにぷわぷわと。時折そよ風に揺れるそれらは、ブランシュにとって明るくきらめいて見えた。
「飛んでるです。でも、ブランシュとは全然別の原理で浮かんでるように見えるのですよ」
「この中にはね、軽い空気が入ってるんだよ」
「空気です?」
 ますますふしぎな心地がした。そして疑問はもう一つ。
「これは何かに使えるのですか?」
「それはね……持ってみたらのお楽しみかな」
 ブランシュはわくわくに駆られて、銅貨数枚と引き換えに風船を手にする。
 とても軽い。なるほど、軽い空気が入っているというのは本当らしい。見上げる紐の先では、愛らしい白猫が微笑んでいた。
「すぐに飛んでいっちゃうから、手を離さないよう気をつけてね」
「了解なのですよ!」
 ふたたび市場の冒険を再開する。
 片手に風船を持っていると、まるで新しい友達とふたり、手を繋いで歩いているようで――やっぱりふしぎな感覚だった。
 柔らかな陽光が石畳に降り注ぎ、ブランシュたちの往く道を照らしていた。
執筆:
雨上がりの飴模様
「わあ、とっても大きな虹ですよ!」
 傘の向こう、遥かを見遣ってブランシュは声を上げる。赤、橙、黄、緑、青、藍、紫。多くは7色で表されるそれが去り行く雲の間を彩り、空よりも深い瞳に映り込んでいた。
 ぱっとしない曇天も、音を押し流すほどの白雨だって、世界の全てが興味深い彼女にとっては楽しめるものだけれど。
「みんなみんな、笑顔なのがきっと一番なのですよ!」
 だからこそ、きゃあきゃあと燥ぐ声にも敏感だ。しっかり畳んだ傘を連れ立って歩き出せばその理由はすぐに知れる。たくさんの客を行列に誘うのは、パステルカラーの看板に跳ねる店名と——
「レインボーコットン、お待たせいたしました」
 ——淡く7色に染まった、夏空に似合う入道雲のような大きな大きな綿飴だった。
 ブランシュの瞳がそれはもうキラキラと瞬いたのは言うまでもなく、あっという間に最後尾へと吸い込まれていく。きっと「バケツに詰めてお持ち帰りも出来ますよ」と勧められた時の方がよっぽど悩む時間が長かっただろう。
 ふわふわ甘い虹色の雲を頬張れば、泥濘む道も何のその。水溜まりには青空を背負った少女の笑顔が輝いていた。
執筆:氷雀

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