PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

ブランシュ思い出作り

関連キャラクター:ブランシュ=エルフレーム=リアルト

春風に揺れる儘
 今日は春らしい穏やかな日だ。散歩に出向きたくなる天気だからか、広場の定期市はさまざまな人で賑わっている。たまたま観光に訪れていたブランシュも、この市場を満喫する一人であった。
 たっぷりメープルがかかったプレッツェル、その最後の一口を食べ切って。ふとブランシュは立ち止まった。
「あの、これは何ですか?」
 彼女の食い入るような視線の先には、カラフルな球体が浮遊していた。
「風船だよ。もしや風船を見るのは初めてかい?」
 ブランシュは初めて見るふしぎな物体を、好奇心に満ちた目で眺める。
 シンプルな球形だけでなく、動物を真似たものまで。ぎゅうぎゅう詰めでちょっぴり窮屈そうに、けれどのんきにぷわぷわと。時折そよ風に揺れるそれらは、ブランシュにとって明るくきらめいて見えた。
「飛んでるです。でも、ブランシュとは全然別の原理で浮かんでるように見えるのですよ」
「この中にはね、軽い空気が入ってるんだよ」
「空気です?」
 ますますふしぎな心地がした。そして疑問はもう一つ。
「これは何かに使えるのですか?」
「それはね……持ってみたらのお楽しみかな」
 ブランシュはわくわくに駆られて、銅貨数枚と引き換えに風船を手にする。
 とても軽い。なるほど、軽い空気が入っているというのは本当らしい。見上げる紐の先では、愛らしい白猫が微笑んでいた。
「すぐに飛んでいっちゃうから、手を離さないよう気をつけてね」
「了解なのですよ!」
 ふたたび市場の冒険を再開する。
 片手に風船を持っていると、まるで新しい友達とふたり、手を繋いで歩いているようで――やっぱりふしぎな感覚だった。
 柔らかな陽光が石畳に降り注ぎ、ブランシュたちの往く道を照らしていた。
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